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2016年09月14日

十三月の翼・いふC 後編(天使のしっぽ・二次創作)




 こんばんは。土斑猫です。
 いやはや、やっと終わりました。随分手間がかかったわい。
 これでようやく、他のSSに移れます。さ〜て、次はどれを片付けようか・・・。
 という訳で、十三月の翼・いふC、最終話公開です。


ヘル.jpg




                  ――6――


 『……お邪魔虫がいますのね……』
 背後で起こっている騒ぎに、鬱陶しそうに視線を送るヘル。
 「何をやっているんだ。あいつらは……」
 ゴウも、呆れ声で溜息をつく。
 と、ヘルがその目を細める。
 『ナベリウスが、術を使いますの……』
 「何!?」
 その言葉に、思わず身構えるゴウ。
 しかし、ヘルはその顔に薄く笑みを浮かべる。
 『ちょうどいいですの』
 途端、少女の身体を包むヴェールがサワリと蠢いたと思うと、ブワリと大きく広がった。
 「ぬ!?」
 驚くゴウの視界を、白が覆い包む。
 『怖がらないで』
 白の向こうで、少女が言う。
 『ナベリウスの術の発動時には、一瞬だけど世界の因果律が途切れますの。その瞬間なら、バアルの紅眼も追ってこれない』
 白い世界の中で、クスクスと響く笑い声。
 『行きましょう。二人だけの場所へ……』
 そして、ゴウの意識は白の中へと溶けて行った。


