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2018年11月30日

a其壱〈私的チェコ語辞典〉(十一月廿五日)



 気が付けば、いつの間にか記事総数も1000を越え、自分でも何をすでに書いて、何をまだ書いていないのか、どのレベルまで書いたのかという辺りの記憶が、あいまいになってしまっている。その結果、何について書くか悩んで時間を費やすことも増えているので、確実に今まで書いていないシリーズ(大げさ)を構想することにした。書こうとして考えていることはいくつもあるのだけど考えがまとまるのに時間がかかって書けないでいる。書きやすい(とは限らないけど)ことを書いているうちに、まとまるかもしれないとも期待している。
 ということで、チェコ語のそれぞれの言葉について、『悪魔の辞典』ような箴言的な解説を加えてみようと思ったのだけど、その路線で行くと、多分実用には役に立たなくなるから、それよりはもう少し現実的で、普通の辞書とは違うひねくれた文章を書いてみることにする。思いつきで始めたから、どの言葉を対象にするかや、どのぐらい長く書くかなんてことは、書きながら決めていくことになる。言いかれば、いつも通りの行き当たりばったりということである。

 新しいシリーズの最初の記事は、枕の部分で分量が稼げてありがたいなんてことを考えつつも、最初の言葉を何にするかである。あれこれ考えたが、無難にチェコ語の辞書の一番最初に出てくる言葉で、チェコ語の単語別の使用頻度で恐らく一番になるだろう「a」から始める。こんなところで奇を衒っても仕方がないしね。

 一般には接続詞といわれるこの言葉、あらゆる品詞を並列でつなぐのに使える。名詞と名詞、形容詞と形容詞、動詞と動詞、副詞と副詞などの間だけでなく、文と文の間にも使う。翻訳する際に一番よく使われるのは、日本語で名詞と名詞の間に使う助詞の「と」であろう。
 日本語がある程度できるチェコ人と話していて、一つの文が終わったところで「と」、もしくは「とー」を連発するのを聞いたことがある人もいるのではないだろうか。これは日本語の「ええと」の「ええ」が落ちたものでも、昔の武田鉄矢が昔やっていた方言ギャグでもなく、本来名詞と名詞の間にしか使えない日本語の「と」を文と文の間にも使えるチェコ語の「a」と同じような使い方をした結果発生した間違いである。

 チェコ語で名詞と名詞の間にこの「a」を使う場合に気をつけなければならないことは、三つ以上のものを並列する際には、「a」を使うのは最後の名詞の前だけだということである。このルールは名詞だけでなく他の品詞が三つ以上並ぶときにも適用されるけれども、三つ以上並べる可能性が一番高いのは名詞なので名詞を使うときの説明に入れておく。
 日本語であれば、「日本と中国と韓国と北朝鮮」のようにすべての名詞の間に入れてもいいし、「日本と中国、韓国、北朝鮮」とか「日本、中国、韓国と北朝鮮」、「日本、中国、韓国、北朝鮮」などそれぞれ微妙にニュアンスが変わらなくもないけれども、様々なパターンで使用することができる。それに対して、「正字法」なんていう正しいとされる書き方が決められているチェコ語では、「Japonsko, Čína, Jižní Korea a Severní Korea」と最後だけ「a」を使ってそれ以外は「,」で済ませなければならないのである。

 日本語的に「a」を連発して師匠にあきれられたこともあるのだけど、それは「,」が頻出すると、長い文の場合に文の構造が、自分で書いたものであってもわかりにくくなるので、それを避けたいという気持ちが無意識に働いた結果である。もちろんこれは言い訳で、この間違いを頻発していた頃のチェコ語力では言うことができなかった。もう一つ、間違えていた原因を探すとすれば、最初から並べるものをすべて決めておらず、一つ一つ思いついたものを追加していったために、口に出す時点では最後の名詞だから「a」をつけたけど、次を思いついて追加したために「a」が不要になったなんて間違いも多かったかな。

 もう一つ注意点を挙げておくとすれば、日本語でも助詞の「と」で並列できないような二つ、場合によっては二つ以上の名詞は、チェコでも「a」で並列することはできないということである。並列できるできないは、文脈やら、その文で使われている動詞、形容詞なんかによって変わるから、一概にこれとこれは絶対に並べられないとは言えないけど、日本語でなら、これとこれ並べちゃ駄目だよなあなんてことはわかるはずだ。そんなのはチェコ語でも並べちゃいけない。「私は日本とミカンが嫌いだ」なんていう文を見ると、使える状況が想定しづらいのは、チェコ語でも同じなのである。

 あれ、何でこんなに長くなったんだろう。せっかく分量が稼げたので二つに分けることにする。ということで以下次号。
2018年11月26日23時。




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2018年11月29日

森雅裕『鉄の花を挿す者』(十一月廿四日)



 1995年に久しぶりの講談社から出版された本書は、講談社での前作『流星刀の女たち』に続く刀剣小説、というよりは刀匠小説である。でも人が死んで、その謎を追う主人公も殺されかけるから推理小説として理解したほうがいいのか。森雅裕の作品は、推理小説ではあっても推理以外の部分に魅力を感じるべきものだから、刀鍛冶の世界を描いた小説として理解しても問題あるまい。『流星刀の女たち』でも人は死ななかったけど、推理的な要素は遭ったわけだから。
 この作品は主人公が男性であるぶんだけ、森雅裕中毒者にとっては、『流星刀の女たち』よりとっつきやすいのだが、こちらもテーマがマニアックに流れすぎていて、読者を選びそうな作品である。刀の刃文の焼き方なんてどれだけの読者が理解して読めたのだろうか。自分のことを思い返しても、目次の前に刀の刃文を説明するための挿絵があるのだけど、実際に刀を見てこういう刃文を読み取れるとは思えなかったし、作品中文章で説明されても、刀自体を刃文が読み取れるほど見たことがないこともあって、どんなものなのかいまいち想像がつかなかった。

 同じ刀鍛冶を描いた作品でも『流星刀の女たち』の主人公は、刀剣の世界の外側にいる存在だったが、こちらの主人公は、完全に受け入れられてはいないとはいえ刀鍛冶の世界の中にいる。その刀鍛冶の世界のよしなしごとが事件の原因となり、主人公が巻き込まれていくことになる。主人公の性格は、いつもの森雅裕の男主人公でちょっと世を拗ねているのだけど、いつもより世捨て人的傾向が強いのは、刀剣の世界の闇とかかわるせいだろうか。
 刀鍛冶の師匠の死を、人づてに聞くところから、師匠が死の直前まで取り組んでいたプロジェクトに関して発生した事件に巻き込まれていくのだけど、プロジェクトの謎と弟弟子の死の謎が絡み合っていく展開も、悪役が、悪役臭が強すぎるのはあれだけど、話のつくりとしては悪くない。悪くないし面白いことも面白いのだけど、森雅裕の作品だと考えると、読後に圧倒的な不満が残る。

