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2023年02月03日

フクロウ考



 これまで、猛禽類のうちの昼行性のもの、タカ、ワシの仲間について、日本語での名称とチェコ語での名称を検討してきたのだが、毒を食らわば皿までで、夜行性の猛禽類、つまりはフクロウ、ミミズクの仲間についても取り上げることにする。
 昔話、それをモチーフにした映画なんかにもよく登場するから、チェコ語でフクロウのことを、一般的にはsovaと呼ぶということは知っている人も多いだろう。ただし、今回知ったのだが、フクロウというフクロウの仲間の個別の種も存在していて、そちらはチェコ語では、sovaではなく、puštík bělavý(bělavý=白っぽい)と呼ばれるようである。チェコ語でpuštíkと呼ばれるフクロウの仲間には、puštík obecný(モリフクロウ、obecný=普通の)、puštík vousatý(カラフトフクロウ、vousatý=髭を生やした)も存在する。

 フクロウの仲間として、名前を知っていたものとしては、光瀬龍の『ロン先生の虫眼鏡』に登場したコキンメフクロウがある。最初にこの名前を見たときには、カタカナで書かれた「コキンメ」が理解できずに、どんなフクロウだろうと頭をひねったのだが、考えてみれば「小金目」で、小さな金色の目をしたフクロウなのだろうと思い至った。そそて、コキンメフクロウがいれば、キンメフクロウもいるはずである。チェコ語だと、どちらも同じ名前でコキンメの方に、「malý」か「menší」つくのではないかと予想しておく。
 しかし、調べてみると、日本語の「コ」を示すのは、後ろにつく形容詞ではなくて、名詞の方だった。つまりキンメフクロウ(sýc rousný)の指小形がコキンメフクロウ(sýček obecný)になっているのである。
 他にも、スズメフクロウに使われるkulíšek、シロフクロウなどのsovice(sovaの指小形か)もフクロウの種名に使われるようである。一般的なsovaを使うものには。メンフクロウがあるのだが、ウィキペディアの写真を見ると、フクロウと聞いて普通にイメージするものとはちょっと違う。

  フクロウ  puštík bělavý
  モリフクロウ puštík obecný
  カラフトフクロウ puštík vousatý
  キンメフクロウ sýc rousný
  コキンメフクロウ sýček obecný
  スズメフクロウ kulíšek nejmenší
  シロフクロウ sovice sněžní
  オナガフクロウ sovice krahujová
  メンフクロウ sova pálená


 続いて、ミミズクだが、こちらは一般的に使われるチェコ語はvýr。個別の種名として使われる名詞としては、その指小形だと思われるvýrečekとkalousがあるようだ。オオコノハズクは日本に典型的なミミズクだとみなされているのか、「japonský」という形容詞がついている。残念ながら、以前から名前だけは知っていたアオバズクのチェコ語名は確認できなかった。

 ワシミミズク výr velký
 コミミズク kalous pustovka
 トラフズク kalous ušatý
 オオコノハズク výreček japonský
 コノハズク výreček malý




2023年01月30日

ワシ考



 チェコ語で小型の猛禽類を表わす言葉がsokolなのに対して、大型のものはorelと呼ばれる。こちらは、幸いなことに、日本語のワシと、意味だけでなく使い方でもほぼ対応している。つまり、一般的には「ワシ=orel」で、具体的な種名を表わすときに、日本語ではワシの前に、チェコ語では後ろに言葉を付け加えるのである。

 だから、お気に入りのテレビドラマ「チェトニツケー・フモレスキ」に、大きなワシの剥製が出て来て、それを盗んだ犯人が誇らしげに、「単なる鳥じゃなくて、orel mořskýなんだ」と叫ぶのを聞いたときに、何も考えずに、ああウミワシ(mořskýは「海=moře」からできた形容詞)かと思ったのだけど、今回調べてみたら、ウミワシというのは、「海岸や水辺にすみ、魚を主食としているワシ類の総称」(『日本大百科全書』)だというではないか。
 では、orel mořskýの日本名はというと、オジロワシのようだ。これが「mořský」ではなく、「běloocasý」(「白い=bílý」+「しっぽ=ocas」)だったら、直訳できて最高なのだけど、世の中、そううまくはいかない。その点、ハクトウワシは、orel bělohlavý(「白い=bílý」+「頭=hlava」)なのでありがたい。問題は、北米の鳥なので、チェコ語日本語の通訳で使う可能性がほぼない、あっても動物園に行ったときぐらいだということだろうか。動物園、植物園で通訳したいかと聞かれたら、答えは否だけど。