 次に目を覚ました時、ゴウの五感が感じたのは、濃い潮の匂いと波の音。そして、後頭部に当たる冷たい感触だった。
 「む……」
 『御目が覚めましたの?』
 網膜に逆さに映り込んだヘルの顔が、微笑みながら問いかける。
 自分が彼女に膝枕をされている事に気付くのに、少しの時間がかかった。
 「!!」
 咄嗟に起き上がろうとしたが、身体の芯が痺れた様に動かない。
 『ご無理をなさらないで』
 額に冷たい感触が貼り付き、半ば浮き上がりかけた頭を膝の上に押し戻した。
 『思ったより、負荷が大きかったみたいですの。ごめんなさい』
 「……何をした……?」
 申し訳なさそうに眉をひそめるヘルに、問う。
 『少しばかり、時と場所をずらしましたの。海の香り、感じますでしょう?』
 確かに、周囲に満ちる気配は、そこが海の近くである事を物語っている。先頃まで居た場所は内陸の都市。確かに、あの一瞬でかなりの距離を移動したらしい。しかし、時をずらしたとは、どういう事だろう。
 『場所を変えただけでは、バアルは誤魔化せないですの。彼の眼は、世界の全てを見晴らす万里眼。すぐに、に見つかってしまうですの。だから、時を少し先飛びしましたの。ほんの、24時間ほど……』
 そう言って、愛らしく微笑むヘル。
 しかし、その笑みはゴウに愛しさとは別の感情を抱かせる。
 万里を見通す。
 時を、先飛びする。
 どれも、神の一柱である筈の四聖獣(自分達)の力ですら、及ばない所業である。
 目の前ではにかむ、幼げな少女。
 その少女が、人知のみならず、神の領域すら凌駕する存在である事に、そして、その存在が神側(自分達)に反する位置にある事に、改めて明確な脅威を感じた。
 けれど、彼のそんな思考を読み取るかの様に、ヘルはその顔を曇らせる。
 『……怖い、ですの……?』
 明らかな悲しみを含んで発せられた、言葉。それに、ゴウは少なからず動揺する。
 『ヘルが、“異端”だから……?』
 見下ろしてくる、深紅の瞳。それがたまった水滴に揺らぐ。
 『本当はね、分かって、いますの……』
 瞳を揺らしながら、ポツリポツリと、ヘルは言う。
 『貴方は神。ヘルは魔王。想うだけ、無駄な事だって……。それに……』
 その手が上がり、己の半身を隠すヴェールにかかる。
 『……貴方には隠しませんの……。ご覧に、なって……』
 そして、ヴェールが上げられ、それに隠されていた半身が露わになった。
 「……!!」
 それを見たゴウが、息を吞んだ。
 その様に、ヘルは悲し気に笑う。
 『……と言う、訳ですの……』
 漏らす言葉とともに、小さな身体が震える。
 『魔王は、その力の対価として一つの業を背負いますの。そして、これがヘルの業……。全ての想いを閉ざす呪い……』
 絶句するゴウを見下ろしながら、ヘルは彼の髪を愛し気に撫ぜる。
 『今日は、本当に楽しかったですの……。ヘル達の時の中では、瞬きほどのものでしたけど、十分に癒されましたの……』
 「……」
 『今、魔力の波動を感じましたの。バアル達が、ここに気付いた。じきに、追ってくるですの……』
 そう言って、ヘルは空を見上げる。
 それまで、青く澄んでいた空が、西からゆっくりと爛れた紅色に変わってきていた。
 『さようなら、ですの……。青の君……』
 強い潮風が吹き、その華奢な身体を、儚げに揺らした。
 「……!!」
 その姿が、ゴウの脳裏に一人の少女を呼び起こした。
 数ヶ月前の凶事。その中心にいた、黒の少女。
 叶わぬ運命(さだめ)に全てをかけて抗い、散っていった少女。
 その想いを知りながら、神(自分達)が救う事も叶わなかった少女。
 その時の無念の思いが、ゴウの心を揺らした。
 知らずのうちに身を起こし、ヘルの涙を拭う。
 『……?』
 「……泣くな……」
 かける言葉は、自分でも驚くほどに優しかった。
 「確かに俺は神だ。魔王であるお前の想いに答える事は出来ん。だが、この一時だけお前を慰める事は出来る……」
 『……青の君……』
 「願いを言え。今少し、付き合おう」
 ヘルの顔が、花が咲く様にほころぶ。
 『あの……それじゃあ……』
 「ん。何だ?」
 『その……その……』
 途端にもじもじし始めたヘル。
 『……思い出が、欲しいですの……』
 「思い出?」
 『あれ……』
 ヘルの右手が上がり、砂浜の向こうを指差した。
 「?」
 その方向を見たゴウ。
 一瞬固まり、そして――
 ヴフォッ!!
 吹いた。
 ヘルが指差す向こうには、一棟の建物があった。
 その上部には、大きく「ホテル・きすみー」の文字。
 ホテルと銘打ってはいるが、そのケバい装飾はどう見ても堅気の宿泊施設ではない。
 というか、面倒くさいのでもう単刀直入に言ってしまおう。
 ラ〇ホである。
 男と女がニャンニャン(死語)するために存在する、あの施設である。
 ヘルの意図は明白。と言うか、他になんかあるんだったら教えてほしい。
 対してゴウは汗だらだら。まるで油売りの蝦蟇である。
 「……お、お前、一体何を……???!!!」
 『いやですの〜♡青の君ったら〜♡♡女の子に言わせますの〜♡♡♡』
 両手をほっぺに添え、クネクネと身をくねらすヘル。さっきまでの薄幸の美少女の面影は微塵もない。
 「い、いや!!ちょっと待て!!俺はそんなつもりで……!!!」
 『てぃ♡』
 ズビシィッ
 「ぐはぁっ!?」
 次の瞬間、ヘルの手から放たれた閃光がゴウの腹を撃つ。
 『駄目ですの。青の君。漢に二言はないですの♡』
 言いながら、ヘルは悶絶するゴウを軽々と肩に担ぎ上げる。
 スタスタ ズルズル
 足取りも軽く向かう先は当然、件の建物である。
 「ま……待て……!!ちょっとでいいから、待て……!!」
 『大丈夫ですの♡天井のシミを数えてるうちに終わるですの♡』
 懇願するゴウの声なぞ何処吹く風で、ヘルは足を進める。
 見る見る近づいてくる、破滅の門。
 ゴウの貞操も、もはやこれまでかと思われたその時――