 それは、ヒロイン役の女性の存在感のなさである。おしとやかで、多分美人で、性格的なしんの強さもないわけではなく、ヒロインとしての魅力がないわけではないと思う。ただ、森雅裕の小説の女性主人公としてみると、どうにもこうにも存在感が足りない。三人称小説とはいえ、ほぼ主人公の視点から語られるから、出番が少ないというのはある。でも森雅裕の生んだ最高の女性キャラクターである鮎村尋深なら、一瞬の出番であってもはるかに強い印象を残したことだろう。
 こちらのヒロインの方が一般受けはいいのかもしれないが、森雅裕ファンには物足りない。主人公がいて、ヒロインがいて、その婚約者がいるというパターンは、『蝶々夫人に赤い靴』の鮎村尋深の場合と同じだけど……。森雅裕の小説のヒロインにしては、主人公を受け止めきれていないので、主人公の煮え切らなさもまた気になってしまう。この作品の主人公の刀鍛冶と、オペラシリーズの音彦とで大きな違いはないのだけど、受ける印象が大きく違うのは、相手役の存在感によるのである。

 正直、この作品を読んだときに、森雅裕の女性観が変わったのかなんて馬鹿なことを考え、周囲の森雅裕読者と話したりもした。女性観だけでなく作風も変わるのかなと思っていたら、版元を集英社に移して、時代小説というか歴史小説と言うか、日本を舞台にして歴史上の出来事、人物をテーマににした作品を刊行し始めたのだった。
 『さよならは2Bの鉛筆』について中島渉が書いたように、この作品で森雅裕は変わったなんてことを言いきることはできないのだけど、これまで、好きなように書いてきたのを、この辺から『モーツアルトは子守唄を歌わない』『椿姫を見ませんか』以来の古いファン以外の読者を獲得することを意識し始めたのではないかと邪推する。その結果、古いファンとしては何とも評価しにくい作品が登場したのだから皮肉である。

 森雅裕の作品の場合、森雅裕の作品だから読んだし、面白いと思ったし、高く評価してきた。ただ、この作品『鉄の花を挿す者』に限っては、森雅裕の作品というレッテルを外したほうが高く評価できるのかもしれない。森雅裕なんだけど、いつもの森雅裕じゃないというジレンマは、この作品以後しばしば発生したと記憶している。森雅裕が読めて幸せなんだけど、その幸せ度が十分ではないというかなんというか、森雅裕に関しては登場人物だけでなくファンもひねくれているから、満足させるのは大変なのである。
2018年11月25日23時50分。



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posted by olomoučan at 07:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 森雅裕

2018年11月28日

内閣不信任案否決(十一月廿三日)



 かねてよりの予定通り、この日下院においてバビシュ内閣に対する不信任案の審議と議決が行われ、当初の予想通り否決され、野党勢力による倒閣の試みは失敗に終わった。驚くべきは最初からわかりきっていた結果を出すために延々7時間以上も、各党の党首たちをはじめとする議員たちが交代交代演説をしていたということである。そんな無駄なことをする時間があるのなら、もっと大切な審議すべきことがあるだろうという気持ちを禁じえない。
 民主主義というものにおいて、議会での審議が大切なものであることはわかっているから、真偽そのものを無駄だと切り捨てる気はない。無駄なのは事前の交渉で結果が予想できていて、審議をしてもそれがひっくり返る見込みのない議案に関して、延々と同じ話を何度も、手を替え品を替え人を替えながら繰り返すことである。どうせ相手の言うことはろくに聞かずに自分の言いたいことだけ言っておしまいなのだから。

 問題は、そんな言いたいことを言い合うだけで、説得にも妥協にもつながらないものを、議論とか審議という言葉で呼んでいいのだろうかということである。考えてみれば、日本もそうだが近年は、議論にならない議論、相手の話を聞く気のない議論が氾濫している。小学校だったか中学校だったかで、水掛け論ではなく建設的な話し合いをするようになって指導を受けた木がするのだが、政治家たちの話し合いの能力はそれを下回るのである。
 最近、民主主義の危機なんて言葉がしばしば使われるが、民主主義が危機にあるとすれば、それはトランプ大統領が誕生したり、オカムラ氏が大臣になったり、バビシュ氏が首相になったりするところにあるのではない。それは自分の主張が通らなかったことを、支持する政治家が落選したことを、民主主義の危機などという言葉で批判する連中が民主主義を標榜しているところにある。この現象も、本をただせば自分の意見を主張するだけで、相手の話を聞かない態度に終始する議論もどきに端を発する。

 それはともかく、バビシュ内閣は、共産党が反対票を投じ、社会民主党が採決に参加しなかったおかげで、不信任案を可決されず、現在の形で継続することが決まった。市民民主党の党首は、不信任案に反対の票が半数を超えなかったことを理由に、これは内閣が信任されなかったということだと主張しているけれども、賛成も反対も90ちょっとでほぼ同数だったのだから、詭弁としか言いようがない。自分たちの戦略のなさを棚に上げて詭弁を弄しても支持層の拡大にはつながらないと思うけどねえ。
 この日発表された11月の政党別支持率調査の結果では、相変わらずANOが30パーセント近くの支持率でトップだった。回答者の多くは息子誘拐疑惑が勃発する前に回答した結果らしいから、今調査したらまた違った結果が出るかもしれないが、ANOがチェコの有権者の間で一定の支持層を形成しつつあることを物語っているのだろう。バビシュ氏と同族嫌悪のののしりあいをしているカロウセク氏が党首の座を退いたTOP09は、支持率3パーセントで現時点で総選挙が行なわれていたら、当選者を出せていないという結果が出ている。この傾向もまた、社会民主党を除いては、解散総選挙を主張しなかった原因になっているのだろう。

 チェコの歴史では以前もスキャンダルに見舞われた首相は何人かいる。30台半ばという、史上最年少で首相になったグロス氏の場合には、プラハの一等地に購入したマンションの資金の出所があいまいだというのが問題にされた。おじさんにもらったとか苦しい答弁をしながら頑張っていたと思ったら、突然辞任してしまった。現時点で最後の市民民主党出身の首相ネチャス氏も当時愛人、今奥さんが個人的な理由で軍の情報を部を動かしたという疑惑に巻き込まれて、頑張れそうな形勢だったのに、あっさり辞任してしまった。
 どちらも、辞任することでスキャンダルの責任を取ったといえば、聞こえはいいのだが、むしろ無責任に政権を投げ出したような印象を残した。特にネチャス氏の場合には投げ出しぶりが、次の選挙での市民民主党の惨敗につながったといえる。それに対して、現在のバビシュ氏の一年以上も続く足掻きぶりは、みっともないとも、権力にしがみついているとも言えるレベルの物なのだが、逆にそのしぶとさに感心してしまいそうにもなる。恐らくANOの支持者にはそのしぶとさが頼もしく写っているのだろうし、既存の政党からの攻撃に耐えているようにも見えるのだろう。

