(2018年投稿記事です。)
自衛隊統合演習が終了して、所定目標を達成したJTF「演習部」!
演習終了後、すぐに事後研究会にて問題の洗い出しを行います。
浮上する課題は、中期防などの防衛政策に反映されるため大事な作業です。
それでは、長く続いた「後方幕僚編」完結です!
(前記事):【幕僚編I】敵水上艦撃滅!SSNの反撃!そして目標達成へ!
(最初の記事):【艦補処】自衛艦隊司令部後方幕僚に派遣!(その1)
(1)演習の答え合わせは問題噴出の時間!
自衛隊統合演習終了後、数時間の休憩をとってからすぐに「事後研究会」が開始されます。
各員の記憶が鮮明な間に「事後研究」を行う「HOT WASH UP」というやり方で行われます。(米海軍の目標管理・状況分析手法に倣った方式です)
しかしSF司令部の「事後研究会」は、毎回『荒れる』ことで有名です。
(指揮官経験のある1佐が、壇上で怒鳴られまくるのは毎回のお約束)
1.1 「敵X国」総指揮官は『海上自衛隊幹部学校長』!
事後研究会には、「敵X国」を兼任した「統裁部(審判)」が加わり会議が行われます。
開戦当初から、(イジワルな)数々の行動をしてくれやがった「統裁部」はどんな「悪人」が指揮していたのでしょう?
『そのイジワルな顔を拝んでやるぜ!』
そう息巻いていたペンギンでしたが、「統裁官」の顔を見て驚きました。
図1 驚愕するペンギン
引用URL:https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/CAT9V9A9181_TP_V.jpg
どこかで見たことある人だと思ったら『海上自衛隊幹部学校長(海将)』!
ついでに言うと、ペンギンが幹部候補生だったころの「幹部候補生学校長」でした・・・
『おうおうペンギン、統裁官に文句言ってやるって息巻いてなかったか〜?』
「統裁部」いた後方幕僚部の先輩が、茶化してきますがそれどころじゃね〜!
1.2 演習経過リプレイに「演習部」は阿鼻叫喚!
事後研究会は、演習経過の再生と、「統裁部」がここで何を判断・行動したのかを突き合わせて検証します。
演習経過が進むにつれて、「演習部」の幕僚たちは阿鼻叫喚の状態になっていきます。
『ぎょえ〜!ここに配置してたのかよ!』『なんじゃこりゃ〜!』
「演習部」の行動が、「統裁部」によって弄ばれる様子が投影されます。
「攻撃側」は、フリーハンドで行動できるというのがよくわかります。
1.3 やはり連動攻撃作戦だったか・・・!
「演習部」の幕僚間で、判断しかねていた事項がありました。
『「BMD攻撃」と「ゲリ・コマ」によるSF司令部攻撃の連動性』
(関連記事):【幕僚編C】BMD演習発動!さらに窮地となりついにSFまで・・・
事後研究会で、やはり「統裁部」による連動作戦だったことが判明しました。
かなりやってくれるぜ!
1.4 「敵SSN失探」情報を全員が見逃すという大失態!
事後研究会で、「演習部」幕僚全員がとんでもない大失態を起こしていたことが判明しました。
SFへの「ゲリ・コマ」攻撃で通信機能が低下しているときに、
『CTF70から「敵SSN失探(ロストコンタクト)」情報が入っていた』
という、重大な情報を「演習部」全員が見逃していたことが判明しました。
(MOFシステムの情報入電ログには記録されていた)
図2 「アレ?俺の存在は?」(敵SSNを模擬した米SSN)
引用URL:wiki
SF司令部攻撃で、「演習部」がパニック状態の中で、全員が「敵SSN」への注意が向いていなかったのです。
『SSNの位置確認を怠るのは、幕僚要務の重大な要改善点である!』
演習統裁官からの厳しい指摘が飛びます。
「敵SSN失探情報」に気づかないまま、「演習部」は重大な「判断ミス」を犯し攻撃を続行!
結果として、「第1次対艦総攻撃」にて「TG21.1」を壊滅させる結果となりました。
(関連記事):
【幕僚編D】反撃作戦立案!幕僚達の闘いは敵意図看破!!
