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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて三十年以上経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2020年04月04日

All I Do

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『All I Do』七曲目、タイトルナンバー「All I Do」です。

Chris Cameronさんによるアレンジで、入魂の先行シングル曲でした。といっても、シングルが1987年7月25日、アルバムが同年8月10日ですから、ものの二週間くらいしか空いていません。ジャケット写真が

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こんな感じで、とてもアルバムジャケットと同じ日に撮ったとは思えませんので、おそらく別系統でデザイン、撮影、加工したものと思われます。うーむ、これは忙しすぎます。撮られるほうだって「え?また?もう?」という手際の良さだったことでしょう。何せ、安全地帯がツアーを終えたのが1987年5月で、このシングルが出たのが7月なんですから、ちょっと信じられないスケジュールです。

アルバムの写真を撮ったのはCheryl Koralikさんで、その名前でGoogle画像検索してみると、ブライアン・アダムスのベスト盤が出てきます。おっ!そうかこのジャケット撮った人か!そういや雰囲気が似てる!これは確かめなければならない!と思ってブライアン・アダムズのベストをさがしたのですが見つからず、いつの間にかバラバラになっていたツェッペリンのアルバムを一か所に集めることに熱中してしまい、ファーストアルバムと『フィジカル・グラフィティ』が行方不明になっていることが判明、また気がかりを増やしてしまった……というオチになりました。ああ、またひとつ真偽不明のうわさを作り出してしまった……(笑)。

さてやっと本題ですが、この曲、もしかして……ドラム、ベース、ギターを使っていないんじゃ?いや、後奏でわずかにベースが聴こえますが(最後の「僕を信じて」の「じて」から入ってます)、それ以外は聴こえません。そんなの聴けばわかるじゃんって思いますよね。わたくしあんまり耳には自信がございませんもので、たしかには言えないんですけども、どうもシンセだけで作っているような音ばかりで、ナマは玉置さんとAMAZONSの声だけのように聴こえます。

始終リズムを取っている「ガンガン!」は明らかにパッドですし、それに合の手を入れる「ピコーン!」もシンセの音です。遠くで歌に全然あってないリズムを刻んでる鐘の音もシンセで出せます。もちろんサンプリングしたホンモノの鐘の音だという可能性もないではないんですけど、それだって結局はシンセが出している音です。あとはチチチチチチ……という音が近づいたり遠くなったりしてますね。これもパッドで出している音でしょう。そしてメインっぽい鍵盤がAメロBメロで玉置さんの歌のオブリになり、サビで歌をなぞったりしているほかは、ストリングスらしき音が薄く入っているくらいです。

さらにこの曲は、間奏らしき間奏もありません。ギターないからギターソロはない、サックスもないからサックスソロもない、当然といえば当然なんですけど、これは普通の曲作りではありません。玉置さんが「安全地帯というワクにとらわれずに自由に作れたから、楽しかった」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)というのも、まことにもっともなくらい、まわりのミュージシャンの出番を作ろうとかそういう配慮がまるで感じられません。『安全地帯V』だってまわりのミュージシャンのことを考えて作っていたとはあまり感じられませんでしたが(笑)、この曲はさらに輪をかけて何も考えていません。本当に、好き放題にやっています。

白状いたしますと、この曲がほぼシンセのみでできていると気づいたのは、今回記事を書こうと思って聴いた時が初めてでした。「シンセ多いなー」くらいにしか思ってなかったのです。つまり、いまのいままで30年以上も気づかなかったのです。繰り返しくどいですが、わたくしの耳がポンコツであるのと同時に、ほぼシンセだけで作られたにもかかわらず、この曲が結構ぶ厚い印象を与えるように作りこんである、ということであるように思われます。

2011年の『安全地帯XIII JUNK』バージョンでは、さすがにベースが入って、ギターもソロが入れられています。全体のリズムもドラムのリム等を使ってとられている……んですが、ここでもなんとスネアは一発も打たれていません。かなり雰囲気というかコンセプトを継承して安全地帯でリメイクしたバージョンになっています。どっちも捨てがたい魅力がありますね。個人的には、一回目で「うおっ!」と来た感触が強いのは『安全地帯XIII JUNK』バージョンです。

さて歌詞ですが、All I Do、つまり僕のできること、すべて、ですよね。述語がなく文として成立してませんので、後ろの「涙をふいて」とか「僕を信じて」との関係は、想像して補うしかありません。たぶん、玉置さんのデモにそのまま「All I Do」とあったか、そう聴こえるホニャホニャ英語があったのを、松井さんが活かしたのでしょう。

日本語の部分だけで情景を想像してみますと、これはすでに去った恋か、もしくは去りかけ、かなり危機に瀕した失われつつある恋の歌ですよね。くちづけだのあの思い出だの、楽しい感じの日々はすでに遠くなり、倦怠期に入ってイライラし何かというと傷ついて、ああーこりゃヤバいなーと感じる時期がすでに長く続いているか、それさえ去った状態です。

人間は飽きやすい生き物ですから、「名前を呼ぶ声」に「やさしさ」があふれているような状況でさえ、当たり前になってしまい、ついにはやさしさを感じなくなります。悪化しますと、「きびしさ」を感じるような有様です。バファリンの半分はやさしさでできているそうですが、当然残りの半分は、やさしさではないものでできているということですので(笑)、「名前を呼ぶ声」の場合も、残りの半分が胃に来るようになることさえ、起こりうるのでしょう。ところで「バファリンのやさしさは半分どころじゃなかった!やさしさの真相キャンペーン」というのがあったそうで、わたくしの思い違いもたいがい甚だしいようです(笑)。

そんな状況になりますと、基本的に何をやってももう関係の修復は困難でしょう。何をやっても、ですから、All I Doの中身が何であっても、ということです。何だろう、ディナーかな?プレゼントかな?とつぜんナントカ記念日を思い出して当然覚えていたように振舞うことかな?とか何とか、いろいろ考えてみるんですが、どれもこれも取ってつけた感が非常に高く(笑)、そんな生半可なことではどうにもならないことは容易に想像できます。

ですが、ここで玉置さんが「これが僕のAll I Doなんだ……」と言って歌いだしたら?これは効きます。かなり効くでしょう。その歌は、バンドでなくソロでなくてはなりません。バンドなら「All We Doじゃん」とツッコまれてしまいます。この曲は、第一期ソロ活動を象徴するものですから、できるかぎり玉置さんの歌と、パーソナリティを前面に出したものである必要があったわけです。おそらく、松井さんも星さん金子さんも、そんな演出を考えていて、「All I Do」ということばを生み出し、そして歌以外はほどんどバンド臭を消したサウンドに仕立てたのではないかと思われます。

松井さんが「あとは安全地帯の楽曲とそれほど変わりなくやってました」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)と語っているわけですから、松井さんがソロのコンセプト・演出を考えていたというのは、わたくしの妄想にすぎませんが、偶然にしてはできすぎです。玉置・松井コンビがそんな偶然・奇跡が起こりがちな二人だということは、よくよく知ってはいるんですけども。

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↓『安全地帯XIII JUNK』バージョン↓

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2020年03月13日

Holiday

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『All I Do』六曲目、「Holiday」です。

前曲「Only You」から引き続きRandy Kerberさんのアレンジで、オシャレなポップスになっています。そのほか、ホーンのアレンジはJerry Heyさんがクレジットされていますね。マイケルジャクソンの『スリラー』で吹いている超有名ミュージシャンなわけですが、ホーン演奏のクレジットをみると、Jerry Heyさんはもちろん、Seawindの面々がズラリと並んでいます。どこまで金かけたのよこのアルバム!とビックリしちゃいます。いまと違って当時は、玉置さんが日本一歌がうまい歌手扱いではありませんでしたし、玉置さんのノド絶頂期と思しき90年代中盤〜後半にはすっかり自分と周りの人だけで手作りすることにハマっていたわけですから、実力と、好む方法と、それへの評価と、世の中の景気と、業界の金回りとは、どうしてもズレてしまうのがよくわかります。それが惜しくてたまりません。いや、もちろん玉置さんが落ちぶれてお金が使えなくなったなんてことではありません。玉置さんは、たとえば『JUNK LAND』の時代に英米の豪華ミュージシャンを使おうと思えば使えたはずです。でも。使いたくなかった、もしくは使うことが眼中になかったのでしょう。玉置さんが当時求めていたのは、そういうゴージャスな緊張感じゃなかったというだけのことなんだと思います。

さてこの曲、Jerry Heyによると思われるトランペットで始まり、すぐにキーボード、ベース、そしてチリリンだけのドラムが後を追います。二フレーズ目は、もう一本トランペットを重ねてきますが、トランペットは歌のサビとまったく同じメロディーを吹きます。とてもシンプルですが、妙に効果的であるように思えますね。玉置さんのボーカルだけだとホリデーって感じがしない……ように思えるからです。ここにこのボーカルラインのテーマをなぞるトランペットが入ったことによって、ホリデー感がでるのだと、わたくしは考えています。

