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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2020年03月13日

Holiday

ALL I Do [ 玉置浩二 ]

価格:2,161円
(2021/4/17 17:08時点)
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All I Do』六曲目、「Holiday」です。

前曲「Only You」から引き続きRandy Kerberさんのアレンジで、オシャレなポップスになっています。そのほか、ホーンのアレンジはJerry Heyさんがクレジットされていますね。マイケルジャクソンの『スリラー』で吹いている超有名ミュージシャンなわけですが、ホーン演奏のクレジットをみると、Jerry Heyさんはもちろん、Seawindの面々がズラリと並んでいます。どこまで金かけたのよこのアルバム!とビックリしちゃいます。いまと違って当時は、玉置さんが日本一歌がうまい歌手扱いではありませんでしたし、玉置さんのノド絶頂期と思しき90年代中盤〜後半にはすっかり自分と周りの人だけで手作りすることにハマっていたわけですから、実力と、好む方法と、それへの評価と、世の中の景気と、業界の金回りとは、どうしてもズレてしまうのがよくわかります。それが惜しくてたまりません。いや、もちろん玉置さんが落ちぶれてお金が使えなくなったなんてことではありません。玉置さんは、たとえば『JUNK LAND』の時代に英米の豪華ミュージシャンを使おうと思えば使えたはずです。でも。使いたくなかった、もしくは使うことが眼中になかったのでしょう。玉置さんが当時求めていたのは、そういうゴージャスな緊張感じゃなかったというだけのことなんだと思います。

さてこの曲、Jerry Heyによると思われるトランペットで始まり、すぐにキーボード、ベース、そしてチリリンだけのドラムが後を追います。二フレーズ目は、もう一本トランペットを重ねてきますが、トランペットは歌のサビとまったく同じメロディーを吹きます。とてもシンプルですが、妙に効果的であるように思えますね。玉置さんのボーカルだけだとホリデーって感じがしない……ように思えるからです。ここにこのボーカルラインのテーマをなぞるトランペットが入ったことによって、ホリデー感がでるのだと、わたくしは考えています。

歌詞を読んでみれば、べつに休日でも祝日でもないんですが、ビートルズの「ペニー・レーン」を思わせるホリデー感……いや、「ペニー・レーン」だってべつに休日でなく、消防士が消防車を磨いてたり看護師が花売りをしてたりと、たぶんおかしな日常・平日なんだとは思うんですけども、ほのぼの・のんびり感がホリデーを思わせるのです。それでなんです。Randy KerberさんとJerry Heyさんはきっと曲名のHolidayだけをきいて、ホリデー感を出そうとしたんじゃないかな?なんて思うわけです。松井さんの歌詞は、ほのぼの・のんびりの皮に隠れた強烈な悲しみを表現するものなんですが、実はそういうレトリックは洋楽の世界ではなじみがないもので、アレンジャーは曲名だけ聞いて雰囲気を決定した……いや、すみません(笑)、これはおかしいですね。星さん金子さんがついていながらそれはいくら何でもないでしょう。星さん金子さんが雰囲気を決定してアレンジャーに指示を出したと考えるほうが自然です。つまり、洋楽邦楽の文化的相違や言葉が通じていないことによる誤解が原因なのではなく、星さん金子さんがこういう演出(アレンジでほのぼの・のんびりの皮、歌詞と歌で悲痛な悲しみというギャップ)にしたんでしょうね。

歌に入りまして、基本的にギターとキーボードによるアルペジオ、クリーンなベース、シンバルをチリチリン鳴らすだけのドラムで伴奏し、玉置さんがほのぼのなメロディーに悲しいことばをのせるボーカルを切々と歌っていく、という、なんとも寂しい曲です。サビから薄くホーンが鳴り始めオブリになっているところなんか、寂寥感が高すぎてどう表現したものやら困るくらいです。のちの「ともだち」で、寂しそうなアレンジに「悲しくて悲しくて」というド直球な歌詞を入れた気持ちがよくわかるくらい、ここの寂寥感演出は手が込んでいて、それがひどく辛いのです。