 他に日本語とチェコ語がほぼ対応しているものとしては、今回辞書を引くまで知らなかったけど、「カンムリワシ=orlík chocholatý」がある。orelではなくて、指小形っぽいorlíkなのはおくにしても、後ろに置かれている形容詞「chocholatý」は「冠羽のある」という意味である。問題は、形容詞も、そのもとになった名詞「chochol」も今まで存在を知らず、これからも使う機会がなさそうなことだ。普通「カンムリ」で思いつくのは、通貨名としても使われる「koruna」なのだけど、こちらは本来「王冠」を指すもので、形容詞は王権に結びつくような意味が出てくるから避けられたのだろうか。korunní princなんて皇太子になっちゃうしさ。
 それに対して、直訳すると「王のワシ」となる「カタシロワシ=orel královský」というのもあるけど、こちらは「ワシの中の王」、つまりは「最大のワシ」もしくは「最強のワシ」とでも解釈するべきだろうか。
 対応の仕方が、惜しいのが、「オナガイヌワシ=orel klínoocasý」で、形容詞「klínoocasý」は、尾が楔(klín)のようになっていることを意味しているから、「オナガ」に似ていると言えなくもない。ただ、単なる「ワシ」ではなく、「イヌワシ」になっているのも減点で、イヌワシ自体は、orel skalníなので、日本語からすると「イヌ」はどこに行ったと言いたくなる。ちなみに「skalní」は岩(skála)からできた言葉なので、岩場に多いワシということだろうか。

 以上、ワシはタカよりはわかりやすいというか、日本語と対応させやすいということはおわかりいただけるだろう。せっかくなので、最後にウィキペディアなどで確認できたワシの仲間の日本名、チェコ名の対応を、上に出てきたものも含めて挙げておく。

  アシナガワシ orel křiklavý
  イヌワシ orel skalní
   コシジロイヌワシ orel damaní
   オナガイヌワシ orel klínoocasý
  オオワシ orel východní
  オジロワシ orel mořský
  カタシロワシ orel královský
  カラフトワシ orel volavý
  カンムリワシ orlík chocholatý
  ハクトウワシ orel bělohlavý


※『日本大百科全書』の引用は例によってジャパンナレッジより。





2023年01月27日

ハヤブサ考



 日本語の種名としてのハヤブサが、チェコ語のsokol stěhovavýに相当することはすでに紹介したが、他のハヤブサ科の鳥たちもsokolなのだろうか。残念ながらタカの場合と同様に、sokolという言葉が使われるのはハヤブサ一種だけで、ほかの鳥たちは別の言葉で呼ばれているようである。
 今回はチェコ語を基準に紹介する。日本語で聞いてもどんな鳥なのか、普通のハヤブサとどう違うのかわからないし、チェコ語の名称も聞いたことのないものばかりである。

➀ostříž
 チゴハヤブサ ostříž lesní
 エレオノラハヤブサ ostříž jižní

※チゴハヤブサは、「チゴ」がついているから、普通のハヤブサよりも小さいものだと予想されるけど、チェコ語では指小形「sokolík(だと思う)」は使われないようだ。

Araroh
 シロハヤブサ raroh lovecký
 セーカーハヤブサ raroh velký
 ラナーハヤブサ raroh jižní

※シロハヤブサとか、sokol bílýだったら、日本語と対応して学習者は幸せなのだけど、やはりチェコ語は、いや動物の名称は一筋縄ではいかない。

➂poštolka
 チョウゲンボウ poštolka
  ヒメチョウゲンボウ poštolka jižní
  ニシアカチョウゲンボウ poštolka rudonohá
  アメリカチョウゲンボウ poštolka pestrá

※そう言えばそんな名前の鳥いたねというのが、チョウゲンボウへの印象で、poštolkaはニュースなどで何度か耳にしたことはあるけど、それが日本語のチョウゲンボウにあたるとは、思ってもいなかった。チョウゲンボウは、タカ科のトビなどと並んで、一般的な名称と個別の種名の関係が、日本語とは対応しないけど、わかりやすいものなのだが、残念ながら、poštolkaではないチョウゲンボウの一種も存在する。

Cdřemlík
 コチョウゲンボウ dřemlík tundrový

※どうして、poštolka menšíじゃないの? と命名者に文句を付けたくなってしまう。

 ハヤブサの仲間の鳥は、数は少ないけれども、タカの仲間以上に知らないものが多い。細かい種別が重要ではない場合には、全部小型の猛禽類と考えてタカで済ますか、ハヤブサで済ませてしまってもいいのかもしれない。ただostřížとrarohはハヤブサ、poštolkaはチョウゲンボウというのは、実際に使うかどうかは別にして、覚えておいたほうがよさそうだ。



週末投稿で復活のつもりだったのだけど、忘れることが多いので、思い立ったときに投稿することにした。この文章も書いたの数か月前だし、書きかけでまとめていないのも入れればストックはたくさんあるから、週末にこだわることもあるまい。


2023年01月09日

ハヤブサ考じゃなくて、ソコル考(になってしまった)