 そう考えると、既存の政党を指導する政界の日の当たるところで、たいした苦労もせずに活動してきたエリート達には、バビシュ氏に太刀打ちするのは荷が重そうである。グロス氏もネチャス氏もそんな感じだったし、バビシュ氏のANOの勢力拡大にあせって自爆したソボトカ氏も、今の社会民主党の党首のハマーチェク氏にも、市民民主党のフィアラ氏にもそんなひ弱さを感じてしまう。
 今のチェコの現役の政治家で、バビシュ氏のしぶとさ、したたかさに対抗できそうなのは、ゼマン大統領ぐらいしかいない。この二人が盟友的な関係にあり、既存政党に期待できそうもない以上、海賊党の成長に期待するしかないのかなあ。ということで、いつになるかはわからないけれども、バビシュ首相の次の首相は海賊党の党首だと予想しておく。
2018年11月24日22時。


 







2018年11月27日

バビシュ首相が嫌いな人へ(十一月廿二日)



 正確に言うと、嫌いな人というより、支持しない人へというのがいいかもしれない。サマースクールの先生が、授業の教材としてムラダー・フロンタ紙を持ってきたのだが、新聞を買うのは久しぶりだと言っていた。それは、ムラダー・フロンタ紙とリドベー・ノビニ紙を所有する会社のMAFRAがアグロフェルトに買収されて、いわばバビシュ新聞となったときに買うのをやめたからだという。
 そうなのである。反バビシュの人たちはバビシュ氏の会社であるアグロフェルト社傘下の会社の商品をボイコットすればいいのである。会社の業績に悪影響が出るようになれば、バビシュ氏も政界から身を引くかもしれない。サマースクールの先生のように実際に不買運動をしている人たちは、そこまで考えてはおらず、ただ自分の払ったお金が回りまわってバビシュ氏の政治資金になりかねないというのに耐えられないだけという可能性もあるけど。

 とまれ先ず避けるべきは、チェコ二大新聞を所有する出版社のMAFRAの出版物である。ムラダー・フロンタ、リドベー・ノビニの二紙はもちろんだが、無料で配布されている日刊紙メトロもチェコ版を発行しているのはMAFRAであるから、反バビシュの人たち受け取らないほうがいい。他にも週刊誌の「テーマ」や「5プラス2」なんかがこの会社の刊行物である。この会社は出版社なので、新聞社の出版部門のような名称で普通の本の刊行もしている。「mf」という記号の付いた本は買ってはいけないのである。アグロフェルトがMAFRAを買収したのは、2013年というから、VV党崩壊の後である。ということはこの前書いたバビシュ氏の指示でってのは間違いだったかなあ。

 またテレビやラジオにも手を出していて、テレビでは音楽専門局のオーチコを所有している。オーチコは全部で三つのチャンネルを運営しているのかな。たまにゲストを呼んでのトーク番組みたいなものもあるけど、他はどのチャンネルでも延々とビデオクリップを流しているから、よほどの音楽好き以外は見ないと思うんだけど。ラジオで視聴してはいけないのはこれも音楽番組が多いラジオ・インプルスである。

 MAFRAはネット上でムラダー・フロンタリドベー・ノビニのサイトも運営していて、紙の新聞より多くの情報を提供している。アグロフェルト本体では、セズナムに次ぐチェコのポータルサイトのツェントルムとニュースサイトのアクトゥアールニェも所有しているから、ツェントルムの無料メールを利用している人は、別のサービスに乗り換えよう。バビシュメールなんて使えないよな。

 オロモウツから電車でプシェロフに向かい、プシェロフの駅に近づくと進行横行右手に何本かの背の高い煙突が見えてくる。この煙突には確か「PRECHEZA」と書かれているのだが、チェコでも有数の化学工場である。この会社を含め、いくつかの化学工業の会社もアグロフェルトの傘下に入っているらしい。この手の企業の製品は、直接一般市場には出てこず、材料として企業間で取引されているだけだから、一般人には購買も、不買もできそうにない。でも、反バビシュの旗を振っている人たちの中には、この手の企業と取引のある会社で仕事をしている人たちもいるはずだから、取引停止とかできないのかね。

 アグロフェルトは、本来は農業関係の企業らしいが、農産物をいちいちどこの農場で生産されたものか確認してから、買う、買わないを決めるのは大変である。ということで農業の隣の業種である食品加工業に注目しよう。
 残念ながらオロモウツにもあるのである。オロモウツの牛乳などの乳製品を生産するオルマという会社がアグロフェルトの傘下に入っている。以前経営の状態が芳しくないと聞いたことがあるので、それをアグロフェルトが買収したということなのかなあ。うちは以前から南ボヘミアに本拠地を置くマデタの製品を優先しているから、オルマは牛乳もチーズも買ったことがないので、以前と比べて製品の質がどうなのかは知らない。

 もう一つは、食肉加工業の、というかソーセージやサラミなどを生産しているコステレツケー・ウゼニニ社である。以前、腎臓結石の治療のために毎日自宅でピルスナーウルクエルを飲んでいたころは、つまみとしてここの会社のサラミやらハムやらを買っていたのだけど、最近はとんと買ったことがない。アグロフェルトに買収されてからは、効率と利益が最優先になってしまって製品の質、味が落ちて昔の味を知っている人には食べられたものではないという話も聞くから、食べなくていいや。特徴的なロゴのついたトラックが走り回っているのを、以前にもましてよく見かけるから、売り上げは落ちていないのだと思う。ということで酒のつまみも別の会社のものにしよう。

 それから鶏肉にもバビシュ印の鶏肉があるから、それも避けたほうがいい。ボドニャニという地名を冠したブロイラーっぽい鶏肉の会社もアグロフェルト傘下である。ここも以前に比べると……なんて話を聞くから、以前の顧客が離れて新しい安いものを求める消費者が支えているのかもしれない。その消費者が離れれば、バビシュ首相にダメージあるかもよ。

 製粉と製パン業のペナムも忘れてはいけない。小麦粉もパンもこの会社のものは、結構あちこちで見かけるから、気を付けていなかったら買ってしまうかもしれない。パンは、昔買って食べたことがあるかもしれないけど、パンなんてどこの会社のものか気を付けて買うことはないから、何ともいない。最近は買うときは自分の店で焼いているパン屋で買うのでペナムのパンは食べていないと思う。そのパン屋がペナムの小麦粉を使っていないという保証はないけれども。