歌詞を読んでみれば、べつに休日でも祝日でもないんですが、ビートルズの「ペニー・レーン」を思わせるホリデー感……いや、「ペニー・レーン」だってべつに休日でなく、消防士が消防車を磨いてたり看護師が花売りをしてたりと、たぶんおかしな日常・平日なんだとは思うんですけども、ほのぼの・のんびり感がホリデーを思わせるのです。それでなんです。Randy KerberさんとJerry Heyさんはきっと曲名のHolidayだけをきいて、ホリデー感を出そうとしたんじゃないかな?なんて思うわけです。松井さんの歌詞は、ほのぼの・のんびりの皮に隠れた強烈な悲しみを表現するものなんですが、実はそういうレトリックは洋楽の世界ではなじみがないもので、アレンジャーは曲名だけ聞いて雰囲気を決定した……いや、すみません(笑)、これはおかしいですね。星さん金子さんがついていながらそれはいくら何でもないでしょう。星さん金子さんが雰囲気を決定してアレンジャーに指示を出したと考えるほうが自然です。つまり、洋楽邦楽の文化的相違や言葉が通じていないことによる誤解が原因なのではなく、星さん金子さんがこういう演出(アレンジでほのぼの・のんびりの皮、歌詞と歌で悲痛な悲しみというギャップ)にしたんでしょうね。

歌に入りまして、基本的にギターとキーボードによるアルペジオ、クリーンなベース、シンバルをチリチリン鳴らすだけのドラムで伴奏し、玉置さんがほのぼのなメロディーに悲しいことばをのせるボーカルを切々と歌っていく、という、なんとも寂しい曲です。サビから薄くホーンが鳴り始めオブリになっているところなんか、寂寥感が高すぎてどう表現したものやら困るくらいです。のちの「ともだち」で、寂しそうなアレンジに「悲しくて悲しくて」というド直球な歌詞を入れた気持ちがよくわかるくらい、ここの寂寥感演出は手が込んでいて、それがひどく辛いのです。

歌詞は基本的にシンプルで、短いことばを重ねて絵のパーツを一つひとつ描いてゆく過程をみせるような手法です。シャツの匂い、髪の匂い、君が消えてく……ああ、つらい(笑)。匂いってわかるじゃないですか……久しぶりに開けた衣装ケースから、君がいたあの頃の匂いを一瞬感じる……オーノウ!これはたまらん、一発KOです。たぶん体臭とか使っていた洗剤とか柔軟剤とか、正体はそんなものなんでしょうけど、これほど切ない感覚もありません。五感のうち、いちばんフラッシュバック効果が高いかもわかりません。

そうか、いまは恋がホリデーなんだ……きっとそうだ……いつかこのホリデーは終わるんだ……というのはもちろん妄想なんですけど、一瞬だけ感じたあのころの匂いが消えるのと同じくらいの速さで、あっさり現実に引き戻されます。そうだそうだ、電話でもためいきばっかりで、もらった絵葉書も住所を塗りつぶしてしまった(捨てろよ、というツッコミはナシで。そういうものは、ホリデーが終わって別の日常が始まったころに、パーフェクトに隠滅するのです)。ああいう険悪な時期と、そのあと訪れた最悪の展開を思い出し、これはホリデーなんかじゃなく、いわば失業期間なんだと思い出すわけです。

思い出すんですが、でも一瞬感じたあの頃の匂いと思い、ホリデーという錯覚に、なんだか可笑しくなったのでしょうか、玉置さんは「いつかおいで 忘れないで」と、ひとときあえて錯覚を見続けようとするかのように歌うのです。錯覚だとわかっているのに!なんという高度な切なさ演出!これは「Friend」を超えたかもわかりません。すごくわかりづらくて「Friend」を超える名声は得られそうにもないですが(笑)。

曲は間奏へと続きます。アップテンポのまま、切ないストリングスに楽し気なホーンをかぶせるという、この錯覚を増幅させるかのような見事なアレンジです。もし、Randy KerberさんやJerry Heyさんが星さん金子さんの意図がわからないまま、注文されたようにアレンジ・演奏したのだとしたら、なぜこんなミスマッチなことをするんだ?日本人はわけがわからん!とか思っていたかもしれませんね。

曲は最後の局面に入ります。風でドアが鳴り、もしかして君が帰ってきたのか?と思わせる演出があります。もちろん「ただの思い過し」です。世の中そんなにうまいことありません。そして月日は無情に移り行き、窓には自分以外の影は映らず、それが見慣れた光景になってゆくのです。その間、あの匂いはどんどん薄まり続けてゆきます。開ける衣装ケースも減ってゆき、まるでタイムカプセルを開けつくしたかのような空虚感に襲われます。

そして後奏は、前奏と同じく、サビのボーカルラインをなぞるホーンを繰り返し、フェードアウトしていきます。終わりのないホリデー、実は出口の見えない失恋期間を暗示するかのように……。

これほどまでに切ないボーカルが、ルンルン気分とまでは言わないまでも、穏やかな伴奏に乗せて歌われた例は、古今東西そんなにないんじゃないでしょうか。この曲は、安全地帯・玉置浩二随一のギャップ演出ソングなのです。そこまで深読みする(そして当然、一人よがりに妄想しまくっているので、当然間違っていそうなわたくしのような)人もそんなにはいないでしょうから、この輝きは手垢が付きにくいものであり続けるのです。

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2020年03月08日

Only You

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『All I Do』五曲目、「Only You」です。シングル「All I Do」カップリングでもあるこの曲は、しっとりあっさりのバラードになっています。

アレンジはRandy Kerberさん、Wikipediaでみるとクラクラするくらい一流ミュージシャンです。格付けチェックに出たら(出ませんけど)ガクトさんが恐縮するだろうレベルの一流です。セレブのパーティーでワイングラスもちながら、腕利きのミュージシャンとして紹介されグラミー俳優とかと乾杯しているに違いありません。よくこんな人のスケジュールを押さえられたものです。キーボードは曲ごとのクレジットがありませんが、きっとKerberさんが弾いたことでしょう。このアレンジといったら!ビリー・ジョエルとかリッキー・マーティンを聴いているんじゃないかと思うくらいの洗練度です。

こんな曲を聴かせられたらさすがに、BAnaNAさえいれば日本でもレコーディングできたじゃん、というわけにはいきませんね。ハードロック・ポップテイストなChris Cameron、変な曲のBAnaNA、しっとりポップスのRandy Kerber、泣かせ担当の星さんと、役割分担ができていて、そりゃBAnaNAと星さんだけいればいいなら日本でやればいいんですけど、クリスやランディ、その他ミュージシャンやスタッフがレコーディングに参加できるとなると、選択肢はロスやロンドン近辺に限られてくるわけです。うーむ、なんと贅沢な……いや、クリスもランディもミュージシャンもスタッフも全員スケジュールを押さえて機材もみんな日本に運んできてレコーディングしたほうがずっと贅沢ですけど(笑)、さすがにバブル前夜の日本でもそんな無茶はできません。

さてこの曲、キーボード主体で作られたサウンドです。イントロは高く薄いストリングスをバックに、メインとオブリの鍵盤を絡めつつ、歌の世界へとわたしたちを誘ってゆきます。メインのキーボードに伴われ、玉置さんのボーカルがささやくように始まります。とぎれとぎれにベースを、ごくさりげなく入れながら、すぐに最初のサビに突入するのです。え?もう?なんという展開の速さ!

前曲の「Hong Kong」でもそうでしたけども、サビを覚えやすい曲名のフレーズにして、コーラスを入れて印象付けるというパターン、これ以前の安全地帯だとあまり多くないですよね。「じれったい」「Friend」「ど−だい」「悲しみにさよなら」「Lazy Daisy」「Happiness」……あとは『リメンバー・トゥ・リメンバー』にいくつか、くらいでしょうか。安全地帯の曲は「あーたぶんこの曲〇〇ってタイトルだよなー」と思えることがあまりないのです。そりゃ「じれったい」は、じつは「心を溶かして」というタイトルだったらコケちゃうくらい「じれったい」ですけど、「悲しみにさよなら」は「泣かないでひとりで」でもギリギリ通用する……すみません、書いててつらくなるくらいムリがあるかもしれません(笑)。要するに、よくある黄金パターンにとらわれずに作っているため、なかなか難しくて複雑なのだよフフン、とかそんな気分にあやうくなりかけましたが、玉置さんや安全地帯はよくある黄金パターンにとらわれていないがために、かえってその黄金パターンでもあまり気にせず使うことさえある、というほうが正確でしょう。

さて歌は二番に入りまして、ドラムが入ります。そしてストリングスもだんだん大きくなってきています。二回目のサビはもうすべての楽器が全開で入って曲を盛り上げるのです。うーん、アレンジもよくあるパターンなんだとは思うんですけども、こりゃ日本人には無理なんじゃないかな?と思えるくらいスッキリしているのです。日本人だともっと凝っちゃうような気がするんですね。シンプルさが無理というか。あ、いや、もちろん凝ってるんですけど、歌の魅力を引き立てる要素以外は極限まで削って、歌を前に出す効果のある要素はふんだんに盛り込む方面に凝っているというか……もちろん日本人のアレンジャーだって歌モノならそう思ってアレンジするんですけど、ものの考え方が違うように思えるのです。日本人アレンジャーが幕の内弁当だとするなら、ランディさんはステーキをメインにしたコース料理というか……相変わらずよくわからない喩えです。