 さて、次の問題は、sokolのもう一つの訳語であるハヤブサである。日本語でハヤブサに対するイメージというと、やはり「速いもの」、「スピードのあるもの」だろうか。たしか、鉄道の特急や、バイクの愛称として使用されていたが、それも速さを強調するために付けられたもののはずだ。新幹線の命名に使われた音や光の速さが、目に見えない、実感できない速さだとしたら、ハヤブサは目で見ることができる速さの象徴だと言えようか。

 では、チェコ語のsokolのイメージはというと、正直よくわからない。チェコ語で鳥の名前以外に使われるsokolと言えば、日本でも知る人ぞ知る体操団体「ソコル」で、団体だけではなく会員たちのこともsokolと呼んでいる。女性はsokolkaだったかな。この団体は民族の身体能力向上を目標として19世紀後半に設立され、去年が設立160周年になるのだが、移民などを通じて世界各地に支部が存在する。6年に一度開催される全ソコル大会は、チェコでは大きなニュースとなる。
 なぜこの団体が、sokolと名付けられたのかというと、日本語版のウィキペディアでは、「英雄を「ソコル」と呼ぶ南スラヴの習慣から名付けられた」という説を、紹介している。ちなみにこの項目では、チェコ語のsokolを鷹として説明している。この辺にも、動物学と無関係なところでは、「sokol=タカ」という図式が反映されていると考えてよさそうである。

 体育団体のソコルは、第一次世界大戦後のチェコスロバキア独立に際しては、オーストリアに徴兵された軍人たちが、シベリアやフランス、イタリアなど国外でチェコスロバキア軍団として活動しており不在だったこともあり、国内における軍事力を担っていたという話もある。軍団員が帰国してチェコスロバキア軍が体裁を整えるまでの間は、ソコルの団員が、軍に入ったかどうかまでは知らないが、銃を手に取って軍事活動に参加していたというのだ。ソコルの訓練の中に軍事的なものが取り入れられていたなんて話も聞いたような記憶もある。
 チェコスロバキアの民族的団結の象徴の一つであったソコルは、マサリク大統領には賞賛されたが、ナチスとソビエトには完全に忌避され、ナチスの占領下では活動を禁止され組織も解散を命じられた。ソ連の支配下では、全国的な体操大会は存在したが、ソコルの名は完全に消され、スパルタキアーダという名前の下に、社会主義的なテーマを与えられたマスゲームを中心とした大会が開催されていた。市町村単位から始まる地区予選を勝ち抜いたグループだけが、プラハのストラホフで行われる全国大会に出場することができ、全国から勝ち抜いてきたグループが共同でマスゲームを披露していたという。社会主義的なテーマと、ほぼすべての学校の子供たちが予選に参加していたことを除けば、大会で披露されるマスゲームは、ソコルの時代と極めてよく似ている。

 ただし、ソコルの役割は、sletという鳥が跳び集まることを意味する言葉で名付けられた体操大会を開催することだけではない。現在でもチェコの各地に、大きな町になるとその町だけで、いくつかのソコルの支部があり、sokolovnaという体育施設の入った建物が置かれている。そして、多くの場合スポーツチームの拠点、母体となっているのである。支部によって扱うスポーツは違うのだが、オロモウツの場合には、陸上競技場とテニスコートが併設された二つのソコロブナを確認している。
 スポーツチームの母体という点では、特に新たなスポーツクラブを立ち上げるのが経済的に割に合わないマイナースポーツの場合には、一部リーグのチームのなかにさえソコルのチームが存在する。例えば、ハンドボールの場合は、男女とも二つのソコルのチームが一部リーグで活動している。スポンサーなどの関係でチーム名からは外しているだけで、実際にはソコルが母体になったチームは、ハンドボールでも、それ以外のスポーツでも他にも多いし、アマチュアや少年スポーツのレベルになるとその数は更に多くなる。
 一言で言えば、軍のチーム、もしくはその後継チームであるドゥクラと並んで、チェコではよく見かけるスポーツチームの名前なのである。プロレベルだと選手を一応軍人にして最低の収入を保証している(と思われる)ドゥクラのほうが目立っているけど。それから旧共産圏には、ディナモという名前の、かつては秘密警察とつながりがあったとも言われるチームもあるが、流石にチェコでもその数は多くない。
 ということで、ハヤブサの仲間の鳥についてはまた次回。






2023年01月08日

タカ考



 前回書いたように、日本語の「タカ」には、トビやノスリなども含まれるのだが、それらのタカの仲間たちはチェコ語では何と呼ばれているのだろうか。種の名称としてはjestřábだということが確認できたので、日本語でタカと呼ばれる鳥たちの多くはjestřábに形容詞が付いた形で種名とされているのだろうと予測したのだが、その形のものは「オオタカ=jestřáb lesní」だけだった。
 jestřáb に近いものとしては、jestřábec východníというのがあるが、これはタカの仲間でも「タカ」のつかないサシバを指すもの。後ろに「východní」とあることから、東、この場合には東アジアに固有の種ということになろうか。jestřábecはjestřábの指小形だろうが、ワード上のスペルチェックで赤線が引かれるから、一般的に知られている言葉ではなさそうだ。