 探せば他にもバビシュ印のついた企業はたくさんあるはずである。反バビシュを叫ぶ人たちには、みんなで集まって大騒ぎして地域の人々に迷惑をかけるだけの無意味なデモだけでなく、もうすこし実効性の期待できる反バビシュ運動を展開してほしいものである。ゼマン大統領やら、バビシュ首相やら海千山千の面の皮の厚い政治家、実業家には、デモなんて蛙の面にしょんべん程度の効果しかないのは目に見えているのだからさ。
2018年11月23日17時15分。


 うちのの話では、フェイスブックにバビシュ印の商品は買わないぞというグループが存在して活動しているらしい。






2018年11月26日

バビシュ政権の行方(十一月廿一日)



 先週のバビシュ首相の息子の爆弾発言、つまり父親たるバビシュ首相の手によって誘拐されクリミア半島に軟禁されていたというセズナムが公開したインタビューを受けて、野党がバビシュ批判を強め、上院では首相は退陣するべきだという、法的な拘束性のない決議がだされ(以前下院でバビシュ氏は嘘をついたという決議が出されたのと同じようなレベルのものであろう)、金曜日に内閣不信任案の採決が行われることになった。
 この内閣不信任案の提出にかかわっているのは、バビシュ氏の退陣を求めている市民民主党、海賊党、キリスト教民主同盟、TOP09党、市長無所属連合の5党と、バビシュ氏が社会民主党との連立を解消して自党と連立を組むことを求めているオカムラ党である。呉越同舟というには、オカムラ党の議員の数が少ないが、6党合わせての議席数は92で、課員の議席総数は200だから過半数に届いていない。

 ということで、残る2党の動向が注目を集めいていたのだが、共産党は早々に内閣不信任案には賛成しないという姿勢を打ち出していた。つまりは採決に際して反対票を投じるということである。これで追い詰められたのが、ただでさえ出口のない袋小路に入り込んでしまった感のある社会民主党で、ぎりぎりまで党内で議論が続いていた。連立内閣に残るべきだという勢力もあれば、連立を解消するべきだという勢力もあって指導部は対応に苦慮していた。

 そして、不信任案の審議を二日後に控えた今日、水曜日に党首のハマーチェク内務大臣が記者会見を行い、社会民主党の議員は内閣不信任案の採決に参加しないという方針を発表した。審議が終わって採決が始まる前に議場を退出するというのである。この今の社会民主党の迷走を象徴しているとも言える中途半端な決定は各方面から批判されていた。連立与党の一党として政権の一翼を担っているのだから、原則として不信任案には反対するべきだし、不信任案に賛成するのなら、その前に連立を解消して大臣は辞表を提出するべきであろう。このどちらも選べないのが今の社会民主党である。
 ハマーチェク氏は、連立を解消しない理由としては、社会民主党が政権を離脱した場合には、ANOと共産党、オカムラ党の連立政権が成立する可能性が高いことを挙げていた。現在のバビシュ政権が、不信任案の可決で倒れたとしても、ゼマン大統領が再びバビシュ氏を首相に指名することは確実なのだから、今の政権が倒れるとことで、最悪の事態がもたらされる可能性があるというのだ。それは確かにその通りではあるのだけど、ANOやオカムラ党のこれ以上の台頭を防ぐためには、一度この最悪内閣を成立させたほうがいいかもしれないという気もする。できれば避けてほしいけど。
 そして、もう一つ付け加えたのは、現時点で最善の解は、下院を解散して総選挙を行うべきだということだった。これには100パーセント賛成できる。理解できないのは、なぜ解散総選挙を実現する方向に積極的に動かないのかということである。恐らくは現時点で選挙が行なわれれば、社会民主党が議席を獲得できるかすら怪しいところまで有権者の支持を失っているからであろう。

 ここで問題になるのは、不信任案、下院の解散が可決されるために必要な条件である。不信任案のほうは過半数の賛成で可決される。ただし出席議員、採決に参加した議員の過半数ではなく、議員総数の過半数、つまり101票の賛成があって始めて可決されるのである。だから社会民主党が採決に参加しないということは、野党側は可決させるために、ANOか共産党の議員の中から造反者を探さなければならないということである。宗教的なところのある共産党はもちろん、既存の政党のやり口にうんざりした人たちが集まっていると思われるANOからも造反者は出そうもない。

 また議員による議決で下院を解散するためには、議員総数の60パーセント、つまり120票の賛成票が必要らしい。ANOが78議席持っていることを考えると、解散案を可決するためにはANO以外の全ての党が賛成しなければならないと言うことである。ここで共産党を説得し、野党勢力をも取りまとめて下院の解散に成功すれば、社会民主党は大きく株を上げて支持者が戻ってくる可能性もあったのに、野党側が105票以上集めたら社会民主党の議員もそれに加わるという何とも中途半端な発表をした。社会民主党の15票を合わせれば、120を超えて解散が可能になるということなのだろうが、ANOとの関係の悪化を恐れたのか、社会民主党は動きそうにない。解散が実現しなかったとしても、下院の解散に向けて積極的に動く姿勢を見せるだけでも有権者に与える印象は違ったと思うんだけどねえ。
 ということで、採決の二日前水曜日の時点では、社会民主党の議員が採決に参加せず、共産党の議員は反対票を投じることが確定しているので、バビシュ内閣は現在の社会民主党との連立の形で継続することが確実視されている。
2018年11月21日23時35分。











2018年11月25日

売られたヤーグル(十一月廿日)



 何気なくテレテキストの記事を読んでいたら、チェコの産んだアイスホッケーのスーパースター、ヤロミール・ヤーグルが、2022年に北京で行なわれる冬季オリンピックのアイスホッケー競技の顔になることが決まったという記事が出てきた。オリンピックのアイスホッケーの顔なんて立場が存在したなんて知らなかった。アイスホッケーがあまり盛んではない中国だから、盛り上げるため、もしくはチーム強化のために必要だという事情があるのかもしれない。そうなると、国外よりは中国国内に向けたアイスホッケーの顔ということになる。
 では、どうしてヤーグルだったのだろうか。チェコという枠内であれば、ヤーグルが選ばれるのは何の不思議もない。長野オリンピックの英雄ということで言えば、もう一人ドミニク・ハシェクの名前も挙がるけれども、引退してすでに久しく、そのネームバリューはチェコ以外ではヤーグルと比較できるものではあるまい。ヤーグル自身は、NHLでの契約を終えてチェコに戻って、現在怪我の治療中で、怪我が治れば自らがオーナーを務めるクラドノのチームで出場する予定らしい。中国のためにアイスホッケーの顔を勤めやすい立場にいると言えば言える。
 しかし、世界に目を広げてみれば、ヤーグルと同程度に高く評価されているアイスホッケー選手は他にもいるだろう。世界最高のNHLの存在を考えれば、アメリカやカナダの選手、元選手から選んでもいいだろうし、最近のアメリカとの対立を考えれば、政治的、軍事的に接近しつつあるロシアからアイスホッケーの顔を選んでもよかったはずである。こんなことを考え合わせると、ヤーグルが選ばれた裏には、やはり近年のチェコと中国の密接な関係があるのだろう。

