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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2017年04月30日

シルエット

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安全地帯V Friend』五曲目、「シルエット」です。

これも二分足らずの小品です。しっとり、という言葉がピッタリのバラードですね。

リムを中心に叩いて雰囲気盛り上げに徹する田中さん、一番忙しそうな六土さん、シャリーン!カローン!と極上サウンドを奏でる矢萩さん、武沢さん、そしてささやき歌唱の極致を極めたかのような玉置さん、安全地帯メンバーはこんな小品にも、相も変わらず全力投球です。

とかなんとか書いておきながら、矢萩さんと武沢さんの音の区別をつけにくい曲なので、さらっと流してお茶を濁してしまおうかという誘惑にかられたのですが(笑)、頑張って聴ける限り書いてみたいと思います。

こういうとき、わたくしはよくライブ音源で耳を澄ますことから始めるのですが、『To me 安全地帯LIVE』では、ギターの位置が二本ともかなり真ん中よりにミックスされているように思われるのです。しいて言えば右、やや手前に聴こえる音が武沢さん、そしてやはりしいて言えばですが左、奥から聞こえる音(ヘッドホンだと頭の裏に聴こえてくるような感覚です)が矢萩さんでしょう。立体的でカッコいいです。

……で、どの曲でも同じ位置だと仮定してですが、この「シルエット」では、ほとんど武沢さんの位置からしか音が聴こえてきません。この「シャリーン!」「カローン!」も、武沢サウンドに聴こえます。そして、矢萩さんの位置からは、ごくたまに「アレ?」と思うくらいにしか音が聴こえてこないのです。それも幻かもしれません(笑)。もしかして、この曲はほとんど武沢さんしかギターを弾いてないのではないでしょうか。この曲は映像もないので、確かめようがありません。うー、この日の武道館、行きたかったです。これを確かめるためだけにでも(笑)。ほかの可能性としては、ふたりともほとんど同じフレーズを弾いていて、ミックスの時にだいたい同じ位置に聴こえるようにしたか、このときだけ矢萩さんのアンプ前マイクかレコーダーか、どっちかに不具合が発生したか、なんですが、どっちもありそうにありません。一番可能性が高いのは、わたくしの耳が悪いということです(笑)。

五人(四人?)のほかには、冒頭から、おそらく川島さんのシンセ、そして途中からホーンが入ってますよね。相変わらず管楽器は何の音かさっぱり聞き分けられないのがとても悔しいのですが(笑)。何の音かはわかりませんが、効いてますね。玉置さんはサポートメンバーが多すぎることに、のちのち嫌気がさしていくのですが、多くの人が力を合わせて作ったものにはそれだけの凄さがあるのも確かでしょう。絶品と言っていいんじゃないでしょうか。むしろ、YOSHIKIさんやイングウェイさんがオーケストラとかと共演することも厭わないのと比べれば、よくぞこれだけのメンバーでやり遂げたといえるでしょう。

さて、歌詞品評会のお時間です(笑)!

まず、「青い星座が」の時点ですでに現実感は吹っ飛び、イメージの世界へ聴くものを誘います。どうやったらこんな言葉を思いつくんでしょう!「黒い電話が」とか「赤い林檎が」みたいに、現実に存在する、もしくはしうるものじゃダメなんです。星座に青いも赤いもあるもんかい!とツッコミを入れることなど思いもよらずに、人は宇宙空間に恋人と二人きりで浮かぶのです。まるでZガンダムのコクピット内のように現実感のない空間を、いともたやすくイメージできるのです。

そこで二人は、愛を確かめ合う以外には、何もすることがありませんし、それで退屈ということもない、恍惚の時間を過ごすのです。

わたくしの、かつて組んでいたバンドでは「優先順位がおかしい」という理由で恋人にフラれてしまったメンバーがいるのですが、それは多分にわたくしのせいでして(笑)、わたくしが色々面白おかしいことに年から年中連れ回すせいで、恋人のほうはすっかり置いてけぼりをくった格好になってしまったのです。

