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だいぶ久しぶりになってしまいました。玉置浩二ファーストアルバム『All I Do』です。1987年8月発売、地味な茶色のジャケット写真が逆にTSUTAYAとかの新譜コーナーで目立っていた記憶があります。
「一流ミュージシャンの伴奏で玉置浩二の歌を聴かせる」というコンセプトだったそうですが(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)、当時の私には、いや今でも(笑)、安全地帯でない演奏で歌う玉置さん
のボーカルはしっくりきません。『CAFE JAPAN』で玉置さん自身が演奏をはじめて、ようやくいくらか違和感が和らぐくらいです。武沢さんだけが不参加だった『To me』もなんだかなー、です。ですから、「こんな浩二もいいじゃん」なんてとても思えませんでした。『安全地帯V』にもさんざんスタジオミュージシャンが参加しており、中にはメンバーの演奏でないものもけっこう含まれているというのに、クレジットが違うだけで結構幻惑されるものです(笑)。
とはいえ、さすがの玉置さん、曲と歌はマーベラスな出来で、安全地帯のことを頭から消して聴くとものすごい威力をもったアルバムです。実験的、際どい、などと、貶してもいないけど褒めてもいない評価の散見されるアルバムですが(笑)、それは玉置さんが曲と歌で思いついたことを、スタジオミュージシャンの苦労など気にかけずに好き放題やったからであって、そのぶん玉置時空に引きずり込まれる快感を他のアルバムより多く得られるものとなっています。
では、一曲ずつご紹介を。
1. She Don't Care
リズムが大胆な、爽快ギター・ロックです。キターのカッコよさがかなり強いんですが、玉置さんのボーカルが対等以上に強いものになっています。
2. Love ''セッカン'' Do It
前の曲とこの曲を足して二で割ると「じれったい」になるんじゃないの?というくらい、安全地帯・Bananaテイストの強いナンバーです。
3. 1/2 la moitie
「不思議な夜」系統の、玉置浩二・Bananaテイストソングです。この二人がやりたいようにやると、こうなるんですね。オーケストレーションが美しいのに、歌メロが泣かせに来ないという、なかなかない趣向の曲です。
4. Hong Kong
安全地帯は当時からすでに香港で大人気でしたが、日本でも香港人気があったんですね、この頃。きっと『ブレードランナー』のせいでしょう(笑)。曲はちっとも香港っぽくないですが、それ抜きで楽しめるロックナンバーです。
5. Only You
シングル「All I Do」カップリングです。美しいバラードですので、安全地帯的なバラードを期待した人はきっと、ここでようやく期待に応えてもらった快感に咽び泣いたことでしょう(笑)。逆を言うと、ここまで裏切られ続けたわけです。
6. Holiday
これも安全地帯的バラードを求めた人が喜んだ曲でしょう。かわいらしい演奏でせつない歌詞という、玉置・松井コンビの真骨頂です。
7. All I Do
シングル曲にして、タイトルナンバー、このアルバムのメインと言える曲です。歌メロは安全地帯ですが、曲もアレンジも従来の安全地帯にはないテイストの、ハードなミドルテンポ・ロックです。ソロ活動するならこれくらい毛色の違うことをやらないとね、という決意が伺えます。歌メロとボーカルは安全地帯ですので、うっかりすると違いがわかりません。
8. Check on Myself
前三曲で安全地帯ファンを喜ばせた玉置さん、また遠くへ走り去ろうとしています(笑)。チェックということばの、音・リズムの面白さと、半ば意味のない歌詞との融合が見事な、リズム主体のロックナンバーです。
9. なんだ!!
明後日への疾走はもう止まりません(笑)。エポックメイキングさが際立つこの曲をシングルにすればいいんじゃないの?と思うのですが、おそらくレコード会社は止めるでしょう(笑)。「なんだ」のリズムと、意味の強さを前面に出したロックナンバーです。わたし的には、このアルバムで一番カッコいい曲ですね。
10. Time
安全地帯・玉置浩二随一の美しいピアノで、これこそ歌を「聴かせる」バラードです。pukupukuさんにご指摘頂いてその存在を思い出した(笑)、小曲です。すみません!大作家の掌編小説みたいな……、芥川の『蜜柑』にも似た輝きを放っています。
11. I'll Belong.... 結婚式で歌う人がいるそうですね、この曲。たしかに結婚式の雰囲気に似つかわしい、隠れた名曲です。バラードのアレンジが安全地帯でないとちょっと弱めになりがちな玉置さんなんですが、このくらいあっさりでないと、結婚式にはよろしくなさそうです。もちろん玉置さんはそんなつもりで作ってないと思いますが。
12. このゆびとまれ
音程の確かでない子どもコーラスは、玉置さんの必殺技の一つですが、この曲が初のお披露目でしょう。当時は驚きましたが、いまはすっかりニコニコです(笑)。「ゆびきり」へと続く、童謡ライクなかわいらしい曲です。松井さんの、思わせぶりな歌詞が泣けます。ソロ活動を始めた玉置さんに「このゆびとまれ」と歌わせるんですから……。
次回より、一曲ずつ語らせていただきます。この更新だって一年か二年ぶりですから、いつになることやらとちょっとあやしいものですが(笑)、なるべく頑張ります。
【追記】AMAZONSのみなさんがトーク動画をアップしてらして、このアルバムに関してもいろいろ知らなかったことがわかりました。現地のコーラスだとどうしてもしっくりこないからと、ノーギャラで急遽ロンドンに呼ばれたそうです。面白いですねえ。
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