 これは世界的な傾向だが、中国における人権侵害やら、少数民族の弾圧やらを批判する個人や団体は存在しても、国家としてとなると、経済関係を優先して、そんな問題はなかったことにするか、形式的に批判する振りをするだけに留めることが多い。何かと人権問題にうるさいEUに対しては、それでいいのかといいたくなるのだが、チェコはEUの中でも特にその傾向が強く、この前ダライラマがチェコにやってきたときも、首相を含む何人かの閣僚が中国政府に対して弁解というか、いいわけのコメントを出していたぐらいである。
 そんなチェコを中国も組みやすしとみたのか、EU内における中国の重要な投資拠点として位置づけているようである。その結果、中国からチェコへの投資が進み、さまざまなものが中国資本に買収されている。中国以前には日本、韓国からの投資が盛んだったのだが、当時の日本、韓国よりも、中国からの投資ははるかに優遇されているような印象を受ける。これは巨大で今後も成長していくことが期待される中国市場へのチェコ企業の進出を見越してのことだだろうか。ゼマン大統領も就任以来何度もお供を連れて訪中しているようである。

 チェコで中国資本に買収されてしまったものというと、真っ先に思い浮かぶのがチェコサッカー第二のチームであるスラビア・プラハとその本拠地のエデンのスタジアムである。イギリス資本に買収され、約束された資金の投入もなく長らく低迷していたスラビアが、やっとチェコ人オーナーの手に戻ってきたと思ったら10年ほどで今度は中国資本に買収されたのである。いかに当時無駄遣いの果ての資金難にあえいでいたとはいえ、スラビアファンとしては歓迎できることだったのだろうか。
 個人的には、ビール会社のチェルナー・ホラがロプコビツの傘下に入って、そのまま中国資本に買収されたのがショックだった。中国でチェルナー・ホラのライセンス生産とか始まってしまったら最悪である。このグループのメインのブランドは貴族家の名前を冠したロプコビツだから、ライセンス生産をするならまずそれだと思うけど、グループ内のクラーシュテルというビール会社が韓国に工場を建てたという話もあるし、ないとは言い切れないのである。

 スポーツの世界に目を向けると、金に飽かせて有名選手をかき集めている中国のサッカーリーグに渡ったチェコ人選手はあまりいない。名前が売れていないからだろうか。現在アメリカでプレーするドチカルが一時中国の一部リーグのチームにいてほとんど活躍できないまま移籍してしまったぐらいだろうか。しかし、引退した元選手にまで目を向けると、大物がいるのである。
 何年か前のゼマン大統領の訪中に、なぜかパベル・ネドビェドが同行していたのだが、そこで中国サッカーのアドバイザーみたいな肩書きをもらっていた。もちろんゼマン大統領だけではなく、中国市場を重視するユベントスの意向もあったのだろうが、ゼマン大統領が中国まで業生に出かけてネドビェドを売りつけて帰ってきたような印象を拭うことができなかった。
 そうなのだ。今回のヤーグルの件も、ゼマン大統領が、というよりは、中国資本の力を背景にスラビアのオーナーを務めているトブルディーク氏が中国に売りつけたような印象を持ってしまった。いや売りつけたというよりは、献上して見返りに中国からの更なる投資を求めたと考えると、かつて中国の王朝が属国との間で行なっていた朝貢貿易の再来のような感じさえしてしまう。最近の中国の振る舞いを見ているとそんな印象を受けるのも仕方がなかろう。何せ、ドイツでさえ中国に媚を売っているのだから。

 さて、売られたヤーグル、品行方正なイメージのあるネドビェドと違って、結構気難しそうなイメージがあるのだけど、中国やトブルディークが求めるように大人しくアイスホッケーの顔を務めるのだろうか。ヤーグルと中国は相性がいいなんて意外なことになるかもしれないけど。
2018年11月21日9時30分。









2018年11月24日

チェコ―スロバキア(十一月十九日)



 いまいちその開催意義が理解できないサッカーのネイションズ・リーグも最終節を迎え、チェコ代表はプラハでスロバキアと対戦した。チェコとスロバキアが入っているグループでは、すでにウクライナの優勝が決まっており、この試合にかかっているのはどちらが2位、いや3位になって、よくわからないけど下のカテゴリーに降格するかということらしい。それがヨーロッパ選手権の予選にもかかわるというのだが、説明されてもよくわからんかった。

 試合前の状況を簡単にまとめておくと、ウクライナ、チェコと二連敗を喫したスロバキア代表は、一部の選手たちの振る舞いに怒った監督が辞任してしまった。その後任に選ばれたのは、今年の夏にスパルタの監督を解任されたばかりのハパルだった。チェコ人監督がスロバキア代表の監督に就任したのである。チェコとスロバキアの関係から言うと、リーグでもチェコ人がスロバキアで、スロバキア人がチェコでというのはよくある話なので、よその国から外国人監督を連れてくるほどの大きな意味はなさそうである。
 ハパル自身が、今年の春に、ストラマッチョーニ解任の後を受けて、スパルタに監督として招聘されるまでは、スロバキアのU21代表の監督を務め、チームをヨーロッパ選手権出場に導くなど結果を残していたのだ。もちろん、U21の監督に選ばれたのは、チェコだけでなく、スロバキアのチームでも監督として結果を出して手腕が高く評価されたからである。

 そのスロバキア代表は、チェコ代表と試合をする前に、トルナバでウクライナと対戦している。この試合は、監督交代の効果があったのか、スロバキアが4−1で快勝した。大活躍をしたのが、4点中3点にからんだルスナークなのだけど、この選手の名前は聞いたこともない。恐らく最近増えている若くしてチェコ以外の国外チームに移籍してそこで育った選手の一人なのだろう。こういう10台で国外に買われていった選手がちゃんと育ちつつあるところがスロバキア代表の強さ、選手たちの質の高さにつながっているらしい。チェコは若くしての移籍は失敗ばかりでほとんど戦力になっていない。
 この試合の結果、チェコとスロバキアは、勝ち点3で並び、暫定の順位では得失点差で、スロバキアが2位に順位を上げた。ただ最終的に亜順位は得失点差ではなく、直接対決の結果できまるので、チェコは引き分けでも2位が確保でき、スロバキアは2位になるためには勝つしかないというのが、試合前のグループの状況だった。