人は、現実には恋人だけに夢中になれる時間はあまり設けられないものなのです(自分の責任はすっかり棚に上げて)。しかしそれでも恋人たちは、互いのことをしっかり見つめる時間を切望します。両者のタイミングが合致した時をどれだけ実感できるかは、恋愛の満足度を大きく左右するに違いありません。この歌詞は、そんな忙しい恋人たちの、「合致した」タイミングの一コマを切り取ったものであるように思えるのです。そんなとき、恋人たちは「夢を占う」ような些細なたわむれさえも、それがうれしくてたまらないわけです。「たったいま」は貴重なタイミングであって、それは「いま」でしかないことはわかっているのに、消えてほしくない。永遠に続いたら困るのは重々承知しているんですが、それでも消えてほしくないのです。心に「ふれていたい」、もちろんそれは物理的に不可能で、実際には「抱いていたい」という形をとるのですが、その差に傷つく暇すらなく「(心に)ふれていたい」「抱いていたい」が交互に起こるひとときに……また、何を書いているのかわからなくなってきました(笑)。いや、ですから、中高生お断りレベルの歌詞なんですね。大学生でも、この感覚はわかりにくいんじゃないでしょうか。社会や生活というものにある程度翻弄されていないと、こんな切実さは出ないものです。

あくまでオトナで、恋人と会う場所と時間にやや不自由しているお年頃の、恋愛におけるかなり幸せなワンシーンのみを切り取った歌だといえるでしょう。最後に気づきましたが、この切り取り方はすごい!前後の物語が少しもわかりませんが、それでいいのです。完璧です。

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2017年04月22日

ふたりで踊ろう

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安全地帯V Friend』四曲目、「ふたりで踊ろう」です。

いや、やっとですね。前曲のフリとして使われてから、この曲もっと聴きたいんだけど、と思っていたのに別の曲(「パーティー」)が始まっちゃったから、どうなっちゃったのと思っているうちに、バーンと始まるわけです。この、やっと来た!感が味わえることで、一種独特の痛快さがあります。間に挟まった格好になった小品「パーティー」の魅力に気づいてからも、それは変わりません。

この曲のすごいところはですね、コード進行がずーっと同じだということです。最初から最後まで。BOOWYのON MY BEATなみに同じです。ああ、そりゃラクだからぜひコピーしよう、なんて気には全然なれないところもすごいです。

田中さんと六土さんは、シンプルに徹したものと思われます。六土さんなんて、ほとんど一小節に二回しか音出してないです。八分で刻みたい病にかかっているわたくしには、かなりの苦行です(笑)。でも、ガマンにガマンを重ねて……ってわけでもなさそうなんですね。この曲には、そうする必然性があるからそうしてるだけ、という、いつもの安全地帯リズム隊イズムが発揮されているように思われます。

『To me 安全地帯LIVE』の映像を見て実感がわくことなのですが、とにかくこの曲はホーンセクションのアオリがものすごいです。え?スタジオ版でもこんなに入っていたっけ?と思ってスタジオ版を聴きなおすと、うーん、やっぱり入ってるんですね。ライブ版はスタジオ版よりギターの音がかなり聴きづらくなっていまして(これはホールである以上、ある程度仕方ありません)、相対的にホーンセクションの音がかなり目立つようになっているわけです。

その合間を縫ってというべきか、ギターはギターらしいフレーズに特化しているように思われます。矢萩さんが歪んだ音でハーモニクスを入れたり、武沢さんが短音リフを入れたりと、まるでイーグルスのように渋い二人がそのまま渋いことを思う存分やっているように思われます。

そうなんですね、安全地帯っていうのはいつでも楽曲の完成度優先で、俺の音を目立たせようとかあんまり考えてないように思えるんです。この曲も、ホーンセクションがこういうアオリをするほうが曲が引き立つからそういうアレンジにした、だからリズム隊はごくシンプルにリズムを刻んで、ホーンセクションの効果を最大限に活かそうとした、だからギターはその隙間を埋めるために印象的なフレーズを入れることに徹した……と、このように、自分が目立たなくていいどころか、オリジナルメンバーが目立つ必要すらない、とまで考えたかのような、おそろしく自制の効いたアレンジになっています。

