2017年06月05日

NHKスペシャル「私たちのこれから #子どもたちの未来 」を見てみた



子どもたちの貧困 NHKスペシャル 私たちのこれから.png




13才〜29才の男女を対象にしたあるアンケート調査によると、38.4%の日本人が自分の将来の希望をもっていないそうです。これは、先進国の中ではダントツに高い。

自分の将来に希望を持てない状況を放置することは日本の将来にとっても重大な問題です。

子どもを巡る問題は、いじめ、少子化、ブラックバイト…などたくさんありますが、忘れられがちな問題として「子どもの貧困」が挙げられます。

年収の中央値の半分に満たない収入の世帯を相対的貧困と呼ぶことにすると、16.3%の子どもが相対的貧困状態に置かれています。



相対的貧困状態は、子どもの心に悪影響を及ぼしています。

「頑張れば報われるか」という質問に対して、
相対的貧困の児童の8.1%が否定的な回答をしています。
一方、相対的貧困でない児童は、5.3%しか否定的な回答をしていません。

「自分は価値のある人間か」という質問に対して、
相対的貧困の児童の13.1%が否定的、
そうでない児童は7.6%が否定的な回答をしています。


関連記事: NHKスペシャル「見えない“貧困" 〜未来を奪われる子どもたち〜」を見てみた



相対的貧困な状態では、現金や物が得られないだけでなく、経験や教育を受ける機会も得られないことになります。すると、進学や就業の機会を逃し収入と納税額が伸び悩み、場合によっては、社会保障で支える必要が生じます。

相対的貧困を野放しにしていると、将来的に42.9兆円の経済的損失が生れ、15.9兆円の税収を失います。

他人事ではなく、自分にも関わることなのです。


児童養護施設で育ったという番組に出演した人によると、子どもの頃から諦めることが身についてしまう。また、他の人ができることを自分ができないことが、精神的にこたえるそうです。


子どもの貧困とその対策について無関心であるせいで、必要な支援が行き届いていません。
同じ県でも、学校によって就学援助を受ける人の割合が違います。ある学校では300人中154人が就学援助を受けたのに対して、同じ県の別の学校では300人中1人しか受けていませんでした。



子どもたちへの支援の現状に注目する必要があります。

各国の「子育て世帯向けの社会保障給付(対GDP比)」を見ると、
ドイツ、フランス、スウェーデン、イギリスはGDPの3%前後を充てているのに対して、日本は1.3%(イギリスの3分の1)だけ。

ここ30年の社会保障給付費の推移を見ると、「児童・家族関係(児童手当など)」の支出は少しずつ増えて、6兆5695億円(2014年)。
一方、年金など高齢者向けの給付は右肩上がりに増大し、54兆8747億円(2014年)。

子ども向けの社会保障費は、高齢者向けの8分の1に留まっています。


男性の貧困率を年齢層別に示したグラフを見ると、
1985年には高齢者の貧困率が高かったところ、
27年後の2012年には、高齢者の貧困率がグッと下がって、子どもの貧困率は上がってしまっています。
似たような傾向は、女性にもいえます。

専門家は、子どもへの支援を増やすには社会全体での合意をつくるべきだと言っています。

子どもの貧困に詳しい首都大学東京 阿部彩 教授
「(現在)高齢者の貧困率も決して低いわけではない。ここ(子ども向け)だけ拡充しようというのはやはり難しいと思いますので、日本社会の中でプライオリティ(優先順位)をつけるということをきちんとやっていくべきだ」
と言っています。


子どもの貧困を劇的に改善したとして、イギリスの例が挙げられました。

イギリスでは1990年代、子どもの25%が貧困でした。

トニー・ブレア首相が2020年までに子どもの貧困を撲滅することを目標に、次々に施策を打ち出しました。

・就労支援
・保育サービス
・現金給付

特に、現金給付の仕方は大胆で、児童手当を1.6倍にし、親に子ども用積み立て口座を開かせ、そこに政府が支給するなど、子育てにかける費用を2.6倍の6兆円まで増やしました。

