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2015年08月13日

市川雷蔵三島由紀夫市川崑和田夏十「炎上」

三島由紀夫原作の「金閣寺」を市川崑和田夏十夫妻が市川雷蔵主演で映画化した1958年の「炎上」

は日本映画屈指の名作である。ただし好みは分かれるだろう。三島の「金閣寺」は三島文学でも最

も完成度が高く、主人公の内面に入り込んだ心理描写の凄さは他の追随を許さない。映画化にあたって市川

夫妻は、原作のあまりの完璧度にわざわざ三島から創作ノートを借り

て作品を再構築して脚本を書き上げたという。

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主人公の青年溝口は、舞鶴の小さなお寺の息子として生まれ幼い時から住職の父から驟閣寺の美しさを

さんざん聞かされて育った。父をなくした溝口は生前父の友人であった驟閣寺の住職田山老師(中村鴈治郎)

を京都に訪ねる。

哀れに思った老師は、溝口を住み込ませ坊主になるための修行をさせる。しかしお寺の徒弟的な生活は


溝口にとって居心地のよいものではなかった。しかも溝口は吃音であったため兄弟子から馬鹿にされたり、

雑用の毎日はつらいものでしかなかった。

しかし、そんなときでも驟閣のことを考えると心が落ち着くのであった。

やがて戦争も終わり戦災をまぬがれた驟閣は連日の観光客で賑わいお寺も拝観料で潤っていた。

この経済力で老師も堕落し影で妾をかこっていたのである。ある日溝口が驟閣を掃除していると女連れの米兵

が驟閣の前で戯れていた。

女が驟閣に入ろうととしたとき溝口は女を突き飛ばし怪我をさせた。美しい驟閣を汚すのが許せなかったのである。
時は経ち昭和25年溝口は老師の好意で小谷大学へ通う学生になっていた。ある日コンプレックスの塊溝口は

内反足の同級生戸苅(仲代達矢)に話かける。自分と同じ身障者であるから話かけやすかったのである。


しかし一瞬で溝口は内面を見抜かれギョッとする。この一風変わった学生戸苅はしかし自分のハンディを逆手

にとって女をたぶらかしていたのだ。溝口の中で何かが変わりつつあった・・・

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本作のモデルは1950年に起こった金閣寺放火事件で犯人の林は統合失調症が進行中で重度の吃音であった。

母親は息子の犯行を苦にして鉄道自殺した。林は服役の後病死した。雷蔵の演技は入魂で、中野学校のスパイ

役とは180度違う精神的に幼く吃音というハンディの主人公になりきっていて他者には真似のできない領域

に達している。悪魔的な同級生の役の仲代や俗物住職の中村鴈治郎の演技力の凄さも又着目すべきものがあ
る。

音楽は、巨匠黛敏郎。三島の原作も面白いので機会あれば一読してみてはいかがでしょうか。

なお映画化にあたって金閣寺は大人の事情で驟閣寺となったとのことである。

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posted by ハヤテ at 13:12| 三島由紀夫
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