 以下、せっかくなので、ウィキペディアなどで確認できたタカの仲間の鳥たちの和名とチェコ語名を対照して挙げておく。


➀本語では「タカ」が付くのに、チェコ語では「sokol」はもちろん「jestřáb」も使われていないもの。

  ハイタカ krahujec
  クマタカ orel horský
  ヒメクマタカ orel nejmenší

※クマタカなど日本語では「タカ」なのに、チェコ語では「ワシ=orel」となっている。「タカとワシの区別はかなり便宜的なもので、分類学的な分け方ではない」という『日本大百科全書』の説明を如実に反映している。


A日本語の名称に「タカ」が使われていないもの。

  ハチクマ včelojed lesní

※このタカはハチ(の幼虫やさなぎ)を食べるクマタカということでの命名らしいが、チェコ語からは、クマタカとの関連は見いだせない。ただし、včelojedも「ミツバチ食い」とでも訳せそうな言葉ではある。

  ミサゴ orlovec říční

※日本語ではタカの仲間なのに、チェコ語ではワシっぽい。この「orlovec」は、orelの指小形だろうから、チェコ語ではミサゴもタカよりはワシに近いと考えられているのだろうか。


➂細かく分類されているもの
  トビ luňák (hnědý)
   アカトビ luňák červený

  ノスリ káně
   ヨーロッパノスリ káně lesní
   ケアシノスリ káně rousná
   アカオノスリ káně rudoocasá

  チュウヒ moták východní
   ヨーロッパチュウヒ moták pochop
   ハイイロチュウヒ moták pilich
   ヒメハイイロチュウヒ moták lužní
   ウスハイイロチュウヒ moták stepní

※この三種、トビ、ノスリ、チュウヒは、一般的な呼称と、具体的な種名の呼称の関係が、日本語とチェコ語で対応している感じでわかりやすい。アカトビとアカオノスリに至っては、直訳できてしまうレベルである。またチュウヒの例からは、形容詞ではなく名詞(っぽいもの)を付加することがあることも確認できる。

 ここにあげた鳥のうち、この調査をするまではチェコ語名を知らなかったというものも多いし、日本語でもそんなのいたっけレベルのものもある。だから、調査をしたかいはあったのだということにしておこう。ただ、鳥類学の素人に見て違いがわかるとは思えないから、これらのうちの多くは、よほど特殊な翻訳、通訳でもしない限りは、使うことはなさそうだけど。



『日本大百科全書』の引用は例によってジャパンナレッジより。



2023年01月01日

ソコルはタカか、ハヤブサか



 チェコ語のsokolについては、確か京産大の出版局が発行した『チェコ語・日本語辞典』で調べたときに、「鷹」とあるのを見て以来、ずっとタカを意味するものだと思っていた。実際に、使われる場合も、日本語のタカと同様、大抵は小型の猛禽類(チェコ語ではdravec)を指すのに使われていたし、鷹狩、鷹匠を意味するチェコ語の言葉も、sokolから派生したものだったし、自分の頭の中には、sokol=タカという図式が出来上がっていた。

 その思い込みに疑いが生じたのは、確か、テレビでテニスの、デビスカップかフェドカップの試合を見ていたときのことで、ボールのイン/アウトを判定するためのシステム、日本では「ホークアイ」と呼ばれるものが、チェコ語で「イェストシャビー・オコ」と呼ばれていたのである。「鷹の目」だから、チェコ語でも「ソコリー」とかいうsokolから作られる形容詞が使われていると思っていたら、「イェストシャビー」という聞いたこともないような言葉が出てきた。例によって、うちのに質問すると、「イェストシャープ(jestřáb)」という、sokolに似た鳥の名前からできた形容詞だという。
 さらに詳しく聞いてみると、鳥の種名としては、sokolはハヤブサで、タカはjestřábにあたるということがわかった。『チェコ語・日本語辞典』にもjestřábが立項されていて、「鷹」という日本語訳が与えられている。ただし、うちのの話では、専門的にはともかく、一般的にはjestřábよりも、sokolを使うことが多いという。ハヤブサとタカが飛んでいるのを見て区別できる人がそれほど多いとは思えないから、タカを見ても、ハヤブサを見ても、日本人は「タカ」といい、チェコ人は「sokol」というのだろう。ウィキペディアによると、最新の分類学では、タカとハヤブサは目レベルで別種のものとされているようだが、以前はタカ目の中にハヤブサ科があったのだし。