 一方チェコ代表は、シルハビーが監督に就任して、初戦のスロバキアとの試合に勝利し、ウクライナには負けたものの、チェコで行なわれた最初の試合に比べれば内容がはるかに改善されていて、チームがいいほうに回転し始めていた。スロバキア戦の前には、ポーランドと親善試合を行なっているが、この二試合のための代表に、怪我で欠場が続いていたダリダが復帰したのも大きい。怪我で今シーズンは絶望とされるクルメンチークの代役としては、こちらも怪我から復帰したばかりのヤブロネツのドレジャルが召集されている。
 ドレジャルは実はオロモウツで育った選手で、活躍が認められて近々代表に呼ばれてもおかしくないといわれ始めた頃にヤブロネツに移籍した。当時の協会会長でヤブロネツのオーナーのペルタ氏から、代表に呼ぶという約束をえたのが移籍の決め手だったんじゃないかという憶測が流れたのも覚えている。とまれ、オロモウツ出身者なので、期待もし応援もしているのだけど、なかなかタイミングが合わず、意外なことにこれが初めての代表召集だという。ヤブロネツに行ってからは、オロモウツでの最後の時期ほどゴールを決められていなかったからなあ。

 ポーランドとの試合は、グダンスクで行なわれ、チェコが後半の初めのヤンクトの得点を守って勝利した。キーパーのパブレンカは、ドイツリーグでは必ずレバンドフスキに得点を決められていて、初めてレバンドフスキにゴールされなかったことを喜んでいた。グループステージが敗退したとはいえ、今年のワールドカップ出場国を0点に抑えて勝てたのは、ディフェンスが全く機能していなかったヤロリーム時代と比べると雲泥の差である。

 そんなチェコ代表も、スロバキア代表も、監督交代が奏功して状態が上向きの中で迎えた、元連邦対決だったのだが、開始当初はスロバキアが一方的に押し込む展開だった。チェコの選手たちほとんどボールを持たせてもらえず、これは厳しいかなと思っていたのだけど、しっかり守って耐えているうちにスロバキアの選手たちに焦りからかミスが見られるようになり、30分ぐらいだっただろうか、スロバキアのディフェンスのミスをついて、シクが見事なゴールを決めた。
 前半のうちにチェコがリードして、スロバキアはグループ2位になるために2点取らなければならなくなったから、攻撃に力を入れて開始早々の時間帯と同じように防戦一方の展開に追い込まれるかと心配していたのだけど、スロバキアの選手たちのミス連発は改善されることなく、チェコが一点を守り切った。チェコの選手たちも、相手のミスに付け込んで、さあカウンターというところでミスを連発して、なかなかチャンスも作れず、追加点は遠かったけど、まあ勝ったからいいや。

 チェコと、スロバキアと、ウクライナの3チームの中で、個々の選手の力で見たら、スロバキアが一番上でチェコが一番下だったのではないかと思う。ヤロリーム時代のチェコはチームになっていないと批判されていたけれども、スロバキアのチームにも、監督が代わってからも同じような問題を感じる。控えに回されて最後まで出番のなかったバイスが試合終了前に退席してしまったなんて話もあるし、就任直後の試合には勝ったとはいえハパル監督も前途多難である。

 それにしても、シクがうまくなっていてびっくりした。チェコにいたときから長身のわりにうまい選手だとは思っていたけど、イタリアに行って一段も二段も技術的にレベルが上がった感じである。イタリアにいて移籍当初だけ活躍してあとは尻すぼみというチェコの選手が多い中、例外的な成長を見せていて今後が楽しみである。ASローマでは、ジェコの陰に隠れて出番が少ないのだけど、イングランドのチームへの移籍がうさわされているのも納得の出来だった。
 来年の春の次の代表の試合でも、今回の出来が継続されることを楽しみにしている。久しぶりにサッカーのチェコ代表に期待ができる時期がやってきたと考えていいのかな。シルハビーってブリュックネル時代はコーチだったというしさ。
2018年11月20日19時25分。












2018年11月23日

人称代名詞の格変化三人称(十一月十八日)



 チェコ語の人称代名詞の三人称は、人称と言いながら、人だけではなく、人以外の生き物、それに生きていない物も指すことができる。だから、男性形と女性形の区別だけではなく、中性形も存在するし、男性名詞を受ける場合には、活動体なのか不活動体なのかで、違う部分が多少出てくる。教科書では省スペースのためにまとめて表示されることが多いが、ここは個別に行こう。

 まずは男性を示す場合。単数1格は「on」、つまり男性名詞に特徴的な子音で終わる形である。

 1 on
 2 jeho / ho / jej
 3 jemu / mu
 4 jeho / ho / jej
 5 on
 6 něm
 7 jím

 2格、3格、4格に2つ以上の形が出てくるのは、一人称、二人称の場合と同様。ただし、2格、4格には3つの形が出てくる。また、三人称の人称代名詞は、前置詞に接続する場合には語頭に「n」を追加するので、常に前置詞とともに使われる6格は、「něm」と他の格と違って「n」で始まる形になっている。

 まず気づくべきは、原則として形容詞硬変化の格変化に似ているということである。1格、5格を除くと、活用語尾は「-eho」「-emu」「-eho」「-ěm」「-ím」となり、「-ého」「-ému」「-ého」「-ém」「-ým」となる形容詞の語尾を短母音に替えたものとほぼ同じである。一見違っている6格も、「jem」の前に前置詞につくときの「n」がついた形「njem」が「něm」と表記されているだけだから、これも形容詞の語尾を短母音化したものだと考えられる。例外は7格で長母音のままである。「-ým」になっていないのは、チェコ語のルールで「j」の後には「y」が使えないからである。ここも短母音化していれば、覚えるのが楽だったのだけどね。

 2格の三つのうち、「ho」は、前置詞なしで文の中の二番目の位置に置くときに使う形。「jeho」は強調で語順を変えるときか、前置詞とともに使う場合の形。「jej」は前置詞とともに使うことが多い形で、単独で使うと古さを感じさせる文語的表現である。前置詞とともに使った場合は、それぞれ「něho」「něj」となる。個人的には、二人称の場合と同じで、ここも短い形の「ho」を使うのが苦手で、「jeho」で代用してしまう。「jej」、もしくは「něj」は使ったことがない。
 3格の使い分けは、一人称、二人称単数の場合と同じ。「mu」が特に強調の必要もなく、文の二番目の位置で使うときの形で、「jemu」は強調のために語順を変えるとき、前置詞とともに使う場合には「němu」となる。ここは問題なく使い分けられる。