そして歌に替わって物悲し気なホーンが主旋律を担う感想を挟み、曲は最後のサビに向かいます。最後のサビで、Only Youの意味が明らかになります。いや、はじめから明らかなんですけど、「この心にあなたがいるだけ」と日本語で歌いますので、いわば公式の翻訳が示されるわけです。この手法、かなり手垢の付いた手法なんですが、玉置さんが歌うとすごく新鮮ですね。「Rain 雨の街で〜」いや、それRainか雨かどっちか要らないじゃん、今日のゲストは内山田洋さんと、内山田洋とクールファイブのみなさんです、みたいな感じじゃん、あ、クールファイブなら内山田さんじゃなくて前川さんか、いやそれだって内山田洋とクールファイブの皆さんです、だけでいいじゃん!みたいな気持ちがムカムカムカとわいてくるのですが、この曲は別なんです、玉置さんと松井さんだから(笑)。

後奏も悲し気なホーンで、一瞬だけストリングスを入れるものの、基本的にはメインの鍵盤による伴奏だけでリードしていきます。鍵盤による最後の和音が消えていくなか、ストリングスが鳴っていたことに気づきます。うーんさみしい!恋をしてるんだから気分はルンルンハッピーじゃん!おじさんなんかすっかり枯れはててそんな気分になれないよ!老いらくの恋とかしたら「失うだけしかない」からさみしいかもしれないけど、そもそもそんな気にならないよ!とまあ、若いころの思い出はすっかりルンルンハッピーばかりだったような気がしてならないんですが、けっしてそうじゃないんですよね。若いころは若いころなりに悩んで苦しんで、たいした理由もなく「失うだけしかない」ような気がしたかもしれません。単純に横恋慕だったとか、浮気だったとか不倫だったとか、もしくは自分がへたれで声すらかけてないとか……ぜんぶロクでもない理由ばかりですが(笑)、それでも真剣だったような気がしなくもありません。そんなつもりはなくとも、思い出は美化されていくもの、正確にいえば、イヤなことを忘れていくものなんですね。

順序が前後しますが、歌詞の話をしますと、これは自分から声をかけられない類の失恋でないことは明らかです。「夢みてる」の夢は、赤い屋根の家でふたりで暮らそう的な夢ではありません。彼女の夢はアメリカでダンサーになることレベルの、叶うとふたりがバラバラになる類の夢でしょう。だから逢いたいんだけど、そして逢えたときはもう少しだけでいいから抱きしめさせていてほしいんだけど、二人とも忙しいのです。たのむからアメリカなんていかないで、ダンスなんかもうエエやろ、あきらめてワシんとこに嫁に来んかい!……とはもちろんなにひとついえなくて(笑)、せめて今だけの「恋」を満喫するしかできないのです。ああ切ない。

そうですねー、「失うだけしかない」理由は、おそらくですが、自分のサイドにもあるのでしょう。たとえ彼女がダンサーもアメリカもあきらめたとしても、自分の生き方が彼女と一緒にいることを許さないような……それこそ玉置さんレベルに売れっ子すぎて忙しいとか、不倫だったとか、あるいはその両方だとか(笑)、何かしらあやうい事情を抱えているのです。玉置さんはそんなのばっかりですから、すでに普通すぎていまさら驚きませんけど。もし安全地帯の世界を知らずにこの曲をふつうに美しいバラードだなーとしか思えないとしたら、それはソロ活動で新しいファンを獲得したということですから喜ばしいことではあるんですが、背後からわたくしみたいな邪悪な古参ファンがククク……はたしてそれだけかな?とか言いながら余計なお世話を焼きたくて忍び寄ってくるかもわかりませんので、ご注意が必要でしょう。

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2020年03月05日

Hong Kong

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『All I Do』四曲目、「Hong Kong」です。

BAnaNAに触発されたのか、それともBAnaNAが触発されたのか、イントロから右に左にと忙しくさまざまな音が聴こえてきて、中央からリズムセクションが曲を落ち着けるように始まったときに爆発音が響き、歌に入ります。

「She Don't Care」と同じくクリス・キャメロンさんがアレンジをしているわけですが、この曲も同じギタリストが弾いているんじゃないでしょうかね。カッティングとハーモニクスがニクいニクい。あのころのAOR感満点です。そして、チャイナ感を表現するのに「ズタタタタタ……ズタタタタタ……」というリズムを使うのも、当時の定番だったように思います。そこにこんなギターを織り交ぜるのが新鮮……東洋と西洋のミックス度が高い日本の音楽(で香港を表現しようとした)、という雰囲気を出そうとした……かどうかはわかりませんが、「Hong Kong」というタイトルが先にあって、それに合わせてアレンジを行ったのでなくては説明のつかないチャイナ感です。きっと玉置さんがデモの段階からHong Kongと歌っていたのではないでしょうか。

さて香港は「熱視線」のプロモーションビデオでも使われ、しかも安全地帯人気がとても高い都市です。当時は香港ヤングたちがどんなに安全地帯が好きかなんて少しも知らなかったのですが、2000年ごろ、いまはなきICQで香港のファンたちと交流して、安全地帯&玉置浩二の凄まじい人気ぶりを知ることができました。

沢木耕太郎が『深夜特急』で最初に訪れ、居心地の良さに予定を越えて長期滞在した街、そして安全地帯や玉置さんの音楽に熱狂する人たちの暮らす街、どんなに面白い街なんだろう、と、わたくし香港に俄然興味がわき、とうとう香港に行ってしまったのです。映画でジャッキーチェンが飛んだり跳ねたりしていた、マンガで清服を着て小さいサングラスをかけている、語尾が「〜アルネ」とかの人が人身売買をしているちょっと怖い街、といったイメージは、すぐに吹っ飛びました。なんじゃこの超大都会は!東京や大阪といった日本の大都会とは次元の違うそのエネルギーに圧倒されたのです。旧啓徳空港跡地の脇にあるホテルに泊まり、わたくしは九龍地区を練り歩きました。残念ながらごく近くにあった九龍城砦は取り壊されてきれいな公園になっていましたが、それでも十分に旧市街地からは香港のアジアンゴシックな魅力とそこに息づく人々のエネルギーを感じることができたのです。

……とまあ、香港への熱い思いをひとしきり語ってみましたが、直接関係ないですよね、この曲、香港と(笑)。だって「Hong Kong」の連呼がなくても歌詞の物語は成立しますし、「Hong Kong」以外の歌詞にも香港を感じさせる要素がありません。きれいな三日月は世界中で見られますし……「看板!」とか「夜景のフェリー!」とか「どろぼう市!」とかあれば香港っぽいですけど……。アレンジがチャイナ感あるのは確かなんですが、アレンジと「Hong Kong」の連呼だけがチャイナです。

つまり、この曲が「Hong Kong」である必然性は、誰もがわかる観光客的な視線に求めるのではなく、玉置さんのパーソナルな視線に求めなくてはならないでしょう。つまり、玉置さんは、香港の街でかつて恋をした、もしくは香港の地で日本での失恋を嘆いた、という設定があるわけです。安全地帯は香港で何度もコンサートを行っていますから、香港の街を楽しんだ、そしてある女性と知り合い恋に落ちた、もしくはこっそりと日本の女性を伴って楽しんだ、あるいは、異国の地香港で、日本で破局した女性のことを思って歌った、等々のことにも多少なりともリアリティがあるわけです。実際にそうしたかどうかはわかりませんが。まあ、玉置さんが香港の街を恋ができるくらい自由に歩きまわると、東京で山手線に乗るのと同じくらい、ファンに囲まれて身動きが取れなくなる可能性が高そうです。

夜のビクトリアハーバーから眺める香港島は超高層ビルだらけの非現実的・非自然的なビジュアルをもっています。そこに三日月があり、スターフェリーが往復してゆくことさえウソみたいに。背後の旧市街地はギラギラと輝き、いつもの喧騒を見せていますが、海岸公園は静かです。もちろん横浜の山下公園に比べれば明るくて人だらけですけど、それでも旧市街地の繁華街に比べれば、物思いにふけることもできるくらい落ち着ける雰囲気となっています。

そこで見た三日月は、かつての恋人を思い出させる三日月でした。そして始まる幻彩詠香江(シンフォニー・オブ・ライツ)、ビッカビカのギッラギラなんですが、定時には終わります。つまり、「Vanishing Light」です。あるとき始まり激しく盛り上がり、そして消えた後には一体あれは何だったんだろうと思わせるところが、恋や夢に似ています。まあ、そのまま旧市街地に一杯飲みに行けばいいんですけど(笑)、かつての恋や夢を思い出してしまったらそうもいきません。あのときは心も体もすべてを奪ったような気がしていたけども、それはいっときの幻想だった、まるでこの幻彩詠香江のように。お願いだ、消さないでくれ、このままめまいを続けさせておくれ、めまいが治ったら、彼女を思い出して逢いたくてたまらなくなっちゃうじゃないか!(笑)

そして香港は暑いのです。春先ですでに30度を越えます。大陸の人はクーラーをかけるのが贅沢と思い込んでいるフシがありますので、観光客が出入りするような室内はえらく寒いんですが、地元の人が夕食を食べているような食堂や、何キロも露店が続くお祭りのような市場は夜でも暑いのです。Dreaming Tonightは暑くて眠れない……もちろん失恋の痛みで眠れないんですけど、腕に恋人が眠っているかのようにねっとりと暑い香港の夜に思い出すことは、もちろん痛いこと……焼けつくような肌の感触でもありうるでしょう。Dreamingだから眠れてるじゃんというツッコミはこのさい野暮ということで(笑)。

こんな具合に、香港という街のエネルギー、そしてそれを象徴するかのような幻彩詠香江は、クールな日本にいると思い出さないですんでいた過去の傷をふたたび疼かせるほどのものなのです。あ、いや、アンタがそう感じただけでしょというツッコミはたいへん的確なのですが(笑)、そうとしか読めないんですよわたくしには!