 この考えを補足するようなことが、『日本大百科全書』の「タカ」の項に書かれている。「タカのなかにハヤブサ科の鳥を含める場合もある」と。鷹狩についても、『世界大百科事典』に「鷹狩につかわれる鳥は,主としてタカとハヤブサ類で」とあることから、この点からもタカとハヤブサは同様に扱われていたと考えてよさそうだ。普通の人間にとっては、タカもハヤブサも似たようなものなのである。ということで、小型の猛禽類をまとめて呼ぶという意味においては、「sokol=タカ」として問題なさそうだ。
 ただ『日本大百科全書』のタカの解説中にはタカの仲間として、トビやノスリなども挙げられている。かつて近くの漁港で空を舞うのを見たトビは、こちらの「タカ」に対するイメージよりもずっと大きく、トビだと知らずに見たら、ワシだと思ってしまいそうである。本物のワシは、あれよりも大きいのだろうか。ちなみにトビはチェコ語ではluňák、ノスリはkáněというらしいが、チェコでは「タカ=sokol」とは区別しているのぁもしれない。

 ちなみに、現在最も信頼できるチェコ語・日本語辞典である石川達夫編『チェコ語日本語辞典 チェコ語の宝――コメンスキーの追憶に』(成文社)で、念のために「sokol」を引いてみると、「鷹」とあり、その後に用例として「訓練された鷹」が挙げられた後に、動物学の専門用語として「ハヤブサ」も挙がっているが、対応するチェコ語は、単なる「sokol」ではなく、「sokol stěhovavý」という後ろに「移動する」という意味の形容詞のついたものである。これは個別の種の名称ということになる。チェコ語では種を細かく区別するための形容詞は、名詞の前ではなく、後ろに置くのである。
 ということで、結論は、最初っから石川先生の辞書を見ておけばよかったというものになる。やはり、先達はあらまほしきものである。


『日本大百科全書』『世界大百科事典』はジャパンナレッジより引用。


今年は完全復活とは行かないと思うけど、キリがいいので元日に久々の投稿。

2020年11月20日

kyanid2〈私的チェコ語辞典〉(十一月十七日)



 推理小説で青酸カリが登場する際につきものだったのが、アーモンド臭という奴である。初めて青酸カリの登場する小説を読んだときには、アーモンドなんてよく知らなかったこともあって、妙に感動したのを覚えているのだが、濫読しているうちに青酸カリ=アーモンド臭というのにまたかよという飽きみたいな感情を抱くようになった。だから誰かの小説で、別の言葉で青酸カリのにおいを説明しているのを読んだときにはうれしくなったのだが、誰のどの作品だったか思い出せない。
 青酸は青酸でも、カリではなくて、青酸ガスというのもあった。明確に覚えているのは『マスター・キートン』で使われていたやつなのだけど、桃の香りと言っていたような気がする。固体である青酸カリと気体である青酸ガスでは臭いが違うのかなと思った。熟する前の果物の種には青酸が含まれているなんて話もあるから、アーモンドといい桃といい、青酸が多少は含まれているのかもしれない。

 推理小説読者にとってもう一つ重要だったのは、青酸カリの入手方法である。この手の猛毒が、流石に簡単に手に入るわけはないのだけど、小説では意外なところで手に入るようなことが書かれていた。覚えているのは森雅裕の『椿姫を見ませんか』で、イタリアの果樹農園では殺虫剤がわりに青酸カリを使うと書かれていたのと、東野圭吾の『放課後』で写真の現像か何かで使うのでカメラ屋に置かれていると書かれていたことである。
 実は、工業の現場ではいろいろな用途に使われていることを後に知るのだけど、それは青酸カリだけではなく、他の青酸化合物についても言えることだった。日本人はどうしても青酸と名のつく毒物というと青酸カリを思い浮かべてしまうわけだけれどもさ。

 そんな青酸化合物が、カリかどうかは知らないけれども、チェコでもあちこちの工場で利用されていることを反映するような事件、事故が最近起こった。始まりは9月か10月のことだったと思うのだが、モラバ川の支流であるベチバ川で、魚が大量に死ぬという事件が起こった。死んだ魚が川を流れていたのだが、放置すると川の汚染につながるので、関係者だけでなくボランティアも導入して回収作業が行われていた。
 同時に、原因の調査も行われ、「kyanid」が大量死の原因だということと、その「kyanid」がベチバ川上流のある排水口から川に流入したことが判明した。その排水口は、川からかなり離れたところにある工業団地にある工場の排出する水を集めてベチバ川に送っているという。もちろん、各工場では廃水の浄化を行ってから排出しているので、本来であれば有害物質は川に流れ込まないことになっている。