コード進行がずっと変わらず、言ってみればワンパターンなのに、飽きずにあっというまに聴ききってしまいますね。まあ実際二分にも満たない曲なんですが、それにしてもアレンジが見事なために、ワンパターンを感じさせないつくりになっています。わたくしなど、ひとつひとつの楽器の旋律を追いかけながらじっくり何度も聴く習慣がございますもので、飽きるなんてとてもとても(笑)。

ホーンセクションの音は分解しながら聴くことはできませんので、それがこのアルバムを聴くことの妨げになっているのが、とても悔しいです。中学校や高校で吹奏楽とかやってたらそういう耳に育ったんでしょうかね……まあ、いまさら後悔しても遅いですし、中学や高校のときのわたくしが吹奏楽に興味を示すことは、何度生まれ変わってもなさそうですから(嫌いなんじゃなくて、縁が遠いんです)、仕方ないんですけども。

玉置さんの歌と松井さんの歌詞は、もはや完全に一体化しており、松井さんが玉置さんに歌わせている、という雰囲気は微塵も感じることができません。玉置さんの歌いたいものを松井さんが書き、松井さんの書きたいものを玉置さんも求めていて歌う、という次元に達しているように思われます。そう思われるだけで、実際は全然違うのかもしれませんけれども。松井さんの詩の世界が先にあって、玉置さんが後からその詩に命を吹き込む……って感じじゃないんですね。この『安全地帯V』と比べてしまうと、『安全地帯II』や『安全地帯III 抱きしめたい』は、まだそういう雰囲気を残していたように聴こえます。

「Honey」とか「恋のみせしめにDance」とか、ほんとうに玉置さんが言ってそうじゃないですか(笑)。いや、言ってるんですけど、歌詞としてじゃなくて、自分の中から発した言葉として言ってそうなんです。「一番嬉しいんのは、松井五郎が見えなくなること」と松井さんはおっしゃってましたが(『玉置浩二 幸せになるために生まれてきたんだから』より)、いやいやいや松井さん、わたくしには見えます!もちろん見えているのは玉置さんの歌う姿ですが、それと完全に一体化した松井さんの姿が、いや、現象が、玉置さんの歌にのっているのが、わたくしには見えます!もう、何を書いているのかわからなくなってきました(笑)。

さて、曲全体の雰囲気としては、「眠れない隣人」「Happiness」「こしゃくなTEL」路線、ここに完成!というべきでしょうか。勢いも言葉遊びも、ノリにノっています。これ以降、この路線を継承した曲がパッと思いつきませんので、これでこの路線はひとまず完成したとみるべきかもしれません。考察を続けるうちに、また「実はこの曲が後継だ!」とか言い出すかもしれませんけども、その際はご容赦ください。

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2017年04月16日

パーティー

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安全地帯V Friend』三曲目、「パーティー」です。

最初に、受信状態の悪いラジオみたいなローファイサウンドで、「ふたりで踊ろう」が流れるんですが、これは演出です。当時は、不良品じゃないのか?と思われた方もいたそうです。そりゃ、ねえ、歌詞カードに「これは演出であって不良品ではありませんのでご安心ください」とか書かれていたら、興ざめです。聴いてりゃわかるんですから、余計なことは一切書かないのが当然です。

これは「ふたりで踊ろう」が流れている会場で、あるいはそれを受信しているラジオ(実況中継?)が流れている部屋で、壁の花になっている不慣れな感じの女の子に注目した、という話です。

パーティーの様子が実況中継されているって、どんな状況でしょう。ミニFMとかですかね。あんまりラジオにこだわらないで、パーティー会場そのもので、どこか一歩引いちゃって積極的に参加できない様子を表現していると考えるほうが自然かもしれません。実際、次の曲で、男に手を引かれて少女が一気に「はじける」様子が表現されているわけですから。