そして曲は「Hong Kong」の連呼と、間奏の、ペンタトニック一発に近いギターソロ、もう一度「Hong Kong」の連呼であっさりと後奏へ、そしてAMAZONSの「Hong Kong!」を伴いつつフェイドアウトしてゆきます。香港のエネルギーは終わりのない祭であるかのように、どこまでも続くのです。

今回、何度も「Hong Kong」を聴きなおしましたが、このギターの音は異常にカッコいいですね。歪みが軽めなのにかなりハードに聴こえます。そして安全地帯のお二人がもっている色っぽさ艶っぽさがないのです。土方さんの若いとき、NAZCAの頃みたいです。いや?こんなの、BOSSのSD-1をコンプで叩いてミキサーに直入れ(ライン録りといいます)すれば簡単だよ?とか言われそうですけど、そんなの、わたしだってわかってますよ!腕の問題なんです。こういう乾いた音を抜群に使いこなすリズム感とタッチがなければ、とてもとてもそんなセッティングにチャレンジできるものじゃなりません。あー、これお願いしますってシールドをPAの人に渡したら、きっとキラーン!とメガネの奥が光って、さあどんな音を出すのかな?じっくりと聴かせてもらおうかククク……なんて感じになるに決まってるのです(被害妄想)。そんなわけで、いまどきこんな音を出すギタリストはいない、いや、あえてこの音を出そうとするギタリストはいないというべきでしょうか。そんな音を堪能できる曲なのです。

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2020年03月03日

1/2 la moitie

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『All I Do』三曲目、「1/2 la moitie」です。

「二分の一、半分」?いきなり意味がよくわかりません。laは定冠詞だと思うので、「1/2 the half」ですかね、英語でいうと。フランス語の定冠詞は格変化が非常にささやかですので、何格なのかわかりませんが……わたくしのわからない熟語か何かかもわかりません。意味をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお知らせください。とりあえず定冠詞ですので、不特定のでなく、恋人的な、一つのものだったはずなのに別れてしまった片割れ、自分の方をさらに1/2することで心も体もバラバラ……といった意味でラブソング的にムリヤリ解釈したいと思います。「全然違うよ〜」だったら、あっさりぜんぶ崩壊する解釈ですけども。そもそもほんとうにフランス語かどうかもわからないんで、大いにその可能性はあるわけです(笑)。bleueがフランス語の「青」だ!知ってる知ってる!だからフランス語なんだよーとはしゃぎたいのですが、ヨーロッパの言葉を知悉しているわけではありませんので、非常に慎重な態度をいっぺんは取っておかないと安心できないわけです。簡単にいうと一周回ってインテリぶりたいへたれです。

さて、この曲、二曲目に続いてBAnaNAさんがアレンジを担当していますね。いきなり派手なオーケストレーションで泣かせに来たか……こちとら「Friend」とか「To me」とかで慣れてるんだ……よし(泣く)準備はできたカモン!と身構えていると、玉置さんの「ブ…ルゥ…の〜」とボーカルが始まったと思いきや、ドム、ドムムン…とコントラバスっぽいベース音、シャシャン…シャン…とハイハットらしき音、ボーカルとの掛け合いのようなシンセ音がルーズな曲調をリードしはじめ、あ?あり?何か様子が違う?と気が付かされます。

なにしろサビらしき箇所「どーこにー」のあたりが、ぜんぜん泣かせに来ないのですから、反応に困ることこの上ないです。悲痛な叫びなのに、一回目のサビでは「そ、そんなこと言われても……関係ないし……」という気分になるくらいです。しかし、この曲を楽しめないとこのアルバムにはハマりきれませんし、玉置さんがたまに見せる不思議な魅力に気づかないでスルーしちゃうことになるわけです。これは気合いを入れねば!そして「不思議な夜」で垣間見た、BAnaNA×玉置ワールドに引きずり込まれてゆくのです。

まず「bleueの〜」の低音ボーカルが真ん中から聴こえますよね。そして「鏡の〜」で、右に注意を引かれます。この箇所はボーカルにエコーがかかり、まず右からボーカルが聴こえ、真ん中〜左寄りにすぐエコーが聴こえるという仕掛けになっています。これにより、(同じ顔をした)鏡からも声が聴こえてくる、しかもそれが笑い声であるかのような印象が脳裏に叩き込まれるわけです。それが、かつて同じ部屋にいた恋人が一緒に笑ってくれていた日々を思い出させる、という非常にせつない印象を与えるわけです。

こんな気持ちを、「約束」のような軽快なポップスで表現できるなら、それはもうある程度失恋を消化できた頃なのでしょう。しかし、昨日とか先週とかだと、la moitie(片割れ)を喪失した痛みも生々しく、かなりドロドロした気持ちを抱えたまま朝から霧が出ているような日を迎えてしまったら、それこそ頭の中にこの曲のイントロが流れて一気に気分はスーパーブルー、やっとの思いで紡がれることばは少なく、この曲のようにズトン……ズトトン……と、絞り出されるわけです。そう考えたら、なんかこういう曲調でなければ表現できない一面が、そういう心理的事実が、たしかに心の中にあるはず!という気分にもなれるというものです。サビ「どーこにー」の箇所も、そのまま悲痛な叫びであって、「わかるわかるーそういう気分のときってあるよねー」とはいかないものの、これほどまでに失った恋人?を求めるその切実さに、胸を打たれます。しかし、戸惑いますよね……思うに、安全地帯のこれまでの曲は、誰の胸にもある傷、心の中の宝箱といったようなものを主に表現してきたのに対して、この「1/2 la moitie」はかなり痛い思い、まだ新鮮ほやほやの生々しい傷をえぐるような、そういう痛さを知る人もいるだろう、くらいに共感できる人の幅を制限しているかのように思われるのです。

サビらしき叫びから間をまったく置かずに歌は二番に入ります。また右から「bleueの〜」です。「夢を刺」すという珍しいレトリックが用いられていますね。ふつうに考えれば、ふたりで描いていたルンルンの将来構想を破棄するということなんでしょうけども、それを刺すと表現しています。やぶれかぶれになりそうな心をどうにか抑え込んでいるんだけども、どうにも我慢できずに一撃、刃物で切りつけるんじゃなくて、鈍器で砕くのでもなく、刺すんです。原型は残しつつ致命傷を負わせることで、夢への愛おしさと憎しみとを両立させるわけです。

そしてまた悲痛な叫び、今度は「逢いたい」です。リバーブたっぷりに部屋全体に響き渡ったかと思うと、次の「逢いたい」は右チャンネルから、ほとんどリバーブをオフにして生々しく聴かせます。一瞬正気に返ったけどもまだ逢いたいんだと思わせる、なんとも切ない叫びです。リバーブとパンニングでこれだけの演出をするんですから、エンジニアはさぞ苦労したことでしょう。わたくし、これは玉置さん(とBAnaNAさん)が、ソロ活動だからバンドの制約をまったく気にせずに曲を作った結果だと思っております。安全地帯はバンドですからライブの際に立ち位置ってものがありまして、ここまでの演出を求められる曲をレコーディング・演奏すべきか、ちょっと考えてしまうでしょう。もちろん、ライブでも卓で何とかできなくもないですし、そもそもこの曲はベーシストとBAnaNAさえいればできそうではあるんですけども、バンドとしてそういう表現方法をよしとするかは別の話だからです。

「渇きそうで」は、これまた切実です。渇いてしまったらもう元の姿には戻れない……干ししいたけを水で戻してももう元のしいたけには戻らない……アルコール中毒患者に対してスリップ(再飲酒)すると怖いよーと諭すみたいな喩えですが、心の傷だってなかなか深刻なのです。ヨリを戻しても、もうもとのふたりではないんですよね。いろいろ感じたり思ったりするところはあっても、別れを経たカップルは、そうでなかった時代のふたりとでは、何かが違うはずなのです。フランス語だからアベックというべきでしょうか(しつこい)。

さらに「どーこにー」を右チャンネルから繰り返し、堂々巡りのグチャグチャな心情をこれでもかと印象付けます。そして曲は後奏へと続きます。唐突なピアノ、しかもかなり硬質・無機質な音のピアノで、ボーカルラインをなぞり、もう言葉にならない叫びを表現しているかのように響かせます。オクターブで鍵盤をかなり強く叩いたんでしょうか、音が割れているように聴こえるのも、これまた玉置さんの壊れっぷり、ささくれっぷりを思わせます。曲は最後にまた悲しくも美麗なオーケストレーションを入れ、「旧校舎のテーマ」ですかと訊きたくなるような業の深さと強烈な寂しさを感じさせるのです。