歌詞は基本的にシンプルで、短いことばを重ねて絵のパーツを一つひとつ描いてゆく過程をみせるような手法です。シャツの匂い、髪の匂い、君が消えてく……ああ、つらい(笑)。匂いってわかるじゃないですか……久しぶりに開けた衣装ケースから、君がいたあの頃の匂いを一瞬感じる……オーノウ!これはたまらん、一発KOです。たぶん体臭とか使っていた洗剤とか柔軟剤とか、正体はそんなものなんでしょうけど、これほど切ない感覚もありません。五感のうち、いちばんフラッシュバック効果が高いかもわかりません。

そうか、いまは恋がホリデーなんだ……きっとそうだ……いつかこのホリデーは終わるんだ……というのはもちろん妄想なんですけど、一瞬だけ感じたあのころの匂いが消えるのと同じくらいの速さで、あっさり現実に引き戻されます。そうだそうだ、電話でもためいきばっかりで、もらった絵葉書も住所を塗りつぶしてしまった(捨てろよ、というツッコミはナシで。そういうものは、ホリデーが終わって別の日常が始まったころに、パーフェクトに隠滅するのです)。ああいう険悪な時期と、そのあと訪れた最悪の展開を思い出し、これはホリデーなんかじゃなく、いわば失業期間なんだと思い出すわけです。

思い出すんですが、でも一瞬感じたあの頃の匂いと思い、ホリデーという錯覚に、なんだか可笑しくなったのでしょうか、玉置さんは「いつかおいで 忘れないで」と、ひとときあえて錯覚を見続けようとするかのように歌うのです。錯覚だとわかっているのに!なんという高度な切なさ演出!これは「Friend」を超えたかもわかりません。すごくわかりづらくて「Friend」を超える名声は得られそうにもないですが(笑)。

曲は間奏へと続きます。アップテンポのまま、切ないストリングスに楽し気なホーンをかぶせるという、この錯覚を増幅させるかのような見事なアレンジです。もし、Randy KerberさんやJerry Heyさんが星さん金子さんの意図がわからないまま、注文されたようにアレンジ・演奏したのだとしたら、なぜこんなミスマッチなことをするんだ?日本人はわけがわからん!とか思っていたかもしれませんね。

曲は最後の局面に入ります。風でドアが鳴り、もしかして君が帰ってきたのか?と思わせる演出があります。もちろん「ただの思い過し」です。世の中そんなにうまいことありません。そして月日は無情に移り行き、窓には自分以外の影は映らず、それが見慣れた光景になってゆくのです。その間、あの匂いはどんどん薄まり続けてゆきます。開ける衣装ケースも減ってゆき、まるでタイムカプセルを開けつくしたかのような空虚感に襲われます。

そして後奏は、前奏と同じく、サビのボーカルラインをなぞるホーンを繰り返し、フェードアウトしていきます。終わりのないホリデー、実は出口の見えない失恋期間を暗示するかのように……。

これほどまでに切ないボーカルが、ルンルン気分とまでは言わないまでも、穏やかな伴奏に乗せて歌われた例は、古今東西そんなにないんじゃないでしょうか。この曲は、安全地帯・玉置浩二随一のギャップ演出ソングなのです。そこまで深読みする(そして当然、一人よがりに妄想しまくっているので、当然間違っていそうなわたくしのような)人もそんなにはいないでしょうから、この輝きは手垢が付きにくいものであり続けるのです。

ALL I Do [ 玉置浩二 ]

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posted by toba2016 at 13:31| Comment(2) | TrackBack(0) | All I Do