 この時点では、青酸化合物を誤って川に流してしまった企業はすぐに判明するものと思っていたのだが、あれから一ヶ月以上、責任を負うべき企業、工場は特定されていない。一つには、青酸化合物を使用している企業、工場が一つだけではないからのようだ。そのうちどの工場から流出したのかを確認するのに、排水口につながる水路が長大なために苦労しているようだ。
 もう一つ、考えられているのは、実はバビシュ首相のアグロフェルト社傘下の企業の工場から流出したものだけれども、政治的な理由で原因不明になっているのではないかということである。問題となっている排水口につながる工業団地にアグロフェルト傘下の企業の工場があるのは確かなようだが、その工場で青酸化合物を使用しているのかどうかは、現時点では情報が出ていない(と思う)。

 チェコではこの手の化学物質の流出によって環境に被害が出たり、周囲に住む人々の生活に影響を与えたりする事故が、しばしば起こっている。原因となった企業を突き止める以上に、大事なのは再発を防止することなのだろうけど、緊急事態宣言下では対応が難しいのか、二度目の大量死事件が発生している。恐らく同じ工場からの流出だろうけれども、明確な証拠を突きつけられない限り、罪を認めたりはしないよなあ。チェコだからというよりは、それが企業というものである。
2020年11月17日24時。










2020年11月19日

kyanid1〈私的チェコ語辞典〉(十一月十六日)



 以前、通訳のアルバイトをしていたときに、中学高校の理科の知識が非常に役に立った。仕事をしていた工場では化学薬品を使っており、使用する際にはあれこれ化学的手続きが必要だった。そのチェコ語のマニュアルを日本語に訳したのだが、それまでのチェコ語の勉強では見たことも聞いたこともないような言葉にあふれていたのである。
 当然、軽く目を通したときにはお手上げだと思ったのだが、翻訳に取り掛かって「kyselina octová」という言葉に気づいた。「kyselina」は酸で、「octová」は「ocet(酢)」から出来た形容詞だから、酢酸だと思わず叫びそうになってしまった。その文章では、ここの言葉の意味ははっきりわからなかったが。他にもフェノールフタレインだったか、pH測定するのに理科の実験で使った物質も登場して、ああこれは中和滴定をやっているということが理解できた。

 以後、「kyselina sírová」は、「síra」が硫黄のことだから、硫酸だとか、「kyselina citronová」は、「citron」はレモンだけどクエン酸かなとか、「kyselina mléčná」は、「mléko」が牛乳だから乳酸で、「kyselina listová」は、「list」は葉だから葉酸だろうとか、「kyselina mravenčí」は、「mravenec」から蟻酸だろうなとど、それぞれの酸がどんな酸なのかも知らないけど、言葉の上では推測がつけられるようになった。酸の名前の場合には形容詞が後に来るのにも慣れていった。
 そもそも「kyselina」という言葉自体が、酸っぱいと言う意味の形容詞「kyselý」、もしくは酸素を意味する「kyslík」から作られた言葉だと考えたら、日本語と似ている。いや、この手の化学用語は、チェコ語でも日本語でも、外国から入ってきた概念を既存の言葉を使って無理やり翻訳したものだろうから、似ているのが当然なのだろう。だから、ある程度ルールを理解すると、応用がきくのである。

 元素記号表も、完璧に覚えているわけではないけど、結構助けられた。初めてチェコ語で「fosfor」という言葉を聞いたときには、何のことやらさっぱりで、どんなものか言葉で説明されてもよくわからなかったのだが、元素記号でいうと「P」だと教えられて、リンを指す言葉だと理解した。元素記号がPになっていると言うことは、ラテン語では「ph」で始まっていて、それをチェコ語に転記する際に「f」を使ったということかなんて推測までしてしまう。もちろん、この場合は相手が元素記号を知っていたという幸運も大きいのだけどさ。

 さて、ここからが本題である。中高の理科だけでなく、推理小説もチェコ語の理解に役に立つ。いや、一度だけ役に立った。昔まだチェコ語の勉強をしていたころ、製品に「kyanid」を入れてばら撒くと食品会社が脅迫された事件があった。今考えれば日本のグリコ・森永事件のようなものなのだが、最初に聞いたときには「kyanid」がわからなくてへえとしか思わなかった。
 次の授業で師匠に質問したら、いろいろ説明してくれたのだけど、決め手になったのは確か殺人に使われることがあるという説明だった。推理小説の読者として殺人に使う物質と聞いて真っ先に思い浮かべるべきは青酸カリ以外には存在しない。青酸のことをシアン化合物なんて言い方もすることを考えると、日本語でカタカナで書かれる「シアン」が、チェコでは「kyanid」として受け入れられたのだと言えそうだ。推理小説で殺人に使われる毒物は他にもあるけれども、「kyanid」が青酸化合物であることは確実である。