うーむ、なんという……「Friend」だって聴くタイミングを間違えたらトラウマ級の破壊力でしたが、この曲は、うっかりどストライクなタイミングに聴いてしまうと、闇の世界に引きずり込まれそうな迫力があります。失恋したばかりの人を癒す気は全くありません。みなさまどうか、この曲を聴くときはタイミングにご注意ください。この曲は凄いですよ!効きますよ!よくない効き方のような気もしますけども!そりゃ人によっては、キリコとかダリの絵を見て失恋の痛みから立ち直るということもあるかもわかりませんので、「個人の感想です」としか言いようがないんですけども。

そんなわけで、壮絶な悲恋ソングでしたというお話だったわけなんですけども、松井さんがじつはこの曲はシャムの双生児をモチーフにしたんだとかつぶやいたらすべて吹っ飛ぶ解釈ですね。当ブログは、玉置&松井コンビなら何でもかんでもラブソングに違いないと根拠なく断定して記事執筆に臨む傾向がありますので、よくよくご注意ください。

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2020年02月24日

Love ”セッカン” Do It

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『All I Do』二曲目、「Love ”セッカン” Do It」です。

初めて聴いたとき、なんじゃああああこりゃああああ!と、松田優作なみに動揺したものです。いや、アレは殉職のシーンですし、死ぬほど動揺してないと松田優作なみとは言えないんですけども……ともかく、少なくとも少年の心に強力な印象を叩き込むのには十分な破壊力をもった曲でした。

何せ、タイトルからして「セッカン」ですからね。「摂関」ではなく「石棺」でもなく、「折檻」、オシオキでしょうねええええ(動揺)。いや!いまとなってはオトナのわたくし、念のためにseccanという単語がないか辞書で確かめるくらいの冷静さは持ちあわせております!おりますが!見事にナシ!ネットでもチェルノブイリの石棺をどうこうする、みたいな日本語の記事が上位にずらっと並んだところからして、セッカンは日本語であるという結論に至らざるを得ないでしょう。松井さん……「いったんそれ(『安全地帯IV』までで完成した安全地帯の歌詞スタイル)を壊さないと歌詞が作れなくなった」という境地で『安全地帯V』の作詞に挑んだというのは存じ上げておりますが、傍からみると『All I Do』での壊れっぷりのほうが遥かに上回っております。「僕が詞を書かないほうがいいのでは」とか「バンドと違って英語を使ってもいいんじゃないか」などと、あまり壊れっぷりのほうにはコメントをなさってませんけども(いずれも『幸せになるために生まれてきたんだから』より)、いやいやなかなかどうして、玉置さんソロのハジけっぷりを見事にことばという媒体で表現なさっています。誰も安全地帯と同じ性質を感じることができないくらいに。

さて、気を取り直して曲ですが……

耳に残るところが多すぎてコメントしきれない!と思うくらい、さまざまな仕掛けに満ちています。編曲はこの手の曲の例に漏れず川島さんですが、いったいどんな凝り方をしたらここまで凝れるんだ!というくらいアレンジに注力したものと思われます。ここまで本気のBAnaNAは初めて聴いた……というくらい、バンドへの遠慮というものがありません。

ばっと耳につくものは……ひたすらメインのリフを鳴らす鍵盤、キコキコ鳴りっぱなしの拍子木みたいな打楽器、ブインブインと鳴り響くベース、左右に振られるパッド、左チャンネルにアクセントで入る低い管楽器(バストロンボーン?)……どれもこれもアクの強いタイミングで印象的な音色をダイレクトに脳髄に叩き込んできます。凄いですね川島さん。ロンドンとロスでレコーディングしたそうですけど、川島さんさえいれば日本でもいいじゃないですか、と思えてならない、とんでもないアレンジです。

そして、忘れてはならないAMAZONS、日本のコーラスグループですね。このアルバムのわずか三か月前にリリースされた「じれったい」でコーラスをされた、日本女性の三人組です。いまでも活動されているようで、ちょっと驚きました。中学生のころ、TSUTAYAとかでアルバムを見たこともあります。メンバーの天野由梨(吉川智子)さんは、アンパンマンでアカチャンマンを演じている声優さんでもあるそうです。このコーラス、効いてますね……日本人女性歌手(アカチャンマン含む)がこんなセクシーさを出せるとは……おもにkittyレコード系でAMAZONSのクレジットをちょいちょい見ましたけども、これなら引っ張りダコだったに違いありません。

「ウ〜YEAH!」と玉置さんの低めなシャウトを皮切りに曲は始まります。二回目の「ウ〜YEAH!」からブンブンとベースが鳴り上下にガクガク揺られながらパッドで右にも左にも注意を取られつつ玉置さんの歌が始まるんですけども、いきなりサビでLOVE セッカン DO ITとわけのわからない言葉で頭がついていかないという快感をくらいます。さあ……愛のオシオキだよ……ほーれほーれDo It! これはアタマがおかしくなるんじゃないかとしょっぱなから心配になってきます。

Bメロではベースがルート弾きでスピード感、高音のストリングスでスリル感を高め、緊迫感を演出します。「ハートに隠してる紅い林檎」はもちろん、アダムとエヴァの齧った禁断の実でしょう。アダムとエヴァはこれでエデンを追放になるわけですから(旧約聖書の神は、現代日本人たるわたしたちには到底よくわからない仕打ちをしばしばなさいます)、これはバレたらヤバいアフェアー感バリバリの情事なのがご想像いただけるかと思われます。付言しますと、アダムとエヴァは禁断の果実を口にしたことで、恥じらいを知ってしまったわけです。つまり、恥じらいなど無縁にみえるイケイケの男女が、シチュエーションに燃え上がり、恥じらいの感情をハートの奥底から思い出してしまった、というわけなのでしょう。なんというドキドキ!同時期に『少年ジャンプ』ではグループ交際の冬山デートでスキーのゴンドラに吹雪で意中のあの娘と二人きり閉じ込められてしまった!などという当時最新のドキドキ演出をしていた時代に!玉置さんの音楽がいかにオトナをターゲットにしていたか、よくわかるギャップの大きさです。

ここでさらにAMAZONSのセクシーコーラス、さらに透明感のある鍵盤でオブリを入れつつ「LOVE セッカン」をかまし、そのまま怒涛のリズムで佳境のCメロに入ります。何が佳境って、そりゃ、ナニですよ(80年代)。「ねぇいい?」からはじまるこの箇所、日本語とは思えないリズムで「ねぇ」「いい」「もう」「じゃあ」と、「東村山音頭」の「ちょいと」「ちょっくら」なみの意味のなさ……いや、意味はもちろんありますし、気持ちもよくわかるんですけど、いかんせん言葉になっていません。それがまた、気持ちが切迫していることをよく表現しています。松井さん天才ですか、いや天才なんですけど、玉置さんにこう歌わせると、信じられないくらいの(エロ)パワーを発揮するということさえ計算ずくなのだろうと、にわかには信じがたい想像をしてしまいます。AMAZONSの「まだだわ」も、玉置さんのパワーでセクシー度最高潮になるんですから……。

さて歌はAMAZONSとの掛け合いで、オブリの鍵盤もともないつつ、「せびるわ」「とぼけるぜ」とちょっと焦らしの小康状態で駆け引きに入ります。その後、Bメロでまた「ギャングだぜ」と燃え上がり、「つくづく↓」と印象的な低音を入れます。これは、古くは『大草原の小さな家』でチャールズ父さんがバイオリンを弾きつつ「ああおれはジャングルの王様↓(だんだん低くなる)」とローラを大笑いさせていたテクニックです。残念ながらマイケル・ランドンはドラマで再現しなかったようですけども(笑)。いや、これが元祖かどうか知りませんよ。西部開拓時代にはすでにこの技法があったということだけは確かなようです。

さて、ここで登場する「となりもセッカン中」はちょっとした謎ですね。隣の家……いや、モーテル(80年代)の隣の部屋?まさか仕事中で隣のオフィス?と想像をたくましくしますが、そんなこと(当事者にも)わかるわけがないので常識的に考えれば、いままで二人のことしか頭に入ってなかったリスナーの視野を、まるでカメラを引いて建物の俯瞰図に広げるかのような効果を狙ったというべきでしょう。曲はサックスソロに入ります。

そして怒涛のCメロが再び……もう、曲の構成がセオリーから外れすぎていて、AもB
もCもあったもんじゃないぜつくづく↓という気分になりますが、こんどはAMAZONSが「ねぇいい?」と懇願する側になっています。そして玉置さんが「だめだよ!」とセッカンを行う、という仕掛けなんでしょうね。これはいやらしい(笑)。

最後のサビで、「ほらぜったい好き」「ほらやっかい好き」「世界中」「倦怠中」と韻を踏みます。ここに松井さん一流の遊びが垣間見えて、なんだかちょっとほっとします。安全地帯にもたまに登場した技法だからです。もちろん普通に韻を踏むだけならだれでもやってるんだとは思いますけど、松井さんのはとにかく際どいんですよ。「ほらぜったい好き」は女性の心を弄びつつも、好きなんだと確信してちょっと安心し、「やっかい好き」で「倦怠中」に「しょうがないなあ〜いつもいつも〜」とちょっと喜んでいる男心が表現されている……ように読めるという塩梅です。「世界中」はよくわかりませんけど(笑)、「セッカン」と音の響きが近い言葉を使いつつ視界を一気に広げるかのような効果があります。

曲はラストに向かってセッカンを再度敢行します。そして、唐突に終わるのです。「NA」という謎のつぶやきを残して。うーん、解説しようとして聴き込んでみたら、思っていたよりはるかにとんでもない曲でした。少年期になんじゃあああこりゃあああとマインドをシェイクされたときよりも、さらに大きい衝撃を受けた気分です。こりゃまだまだ、聴き込みが足りなかったようです。大反省です。そして何より、かつてよりもさらにいい曲だと確信できましたので、ニヤニヤしながら聴いていけるのがうれしくてなりません。きっとまた、解釈も更新されてゆくことでしょう。

ところでこの曲、プロモーション動画を、検索すれば観ることができます。いまの時代からみると、バブリーすぎておいおいおい大丈夫かよ!と思わせる気満々の、これまた非常にメンタルブレイキングな出来になっておりますので、ぜひ人を選んでおススメしたいと思います。

Love“セッカン”Do It (2006 LIVE ver.)