2020年03月08日

Only You


All I Do』五曲目、「Only You」です。シングル「All I Do」カップリングでもあるこの曲は、しっとりあっさりのバラードになっています。

アレンジはRandy Kerberさん、Wikipediaでみるとクラクラするくらい一流ミュージシャンです。格付けチェックに出たら(出ませんけど)ガクトさんが恐縮するだろうレベルの一流です。セレブのパーティーでワイングラスもちながら、腕利きのミュージシャンとして紹介されグラミー俳優とかと乾杯しているに違いありません。よくこんな人のスケジュールを押さえられたものです。キーボードは曲ごとのクレジットがありませんが、きっとKerberさんが弾いたことでしょう。このアレンジといったら!ビリー・ジョエルとかリッキー・マーティンを聴いているんじゃないかと思うくらいの洗練度です。

こんな曲を聴かせられたらさすがに、BAnaNAさえいれば日本でもレコーディングできたじゃん、というわけにはいきませんね。ハードロック・ポップテイストなChris Cameron、変な曲のBAnaNA、しっとりポップスのRandy Kerber、泣かせ担当の星さんと、役割分担ができていて、そりゃBAnaNAと星さんだけいればいいなら日本でやればいいんですけど、クリスやランディ、その他ミュージシャンやスタッフがレコーディングに参加できるとなると、選択肢はロスやロンドン近辺に限られてくるわけです。うーむ、なんと贅沢な……いや、クリスもランディもミュージシャンもスタッフも全員スケジュールを押さえて機材もみんな日本に運んできてレコーディングしたほうがずっと贅沢ですけど(笑)、さすがにバブル前夜の日本でもそんな無茶はできません。

さてこの曲、キーボード主体で作られたサウンドです。イントロは高く薄いストリングスをバックに、メインとオブリの鍵盤を絡めつつ、歌の世界へとわたしたちを誘ってゆきます。メインのキーボードに伴われ、玉置さんのボーカルがささやくように始まります。とぎれとぎれにベースを、ごくさりげなく入れながら、すぐに最初のサビに突入するのです。え?もう?なんという展開の速さ!

前曲の「Hong Kong」でもそうでしたけども、サビを覚えやすい曲名のフレーズにして、コーラスを入れて印象付けるというパターン、これ以前の安全地帯だとあまり多くないですよね。「じれったい」「Friend」「ど−だい」「悲しみにさよなら」「Lazy Daisy」「Happiness」……あとは『リメンバー・トゥ・リメンバー』にいくつか、くらいでしょうか。安全地帯の曲は「あーたぶんこの曲〇〇ってタイトルだよなー」と思えることがあまりないのです。そりゃ「じれったい」は、じつは「心を溶かして」というタイトルだったらコケちゃうくらい「じれったい」ですけど、「悲しみにさよなら」は「泣かないでひとりで」でもギリギリ通用する……すみません、書いててつらくなるくらいムリがあるかもしれません(笑)。要するに、よくある黄金パターンにとらわれずに作っているため、なかなか難しくて複雑なのだよフフン、とかそんな気分にあやうくなりかけましたが、玉置さんや安全地帯はよくある黄金パターンにとらわれていないがために、かえってその黄金パターンでもあまり気にせず使うことさえある、というほうが正確でしょう。

さて歌は二番に入りまして、ドラムが入ります。そしてストリングスもだんだん大きくなってきています。二回目のサビはもうすべての楽器が全開で入って曲を盛り上げるのです。うーん、アレンジもよくあるパターンなんだとは思うんですけども、こりゃ日本人には無理なんじゃないかな?と思えるくらいスッキリしているのです。日本人だともっと凝っちゃうような気がするんですね。シンプルさが無理というか。あ、いや、もちろん凝ってるんですけど、歌の魅力を引き立てる要素以外は極限まで削って、歌を前に出す効果のある要素はふんだんに盛り込む方面に凝っているというか……もちろん日本人のアレンジャーだって歌モノならそう思ってアレンジするんですけど、ものの考え方が違うように思えるのです。日本人アレンジャーが幕の内弁当だとするなら、ランディさんはステーキをメインにしたコース料理というか……相変わらずよくわからない喩えです。