 確か、青酸カリに当たる言葉も、登場して。「kyanid draselní」となっていた。「draselní」は、「draslík」からできた言葉だというので、カリウムまで覚えられてしまった。ということは、チェコ語では、一般的に青酸化合物を「kyanid」と呼び、後に形容詞をつけて具体的な物質を示すということになるのか。青酸化合物はほとんど猛毒らしいから、「kyanid」だけで毒物だということがわかるのだろう。
 長くなったので以下次号。
2020年11月17日13時。











タグ:元素記号

2020年06月09日

I〈私的チェコ語辞典〉(六月六日)



 チェコ語の言葉の中で「i」で始まるものは、ほとんどが外来語というかラテン語起源のものである。少なくともそんな印象を持っている。地名や民族名などの固有名詞を除いて、外来語ではないと思われる「i」で始まる単語というと「i」ぐらいした思いつかない。これは「a」と似たような言葉で、普通は「も」と訳すのだが、日本語の文脈の中では「も」とは訳せない場合もママある。ということは、そういう使い方は日本人にはしにくいということになる。「a」を使っておけば大抵は問題ないので心配することもない。
 問題は、「i když」「i kdyby」のような「i」を使った表現が、一語なのか二語なのかわからなくなることで、話すときにはどちらでも大差ないからいいのだけど、書くときにはワープロソフトの校正機能のお世話になっている。日本語でこの機能をオンにしておくと、余計な指摘ばかりでうるさいとしか思えないのだが、チェコ語で文章を書く際には重宝している。細かいつづりのミスとか見るだけだと見つけられないし、モニター上で、特に「i」「í」を判別するのは辛いのである。

 それで、「i」で始まる外来語で、一番最初に覚えるものと言ったら、「informace」だろう。日本語でも、情報と言わずに「インフォメーション」と言うこともあるから、意味の類推は難しくない。ただこの言葉を覚える際には、外来語に関して、ついでに覚えておいたほうがいいことが二つある。

 一つは、語末の「-ace」である。「informace」が「インフォメーション」となるように、日本語の外来語の「エーション」に対応すると考えて問題ない。もちろん日本語のすべての「エーション」で終わる言葉が、チェコ語にあるわけでも、「-ace」で終わるわけでもないし、チェコ語の「-ace」で終わる外来語がすべて日本語に外来語で訳されるわけでもない。ただ、これを知っておくと、日本語の外来語の語源となった英語の単語をチェコ語読みして最後を「-ace」に変えたら、通じてしまったなんてことはある。
 具体的に例を挙げると、キーボードの切り替えが面倒なのでカタカナにするけど、「オーガニゼーション」は「オルガニザツェ」になり、「センセーション」は「センザツェ」になる。お題の「i」ではじまる言葉の中にも、「inflace(インフレーション)」「ilustrace(イラストレーション)」「inspirace(インスピレーション)」「imitace(イミテーション)」などがある。

 もう一つの特徴は、動詞化するときに「-ovat」を使うという点で、「informovat」という動詞が作られる。これは「-ace」で終わるものに限らず、外来語にはよく見られるもので、「studium」から作られる「studovat」は初学のころに勉強するから誰でも知っているはずである。ただし、この「-ovat」でおわる動詞がすべて外来語起原ではないことは強調しておかなければなるまい。
 これも「i」で始まる言葉で例を挙げておくと、「ilustrovat(イラストを描く)」「imitovat(真似をする)」「inspirovat(インスピレーションを与える)」などがある。英語圏の人の中には適当な動詞が思いつかないときに、英語の動詞をチェコ語読みして「-ovat」をつけるという荒業を見せる人もいるけれども、成功率はあまり高くないので真似するのはやめておいたほうがいい。

 最後に、この武漢風邪騒ぎで頻繁に聞くようになった「i」で始まる外来語を二つ紹介しておこう。一つは「infekce」で「感染・伝染」を意味する。形容詞形の「infekční」や、接頭辞をつけて「消毒・殺菌」を意味する「dezinfekce」や、その動詞形「dezinfikovat」なんかは毎日のように耳にして、忘れようにも忘れられなくなった。
 もう一つは、「免疫」を意味する「imunita」である。この言葉は国会議員の免逮捕権な度も意味するから、以前から知ってはいたのだけど、「plošná imunita(集団免疫)」なんて組み合わせは、武漢風邪が起こらなかったら存在を知らなかっただろう。こういう普段は使わない語彙を増やすことができたのも、武漢風邪のもたらした好結果だったといえるかもしれない。二ヶ月も自宅に監禁されたのに見合うかというと、全くそんなことはないから、中国に損害賠償を求めたいところではある。
2020年6月7日11時。






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2020年01月07日

Hで始まるいくつかの言葉〈私的チェコ語辞典〉(正月四日)



