騎士きどり　knight kidori

行っても、あそこが痛いここが痛いという話しかなくて、
「自分の不摂生を呪うのね」としか話題もないのだけど
待たれているのは分かっているので
今日も父の病院へ。

やはり話題は同じ。
缶コーヒーを飲みながら愚痴る。
それでも、病院の売店で買ったらしい高いお菓子を、たくさん棚から出しては私に持たせようとする。
口にも合わないし、頼むからそんな無駄遣いしないでよと思うけど
誰かに何かをしたい気持ちは分かるから、ありがとうありがとうと受け取る。


病院生活は退屈で、
毎日缶コーヒーを３本飲み、新聞を買うしか楽しみがないという。
その500円を我慢して、
私が立て替えた家賃を返してくれないか。
そう言うのは間違ってない。
だけど、その、正義を口にして相手をやり込めるのは、もう怖い。
私は、そうやって最愛の妹をなくしたので、もう、正義にこだわっていくのは怖い。

たとえば、
本当に家賃をたて替えるのが嫌なら
「たて替えなければいい」
私が、人の役に立ちたくて、
たてかえて「ありがと助かったよー、いつもありがとうね」と言ってほしいから、
なんてのは、エゴでしかないんだろう。


頭金のお金が惜しかったのなら、
「立て替えなければいい」
最初から払わなければよかった、
いいカッコしなければよかったのだろう。

だけど普通、誰かに何かをしたら、
ありがとうって感謝されて終わりだよね。
なんで私はいつも、ありがとうって言われずに、当たり前みたいにされちゃうんだろうなぁ。



誰かに、必要とされていなければ生きていけない。
もうそんなことにこだわっていられるほど
私は若くないのだろう。
もうどうでもいいよと、
他人と関わらず、一人で生きて行くほうが楽だよと、
そうやって全部諦めているほうが楽なんだろう。

心の中のモヤモヤは、全部なかったことにしたい。それでも
「ありがとうって言ってほしいって、そんなに大したことですか？
その気持ちがあるからダメなんですか？
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