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2018年01月15日

大統領選挙投票開始(正月十二日)



 大統領選挙の一回目の投票がこの金曜日の午後から始まった。原則として登録されてた現住所に基づいて投票所が決められるので、うちのも実家まで投票しに帰った。事前に住所のある町の役場で手続きをすれば、チェコ国内であればどの投票所ででも投票できる証明書を発行してもらえるようだが、平日の昼間に出かけなければならないことを考えると、金曜の午後から土曜にかけて帰る方が現実的らしい。
 今回の選挙に関しては、どうせ現職のゼマン大統領が再選を果たすだろうと、半ば諦めていたのだが、最近の世論調査の結果によると、一回目の投票でゼマン大統領が一位になるのはほぼ間違いないけれども、得票率が50パーセントを超えず二回目の決選投票が行われた場合、進出するのがドラホシュ氏かホラーチェク氏であれば、ゼマン氏に勝つ可能性もあるらしい。その調査の信憑性はともかくとして、前回のシュバルツェンベルク氏ぐらいは戦える対立候補が二回目に進むといいのだけど。

 ゼマン大統領は、大統領選挙のための選挙運動は行なわないとして、テレビやラジオの候補者たちによる討論番組への出席さえ断っているが、現職の大統領としての公務と称してチェコ国内をあちこち訪問しているので、それが実質的な選挙運動になっているところがある。
 それに、道路わきの広告スペースにゼマン大統領に投票することを呼びかけるような広告が貼られているのをしばしば目にする。これはゼマン氏本人の選挙運動ではなく、ゼマン支持者たちが、恐らくゼマン氏の許可は得ているだろうけれども、独自に自分たちの考えでお金を出して張り出したものだという。これを放置して、もしくは許可しておいて自分は選挙運動はしていないというのは、無理があるような気がする。

 チェコの選挙制度は、大金持ちに有利な制度になっている。それは票の買収が行われるという意味ではなく(買収が行われる場合に応じるような人たちは、100コルナでも応じかねないらしいから特に大金持ちである必要なない)、選挙運動のためのポスターを貼るスペースを自分で確保しなければならないという点においてである。
 今回の大統領選挙でも、有志が手配したとされるゼマン大統領、ドラホシュ氏、ホラーチェク氏という三人の早くから立候補を表明して、資金的にも余裕のあった候補者と、元首相で知名度と集金力はあるトポラーネク氏は、道路沿いのビルボードと呼ばれる大看板に支持を求める巨大なポスターを掲示できていたが、それ以外の候補者の、弱小とみなされる候補者のポスターは、街中のイベントを紹介する掲示板にひっそりと貼られているのを見かけたことしかない。ポスター自体見かけたことのない候補者もいるかもしれない。

 ということで、もともと知名度の低い候補者は、なかなか知名度を上げられないという状況だったのだが、それを救ったのがテレビだった。公共放送のチェコテレビ以外でも、チェコ人の選挙好きを考えれば視聴率が取れると考えたのか、民放でも候補者を呼んで討論番組を放送していた。その手の番組で意外とというと申し訳ないけれども、活躍をして評価を上げたのが、元外交官ではべる大統領の補佐をしていたこともあるというフィシェル氏だった。
 月曜日に、選挙前最後に公表された世論調査の結果でも、当初は十把ひとからげに扱われていた弱小候補のグループから抜け出し、トポラーネク氏を上回り三位のホラーチェク氏に迫る勢いを見せていたのだが、木曜日のチェコテレビで行われた最後の討論番組でも、ちら見、ちら聞きしていた中では、一番説得力のある発言をしていたように感じられた。正直、現時点で二番手と目されているドラホシュ氏よりも、この人が先に立候補を表明して反ゼマン派の支持を集めることができていたら、勝ち目が大きかったのではないかと考えてしまった。

 もう一人、予想外の好印象を残していそうなのが、医師のヒルシュル氏なのだが、こちらは政見に対する評価と言うよりも、現時点では若さと、見た目、言動のさわやかさによって支持を集めている印象である。この人が将来本当の意味で大統領候補になれるかどうかは、知名度がある程度上がったこれからの行動によるのだろう。

 この大統領選挙の一回目の投票に際して、各政党の対応はばらばらである。ゼマン大統領支持を全面的に打ち出したのが、バビシュ党のANO(党員に対して公式に指示を出したかどうかは不明)と、党大会にゼマン大統領を招待したオカムラ党ことSPDで、反ゼマンでドラホシュ支持を表明したのが、キリスト教民主同盟と市長無所属連合の二つである。ただし、ゼマン大統領もドラホシュ氏も、政党に対して支持を求めたわけではないようである。
 他の政党は、政党として候補者を立てたわけではないのだから、党として公式にどの候補者を支持するかを決めることはできないとしているが、共産党はゼマン大統領よりで、市民民主党、TOP09がドラホシュ氏支持なのは、明らかな話である。本当に支持する候補を決めないのではなく、決められないのが社会民主党で、現在の執行部は反ゼマンの色が強いようだが、党員の中には、国会議員も含めてゼマン支持者が一定数いるはずである。

 ということで、第一回目の投票の焦点は、ゼマン大統領が50パーセント以上の得票で当選を決めてしまうかどうかと、誰が二番手で決選投票に進むかという二点に絞られている。二番手としては本命はドラホシュ氏、対抗がホラーチェク氏、穴がフィシェル氏というところだろうか。この記事を載せるころには結果が出ているはずだけれど、それほど予想から外れた結果にはならないと思う。
2018年1月13日15時。










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