 4格で三つの形をすべて使えるのは、男性名詞の活動体を指す場合だけで、その場合の使い分けは、2格と共通である。問題は前置詞と組み合わせた場合に、「něho」にするか、「něj」にするかなのだけど、「něho」を使ってしまうことが多い。
 同じ4格でも不活動体には「jeho」は使えず、「ho」と「jej」しかない。前置詞とともに使う場合には「něj」を使うが、強調で語順を変えるときには、「jej」は文語的に過ぎるから「ho」を使うのかなあ。物を指す不活動体を人称代名詞で指すこと自体が苦手なので、どちらもちゃんと使えているとはいいがたい。

 6格、7格には特にコメントすべきこともないので、ちょっと特殊な女性は後回しにして、中性をさす場合の格変化を示す。

 1 ono
 2 jeho / ho / jej
 3 jemu / mu
 4 je / ho / jej
 5 ono
 6 něm
 7 jím

 1格は中性名詞に特徴的な語尾の「o」をつけて「ono」。5格も1格と同じだが、それ以外は男性名詞の不活動体を指すときと同じ格変化だと思っていい。4格に登場する「je」は非常に文語的で覚える必要はないし。男性名詞不活動体と同じで、中性名詞を人称代名詞で示すこと自体が苦手なので、格変化は覚えていてもうまく使えない。中性名詞でも、人間や動物の子供という生きているものを指す言葉もあるから、そういうのに対しては人称代名詞を使えてもいいとは思うのだけど。

 ということでちょっと特殊な女性を指すときである。単数一格は「ona」。これも女性名詞に特徴的な語尾である。

 1 ona
 2 jí
 3 jí
 4 ji
 5 ona
 6 ní
 7 jí

 1格と5格を除けば、形容詞軟変化の女性単数と同じと言いたいのだが、4格が違う。4格だけ語尾が短母音になっている理由はわからない。

 続いて三人称複数の変化だが、1格と5格以外は共通である。1格は、男性名詞活動体、不活動体、女性名詞、中性名詞、それぞれをさす場合、順番に「oni」「ony」「ony」「ona」となる。単数の際と同様、名詞の複数1格に特徴的は語尾が採用されている。
 2 jich
 3 jim
 4 je
 6 nich
 7 jimi

 この5つの格は形容詞軟変化の複数形の活用とほぼ同じである。2格、3格、6格は、活用語尾の長母音を短母音に変えただけだし、7格にいたっては長母音のままである。他が短くなっても7格だけは長いままと覚えておくといいだろう。例外は4格で、硬変化の男性不活動体、もしくは女性名詞につくときの語尾を短母音にしたものになる。

 だから、全体をまとめると人称代名詞三人称の格変化は、形容詞の格変化の1バリエーションだと理解しておけばいい。ただし、硬変化と軟変化が混ざっている上に、語尾の長母音が短くなったりならなかったりするので、その変わる部分をしっかり覚える必要がある。 
 また、前置詞をつけると、語頭に「n」がついて、「j」が消え、「ni」や「ně」になるのに気をつけなければならない。同じ「j」で始まるけれども、人称代名詞からできた所有を表す言葉「jeho」「její」などは、前置詞を使っても「n」をつける必要はないから厄介である。慣れればほぼ自動的にできるようになるのだけど、慣れるまでが大変というのは、他のチェコ語の文法事項と同様である。

 しばしば、慣れるまでが大変とか、慣れれば簡単とかいう表現を使うけれども、習うより慣れろでとにかく使えと言っているのではない。文法事項は、何度も繰り返し書いて覚えた上で使い、繰り返し使って慣れることが大切である。最初の覚えるという過程を省略すると、自分の間違いに慣れてしまって、いつまでたっても正しい言葉が使えない中途半端な学習者になってしまう。うっ、これは自己批判でもあるなあ。習うより慣れろでいい加減な覚えかたしてろくに使えない言葉、たくさんあるし。とまれ、チェコ語を勉強している方が、これを反面教師にして勉強を進めていってくれると著者としてこれ以上の喜びはない。ちょっと本のあとがきっぽくまとめてみた。
2018年11月19日22時55分。








2018年11月22日

人称代名詞の格変化二人称(十一月十七日)



 人称代名詞の二人称単数の形は「ty」で、一人称とは違って格変化させても語頭の音は「t」で変化しない。これは所有を表す形にした場合も同様である。

 1 ty
 2 tebe / tě
 3 tobě / ti
 4 tebe / tě
 5 ty
 6 tobě
 7 tebou

 一見、一人称単数の格変化とは大きく違うように感じられるかもしれないが、よく見ると共通性は高い。2格と4格、3格と6格が共通であるという点では、男性名詞活動体の格変化を踏襲しているし、7格が「ou」で終わるのも同じである。それから、二つの形のある2格、3格、4格の語尾が、順に「e / ě」「ě / i」「e / ě」となるのも一人称の格変化と共通している。問題は一人称単数と違って、最初の音節が「to」になったり、「te」になったりすることで、慣れるまでは混乱することがある。
 2格、3格、4格における2音節の長い形と、1音節の短い形のある短い形の使い分けは、原則として一人称単数の3格と同じなのだが、2格の「tě」はあんまり使わない気がすると書いたら、テレビから、「スター・ダンス」の司会者が「Ptám se tě」と言うのが聞こえてきた。一般的に使われないのではなくて、自分自身が使わない、いや使えないのだった。「Mohl bych se tebe zeptat?」とか、「Bojím se tebe」とか言ってしまうのだけど、間違いなのかなあ。間違いだと指摘されたことはないから、許容範囲内だと思いたい。

 日本人学習者が気をつけるべきことは、3格の「ti」の発音だろうか。チェコ語関係者が大声で「ti」の発音は「ティ」ではなく、「チ」だと喧伝しすぎたせいで、完全に「チ」、つまりチェコ語の「či」で発音してしまう人が多い。この言葉の発音が「ティ」ではないのはたしかだが、「チ」もないのだ。長い言葉の一部ならともかく、一音節の言葉なので発音が違うことに気づかれやすい。「ti」の発音が苦手で発音の間違いを指摘されたくない人は、ティカットは避けて、二人称単数に複数形を使う丁寧なビカットを使うしかない。「V」の音も問題ではあるのだけど、「ti」よりは身につけやすい。
 あっ、チェコ人と知り合いになって、ティカットしようと言われたときに、「ty」の格変化を覚えていないからとか、発音が苦手だからと言って断るのも面白いかもしれない。最初に師匠に言われたときにそう言って断っていればよかったのか。ティカットしようと言われてからも、先生だからという意識が強くて、ついついビカットをしてしまっていたのだよなあ。あれも実は、人称代名詞の二人称単数の格変化を覚えきれていなかったのが原因だったのかもしれない。今はもうほぼ問題なく使えるけどね。

