2017年02月19日

中途半端な密室

拝啓



「中途半端な密室」
テニスコートでナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵がかかり、周囲には4mの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げたのか?そんなメンドクサイことを犯人がするのか?表題「中途半端な密室」を含む短編5編収録。


・中途半端な密室


・南の島の殺人


・竹と死体と


・十年の密室・十分の消失


・有馬記念の冒険


私としては「十年の密室・十分の消失」が一番印象的でした。犯人の動機、過去の背景、そして鮮やかな犯行と其々が納得出来るものでした、強引な論理展開もいつもより少なめな気がしますし。また「南の島の殺人」は読者から推測出来るように論理が進められているので、楽しめました。


「中途半端な密室」は十川と片桐の推理の掛け合いがとてもテンポ良くスイスイ読むことが出来ました。また事件現場に彼らが出向くともなく、新聞の2つの記事をもとに推測していく点は東川氏作品では新鮮かもしれませんね。


個人的にはこの作品は東川氏の作品の中で結構お気に入りです。頑張れミキオ。



敬具



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下町ロケット

拝啓



「下町ロケット」
夢が詰まった物語。


言わずとしてた第145回直木賞受賞作。もはや様々な媒体で語り尽くされたあらすじですが、ざっと述べると、



ロケット研究を一度は諦めた佃航平が、多くのライバル企業や経営問題、内部分裂危機に直面し、それらを乗り越えながら経営者として骨太になり、また研究者としてのロケットへの夢を実現していく



そんな非常にあつ〜い物語。働く中で自分の夢を忘れがちになることが多い今、その中で苦しみながらも凛々と輝く佃の想い、仕事という現実を捉えながらも佃の夢に向き合おうとして必死に働く社員達を見たら胸が熱くならずにはいられないですね。


佃に関しては、ドラマは見ていなかった為、離婚していたことも知りませんでしたし、読んで見たら正直、妻が理不尽だと思ってのですがどうでしょうか。ロケットが部品を切り離すように夫を切り離して去っていたのには腹立っちゃしましたが、こんなもんなんですかね。


神谷という凄腕弁護士がナカシマ工業を叩き潰すのは見所。他の作品では、半沢直樹など主役が叩き潰す役を担ってきましたが、下町ロケットでは、前半戦の主役の相棒の相棒?くらい位置の彼がやってくれます。勧善懲悪がここにありで誰が読んでも腹立つナカシマ工業をぶっ倒す様は気持ちいいです。和解裁判を終えてから出番が無くなるのは残念ではあるのですが。


帝国重工内部の話は、今迄の作品同様、会社のプライド、方針、大企業なりの組織社会が描かれており、財前と富山の対峙も見所です。


財前は初めて佃製作所を知った際には、単純な驚きを以っていつもの悪役と違うのかなと思いきや、特許を買い取ろうと佃に現れた際には大企業の傲慢さを見せます。しかし、佃製作所の作業風景を見たら、考えが少し変わっていく。帝国の技術力を越える不思議さを佃製作所に感じ取ったからこその単純な驚きなはずなのに、交渉の場ではそれが微塵もない傲慢さという書きぶりには違和感ありましたが。また、帝国の佃製作所テストでの帝国側の手の平返しには素早すぎってなったり、殿村の啖呵の際に富山がいたとなっているがその描写がなかったり個人的に気になるとこは多々あるんですが、面白いことには変わりなし。


後、主人公側の軋轢がよく描かれてると思います。不合格品にロット打つなんてクラスの内紛は今迄出てこなかった気がします。そんなバラバラな佃製作所の中で部品納入には反対ながら帝国の傲慢なテストに腹を立て、佃に対するもやもやを一旦置き、打倒帝国の為に闘うことを誓う迫田には、一社員の意地とプライドを見た気がします。


最後は、見事にロケットを飛ばし、佃製作所は次の夢へ。こちらもドラマに含まれたみたいですが、原作を読んでみたいと思います。



敬具



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2017年01月24日

煙か土か食い物

拝啓



「煙か土か食い物」
ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!第19回メフィスト賞受賞作。


この小説の特徴は、何と言っても破格のスピード感(妙なリズム)がダダ漏れな文体・文圧です。ヘイヘイヘイな意気揚々なリズム感が半端なく、これにやられて途中リタイアしてしまう読者もいると思います。冒頭は、以下。



サンディエゴにはおよそ三百万人の市民が住んでいるが、そいつらがどういうわけだかいろんな怪我や病気を背負い込んでホッジ病院にやってくるから、ERにいる俺は馬車馬三頭分くらいハードに働いてそいつらを決められたところに追いやる。チャッチャッチャッ一丁上がり。チャッチャッチャッもう一丁。やることもリズムも板前の仕事に似ている。板前と違うのは奴らが切り開いたり切り刻んだりするだけのところを、俺達は最終的に全部元通り縫い合わせてしまうというところだ。



はい。どうでしょうか。主人公"腕利きの救命外科医 奈津川四郎"がどんな奴かをさらっとリズムに乗って説明しているくだりですが、私はこのくだりから四郎=日本人っていう結びつきがイマイチ出来ませんでした。こういう文体は、アメリカ小説で見る事が多かったのが原因なのですが、加えて妙にぶっ飛んでいるんですよね。なんか物語に入りきれない。こんな文体が、ずっと続きますw