そして歌に替わって物悲し気なホーンが主旋律を担う感想を挟み、曲は最後のサビに向かいます。最後のサビで、Only Youの意味が明らかになります。いや、はじめから明らかなんですけど、「この心にあなたがいるだけ」と日本語で歌いますので、いわば公式の翻訳が示されるわけです。この手法、かなり手垢の付いた手法なんですが、玉置さんが歌うとすごく新鮮ですね。「Rain 雨の街で〜」いや、それRainか雨かどっちか要らないじゃん、今日のゲストは内山田洋さんと、内山田洋とクールファイブのみなさんです、みたいな感じじゃん、あ、クールファイブなら内山田さんじゃなくて前川さんか、いやそれだって内山田洋とクールファイブの皆さんです、だけでいいじゃん!みたいな気持ちがムカムカムカとわいてくるのですが、この曲は別なんです、玉置さんと松井さんだから(笑)。

後奏も悲し気なホーンで、一瞬だけストリングスを入れるものの、基本的にはメインの鍵盤による伴奏だけでリードしていきます。鍵盤による最後の和音が消えていくなか、ストリングスが鳴っていたことに気づきます。うーんさみしい!恋をしてるんだから気分はルンルンハッピーじゃん!おじさんなんかすっかり枯れはててそんな気分になれないよ!老いらくの恋とかしたら「失うだけしかない」からさみしいかもしれないけど、そもそもそんな気にならないよ!とまあ、若いころの思い出はすっかりルンルンハッピーばかりだったような気がしてならないんですが、けっしてそうじゃないんですよね。若いころは若いころなりに悩んで苦しんで、たいした理由もなく「失うだけしかない」ような気がしたかもしれません。単純に横恋慕だったとか、浮気だったとか不倫だったとか、もしくは自分がへたれで声すらかけてないとか……ぜんぶロクでもない理由ばかりですが(笑)、それでも真剣だったような気がしなくもありません。そんなつもりはなくとも、思い出は美化されていくもの、正確にいえば、イヤなことを忘れていくものなんですね。

順序が前後しますが、歌詞の話をしますと、これは自分から声をかけられない類の失恋でないことは明らかです。「夢みてる」の夢は、赤い屋根の家でふたりで暮らそう的な夢ではありません。彼女の夢はアメリカでダンサーになることレベルの、叶うとふたりがバラバラになる類の夢でしょう。だから逢いたいんだけど、そして逢えたときはもう少しだけでいいから抱きしめさせていてほしいんだけど、二人とも忙しいのです。たのむからアメリカなんていかないで、ダンスなんかもうエエやろ、あきらめてワシんとこに嫁に来んかい!……とはもちろんなにひとついえなくて(笑)、せめて今だけの「恋」を満喫するしかできないのです。ああ切ない。

そうですねー、「失うだけしかない」理由は、おそらくですが、自分のサイドにもあるのでしょう。たとえ彼女がダンサーもアメリカもあきらめたとしても、自分の生き方が彼女と一緒にいることを許さないような……それこそ玉置さんレベルに売れっ子すぎて忙しいとか、不倫だったとか、あるいはその両方だとか(笑)、何かしらあやうい事情を抱えているのです。玉置さんはそんなのばっかりですから、すでに普通すぎていまさら驚きませんけど。もし安全地帯の世界を知らずにこの曲をふつうに美しいバラードだなーとしか思えないとしたら、それはソロ活動で新しいファンを獲得したということですから喜ばしいことではあるんですが、背後からわたくしみたいな邪悪な古参ファンがククク……はたしてそれだけかな?とか言いながら余計なお世話を焼きたくて忍び寄ってくるかもわかりませんので、ご注意が必要でしょう。

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posted by toba2016 at 11:59| Comment(4) | TrackBack(0) | All I Do

2020年03月05日

Hong Kong

ALL I Do [ 玉置浩二 ]

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All I Do』四曲目、「Hong Kong」です。

BAnaNAに触発されたのか、それともBAnaNAが触発されたのか、イントロから右に左にと忙しくさまざまな音が聴こえてきて、中央からリズムセクションが曲を落ち着けるように始まったときに爆発音が響き、歌に入ります。