その結果、一時27%いた貧困の子どもが17%にまで減りました。


子ども向けの社会保障費を増やすことは、イギリス以外の他の人にも影響があります。GDPの0.1%子ども向けの支出を増やすと、子どもの貧困率は0.6%減るそうです。

日本でGDPの0.1%というと5000億円。予算をどう捻出するか問題です。

出演者からは、「金持ちが金をばらまけ」とか、「増税しよう」とか「一定の条件の高齢者は1割負担で医療を受けられるが、若い人と同じように一律3割負担にして、条件によっては払い戻しをする制度に変えるべき」「収入の0.1%を徴収すれば、3400億円集まり、子ども一人当たり毎月5000円給付額を増やせる」などの意見が出されました。

番組の最中に、子どもの支援のための負担増に賛成か反対かアンケートをとったところ。

賛成84.3%
反対15.7%

という結果になりました。ホームページで事前にとったアンケートでは9割が賛成、Twitter では7割が賛成だそうです。

ある出演者によると、大多数の人が子どもの支援のための負担増に賛成だけど、関心がない人に、いかに納得してもらうかが重要だそうです。


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保護者の年収が高いほど大学への進学率は高く、逆に年収が低いと大学への進学率は低い傾向にあります。年収200万円の世帯では28%。これは、年収800万円の世帯の半分程度です。

大学への進学は収入に影響します。中卒の人は大卒の人より40%収入が低いのです。

貧困(※) → 経験や教育の機会を逃す → 低い収入 →(※に戻る)
…という貧困の連鎖を断ち切るために、ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマンは、小学校に入学する前の教育が大事だと話します。

「生きていく上で必要なのは、学力だけではありません。人生を成功させる能力を身につけるには就学前教育が最も重要なのです」

その主張の根拠になっているのが、1962年からアメリカで行われたペリー就学前教育プログラム。

これは、アフリカ系の3〜4才の児童を対象にした実験で、
2つのグループに分け、
一方のグループに、1日2時間半の学習指導と週1日の家庭訪問をしました。

児童を40才まで追跡調査したところ、

月2000ドル以上の収入があった人の割合、
就学前教育を受けたグループ 29%
受けなかったグループ 7%

持ち家率
就学前教育を受けたグループ 36%
受けなかったグループ 13%


どうして、就業前教育が効果的なのか。やる気、協調性、忍耐力は幼い頃の方が身につきやすいから。

課題を設定(※2) → 計画 → 実践 → 復習 → (※2に戻る)
…といった習慣も身につけやすいからだそうです。


ヘックマン
「非認知的能力はやる気を促し、人生の可能性を広げる極めて大切な能力なのです。今、貧困状態にある子ども達は、将来素晴らしい芸術家や優秀な数学者になるかもしれません。世界や日本で活躍する人材になる可能性があるのです」

若い時に教育するほど高い効果が出るそうです。就学前教育を受けた児童が将来、高い収入を得て高額な納税をするなら、それは社会全体が得をする効率のいい投資といえます。

これに関して、ある出演者は、教育は親がするものだという意識を変える必要性を訴えていました。



最後に出演者に、一言ずつ聞いたところ、「貧困には想像力が大事。感情として把握しないとダメだ」などの意見が出ていました。また、デーブ・スペクターはこの番組で「エビデンス」という英語を覚えたと言って会場を笑わせていました。


番組の最後に、「子どもが希望を持てる未来が実現するか」というアンケートをとったところ、
できる 48.4%
難しい 51.6%
という結果になりました。

三宅アナウンサーによると、子どもが宝だということを社会が共有できるかということが大事とのこと。


NHKスペシャル「私たちのこれから #子どもたちの未来 」

再放送: 未定




公式ページ

NHK > 私たちのこれから #子どもたちの未来

6人に1人 深刻化する子どもの貧困

動画で見る子どもたちの未来


関連記事

NHKスペシャル「見えない“貧困" 〜未来を奪われる子どもたち〜」を見てみた


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感想

子どもの支援のための負担増に大多数の人が賛成しているのが印象的でした。

番組の最後で、小説家風の方が「貧困には想像力が大事。感情として把握しないとダメだ」と言っていました。今は、他人の子どもにコストをかけることが、回り回って自分や自分が属する社会にリターンが返って来るというデータ通りのことが起きるという想像力が必要なのでしょう。
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