可愛らしい、モジモジした壁の花の女の子、それに目をつけ「誰よりもきれい」と元気づけてダンスに誘う男、なんてシチュエーションは、さすがに80年代の好景気のさなかでも、そうそう見られるものではなかったことでしょう。70年代の少女マンガとかで描かれた社交界じゃないんですから。ここに松井さんのおそろしさがあります。70年代の少女漫画で育った女の子たちが、ありもしないパーティーデビューを飾るような年頃になった80年代中盤に、こういう物語をよりによって玉置さんに唄わせるのです。うっかりこんな世界が日本のどこかにはあるんじゃないかと思っちゃうじゃないですか!そして80年代後半に東京圏の大学へ進学し、ダンパコンパに明け暮れるという……おお!まさに!(笑)。

冗談は置いとくとしても、松井さんの世界構築力、玉置さんの表現力にしっかり酔える曲です。アレンジは、エレクトリックピアノ、サックス、シンセサイザーと……田中さんもバス・ドラの16ビートだけは参加したのでしょうか?ちょっと疑わしいですね。ともかく、かなりシンプルなもので、バンド編成を必要としない曲です。これは、案外サポートメンバーだけで録音したのではないでしょうか。安全地帯のメンバーが録音する必然性がちょっと見当たりません。ライブ盤でも、SEで「ふたりで踊ろう」の導入として使われているだけですしね。

これは、玉置さんが作り上げた音楽を余すことなく収録するために(とはいえ、このとき用意されたデモ音源は100を超えていると読んだ記憶がありますから、厳密には「余すことなく」とは言えないんですけども)、松井さんが世界を作り、メンバー以外のミュージシャンで録音したと、わたくしは考えております。

というのは、レコーディングに臨むためには、キッチリ個人練習をしなければならないでしょうから、安全地帯のメンバーだけで仕上げることのできる曲数というのは、おのずと限りがあると考えられるからです。この、全36曲という数は、おそらく多忙を極めるメンバーにとっては、仕上げる限界を超えているでしょう。しかも、玉置さんによれば「一日三曲録ったりしてた」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)そうですから、想像を絶するペースです。おそらくバンドアンサンブルを明確に要求する曲以外は、サポートメンバーでどんどん録音していったものと思われます。この「パーティー」も、そんな曲の一つだと考えられます。

しかし……このかわいらしさは、どうでしょう!玉置さんのこの声!やや無機質なエレクトリック・ピアノが奏でる高音のリフ!小さな靴で逡巡するような、細かく刻まれたバス・ドラ!そして、最後に流れる、不穏なストリングス、キーのCで終わらず不協和音的なGから、一気にAの「ふたりで踊ろう」に流れるという終わり方!これは、破壊力抜群です。見事に高校出たての、不慣れな女の子です。おお、現代なら未成年に「ワイングラス」はヤバいとか言われちゃいますね(笑)。それにしても、表現されている年ごろは同じくらいでしょうに、太田裕美の「赤いハイヒール」みたいな悲壮感がないところが、80年代の明るさなのでしょう。

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2017年04月14日

Miss Miss Kiss


安全地帯V Friend』二曲目、「Miss Miss Kiss」です。

世紀末風の「遠くへ」から一転、悪女志願の女性と戯れるスケコマシダンディの歌です。一曲目ですっかりシリアスな気分に浸っていた気分を一気に現実世界に戻すかのような、いささか乱暴な曲順だといえなくもありません。

ただ、前記事で書いたことなんですが、80年代中盤は、核ミサイルの恐怖を抱えつつ、バブル経済の予兆のなか享楽的に過ごす時代でもありました。だからどっちが現実でどっちが夢想というわけでもなく、どちらもリアルな感触を持って聞くことがのできた時代でもあったわけです。

まあ、わたくしその頃はまだ核ミサイルの恐怖に肝を冷やして『北斗の拳』を読んでいるようなお年頃でしたから、悪女と戯れるダンディなんて文化は体験してないわけですが。そんなこと言ったら核ミサイルだって飛んでこなかったですねえ。なんだ、どっちもマンガとか映画とかビデオとかの世界じゃないですか(笑)。