 ドンガラガッシャ――――ンッ

 『きゃう!!』
 「のわぁ!?」
 二人の前に、轟音と共に降り落ちる光の柱。
 『な、何ですの?』
 「こ、これは……!?」
 立ち昇るきな臭い煙の中、ゆらりと影が立ち上がる。
 「ゴウ……」
 地の底から響く様な声が、周囲を震わせる。
 ザシャッ
 長い神衣をザワザワとさざめかしながら、彼女はゴウ達に近づく。
 乱れた長い髪がバサリと顔を覆い、表情が見えない。
 それが、どこぞのホラー映画の悪霊みたいで非常に怖い。
 しかし、そんな状態であっても、ゴウには彼女が誰だか分かる。
 分かって、しまう。
 「メ……メガミ……」
 喉が引き潰れる様な声で、彼は彼女の名を呼ぶ。
 それに反応したかの様に、細い足がピタリと歩みを止める。
 ザワリ
 揺れる髪の間から、爬虫類の様に冷たく燃える眼差しがゴウを射抜く。と言うか、まんま蛇の目である。
 「……修行の地にいないから、何処に行ったのかと思って探してみれば……」
 ゴキキ
 猛禽の爪の様に歪み開かれた指が、不気味な音を立てて軋む。
 「そんな幼子を連れて、何をしようとしているのですか……?」
 カァハァ……
 薄い唇から漏れる、白い吐息と爬虫類の歯牙。
 はっきり言って、隣りにいる小さな魔王よりよっぽど怖い。
 「ま、待て!!これには事情が……!!」
 必死に弁明しようとするゴウ。しかし、怒りに燃えるメガミ――ユキの耳には届かない。
 「二人で肩を抱き合いながら”こんな所”に来ておいて、何が事情ですか……」
 あ、そう見えてたのね。
 度を越えた怒りは、正しい認識力を鈍らせます。皆さん、気をつけましょう。
 「待て!!頼む!!話を聞いてくれ!!」
 懇願するゴウにジリジリと近づくユキ。まるで獲物に近づく毒蛇である。
 その時――
 『そうですの!!』
 ヘタれるゴウの前に、ヘルが躍り出る。
 事情を説明してくれるのかと、淡い期待を抱くゴウ。しかし、
 『青の君はこれからヘルと契りを交わすですの!!お邪魔虫は引っ込んでるですの!!』
 ホントに淡い期待だった。
 「……契り……?」
 途端、ザワァッと逆立つ黒髪の束。
 うわ、マジで怖ぇ!!
 「ゴウ……そちらの方はそうおっしゃってますが……?」
 「いや、だからこれは……!!」
 「年増のおばさんは引っ込んでるですの!!このお邪魔虫!!」
 「!!(╬゚◥u◤゚)」
 火に油どころか、煮え滾る溶岩が注がれた。
 ……合唱……。


 その頃、ようやっとたどり着いたその他一同。
 目の前で繰り広げられる地獄絵図に、ただただ立ち尽くす。
 「……おい。どうすんだ?これ……」
 「どうもこうも……」
 「下手に手を出したら、こっちに飛び火しますね……」
 途方に暮れる四聖獣の横で、顎に手を添えたバアルが禍禍禍、と嗤う。
 『――いやはや。何とも楽しい事になってるねぇ――』
 『『『……君、やたらのんびりしてたけど、こうなる事を察してた訳じゃないだろうね……?』』』
 恨めしげなナベリウスの問いに、バアルは笑って答える。
 『――買いかぶらないでくれたまえよ。小生に未来予知なんて無粋な力はない。もっとも――』
 『『『もっとも?』』』
 『――神と魔王が交われば、何が生まれるか興味はあったがね――』
 そしてまた、禍禍禍と嗤う。
 『――なーに。ヘル嬢はその身体と能力上荒事には向いてない。この騒ぎで消耗すれば、大人しくなるさ。そうしたら、抱え上げて連れて行けばいい。それで、万事解決だよ――』
 『『『それまで、この地がもつかな……』』』
 『――まあ、その時はその時さ――』
 響き渡る阿鼻叫喚の声を聞きながら、享楽の魔王はそう言ってまた嗤うのだった。
 どんとはれ。

                              おしまい
この記事へのコメント
さて、これが最終回か。
たしか昔見た「エスパー魔美」の主題歌で
「テレポーテーショ〜ン 今 時を飛ぶ♪」ってあったっけ。
今回まさにそれをやってのけたヘルたんはやっぱり魔王だ。

で、惚れた相手には腐敗した半身を見せるのか。
力を得た対価とのことだけど、じゃあ力を捨てたら元通りになるのかな。
余談だが、「半身腐敗萌え」を新ジャンルとして確立すべく
精力的に活動している強化復讐鬼ってのを考えているw
かつてラグルに倒された怪人の同族だが能力ははるかに上という設定。

で、いい話になるかと思いきやここでラ○ホかよw
ヘルたん、お持ち帰りモード全開のようだが、俺には見えた。
ゼクシアが全てをぶち壊しにするビジョンがw
巨大化してビルにしがみつきキングコングごっこをするか、
怪しげな呪文でビルをビルガモみたいなロボットに変形させるかw
まあ奴の事だからろくな事はせんだろうwww

そしてとどめに「彼女」…ぜひ始球式にお越しいただこうwww
ここ目を引くワードは「年増のおばさん」と「煮え滾る溶岩」だなw
あとはバアルの「神と魔王が交われば、何が生まれるか興味はあったがね」
俺も興味あるw 案外両者の中間をとって人間が生まれたりしてなw

以上だな。
気が向いたらまた何年後かに爆撃に来るぜよ。
と、思う。多分
Posted by G5‐R at 2019年12月14日 20:16
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