「She Don't Care」と同じくクリス・キャメロンさんがアレンジをしているわけですが、この曲も同じギタリストが弾いているんじゃないでしょうかね。カッティングとハーモニクスがニクいニクい。あのころのAOR感満点です。そして、チャイナ感を表現するのに「ズタタタタタ……ズタタタタタ……」というリズムを使うのも、当時の定番だったように思います。そこにこんなギターを織り交ぜるのが新鮮……東洋と西洋のミックス度が高い日本の音楽(で香港を表現しようとした)、という雰囲気を出そうとした……かどうかはわかりませんが、「Hong Kong」というタイトルが先にあって、それに合わせてアレンジを行ったのでなくては説明のつかないチャイナ感です。きっと玉置さんがデモの段階からHong Kongと歌っていたのではないでしょうか。

さて香港は「熱視線」のプロモーションビデオでも使われ、しかも安全地帯人気がとても高い都市です。当時は香港ヤングたちがどんなに安全地帯が好きかなんて少しも知らなかったのですが、2000年ごろ、いまはなきICQで香港のファンたちと交流して、安全地帯&玉置浩二の凄まじい人気ぶりを知ることができました。

沢木耕太郎が『深夜特急』で最初に訪れ、居心地の良さに予定を越えて長期滞在した街、そして安全地帯や玉置さんの音楽に熱狂する人たちの暮らす街、どんなに面白い街なんだろう、と、わたくし香港に俄然興味がわき、とうとう香港に行ってしまったのです。映画でジャッキーチェンが飛んだり跳ねたりしていた、マンガで清服を着て小さいサングラスをかけている、語尾が「〜アルネ」とかの人が人身売買をしているちょっと怖い街、といったイメージは、すぐに吹っ飛びました。なんじゃこの超大都会は!東京や大阪といった日本の大都会とは次元の違うそのエネルギーに圧倒されたのです。旧啓徳空港跡地の脇にあるホテルに泊まり、わたくしは九龍地区を練り歩きました。残念ながらごく近くにあった九龍城砦は取り壊されてきれいな公園になっていましたが、それでも十分に旧市街地からは香港のアジアンゴシックな魅力とそこに息づく人々のエネルギーを感じることができたのです。

……とまあ、香港への熱い思いをひとしきり語ってみましたが、直接関係ないですよね、この曲、香港と(笑)。だって「Hong Kong」の連呼がなくても歌詞の物語は成立しますし、「Hong Kong」以外の歌詞にも香港を感じさせる要素がありません。きれいな三日月は世界中で見られますし……「看板!」とか「夜景のフェリー!」とか「どろぼう市!」とかあれば香港っぽいですけど……。アレンジがチャイナ感あるのは確かなんですが、アレンジと「Hong Kong」の連呼だけがチャイナです。

つまり、この曲が「Hong Kong」である必然性は、誰もがわかる観光客的な視線に求めるのではなく、玉置さんのパーソナルな視線に求めなくてはならないでしょう。つまり、玉置さんは、香港の街でかつて恋をした、もしくは香港の地で日本での失恋を嘆いた、という設定があるわけです。安全地帯は香港で何度もコンサートを行っていますから、香港の街を楽しんだ、そしてある女性と知り合い恋に落ちた、もしくはこっそりと日本の女性を伴って楽しんだ、あるいは、異国の地香港で、日本で破局した女性のことを思って歌った、等々のことにも多少なりともリアリティがあるわけです。実際にそうしたかどうかはわかりませんが。まあ、玉置さんが香港の街を恋ができるくらい自由に歩きまわると、東京で山手線に乗るのと同じくらい、ファンに囲まれて身動きが取れなくなる可能性が高そうです。

夜のビクトリアハーバーから眺める香港島は超高層ビルだらけの非現実的・非自然的なビジュアルをもっています。そこに三日月があり、スターフェリーが往復してゆくことさえウソみたいに。背後の旧市街地はギラギラと輝き、いつもの喧騒を見せていますが、海岸公園は静かです。もちろん横浜の山下公園に比べれば明るくて人だらけですけど、それでも旧市街地の繁華街に比べれば、物思いにふけることもできるくらい落ち着ける雰囲気となっています。