さて、この曲、軽快なリズムでギター、ベース、ドラムがメインフレーズを奏で、ホーンセクションがキメで曲を盛り上げるという80年代後期安全地帯の豪華さを象徴するラインナップで始まります。そしてそして、リズムが印象的ですねえ。『惑星』ツアーで演奏されているバージョンを聴くと、リズムが先、メロディーは後、で作られた曲なのではないか?という思いが強くなります。それくらい、リズムの印象が強いのです。

志田歩さんは、「ロマンティックなメロディとアフリカ的なリズムを滑らかに融合させた」と、このころの安全地帯の曲を評しています。玉置さんもそれにこたえて「もともとはリズムから先に曲を作って、メロディはそれにのせてホニョホニョフニャフニャ歌いながら作っていくほうが性に合っている」とおっしゃっています(『玉置浩二 幸せになるために生まれてきたんだから』より)。「アフリカ的」かどうかは、わたくしの見聞ではわかりかねますが、欧米、日本のロック界・歌謡界ではあまり聴かれないものだということは、言えるかもしれません。

そう、リズムが心地よい、という感覚は、これまでの安全地帯の音楽ではあまりなかったように思われます。「カッコいい!」という感覚は存分に味わっていますが、それは「ロック的」にカッコよかっただけなのかもしれません。

私事ですが、わたくしバンドで作曲を担当しておりましたが、リズムのことでドラマーともめることがありました。ドラマーなんですからリズムに造詣が深いのは当たり前なんですが、わたくしはシンプルで「ロック的」なもの以上のものは求めようとしなかったんです。ドラマー的には、もっと工夫したい、もっと心地よくしたい、それが「カッコいい」んだ、と思っていたわけですから、話が合わないのは当然です。ドラマーはわたくしのコンポで多くの変わったリズムをもつ音楽を鳴らし、わたくしのリズム感覚を鍛えようとしました(笑)。変なリズムに一日中さらされたわたくしはすっかり頭にきて、13分の11拍子とかのわけのわからないリズムを織り交ぜた変態的な曲を作り、デモテープのためにリズムマシンをプログラムするドラマーを悩ませるという報復策に打って出たのです。で、いざリズムトラックを完成させられてしまったら、今度はわたくしがギターが弾けなくて悩むという窮地に陥るわけです。アホですね。それでできた曲がよければいいんですが、そうでもなく。不毛とはまさにこのことです。

だから、リズムのことはある意味過去の心の傷になっているんですね。実際、志田さんの、このくだりを読んだとき、ああー、そうかー、なんだかイヤだなあ、とわたくしは拒絶反応を示したのです。ですが、何十年も聴いて骨や肉になっていた安全地帯の曲が、こんなにリズムにこだわったものであると気づかされ、ハッとしたのも事実です。それまでに気づかなかったくらいにわたくしはボンクラでもあるのですが、メロディとリズムの融合が「滑らか」すぎて自然だったということもいえるでしょう。

さて、曲はイントロのアレンジパターンのまま、Aメロに突入します。Aメロ、といってしまって気づくのですが、この曲、明確なBメロがないままサビに入りますね。言ってみれば「ブリッジ」「ヴァース」の関係になっているんです。「罠のしかけ場所 教えて」から直接サビに行かずにもういちどその前の部分を繰り返し、「罠のしかけ場所 教えて」に相当する箇所のないままサビに行きます。だから「キャンドルみたいなBODY〜教えて」がブリッジで、「浮かれた悪女〜だしぬきなさい」がヴァースということになるのでしょう。こんなパターン、ほかに思い出せるでしょうか? パッとは思いつきませんね。曲の構成マニアでないかぎり、パターン別に曲を分類して記憶しているなんてことはないでしょうから、すぐに思いつくことなんてもともとまれなんだとは思うのですが、それにしても珍しい構成の曲だといえそうです。玉置さんはリズムだけでなく、曲の構成でも新しい試みをした、正確には自分のなかにあるものを、リズムにせよ構成にせよ、型にとらわれず形にし始めた、のかもしれませんね。

