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『安全地帯V 好きさ』一曲目、「どーだい」です。
やっと、この曲を語れるところまでたどり着きました……長かった……といっても当ブログを始めてからまだ一年強ほどですけども。ワタクシ的には、「どーだい」は、「エイジ」「風」などと並ぶ名曲なのです。「エレキギターバリバリ」系ではダントツに一位と言っていいでしょう。
ところが、待ちに待った「どーだい」をやっと書けるというのに、いざその時になると文章が浮かばなくて困ります。これはかなり重症の恋煩いに似た気持ちです。
気を取り直して、曲の最初から……何やら海岸沿いの喧騒のような、海水浴でもはじまるかのような、なんだかわからない演出があります。なんだかわからないんですけど、これからゴキゲンな爽快ソングが始まるぜ!感がいっぱいです。そして田中さんのスネア、玉置さんの掛け声で一気に曲に突入します。
武沢さんがリフを弾き、矢萩さんは刻みとソロを弾く、という組み合わせになっているのですが、これがまた見事なんです。矢萩さんなんてソロ以外はほとんどただ刻んでいるだけなのに、ベストタイミングで武沢さんのリフと絡み合い、これ以外ない!というコンビネーションを作り出しています。弾くことなかったからとりあえず刻んでみました感はゼロです。
そしてわずか四小節で爽快な前奏は終わり、玉置さんの歌が始まります。ライブですと、前奏は八小節ですね。八小節のほうが演奏していて気持ちがいい、というか、メンバーの腑に落ちる感が高かったのでしょう。わたしの聴いたライブ音源はすべて八小節、ついでにいうと一音下げです。これも玉置さんの高音がきつかったからというより、おそらくはそのほうがメンバーの腑に落ちたのでしょう。これにはいろいろな事情が絡み合って「こっちのほうがいいね」となるわけでしょうから、簡単にはわかりません。
そして、歌と同時に六土さんのベースが始まります。基本的にすべて八分刻みで、田中さんと同じく、ひたすらシンプルなリズムキープに徹します。おお、これは初心者でもコピーしやすいですね。スコアは売ってないですし、あってもレアな古本で高いでしょうから、耳コピになりますけど。まあ、コピーってのは本来ぜんぶ耳で聴き取ってあーでもないこーでもないといろいろ試してやるもんですから、市販のスコアなどに頼らないでコピーする練習にはうってつけの曲です。
そんな、初心者でもコピーできそうな、とにかくシンプルなアレンジで、この曲は組み立てられています。テクニカルで複雑なだけが安全地帯じゃないぜ!こういうシンプルでカッコいいロックも、俺たちの得意技なんだぜ!と、見せつけるかのようなカッコよさです。クニハラ派のみんな、見てる〜?あのときコップをスプーンでチンチン鳴らしてこれも音楽だとか言った人がいたよね〜確か〜?とか、そんなこと思うわけないんですけど(笑)。ともかく、安全地帯がこういう曲をやると、ものすごい説得力を発揮します。
この曲が、のちの「I Love Youからはじめよう」とか「情熱」とかの源流になったのではないか?というご意見が、ネット上ではちらほら見られます。たしかに、わたくしもそう思います。しかし、わたくし、「I Love Youからはじめよう」と「情熱」の二曲を、この「どーだい」ほどは好きではないのです。いや、もちろん好きなんですけど、「どーだい」が好きすぎて、のちの二曲はこれに及ばない地位なのです。「どーだい」が太政大臣なら、「I Love Youからはじめよう」とか「情熱」はせいぜい左大将右大将かなー、というくらいなのです。これは単にわたくしの偏った好みのせいなのか、はてまた「どーだい」には、他にない何かがあるのか……。何かがあると信じたいのです。シングル曲ではないこの曲が、シングル曲である他の二曲と同じく2010年の復活ツアーで演奏され、その後も演奏され続けるだけの何かがあるのです。きっと。
目の前でこの曲が演奏されたときの興奮は、今でも忘れません。ビデオの川島さんと同じ指のポーズを作って、大声で歌いました。他の観客もそうでしたので、そんなに迷惑ではなかったと思うんですけど、そのときは迷惑とかそんな気持ちもすっ飛んでしまいました。うう、一生の不覚です。いらっしゃらなかったとは思うのですが、もしわたくしの近辺にお座りになっていた方で、じっくり静かに観たかったのにわたくしめに邪魔されたという方がいらしたら、どれだけお詫びしてよいやらわかりません。本当に申し訳ありませんでした。
この曲から始まる『安全地帯V 好きさ』ですが、アルバムのオープニングとして、こんなに似つかわしい曲は滅多にないでしょう。昔のCMにあった「スカッとさわやか」そのものです。失恋の憂鬱を強く感じさせる『安全地帯V Friend』の印象を一気にひっくり返し、新しいアルバムが始まった!という確かな感触を与えてくれるのです。
「もうこれ以上」ひとりではない、失うものもない、みんな集まれ、思い切り楽しもう!どーだい!……こんなに明るい曲なのに、なぜ涙がこぼれるのでしょうか……もう、松井さんたら……(笑)。ペンタトニック一発に近い矢萩さんのソロが、玉置さんを励ますかのようで、やけに胸に沁みます。玉置さんの底抜けの笑顔での叫びが、つらい過去を振りほどこうとする絶叫に聴こえます。ライブでの武沢さんのコーラスが、玉置さんへの応援歌に聴こえます。田中さんと六土さんのリズムは、つとめて平静を保ち、玉置さんを動揺させないようにニコニコと笑顔を見せているように聴こえます。いったんそう思い始めると、もうそうとしか聴こえなくなります(笑)。
そして、三十年の時を経て、この曲はいまでもライブを盛り上げる曲として演奏されています。これを奇跡といわずとしてなんというべきでしょうか。この曲をこよなく愛するわたくしは、たのむから甲子園の応援とかでは使わないでくれ!趣旨がぜんぜん違うんだよおおおお!とか要らぬ心配をしているのですが、メンバーや松井さん的にはあっさり「え?どーぞどーぞ」なのかもしれませんね。わたくしだけがこの曲を変に神聖視しすぎているというオチがもっともありがちです。好みのアイドルが結婚すると知って悲嘆にくれるあまり、なぜか怒り出すファンのような心境なのかもしれません(笑)。
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