そこで見た三日月は、かつての恋人を思い出させる三日月でした。そして始まる幻彩詠香江(シンフォニー・オブ・ライツ)、ビッカビカのギッラギラなんですが、定時には終わります。つまり、「Vanishing Light」です。あるとき始まり激しく盛り上がり、そして消えた後には一体あれは何だったんだろうと思わせるところが、恋や夢に似ています。まあ、そのまま旧市街地に一杯飲みに行けばいいんですけど(笑)、かつての恋や夢を思い出してしまったらそうもいきません。あのときは心も体もすべてを奪ったような気がしていたけども、それはいっときの幻想だった、まるでこの幻彩詠香江のように。お願いだ、消さないでくれ、このままめまいを続けさせておくれ、めまいが治ったら、彼女を思い出して逢いたくてたまらなくなっちゃうじゃないか!(笑)

そして香港は暑いのです。春先ですでに30度を越えます。大陸の人はクーラーをかけるのが贅沢と思い込んでいるフシがありますので、観光客が出入りするような室内はえらく寒いんですが、地元の人が夕食を食べているような食堂や、何キロも露店が続くお祭りのような市場は夜でも暑いのです。Dreaming Tonightは暑くて眠れない……もちろん失恋の痛みで眠れないんですけど、腕に恋人が眠っているかのようにねっとりと暑い香港の夜に思い出すことは、もちろん痛いこと……焼けつくような肌の感触でもありうるでしょう。Dreamingだから眠れてるじゃんというツッコミはこのさい野暮ということで(笑)。

こんな具合に、香港という街のエネルギー、そしてそれを象徴するかのような幻彩詠香江は、クールな日本にいると思い出さないですんでいた過去の傷をふたたび疼かせるほどのものなのです。あ、いや、アンタがそう感じただけでしょというツッコミはたいへん的確なのですが(笑)、そうとしか読めないんですよわたくしには!

そして曲は「Hong Kong」の連呼と、間奏の、ペンタトニック一発に近いギターソロ、もう一度「Hong Kong」の連呼であっさりと後奏へ、そしてAMAZONSの「Hong Kong!」を伴いつつフェイドアウトしてゆきます。香港のエネルギーは終わりのない祭であるかのように、どこまでも続くのです。

今回、何度も「Hong Kong」を聴きなおしましたが、このギターの音は異常にカッコいいですね。歪みが軽めなのにかなりハードに聴こえます。そして安全地帯のお二人がもっている色っぽさ艶っぽさがないのです。土方さんの若いとき、NAZCAの頃みたいです。いや?こんなの、BOSSのSD-1をコンプで叩いてミキサーに直入れ(ライン録りといいます)すれば簡単だよ?とか言われそうですけど、そんなの、わたしだってわかってますよ!腕の問題なんです。こういう乾いた音を抜群に使いこなすリズム感とタッチがなければ、とてもとてもそんなセッティングにチャレンジできるものじゃなりません。あー、これお願いしますってシールドをPAの人に渡したら、きっとキラーン!とメガネの奥が光って、さあどんな音を出すのかな?じっくりと聴かせてもらおうかククク……なんて感じになるに決まってるのです(被害妄想)。そんなわけで、いまどきこんな音を出すギタリストはいない、いや、あえてこの音を出そうとするギタリストはいないというべきでしょうか。そんな音を堪能できる曲なのです。

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posted by toba2016 at 13:24| Comment(2) | TrackBack(0) | All I Do

2020年03月03日

1/2 la moitie

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All I Do』三曲目、「1/2 la moitie」です。