さてサビなんですが、八分の通常のドラムに、なにかにぎやかなシンバルっぽい音が「シャシャシャシャ……」と入っていますね。これはハイハットの音じゃないでしょう。いってみればタンバリンを膝でたたいたような音なんですが(「冬花」でも同じようなことを書きましたね)……パーカッションでクレジットされているどなたかが叩かれたのでしょうか。何と効果的な!通常のドラムセットの音にこだわらず、効果的な音を躊躇なく入れた、という感じがします。玉置さんか、ほかのメンバーか、川島さんか、星さんか……どなたかが思いついたことを、すぐに試せるだけのスタジオミュージシャンをそろえて実現できるだけの力量を、この当時の安全地帯は備えていたのです。現代だったらパソコンのDAWソフトで一発なんですが、当時は人力ですからね。豪華なもんです。

間奏では、おそらく武沢さんによる、スパニッシュギターっぽい音色のソロが入ります。そのバックには、おそらく川島さんによる不思議シンセが響きます。このアレンジパターン、『オリジナルサウンドトラック プルシアンブルーの肖像』に似ていますね。ほとんど映画本編に使われなかった曲たちですが、この『安全地帯V』で炸裂することになる素地を作ったという意味で、もっと評価されてもよいアルバムでしょう(いまさら感たっぷり)。

歌詞も「みすみすキス」なんて、「恋の呪文はスキトキメキトキス」みたいで面白いですね。Missという若い女性を思わせる当て字も見事です。松井さんの言葉遊びも、語感の似た言葉を並べてその妙を楽しむという枠をはるかに超え、新しい次元に突入したのではないかと思わせる絶好調さです。そして「うかれた悪女のセンスで 心をだしぬきなさい」なんて、さらっと書くあたりも、なんて魅惑的なんでしょうか。完全に誘っています(笑)。

この曲は、『安全地帯IV』までのストイックな音楽制作の経験による蓄積を、怪作『プルシアンブルーの肖像』(映画のことですよ)を経て開花させ、そしてたどり着いた境地「リズム」「メロディー」「アレンジ」そして「歌詞」の新次元での融合を、二曲目という早い段階で知らしめた曲であるといえるでしょう。

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2017年04月09日

遠くへ


安全地帯V Friend』一曲目、「遠くへ」です。

イントロの時点でもう、このアルバムの名盤であることが確信できる象徴的な曲です。この三枚組アルバムにはシングル曲「Friend」「好きさ」「夏の終りのハーモニー」をはじめ、有名な曲がいくつも含まれているのですが、この「遠くへ」こそが『安全地帯V』のイメージ全体を象徴する曲として、見事に役割を果たしているのです。

そういう曲がラブソングでなかった!ということは、安全地帯の物語的な意味での路線が変更された、あるいは新しい色が加わったことを意味します。『安全地帯VII 夢の都』の「きみは眠る」、『安全地帯VIII 太陽』の「1991年からの警告」、といったように、深刻なテーマを唄うものがアルバムの先頭に来ることで、安全地帯の音楽、そしてそれが表現する愛の物語に、ぐっと深み、渋み、奥行き……といったものを与えているようです。最近はすっかりそんな手法は見られなくなりましたが。ああ、『安全地帯XII 清く 正しく 美しく』の歌詞カード冒頭に書いてあった玉置さんの文章が、これに似た役割を果たしていたといえるかもしれませんね。

短音でクリーントーンのリードを響かせるギター、ドーンと老獪に伸ばしたベース、リムでリズムをとるドラム、これだけで、もうテーマは色恋などでなく、なにかもっと深刻なものだということがわかります(笑)。そして不穏に短音リフを刻むギター(「エイジ」に似ています)、響き渡るサックス、短い短音フレーズを繰り返すピアノ……歌詞が表現する荒廃した世界に立ち、途方に暮れている情景でしょうか、武装モヒカンが「ヒャッハー」とか言っていないだけで、『北斗の拳』に近い光景を思い浮かべてしまいます(正確には、わたくしが『北斗の拳』を好きすぎて、それしか連想できないだけです)。