 チェコ語の、本来は「糞」を意味する「ホブノ(hovno)」がハナー地方では、「いいえ」を意味することがあるという、冗談みたいな話は、確か以前書いたことがある。実際に使われたのを聞いたのは一度だけだし、それも本来の意味で使われたのか、「いいえ」の意味で使われたのか判然としない。いや、師匠にこの話を聞いていなかったら、本来の意味で使ったと思っていたに違いない。

 この「糞」という言葉は、日本語でも本来の意味を離れて、失敗したときなど悔しがるときに口から出してしまう言葉としても使われる。残念ながらチェコ語の「ホブノ」には、この使用法はなく、こんなときチェコ語では「サクラ(sakra)」と言うことが多い。この言葉も本来は聖なるものを指す言葉から派生したらしく、聖と俗の関係を考えさせて興味深いのだけど、ここでは置いておく。
 最近成文社から刊行された『チェコ語日本語辞典』では、この言葉に「〈乱〉」という記号が付いている。普通は使わない乱暴な言葉だということであろう。日本語でも「クソ」なんてちゃんとした言葉遣いが必要な場面で使ったりはしないから納得はできる。指小形にして「ホビーンコ(hovínko)」なら乱暴な言葉遣いにはならないかな。もちろん本来の意味で使う場合である。

 Hで始まる乱暴な言葉といえば、「ホバド(hovado)」がある。これは本来、家畜の牛をさす言葉だが、牝牛を意味する「クラーバ(kráva)」がしばしば女性に対する悪口となるように、この「ホバド」も特に下品で粗雑な振る舞いの多い男性に対する悪口として使われる。「jí jako hovado」というと、けだもののように貪り食い、ぼろぼろ皿から食べ物を落とす姿をイメージしてしまう。
 自分では本来の意味でも、悪口としても使ったことはないけれども、うちのは仕事でいやなことがあったときなど、怒り心頭のときに、「あいつはホバドだ」なんて形で使うことがある。そんなことでもなければ、こんな普通は使わない言葉を覚えることはなかっただろう。

 さて、「ホバド」は悪口で使うときには、常に単数だが、複数でも使えるのが「ハイズル(hajzl)」である。本来は便所を意味する言葉らしいが、「do hajzlu」で「便所に落ちろ」と言うことになるのかな。もちろん、文字通りの意味ではなくて、かなりひどい罵倒の言葉になる。昔通訳の仕事をしていた会社で、トイレがきれいに使われないことに腹を立てた人が、こんなことをする奴らは「do hajzlu」だという張り紙を出していて、うまいと思ったことがある。
 本来、この言葉は男性名詞の不活動体だが、活動体として使うこともできる。単数でも複数でも5格にして「ty hajzle」とか、「vy hajzlové」とか言うのは、チェコ語においては最強の罵詈雑言の一つになる。上に挙げた張り紙には「vy hajzlové, ... do hajzlu」と書かれていたのかな。トイレの使い方がひどすぎることを指摘する部分もあったと思うけど。これもこの張り紙がなければ覚えなかっただろう。

 普通「ホウバ(houba)」というとキノコをさすが、複数形にして「houby」となると、違う意味で使われる。チェコ人は別な言葉だと言うもしれないけど、外国人には同じ言葉の別の用法にしか見えない。その使い方は「ぜんぜん駄目」とか、「全く意味がない」とか非常に否定的なもので、何か提案されたときに一言で「ホウビ」なんて返事を返すのは、なかなか強烈な否定になる。

 それから「フバ(huba)」は、本来口を意味する言葉だが、人の口に使うにはちょっと不適切な言葉で、普通は動詞の「ムルチェット(mlčet)」を使う「黙れ」という命令も、「drž hubu」と言うと強烈なものになる。「フバ」だけでおしゃべりな、口の悪いひとを指すこともあるし、形容詞「フバティー(hubatý)」にすると、口から先に生まれてきたような、ああ言えばこう言うというタイプの人を指すことになる。あまり言いイメージの言葉ではない。

 悪口で使われるHで始まる言葉で忘れてはいけないものとして、「フサ(husa)」もあった。本来は鵞鳥の雌を指す言葉だけど、クラーバ同様、女性に対する悪口として使われる。クラーバとフサの違いはと聞かれても、チェコ人ならぬ身にはわからんとしかいいようがない。どちらも頓珍漢なことを言う女性に対して使われるような気もするし、フサは、子牛という意味の中性名詞「テレ(tele)」と同じような状況で使うかもしれない。チェコ人に聞いても、考えて使い分けているわけではないようだから、ちゃんとした説明が帰ってこないことが多いんだよね。

 とまれかくまれ、本日はHで始まる、知っていてもいいけど自分では使わないほうがいい言葉の説明であった。正月だけど、とりあえず三が日は過ぎたからいいよね。
2020年1月4日24時。











タグ:悪口 雑言
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