「二分の一、半分」?いきなり意味がよくわかりません。laは定冠詞だと思うので、「1/2 the half」ですかね、英語でいうと。フランス語の定冠詞は格変化が非常にささやかですので、何格なのかわかりませんが……わたくしのわからない熟語か何かかもわかりません。意味をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせください。とりあえず定冠詞ですので、不特定のでなく、恋人的な、一つのものだったはずなのに別れてしまった片割れ、自分の方をさらに1/2することで心も体もバラバラ……といった意味でラブソング的にムリヤリ解釈したいと思います。「全然違うよ〜」だったら、あっさりぜんぶ崩壊する解釈ですけども。そもそもほんとうにフランス語かどうかもわからないんで、大いにその可能性はあるわけです(笑)。bleueがフランス語の「青」だ!知ってる知ってる!だからフランス語なんだよーとはしゃぎたいのですが、ヨーロッパの言葉を知悉しているわけではありませんので、非常に慎重な態度をいっぺんは取っておかないと安心できないわけです。簡単にいうと一周回ってインテリぶりたいへたれです。

さて、この曲、二曲目に続いてBAnaNAさんがアレンジを担当していますね。いきなり派手なオーケストレーションで泣かせに来たか……こちとら「Friend」とか「To me」とかで慣れてるんだ……よし(泣く)準備はできたカモン!と身構えていると、玉置さんの「ブ…ルゥ…の〜」とボーカルが始まったと思いきや、ドム、ドムムン…とコントラバスっぽいベース音、シャシャン…シャン…とハイハットらしき音、ボーカルとの掛け合いのようなシンセ音がルーズな曲調をリードしはじめ、あ?あり?何か様子が違う?と気が付かされます。

なにしろサビらしき箇所「どーこにー」のあたりが、ぜんぜん泣かせに来ないのですから、反応に困ることこの上ないです。悲痛な叫びなのに、一回目のサビでは「そ、そんなこと言われても……関係ないし……」という気分になるくらいです。しかし、この曲を楽しめないとこのアルバムにはハマりきれませんし、玉置さんがたまに見せる不思議な魅力に気づかないでスルーしちゃうことになるわけです。これは気合いを入れねば!そして「不思議な夜」で垣間見た、BAnaNA×玉置ワールドに引きずり込まれてゆくのです。

まず「bleueの〜」の低音ボーカルが真ん中から聴こえますよね。そして「鏡の〜」で、右に注意を引かれます。この箇所はボーカルにエコーがかかり、まず右からボーカルが聴こえ、真ん中〜左寄りにすぐエコーが聴こえるという仕掛けになっています。これにより、(同じ顔をした)鏡からも声が聴こえてくる、しかもそれが笑い声であるかのような印象が脳裏に叩き込まれるわけです。それが、かつて同じ部屋にいた恋人が一緒に笑ってくれていた日々を思い出させる、という非常にせつない印象を与えるわけです。

こんな気持ちを、「約束」のような軽快なポップスで表現できるなら、それはもうある程度失恋を消化できた頃なのでしょう。しかし、昨日とか先週とかだと、la moitie(片割れ)を喪失した痛みも生々しく、かなりドロドロした気持ちを抱えたまま朝から霧が出ているような日を迎えてしまったら、それこそ頭の中にこの曲のイントロが流れて一気に気分はスーパーブルー、やっとの思いで紡がれることばは少なく、この曲のようにズトン……ズトトン……と、絞り出されるわけです。そう考えたら、なんかこういう曲調でなければ表現できない一面が、そういう心理的事実が、たしかに心の中にあるはず!という気分にもなれるというものです。サビ「どーこにー」の箇所も、そのまま悲痛な叫びであって、「わかるわかるーそういう気分のときってあるよねー」とはいかないものの、これほどまでに失った恋人?を求めるその切実さに、胸を打たれます。しかし、戸惑いますよね……思うに、安全地帯のこれまでの曲は、誰の胸にもある傷、心の中の宝箱といったようなものを主に表現してきたのに対して、この「1/2 la moitie」はかなり痛い思い、まだ新鮮ほやほやの生々しい傷をえぐるような、そういう痛さを知る人もいるだろう、くらいに共感できる人の幅を制限しているかのように思われるのです。