そして、リムのリズムはそのままに、バスドラがドド!ドド!と大地を踏みしめるようになり始め、玉置さんの歌が始まります。「太陽の塔」が落ちてくるって、よくわかりませんが、ただ事ではありません。大阪万博のあれではないでしょうから、おそらく核爆発によって生じた何らかの現象をさしているのでしょう。

核爆発ってなんだよいきなり、とか思わないでください。80年代中盤は、ほんとうに核ミサイルの恐怖を、みんなが少しずつは抱えていたんですよ。まだ冷戦まっただなかでしたし、ソ連の核ミサイルが発射されてから着弾するまでに十数分しかかからないから、核シェルターをいずれは用意しなければならないとか、核シェルターがない人は『風が吹くとき』みたいに自宅を改造したほうがいいんじゃないかとか、助かっても最低二週間は外に出ちゃいけないとか、そういう話がそこかしこにあったんですよ。ですから、この曲を聴いて、核戦争を連想するのは、至極まっとうとまで言ってはおかしいかもしれませんが、少なくとも突飛なことではありませんでした。いま思うと、よくあんなコワい状況で暮らしていたもんだなあ、と思います。

そして短いBメロ……「声が聴こえる」の箇所ですが、ここでようやくバスドラ、スネアの組み合わせによるドラミングが響き、それによって曲が速くなったような感覚を与えます。これが、歌詞世界の切迫感とリンクするという……信じがたいほど見事な曲なのです。そう、この曲は、すべてのアレンジに、確実に歌詞世界とリンクした意味・役割がある、という、ちょっとやそっとの素養や技術じゃ到底できない作品なんです。空間を切り裂くような「ジャイーン!」というギターも、ごく単純なフレーズが、どこか無機的に繰り返されるピアノも、なんとマッチしていることか!

そして間奏、これは、ギターソロもなく、せっかくのサックスも目立つソロを奏でるでなく、リズムの変化をこそメインにした、珍しい間奏です。のちのドリーム・シアターにちょっと似てますね。というより、こんなことは安全地帯とかドリーム・シアターくらい技量のあるバンドでないとできないかもしれません。怖いですよ、何かで埋めないと。経験の足りない教師が授業開始から終わりまでずーっとしゃべっているのに近いですね。沈黙が怖いんでしょう。沈黙を作ることで生徒がそこで何かをじっくり考えて、何かを得るかもしれないという発想ができないんですね。いっぱいいっぱいで自分と今しか見えてないですから。そんなわけで、ここの安全地帯は、ベテラン教師の授業のように、あえて目立つソロを使わずに、隙間をつくっているように思われます。

圧巻のサビ、「People Walking」の箇所も、玉置さんの悲痛な叫びが、もう他の歌手はこのテーマで歌わないでくれと思うほどに、避難民の悲しき旅路を唄います。……そして武沢さんのカッティング!極上トーンでのカッティング!これが、ゆくあてもなく走る避難民の焦る気持ち・息遣いを表現しているように思えてなりません……そして曲はイントロと似たフレーズから玉置さんの短い歌へと聴く者を導き、曲を終えます。

なんて悲愴な!何も「悲しみにさよなら」を大ヒットさせた余韻がまだありそうなうちに、こんなぎりぎりの世界をいきなり表現しなくても!……わたくし、当時はあまりそんなことは考えず、ただただ圧倒されていました。今だから、このときの安全地帯がいかに進化していったか、ある程度冷静にみられるようになっているような気がします。

二人称のラブソングでないものもやりたいね、できるさ、という会話が、松井さんと玉置さんの間であったそうです(松井五郎『Friend』より)。

……二人の天才が、しかもこんなに相性よく作品を生み続けてきた二人が、何もかもうまくいっていたこれまでの方法から、天才であるがゆえにあえて一歩を踏み出した、記念碑的な曲だといえるでしょう。

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