【幕僚編F】反撃のJTF!第1次対艦総攻撃開始!
(2)各種戦闘・作戦準備をめぐり大激論!
演習経過の進捗と共に、各種戦闘・作戦準備にて課題点が続出しました。
2.1 横須賀陸警隊の技量不足と陸自守備隊連携不徹底
問題になったのは、横須賀地区での警備体制でした。
当時、横須賀警備隊隷下の横須賀陸警隊は、64式小銃装備でした。
図3 演習当時の陸警隊の装備風景
引用URL:https://scontent.cdninstagram.com/vp/6b54b2d46e4b18635720828896a16bf3/5C9762A3/t51.2885-15/e35/19624441_242967509552275_967697333410070528_n.jpg?_nc_ht=scontent.cdninstagram.com
市街地戦の研究も進んではいたのですが、演習では「陸警隊全滅」判定となりました。
単純に言えば、「ゲリ・コマ」対処技量の不足がありました。
さらに、増援の陸自守備隊との連携が不徹底となり、陸自守備隊の「弾薬不足」に補給ができない問題が出てきました。
対策として、「陸警隊に89式自動小銃配備」「市街地戦闘訓練の徹底」という課題が出ました。
図4 横須賀陸警隊の市街地戦闘訓練
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/yokosuka/butai/img/y-agg/y-agg2.jpg
\89式自動小銃は必要だよ!/
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2.2 対空・対艦ミサイル「即応弾」の不足
演習の中で、大きく問題視されたのが「即応弾ミサイルの不足」です。
図5 対艦ミサイル
引用URL:https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/26/eef249e63aa78511cf5f62804b21b507.jpg
以外に思うかもしれませんが、ミサイルは「即応弾」にしないと発射できません。
ミサイルの備蓄はあるのですが、発射できるようにするには整備時間が必要です。
図6 対艦ミサイルの整備
弾薬庫の拡張、整備済みの「即応弾」備蓄量の増加が課題として出されました。
2.3 輸送能力の不足
海上自衛隊の宿命というべき問題として、「輸送能力の不足」が課題として出ました。
今回の演習では、おおすみ型輸送艦1隻と空自輸送機「CH-130H」を使用しました。
これでは、陸自1個中隊戦闘団を輸送するのが精一杯です。
(当時、海自航空輸送機は「YS-11」のみ)
将来的に「Wair」の増強が行われるときに、輸送・補給能力の不足が懸念されます。
大型の輸送補給を行える「多用途輸送艦」が欲しいとの見解が、陸自からも出されました。
現在構想に挙がっている「多用途輸送艦」の原点は、演習の問題点から出てきたのです。
(3)指揮統制と共同交戦能力について
離島奪還については、陸自との共同作戦が不可欠になります。
また、BMD対処で空自との指揮管制についても重要になります。
演習当時は「COP(共通作戦図)」が司令部レベルでは可能でした。
しかし米軍はすでに「CEC(共同交戦能力)」まで進んでいました。
図7 海上自衛隊の指揮通信システム
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/csc/mars.files/image002.png
最近になり、ようやく「CEC」まで指揮管制システムが進化しはじめました。
陸自との通信に、四苦八苦していた当時の演習からは進化したといってよいと思います。
自衛隊統合演習にて出された課題は「中期防」に装備品として反映されます。
3.1 勤務の糧となった「後方幕僚」体験
海上自衛隊勤務時代に「幕僚」を体験できたことは、非常に有意義でした。
その後の勤務の糧となり、いろんな仕事で経験を反映させ、中級課程での訓練に役立ちました。
1週間という時間でしたが、とても濃密な時間でもありました。
「これが海上自衛隊だ!」というべき体験です。
SF司令部の「指揮所」は、機密レベルが高く写真が公開されたことがありませんが、「ひゅうが」型のFIC(旗艦司令部作戦室)を何倍も大きくしたような部屋です。
図8 「ひゅうが」FIC
引用URL:wiki
いつか写真で公開される日が来るのを待っています。
さあ、艦補処の仕事に戻るぞ〜!
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失礼いたしました、幕僚編Gが非公開のままでした。
公開状態にいたしましたのでご覧ください。
ご指摘ありがとうございました!