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2020年02月16日

She Don't Care

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『All I Do』一曲目、「She Don't Care」です。

いきなりShe Doesn't Careでないのはおかしいのでは?と思いますよね。そこで、「スラングだよ、ビートルズも使っているよ」と言えたらとても英語通な感じがしてカッコいいわけです。おおー!ぜひ言ってみよう!だれかShe Doesn't Careじゃないなんて松井さん英語わかってないなーとか言っていたら、すかさず「スラングだよ、ビートルズも使ってるよ」と言おう!と待ち構えたい!「へー、で、ビートルズのなんて曲?」と訊き返されてアタマ真っ白になるというオチも付けたい!(「涙の乗車券」ですね)。

さてこのアルバム、演奏しているのは安全地帯でなく、海外の一流ミュージシャンなわけですが、クレジットをみてもほとんどわかりません。これは赤っ恥!と思って、いそいそとWikipediaなんぞを検索してみるのですが、ギターのPaul M. Jackson. Jr.さんがいきなり有名人で驚きます。もう見ないことにしようと思うくらい、わたくしわかってませんでした。そして、おそらくこの曲でキーボードを弾いている、アレンジャーにもクレジットされているChris Cameronさんも、セカンドアルバム『あこがれ』にもクレジットされているシンセのPaul Ellisさんも、聞いたことあるようなないような……?な程度でした。うーん、カーマイン・アピスとか、ニール・マーレイとか、そういうのが一流ミュージシャンっていうんじゃないの?とか思っているヘビメタ馬鹿には無縁な世界の一流ミュージシャンさんなのでしょう……(精一杯の強がり)。

左右に振られたシンセの音色から、ズトトントントン!と鋭いドラムが入り、ヘビーなギターとベースがリズムを刻みます。ハーモニクス出しまくりの、やけにカッコいいギターです。

この時点で、安全地帯とはアレンジ思想がかなり異なることが感じられます。はじめからそう思って聴くからそう聴こえるだけのことなのかもわかりませんが、バンド的なアソビが一切ありません。武沢さんはこう弾くだろうから、矢萩さんはこう重ねるだろうから、という長年苦楽を共にしてきた仲間ならではこそ可能であるような、メンバーを想定したバンド的なアレンジではなく、はじめにプロデューサーやディレクターの思想があり、そこにミュージシャンたちが自分の引き出しの中から合わせていく、というような、バンドありきの統一感でなく、アレンジ思想ありきの統一感が感じられるわけです。うーん、これは油断ならないぞ。安全地帯と似たような聴き方だと思わぬヤケドを負いそうです。ミュージシャンの名前をほとんど知らなかった時点ですでに瀕死の重傷を負っているという事実はすっかり棚に上げるとしても。

さて、するどいドラムを残し、ベースもギターも控えめに短音リフを弾きつつ、玉置さんの歌が入ります。そこで歌詞ですが……簡単にいえば、ぜんぜん気がないように見えるか、もしくはほんとうに気がない女性を嘆く歌ですね。いまいちこっちを見ていないような……実際見てないんでしょうけども(笑)、いわゆる当時の「アッシーくん」「メッシーくん」扱いされているんだけど、そうとは思わず、いや、半分気づいていながら、一縷の望みにかけているという、なんだか「こしゃくなTEL」以来のつらい恋をしている玉置さんが表現されているように思われます。

Bメロに入りまして、ギターとベースがガッガガガ!ンガッガー!(ズキュン!)といった、カタカナで書くとマヌケこの上ないけども、聴いてみると、並のボーカリストなら喰われかねないカッコよさでリズムを刻みます。しかしそこは玉置さん、「なにを なにを」と彼女の視線を追い、「知りたい」と情熱を吐き出し、鬼気迫る迫力でギターとベースに立ち向かいます。ある種の予定調和的なスリリングさがあった安全地帯と違い、ひとりひとりのミュージシャンが互いに争い、次の瞬間は誰が勝者になっているかわからないような怖さがあります。こ、これは戦いだ!まあ、玉置さんのアルバムなんですから、玉置さんを勝たせるにきまっているんで、エンジニアはその気になればギターやベースのフェーダーを下げるだけなんですけど(笑)、ギリギリまで緊張感を高めさせたようなアレンジとミックスになっています。この曲のアレンジとミックスはほんとうにカッコいいです。

さらに、同じリズム・リフでそのままサビに入るという、予想をかなり裏切る曲構成に驚かされます。シンセがオブリに入っているので、アレンジも一応は盛り上がるんですが、それでも基本線はBメロのままです。玉置さんの咆哮がサビの盛り上がりをほとんど一人で支えているという、と少し心配になる大胆な作戦に打って出ます。関ヶ原の島津撤退なみの豪胆さがないと、とてもこんなアレンジはできません。

ところで、彼女は何にふるえているんでしょうか…?それとも彼がふるえているのか?何かに夢中になっていて心をふるわせている彼女が(自分を差し置いて)一体何に夢中になっているのか知りたくて仕方がない、のか、それとも、彼女に微妙に冷たく、それとも生ぬるく扱われている自分が歯がゆくて、彼女にもっと近づきたくてしかたなくてふるえてしまっている自分の気持ちをわかってほしいよ!と言っているのか、どちらにしてもロクな将来像が描けそうもないカップルです(笑)。

ブラスで間奏の旋律を描き、曲は二番に入ります。一番とだいたい同じ調子で進みますし、話も当然進展してませんので(笑)、まあ、これは割愛してもいいでしょう。「つまさきのしぐさ」なんて、そんなの見えてるわけないじゃん!という冷静なツッコミも野暮な、安全地帯的な松井ワールドがここにちらりと見えるのは印象的ですね。

特筆すべきはサビの終りから間奏に入る、そのアレンジです。「ハ〜ハ〜ヤッ!」という玉置さんの叫びから、シンセサックスでベースとドラムで短く、「ダダダダダダ!ダンダン!」と激しく変則的に畳みかけ、ルーズだけども速いサックスソロを挟んでこれまでのリズムをいったんリセットします。これはカッコいい!うーむ、こういうこと思いつくのは誰なんでしょう。玉置さんはあまりミュージシャンと話さなかったようですから、星さんや金子さんが主導したんでしょうけども、この二人はつとめて安全地帯の色を消そうとしたに違いないのです。

そして曲はサビを繰り返しつつ、フェードアウトしていきます。ここで気づくのですが。「She Don't Care」って、ヤマビコいれてますけど、基本的には玉置さんの声を一回だけで歌ってますよね、ここの歌詞を。普通だったらハモリとか入れそうなところなのに。これにより、玉置さんの声だけで勝負!という意気込みがおそろしく強く感じられるアレンジになっているように思えるわけです。これは……島津軍どころじゃないかもわかりません。呂布だけで勝負!なみの個人戦(周りはもちろん個人戦のつもりはありませんけど、ひとりだけ段違いに強いのでそう見える)です。

一曲目からこんなんですから、このアルバム、先が思いやられます(音楽的にはいい意味で、わたくしのアタマ的には悪い意味で)。そしてわたくし、一年も記事を書いていなかったことに気づき戦慄しておりますので(笑)、なるべくソロソロとリハビリしていきたいなーなんて思っているわけであります。

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2019年02月26日

All I Do

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だいぶ久しぶりになってしまいました。玉置浩二ファーストアルバム『All I Do』です。1987年8月発売、地味な茶色のジャケット写真が逆にTSUTAYAとかの新譜コーナーで目立っていた記憶があります。

「一流ミュージシャンの伴奏で玉置浩二の歌を聴かせる」というコンセプトだったそうですが(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)、当時の私には、いや今でも(笑)、安全地帯でない演奏で歌う玉置さん
のボーカルはしっくりきません。『CAFE JAPAN』で玉置さん自身が演奏をはじめて、ようやくいくらか違和感が和らぐくらいです。武沢さんだけが不参加だった『To me』もなんだかなー、です。ですから、「こんな浩二もいいじゃん」なんてとても思えませんでした。『安全地帯V』にもさんざんスタジオミュージシャンが参加しており、中にはメンバーの演奏でないものもけっこう含まれているというのに、クレジットが違うだけで結構幻惑されるものです(笑)。

とはいえ、さすがの玉置さん、曲と歌はマーベラスな出来で、安全地帯のことを頭から消して聴くとものすごい威力をもったアルバムです。実験的、際どい、などと、貶してもいないけど褒めてもいない評価の散見されるアルバムですが(笑)、それは玉置さんが曲と歌で思いついたことを、スタジオミュージシャンの苦労など気にかけずに好き放題やったからであって、そのぶん玉置時空に引きずり込まれる快感を他のアルバムより多く得られるものとなっています。