 変化だけでなく発音も厄介な単数とは違って、二人称複数の格変化は簡単である。ことに普通は一人称を覚えてから二人称を勉強すると考えると、こんなに楽でいいのかと言いたくなるぐらい簡単である。

 1 vy
 2 vás
 3 vám
 4 vás
 5 vy
 6 vás
 7 vámi

 ご覧の通り、一人称複数の「n」を「v」に変えてやるだけで完成である。だから、二人称単数でも複数を使って丁寧にはなす方が簡単なのである。最近ティカットする相手を増やしていないのは、これも原因のひとつかもしれない。自分からティカットしようねと申し出るやり方がいまいちよくわからないからというのもあるんだけど。

 この二人称複数の変化形に関しては、特に丁寧さを表すために単数の代わりに使う場合に覚えておいたほうがいいことが一つある。それは手紙やメールを書く場合に、語頭の「v」を大文字で書くということである。これも敬意を表すための表現だと思うのだけど、所有を表す「váš」とその派生形は、人称代名詞ではないからか適用されない。わざわざ書くのは、何度も間違えたことがあるからに決まっている。
 二人称は書くことが少ないからこれでお仕舞い。
2018年11月17日23時55分。









2018年11月21日

人称代名詞の格変化一人称(十一月十六日)



 最近調子にのって仮定法の使い方とか書いてしまったけれども、よく考えてみたら、その前に人称代名詞や数詞など片付けておくべきことがいくつもあるのだった。人称代名詞は、これまでほとんど説明もせずに例文なんかに使ってきたし、問題ないのかもしれないが、自分の復習もかねて、まとめておくことにする。いちいち言い訳をしないと始まらないのは、最近のよくない傾向だなあ。

 チェコ語の一人称単数の人称代名詞は「já」で、複数は「my」である。単数の格変化を示すと以下のようになる。

 1 já
 2 mne / mě
 3 mně / mi
 4 mne / mě
 5 já
 6 mně
 7 mnou

 不思議なのは、格変化をさせると語幹に「m」が出てくることで、これは所有を表す「můj」の場合も同様なのだが、「m」は一格が「my」である複数にこそふさわしいのではないかと、ついつい論理的に考えてしまうのだけど、こんなところに意味や論理を求めても意味がないのが語学というものである。「my」を格変化させたり、所有を表す形にするとちょっと、文字が短くなって語頭に「n」が登場する。
 「já」の格変化は、一見してわかるように、1格と同じ5格、7格以外では、必ず「mě」「mně」という表記は違うけれども発音は同じという形が出てくるから、書くときはともかくしゃべるときには、とりあえず「ムニェ」と言っておけばほとんど問題はない。いや、ちょっとはあるけど。

 2格は「mě」「mne」という二つの形がある。書いてしまえば「mě」のほうが短いけれども、発音する場合の長さは同じである。だから、二格を取る、動詞「zeptat se」「bát se」などと組み合わせる場合にも、前置詞「od」「bez」などと組み合わせる場合でも、どちらを使っても問題ない。ただ、誰かが「mne」を使うのを聞くと、おっと思ってしまうから、一般的には「mě」が使われるといってもよさそうである。個人的には「mne」はちょっと堅苦しい印象を与えると理解しているので、ここぞというときにしか使わないようにしている。
 2格に関しては、普通の名詞の2格とは違って、所有を表すことはできないことは覚えておかなければならない。人を表す名詞の多くは、2格で名詞の後ろからかけるという方法と、名詞から所有を表す形容詞的な言葉を作って名詞の前からかけるという二つの方法で、所有を表すことができるのだが、人称代名詞は後者の方法しか使えない。その所有を表す形が「můj」で、形容詞と同様に後にくる名詞の性、数によって格変化させなければならない。

 3格は「mi」と「mně」だが、この二つには明確な使い分けがある。本来の三格、動詞と結びついて「私に」という意味で(日本語に訳すと変わってしまうものも多いけど)使う場合には、原則として「mi」を使い、文の中で二番目の位置に置かなければならない。「mně」を使うのは、強調のために文頭に出すような場合だけである。「それちょうだい」は強調前と後で次のように変わる。

 Dej mi to.  → Mně to dej.

 それから前置詞を付ける場合にも、「mně」を使わなければならない。3格をとる前置詞で私と一緒に使いそうなものといえば、「k」「kvůli」などがよく使われる。また三格の「ムニェ」を書くときには、この発音の一般的な表記である「mě」ではなく、「mně」と書くことに注意しなければならない。「mě」では2格か4格になってしまう。

 4格は二つの形も、その使い分けの必要がない点でも2格と同じである。つまり、人称代名詞「já」の格変化は、男性名詞活動体の格変化に準ずるのである。かつて、1匹の蚊と100人の女性を合わせて主語にすると動詞は男性複数形になると言ってチェコ語を男尊女卑的な言葉だと主張したアメリカ人のチェコ語学者のことをちょっと紹介したが、この人称代名詞の単数の格変化もチェコ語が男性形を元にした言葉だという証拠になるかもしれない。

 5格は、一応1格と同じということになっているけれども、自分で自分に呼びかけるという状況があまり思いつかない。二人称ならありそうだけど、1格と取るか、5格と取るか、微妙な感じもする。
 6格は、男性名詞活動体と同様、3格と同じ形になる。ただし常に前置詞とともに使うのが6格なので、「mi」は存在せず、「mně」だけである。話すときよりも書くときに表記に気をつけなければならないのも3格と同じ。
 7格は「mnou」で、「ou」という典型的な単数7格の語尾である。女性名詞と男性名詞活動体の一人称単数が「a」で終わるものがこの語尾を取る。

 全体を通しての注意点は、前置詞とともに使うときのことで、前置詞ともに使う形はすべて発音上は「mn」と二つの子音が連続する形で始まる。そのため、母音で終わる「kvůli」などの場合には問題ないのだが、子音のみ、もしくは子音で終わる前置詞の場合には、末尾に「e」が追加されることになる。「beze mě」(2格)、「ke mně」(3格)、「přede mě」(4格方向)、「ve mně」(6格)、「se mnou」(7格)といった具合である。

 単数と比べると複数の変化は、それぞれの格にひとつの形しかないこともあり簡単である。

 1 my
 2 nás
 3 nám
 4 nás
 5 my
 6 nás
 7 námi

 3格、7格あたりには女性名詞硬変化の複数変化の影響が見て取れる。それよりも大切なのは、2格、4格、6格が同じ形「nás」になることである。またこれは所有を表す「náš(私たちの)」と似ているので書き間違い、言い間違いに注意しなければならない。「ナース」と「ナーシュ」って意外と言い間違えてしまうんだよなあ。書くときも、しばしばハーチェク落としがちなのである。
 次は二人称の人称代名詞の格変化である。
2018年11月17日17時45分。








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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]