サビらしき叫びから間をまったく置かずに歌は二番に入ります。また右から「bleueの〜」です。「夢を刺」すという珍しいレトリックが用いられていますね。ふつうに考えれば、ふたりで描いていたルンルンの将来構想を破棄するということなんでしょうけども、それを刺すと表現しています。やぶれかぶれになりそうな心をどうにか抑え込んでいるんだけども、どうにも我慢できずに一撃、刃物で切りつけるんじゃなくて、鈍器で砕くのでもなく、刺すんです。原型は残しつつ致命傷を負わせることで、夢への愛おしさと憎しみとを両立させるわけです。

そしてまた悲痛な叫び、今度は「逢いたい」です。リバーブたっぷりに部屋全体に響き渡ったかと思うと、次の「逢いたい」は右チャンネルから、ほとんどリバーブをオフにして生々しく聴かせます。一瞬正気に返ったけどもまだ逢いたいんだと思わせる、なんとも切ない叫びです。リバーブとパンニングでこれだけの演出をするんですから、エンジニアはさぞ苦労したことでしょう。わたくし、これは玉置さん(とBAnaNAさん)が、ソロ活動だからバンドの制約をまったく気にせずに曲を作った結果だと思っております。安全地帯はバンドですからライブの際に立ち位置ってものがありまして、ここまでの演出を求められる曲をレコーディング・演奏すべきか、ちょっと考えてしまうでしょう。もちろん、ライブでも卓で何とかできなくもないですし、そもそもこの曲はベーシストとBAnaNAさえいればできそうではあるんですけども、バンドとしてそういう表現方法をよしとするかは別の話だからです。

「渇きそうで」は、これまた切実です。渇いてしまったらもう元の姿には戻れない……干ししいたけを水で戻してももう元のしいたけには戻らない……アルコール中毒患者に対してスリップ(再飲酒)すると怖いよーと諭すみたいな喩えですが、心の傷だってなかなか深刻なのです。ヨリを戻しても、もうもとのふたりではないんですよね。いろいろ感じたり思ったりするところはあっても、別れを経たカップルは、そうでなかった時代のふたりとでは、何かが違うはずなのです。フランス語だからアベックというべきでしょうか(しつこい)。

さらに「どーこにー」を右チャンネルから繰り返し、堂々巡りのグチャグチャな心情をこれでもかと印象付けます。そして曲は後奏へと続きます。唐突なピアノ、しかもかなり硬質・無機質な音のピアノで、ボーカルラインをなぞり、もう言葉にならない叫びを表現しているかのように響かせます。オクターブで鍵盤をかなり強く叩いたんでしょうか、音が割れているように聴こえるのも、これまた玉置さんの壊れっぷり、ささくれっぷりを思わせます。曲は最後にまた悲しくも美麗なオーケストレーションを入れ、「旧校舎のテーマ」ですかと訊きたくなるような業の深さと強烈な寂しさを感じさせるのです。

うーむ、なんという……「Friend」だって聴くタイミングを間違えたらトラウマ級の破壊力でしたが、この曲は、うっかりどストライクなタイミングに聴いてしまうと、闇の世界に引きずり込まれそうな迫力があります。失恋したばかりの人を癒す気は全くありません。みなさまどうか、この曲を聴くときはタイミングにご注意ください。この曲は凄いですよ!効きますよ!よくない効き方のような気もしますけども!そりゃ人によっては、キリコとかダリの絵を見て失恋の痛みから立ち直るということもあるかもわかりませんので、「個人の感想です」としか言いようがないんですけども。

そんなわけで、壮絶な悲恋ソングでしたというお話だったわけなんですけども、松井さんがじつはこの曲はシャムの双生児をモチーフにしたんだとかつぶやいたらすべて吹っ飛ぶ解釈ですね。当ブログは、玉置&松井コンビなら何でもかんでもラブソングに違いないと根拠なく断定して記事執筆に臨む傾向がありますので、よくよくご注意ください。

ALL I Do [ 玉置浩二 ]

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