では、一曲ずつご紹介を。

1. She Don't Care
 リズムが大胆な、爽快ギター・ロックです。キターのカッコよさがかなり強いんですが、玉置さんのボーカルが対等以上に強いものになっています。

2. Love ''セッカン'' Do It
 前の曲とこの曲を足して二で割ると「じれったい」になるんじゃないの?というくらい、安全地帯・Bananaテイストの強いナンバーです。

3. 1/2 la moitie
 「不思議な夜」系統の、玉置浩二・Bananaテイストソングです。この二人がやりたいようにやると、こうなるんですね。オーケストレーションが美しいのに、歌メロが泣かせに来ないという、なかなかない趣向の曲です。

4. Hong Kong
 安全地帯は当時からすでに香港で大人気でしたが、日本でも香港人気があったんですね、この頃。きっと『ブレードランナー』のせいでしょう(笑)。曲はちっとも香港っぽくないですが、それ抜きで楽しめるロックナンバーです。

5. Only You
 シングル「All I Do」カップリングです。美しいバラードですので、安全地帯的なバラードを期待した人はきっと、ここでようやく期待に応えてもらった快感に咽び泣いたことでしょう(笑)。逆を言うと、ここまで裏切られ続けたわけです。

6. Holiday
 これも安全地帯的バラードを求めた人が喜んだ曲でしょう。かわいらしい演奏でせつない歌詞という、玉置・松井コンビの真骨頂です。

7. All I Do
 シングル曲にして、タイトルナンバー、このアルバムのメインと言える曲です。歌メロは安全地帯ですが、曲もアレンジも従来の安全地帯にはないテイストの、ハードなミドルテンポ・ロックです。ソロ活動するならこれくらい毛色の違うことをやらないとね、という決意が伺えます。歌メロとボーカルは安全地帯ですので、うっかりすると違いがわかりません。

8. Check on Myself
 前三曲で安全地帯ファンを喜ばせた玉置さん、また遠くへ走り去ろうとしています(笑)。チェックということばの、音・リズムの面白さと、半ば意味のない歌詞との融合が見事な、リズム主体のロックナンバーです。

9. なんだ!!
 明後日への疾走はもう止まりません(笑)。エポックメイキングさが際立つこの曲をシングルにすればいいんじゃないの?と思うのですが、おそらくレコード会社は止めるでしょう(笑)。「なんだ」のリズムと、意味の強さを前面に出したロックナンバーです。わたし的には、このアルバムで一番カッコいい曲ですね。

10. Time
 安全地帯・玉置浩二随一の美しいピアノで、これこそ歌を「聴かせる」バラードです。pukupukuさんにご指摘頂いてその存在を思い出した(笑)、小曲です。すみません!大作家の掌編小説みたいな……、芥川の『蜜柑』にも似た輝きを放っています。

11. I'll Belong
 結婚式で歌う人がいるそうですね、この曲。たしかに結婚式の雰囲気に似つかわしい、隠れた名曲です。バラードのアレンジが安全地帯でないとちょっと弱めになりがちな玉置さんなんですが、このくらいあっさりでないと、結婚式にはよろしくなさそうです。もちろん玉置さんはそんなつもりで作ってないと思いますが。

12. このゆびとまれ
 音程の確かでない子どもコーラスは、玉置さんの必殺技の一つですが、この曲が初のお披露目でしょう。当時は驚きましたが、いまはすっかりニコニコです(笑)。「ゆびきり」へと続く、童謡ライクなかわいらしい曲です。松井さんの、思わせぶりな歌詞が泣けます。ソロ活動を始めた玉置さんに「このゆびとまれ」と歌わせるんですから……。

次回より、一曲ずつ語らせていただきます。この更新だって一年か二年ぶりですから、いつになることやらとちょっとあやしいものですが(笑)、なるべく頑張ります。

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2018年03月21日

To me

安全地帯V

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『安全地帯V Harmony』十一曲目、すなわち『安全地帯V』のラストチューン、「To me」です。

エレクトリック・ピアノの澄んだ音で「ジャジャジャン〜」と始まるこの曲を聴くと、ああ、このアルバムも終わりか……いいアルバムだったな……と強烈に思わされます。これで11曲目、『安全地帯V』全体でいうと36曲目、二時間も名曲たちを聴いてきた果てにある、この終局感の高さたるや……ここまでの名曲たちの感動をすべてまとめ上げる力をもつ、屈指のバラードです。ここまでの圧倒的な感動の余韻を、あっさりした小曲で受け流さず、正面から受け止めて最後まで感動させてくるのです。それでいて「デザートは?」なんて不満を残させない、信じがたいほど見事な終わり方です。この役割は、他の曲では果たせないように思われます。そう、あの「ほゝえみ」でさえも……。

「To me」というタイトルだけみれば、「あなたに」と対になる曲なのです。「あなたに」が、愛しくてたまらないけどそれで君を苦しめるなら一歩引くよ的な、ちょっと余裕と遠慮のみられる曲であるのに対し、この「To me」は遠慮なんてしません。「……して、……して、……ほしい、……ほしい、……から」と、グイグイ引き寄せます。最後だけが「眠ろう」と、要求でなくお誘いなんですが、これも松井さんにより計算されつされた戦略です。そりゃここまでくれば、「なにも言わないで」なんて言われずとも、なにも言えず眠るしかありません。「あなたに」から数年を経て、石原さんとの物語を終えた玉置さん、そして安全地帯の音楽をこれ以上なくドラマチックにしめくくる、見事な、ほんとうに見事な曲です。

もちろん安全地帯はこの後も続くのですが、次作『安全地帯VI〜月に濡れたふたり〜』までに、すこし間が空きます。その間、ちょっとしたリフレッシュ期間的に玉置さんはじめメンバーのソロ活動が挟まるのです。リフレッシュなんだから保養地とかで休もうよと思うのですが、この人たちはそうはいかないんですね。ともかく、「To me」を締めくくりとして、このアルバムのみならぬ「何か」が終わったのは確かなのです。

のちに玉置さんのソロアルバム『ワインレッドの心』一曲目がこの「To me」だったことは、大した意味はなかったのかもしれませんが、わたくしにはとても暗示的に見えました。安藤さと子さんのピアノと、武沢さんだけがいないにしても安全地帯のメンバーたちで録音されたこのアルバムが、「あの時代」「あの物語」を終わらせたこの「To me」から始まるとは……その後、『安全地帯IX』で再始動する安全地帯の基調は、これにより決定されたようなものだったと、わたくしには思えました。

さて、この曲、イントロから一気にエレクトリック・ピアノのコード・ストロークで、静かに、しかし力強く、グイグイと迫ってきます。くちびるをあずけるなんて、長くて数分、現実的には秒単位でしょう。ですから、「いまだけ」の「いま」は、本当に刹那の「いま」なのです。

そしてストリングス、六土さんのベース、少し遅れて田中さんのドラムが入ります。リズム隊のお二人は、ひたすら堅実です。いや、全員堅実なんですけど(笑)、この曲でこの二人がアソビを入れると収拾がつかないくらい壮大なアレンジなので、ことさら堅実に聴こえるのです。「いやー、まあ、ちょっとは気にするけど、いつも通りで大丈夫だよ!」とかニコニコ言いそうなお二人であるのも、いつも通りです(笑)。ギターは、先に聴こえるアルペジオが矢萩さん、歌の合間に「トルルン・トルルン」とアオリを入れるのが武沢さんですね。壮大なシンセやピアノが目立つ曲に、ギターのお二人の、この仕事は渋すぎます。わたくし、バラードにはかならず「ンパララ〜(アルペジオ)トルルン・トルルン(アオリ)」と入れるパターンをしばらく使い悦に入っておりましたが、例によって誰も気づいてくれませんでした(笑)。

そしてダイナミックな展開(E→F→G→Aを一拍ずつダン!ダン!ダン!ダン!……これも単純なのに渋すぎです)で曲はサビに入ります。「あなたの」「つたえて」に入る、三度下のコーラスが美しいことといったら!ライブの映像で見る限り、武沢さんのようですね。玉置さんの歌を支える、最高のコーラスです。これはさすがに、安全地帯に興味のないうちのメンバーでさえも「このコーラス、カッコいいね!」と称賛しておりました。そうだろうそうだろう、さあ君もこういうコーラスを入れるんだ!と思いましたが、うちのメンバーは揃いも揃って歌うことには少しも興味がなく、パンテラの「Walk」のように叫んだり吠えたりするのが好きなのでした(笑)。

そして曲は「あなたに」が「Goodbye」で区切るところを、「To me」というささやき、そして三連符で音階を駆け上がるエレクトリック・ピアノで区切ります。なんというドラマチックな緩急の付け方!ため息が出ます。そして二拍の間を取り、ストリングス・ベース・ドラムのユニゾンで「ジャジャジャーン」と二番がはじまります。ここは、いってみれば変拍子なんですが、四拍だと「ジャジャジャーン」が待ちきれません(笑)。それはたんに長年この曲を聴いてきたからそう感じるだけなのかもしれませんが、必然性のある変拍子に思えてならないのです。

