2020年06月19日
iDeCoの落とし穴
さてさて、『iDeCoのメリット』、『iDeCoのデメリット』と続いてきたiDeCoコラムシリーズも今回の第3回目が最終回となります。
今回は、iDeCoのメリットとして挙げられていることの注意点を中心に述べていきたいと思います
それでは、早速行ってみましょう
運用中にもコストがかかる
iDeCoのメリットとして「運用益は非課税」ということを挙げましたが、反面iDeCoには、iDeCo特有の運用コストが発生します
まず一つ目は、加入時手数料。
iDeCo加入時に国民年金基金連合会に2,829円の手数料を支払う必要がありますが、まぁこれは一回きりの手数料なので大きな問題にはならないかもしれません。
続いて2つ目が、結構大事な口座管理手数料。
iDeCo口座を有しているだけで、事務委託先金融機関に66円/月、証券会社によってはそれに上乗せして月数百円程度の手数料を支払う必要があります。
また、掛け金を拠出する場合は、拠出した月に国民年金基金連合会へ105円の手数料を支払う必要があります。
従って、手数料ゼロの証券会社を選択したとしても、掛け金を拠出している間は月々171円/月の手数料を支払い続ける必要があります
額面だけ見ると大したことないように思えるかもしれませんが、サラリーマンの場合、月々の拠出限度額が12,000〜23,000円ですから、毎回約1%近くが手数料として持っていかれることになり、長期積み立てをする上では、十分気をつけたいところです
最後に3つ目は、積み立てた資金を年金として分割受給する場合にかかる給付事務手数料です。
給付一回につき事務委託先金融機関に対し440円支払う必要があります。
このように、iDeCo口座は通常の証券口座ではかからない特別なコストが上乗せされるため注意が必要です。
そして、更に気をつけなければいけないのが、現在は課税が凍結されている「特別法人税」です。
特別法人税とはiDeCoを含む確定拠出年金や確定給付年金、厚生年金基金に対して運用資産(拠出金+運用益)に対して年率1.173%でかかってくる税金のことです。
1990年から特別法人税は凍結されており、現在も3年おきに凍結期間が延長(直近で延長されたのが2020年3月ですので2023年3月までは少なくとも課税されません)されているような状況ですので、実質特別法人税というのは現時点では課税されていません
しかし、ものすごく気になるのが、これだけ長い間非課税としているのに、特別法人税を廃止にすることなく、凍結期間延長手続きを繰り返しているということ
(いつか課税凍結を停止するのでは?と疑わざるを得ません)
もし、特別法人税の復活となれば、毎年iDeCo口座の資産に対して(運用益に対してではないですよ!)1.173%もの税金が課せられることとなり、長期的にみると、ぼったくりアクティブファンド並みの運用成績となってしまうことが予想されます
このような懸念がある中で、iDeCoの運用益非課税というメリットは額面通り受け取れないのではないかと考えています。
受取時に課税される可能性がある
そして、ついにiDeCoの本質を暴く時間がやってまいりました
今まで、散々いろんなことを言いましたが、一番表立って議論されないiDeCoの問題点は『受取時に課税される可能性がある』ということではないかと思います。
先日の記事『iDeCoのメリット』で記載した受取時の税制優遇(一時金として受け取っても年金として分割受給しても一定額までは課税対象から控除するというもの)についてですが、この非課税枠はiDeCo単体で使用されるのではなく、退職金や公的年金と合算された上で使用されます
(ここ、超大事です)
すなわち、退職金や年金の受給額が多いとiDeCoで運用した資金(拠出金+運用益)のほとんどが課税されてしまう可能性があるということです
例えば、令和元年の大企業退職金相場における総合職38年勤続、60歳受給のケースだと約2600〜2700万円近くの退職金が出る事になりますので、退職金だけで既に所得控除額(20年×40万円+18年×70万円=2060万円)をオーバーしており、(半額での計算にはなりますが)iDeCoの資産は全て課税対象となってしまいます
なお、iDeCoの受取時期をずらして退職金受取時と被らないようにしても、iDeCoの一時金受取時より14年前に遡って退職金受け取っている場合は、退職金所得控除で計上した勤続期間とiDeCoの資金拠出期間で重複している期間は除外された上でiDeCoの所得控除が計算されるため、あまり意味がないと思われます
年金での分割受給を選択した場合でも、60〜64歳までは年間60万円、65歳以上は110万円という控除額に対し、公的年金だけでほとんどの人が控除額を使い切ってしまうため、実質iDeCoからの年金は全額雑所得による課税がされると言ってよいと思います
ちなみに、先日の記事では分割受給時の年間控除額をそれぞれ70万円、120万円と記載しましたが、法改正により2020年から控除額が先述のように変更となっておりましたので、先日の記事も併せて訂正しました。すみません
(しかしまぁ、先日の『iDeCoのデメリット』の記事で30〜40年後に約束が守られるか分からないとは書きましたが、そんな先にならずとも早速控除額が改悪されてるとなると益々信用できなくなってしまいました・・)
このようにiDeCoは積立金拠出時に減税、運用時に免税のシステムとなっていても、結局受取時に課税されるケースが多く、iDeCoの本質としては「税の免除」ではなく「税の先送り」に過ぎないと考えています
そのため、前回コラム『iDeCoのデメリット』で述べたようなデメリットを受けてまで加入する意味があるかといわれると、私個人としてはあまりお勧めしないというのが正直なところです
まとめ
今回3回のコラムに渡ってiDeCoの良い面、悪い面などについて述べてきました。
サラリーマンにとっては『掛け金が少なく運用手数料の比率が高まる』『退職金や厚生年金受給によりiDeCo受取時の免税メリットがあまり受けられない』などの問題も発生しうると思いますが、自営業者の方にとっては依然として使いやすい制度かもしれないとは思っています(それでも30〜40年資金がロックされるため、私は入らないと思いますが・・)
メリット、デメリット様々な点がありますが、これらのような注意点があるということを踏まえたうえで十分に検討し、加入するということであれば、問題ないのではないかと思います。
(私はiDeCo否定派の為、ちょっとネガティブな記事に寄ってしまったかもしれませんが、現行の約束が守られれば課税対象となっても資産は半額にして課税計算するなど、プラス面も十分にある制度ですので、捉え方によっては、加入する意味はあると思います)
税制には複雑なものが多いので、このような点を一つ一つ押さえて、後で「失敗した〜」とならないように資産運用をしていくことが大事なのかもしれません
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