さみしい夜を忘れさせ、あなたのためにいたいと宣言しつつ、曲は二回目のダイナミックな展開を迎えます。ここで曲は、玉置さんが声を切なく張り上げ、あげくにものすごく細かい「ピヨヨピヨヨピヨヨピヨヨ〜」というシンセの音がまるで子鳥たちが舞うかのように響き渡り、聴く者の胸にガトリング砲のように迫ってきます。そして玉置さんが、これまで抑えに抑えていたかのように「To me」と叫ぶのです。これはひどい、感動せざるをえません、というか、すでに感動してるんだからここまでダメ押ししなくても!徹底的すぎます(笑)。

そして曲は最後の局面、Aメロに戻ります。ギターのお二人が、まるで先ほどの大規模攻撃がなかったかのように、「ンパララ〜(アルペジオ)トルルン・トルルン(アオリ)」と、泣かせに来ます。玉置さんも前半の歌詞を繰り返し、あれ、もしかして本当に何事もなかったのかな、と一瞬思わせるのですが、これまでと調子を変え「眠ろう」とお誘いをかけることにより、やっぱり何事もなかったわけじゃないんだ!と思い起こさせるのです。そして曲は壮大なオーケストレーションをリタルダンドで入れ、わずか数小節で終わります。あっ……終わった……ジワジワジワ〜と「To me」そして超大作『安全地帯V』の余韻をいつまでも胸の中にフィードバックさせる、パーフェクトな終わりかたです。これは、二時間このアルバムを聴いてきたのでなければ得られない感動かもしれません。ベートーベンの交響曲を聴き終わったときの感動に近いものがあります。この「To me」は、魂揺さぶられっぱなしの二時間を締めくくるにふさわしい、超弩級の名曲だといえるでしょう。こんな名曲がシングルになっていないのはなぜかと思ったこともありましたが、シングルじゃ生きないですよね、この曲のスケールは。

さて、とうとう『安全地帯V』の記事も書き終わりました!次は、おそらく『All I Do』になります。どうぞ引き続きご愛顧いただけたらと思います。

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2018年03月17日

夢になれ

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『安全地帯V Harmony』十曲目、「夢になれ」です。

玉置さんが歌う「だんだん」が強烈なアクセントになって、耳を離れない名曲といえるでしょう。松井さんと玉置さんが生み出した「声リフ」ですね。

わたくしが好きなので当ブログでも何度か言及されている沢木耕太郎さんに、「いま、歌はあるか」というルポルタージュがあります。その中に、ヒット曲から抽出された登場頻度の高いことばを一位から単純に並べただけのデタラメ歌詞が、わりとそれらしい70年代歌謡曲の歌詞になってしまっている、という悲しくも可笑しい話が載っているのです。調べてみると、なんと作詞者のほうも作詞で行っている作業はそれと大同小異のようなもので、ほとんどウケる言葉の順列組み合わせのようなものだった……「ヒット曲」を次から次へと作ることに忙しくて、とてもそれ以上のことなどしている、試してみる、言ってみれば「勝負に出る」余裕なんかない……という、日本歌謡界の商業化とか堕落とか、いかにも70年代後半らしい基調で話は進められていきます。あ、いや、嫌いじゃないですよ。むしろ好きです、そういう社会批判精神みたいなやつ。わたくしが若いころくらいまでは、ガクモンとかブンガクとかゲイジュツとかの世界では、そういう雰囲気がわりと支配的でしたから。事実、そういう雰囲気こそが、フォークや、いわゆるシンガーソングライター、ニューミュージックといったものを生み出す原動力になったのでしょう。「ひとふしの魅力」とプロの演奏力で勝負するヒットメイカーたちによる歌謡曲と、批判精神や物語性・情緒・情景的な魅力をふんだんに持っていたものの演奏力はイマイチだった新世代の音楽たち、双方の長所を併せ持っていたのがこの時期の松井・玉置コンビを擁する安全地帯だったのではないか、とそう思うわけです。それほど、この「だんだん」の力は強いです。

ああ、話がすっかりそれました。では、前曲「燃えつきるまで」のラストから……「キュワーーン」と、ギターともシンセともつかぬ音に景気づけられ「夢になれ」は始まります。ズッ・クツ・タカ!ズッ・ク・タカタカ!のリズムで田中さんのドラムと六土さんのベースが「二人で一つ」の分厚い基本リズムを形作る裏で、川島さんのシンセパッドがチャンカチャカチャカ……と、まるで南半球の民族音楽かと思われるほどのアオリを入れています。こんなリズム、日本の歌謡界はもちろん、ロック界でも前代未聞なのではないでしょうか。時は80年代中盤から後半、ジャパン・アズ・ナンバーワン、ロン&ヤスで先進国のツートップを張っていた時代です。デジタルでキッチュでポップでコケティッシュで……と、日本人がわけのわからない優越感に浸っていた時代に、いきなりその頭をガツンと叩きつけるような、強烈な魅力をもったリズムです。このとき叩かれたことにも気づかなかったような人たちが、のちの90年代J-POPムーブメントを作っていったんですけども(笑)。そして、低く低くおさえた武沢さんのギターが「キコカコキコカコ……」と細かく細かく刻まれ、遠くからやってきて、玉置さんの歌がはじまります。

この後、武沢さんがよく目立つ歌の導入部「キコカコキコカコ……」や歌のアオリのアルペジオを担当し、矢萩さんが「・チャ・チャチャ……ンカカカ・カカカカ……」と細かく刻まれているリズムを担当されているようです。矢萩さんのパートは、けっこう頑張って耳を澄まさないと気づくのは難しいかもしれません。この矢萩さんの役割、非常に渋いです。こういうギターは、わたくしにはできません。自分が出しゃばりなんだと気づかされます。かといって武沢さんが出しゃばりかといえば、もちろんそんなわけはなく、わたくしがこの場にいたら絶対にサビでギャンギャンと弾きまくり、せっかくの最先端なこの名曲を、台無しにしたに違いないのです。

またこの曲では、ホーン・セクションが派手に取り入れられており、Bメロからサビ、間奏で非常に印象的なアオリを入れます。この役割は、ギターでは果たせないようで、2010年の復活ライブでも、シンセでホーンセクションを代用していました。ズラリと並んだホーン部隊が、なぜかアクションまで揃えて、生ブラスの音色を武道館に響かせた『To me 安全地帯LIVE』が、いかに豪勢なものだったかがよくわかります。

ゴージャスそのものの布陣で炸裂するこの「夢になれ」は、「ふたりで踊ろう」「銀色のピストル」などと同じく、もしかして玉置さんにとっては、思う存分自分の世界を表現できるものであったかもしれません。その一方で、一度動き始めてしまうと、玉置さんがリアルタイムで思うように操ることのできない規模のものとなっていたのかもしれません。ステージに10人以上いますので、アイコンタクトったって限界がありますからね。聖徳太子でもさすがに目は10個もないでしょう。そんなわけで、「夢になれ」もまた、この後数年を経るともう二度と見られなくなってしまうゴージャス安全地帯を象徴する曲だといえるでしょう。

さて歌詞です……一言でいえばやぶれかぶれの情事、なんですが(笑)、そこにさえある種の美しさと悲しさをまとわせたドラマとして魅せてしまう、信じがたい言葉の力、歌の力に圧倒されます。もう、松井玉置コンビの行く手を阻むものは何もない、とさえ感じられてしまいます。

なにもかも忘れて、なにもかも奪い、踊り、叫ぶカーニバル(謝肉祭)は、ジェイムズ・ジョイスの小説で肉屋が売春宿を兼ねていることを暗示させる肉のイメージを、聴く者の心に強烈に叩き込みます。

仮面をつけたまま肉と肉をあわせるなかで、「だんだん」と、仮面の下に隠されていたものが顕れてきます。デジタルでキッチュでポップでコケティッシュな(笑)雰囲気を纏おうと努力していても、それはしょせん虚飾にすぎません。「他愛ない嘘」も「飾られたよろこび」も、破裂したかのような涙で剥がれ落ちてゆき、「なさけない孤独」が露になります。

そんなこと、どうでもいいんだ、あなたを愛してるんだ、わかってないんだね、ぼくは叫ぶんだ!

デジタルで……後略(笑)の時代を寵児として駆けぬける玉置さんに、そんなことを歌われたんじゃ、前略……コケティッシュな女性はたまりません。松井さん、玉置さん、わかっててやってますね、超ズルいです(笑)。

この曲のものすごさは、当時の社会の雰囲気を肌で感じていた人でないと、わかりにくいかもしれません。ただ、もしかして、トバ解釈だからこそそう感じられるだけという可能性はおおいにあります。ツェッペリンの「カシミール」や「アキレス最後の戦い」のように、もうこんな曲が生み出される時代は二度と来ないだろうとわかっているほど時代に埋め込まれた曲であるにもかかわらず、新しい時代でも新しい輝きを見いだされ続ける曲であるのかもしれません。

余談ですが、2010年のライブ『安全地帯”完全復活”コンサート2010 Special at 日本武道館 〜Stars & Hits「またね…。」〜』では、この曲の途中でチューニングをいじる六土さんの姿を見ることができます。わたしのスキルでは曲の途中なんてそんなリスクはおかせませんので、我慢してつぎの曲間まで待ちますが、六土さんのプロフェッショナリズムとスキルが、それを許さないのでしょう。やはり渋いです。

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