ただ、この文体がつらつら続くだけだと、恐らく私はドロップアウトしていたこと間違いなしでしたが、展開にスピード感がある為、なんとか読んでいけました。


連続主婦殴打生き埋め事件の被害者に母親が含まれたことから、復讐の為に独自で動く四郎。警察がホイホイ四郎に協力したり、帰省して直ぐに同級ルパンに遭遇したり、警察と検事に同級がいたりと色々強引な所もあるお陰で、どんどん進んでいきます。また、四郎に降りかかるアクシデントやイベントもバシバシ発生するため、怒涛のラップみたいになってます。


1番不思議なのは、四郎の推理です。もはや思考のショートカットが凄い。天才の域に達しており、この強引な設定に対して首を捻る読者が出てきても仕方ないですね。と、この小説には色々強引に見える所がありますが、その強引さがスピード感溢れる作品の完成に一役買ってるのは間違いなし。


スピード感に並び、目立つのは暴力性です。四郎の家族には愛より暴力があり、小説のいたるところに暴力があります。ただその暴力性は、家族愛と密接に絡んでおり、「人は死んでからも生きた証を色々な形で残す」「家族は生きてるうちに、そして死んでからも引き付け合う」など重要なテーマに触れていきます。特に、暴力しかないような二郎と丸雄、憎み毛嫌いしていた丸雄から見えた愛情等から人間の在り方を問う所は、冒頭のイメージだった"訳わからない感"を消し去るのには十分でした。


暴力的でめちゃくちゃではあるが、実は人間、特に愛に付いて触れているぶっとんだ小説です。



敬具



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2017年01月18日

チェーン・ポイズン

拝啓



「チェーン・ポイズン」
本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか?人気絶頂のバイオリニスト、陰惨な事件の被害者家族、三十代のOL。三つの自殺に不思議な関連性を見出した週刊誌記者・原田は、“死のセールスマン”が運んだらしき、謎のメッセージの存在を知る。「命の取り引き」がもたらす意外な結末とは?


この「チェーン・ポイズン」は、「ある日1人のOLが自殺をする。すると彼女の前後にも2人の自殺者がいた。自殺は毒殺により共通している、しかし3人には過去も接点も無い。それでも、記者である原田が疑問を持ち、取材を開始する」という流れで進んでいきます。


この流れでも中心は原田とOLである自殺した高野悦子の2人です。彼ら2人の視点を中心として、自殺をしようとする人物の心理と自殺を不審に思う人物の心理を読むことが出来ます。しかし、ここで驚きもあります、実は高野悦子には伏線が張ってあるんです。


私は最初の「死のセールスマン」の辺りでの伏線を拾っていませんでしたw(というか読み返してみても伏線がない気がしますが、まだ拾い切れていないんでしょうかw)


そんな出だしにおける伏線に気づけるかが肝だと思います。他にももしかしたらあるかもしれません。


この作品の良い所は「死にたいという気持ちとそこから見る視点の現実性」です。3人のうち、バイオリニストの死への関心はなかなか共感できるものですし、恐らく真のプロであるとありえそうなことです。そして高野悦子です。


何故生きるのか?何故死にたいのか?そして何故生きたくなったのか?


そんな彼女の死への懇願と心理の変化が非常に現実性を持っています。だからこそ彼女の行動一つ一つには共感を感じました。


そして最後驚くべき展開があります。なんとなく読み取れた部分はあるんですけど、最後がああいう展開で締めるのならば、最初のアレはどうなるんだろうか?ということが気になりますw



敬具







次はこれが気になる↓



posted by kansasyoshi at 21:04| Comment(1) | TrackBack(0) |

危険なビーナス

拝啓



「危険なビーナス」
巨乳な美人に男は例外なく弱い。


☆あらすじ☆

弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である夫の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが。



弟の妻は、明るくしたたかで魅力的とあるが、肉感的ですこぶる美人。手島伯朗は、明らかに前者ではなく後者に惹かれ出す。でも、女好きな癖に特に積極的ではなく、心の中でただただ惹かれるというイマイチはっきりしないキャラクター、そんな伯朗が主人公です。


そんな伯朗は、獣医師として働いているのですが、勤め先である医院長と出会ったのが、居酒屋で、しかも注文したししゃもについてのクレームだなんて、なかなかユニーク。また、医院長には、跡取りがおらず、伯朗についで欲しいと思っており、病院の名義を変えるために養子になるのが手っ取り早いと説得される伯朗。継ぐだけならば、何も養子にならんでもとは思うんだけど。


そんな伯朗の唯一に近い見せ場としては「科学の発展のためには何かを犠牲にしなければならないこともある。それが動物の命という場合も。どうせ保健所で始末される命なら、人類のために役立てた方が有意義だ」と言い放つ弟の親族に対して「その台詞の99%は人間の身勝手ないい訳だ」と反論するとこです。


最後になって楓のキャラクターが特異な理由、弟
の失踪理由も明らかになり、伯朗にとってもハッピーな展開が待ってそうな感じで閉まるのですが、私としてはイマイチ。東野圭吾としては、んー、面白さが乏しいかなと。


伯朗が、取り敢えず、じろじろ女性を見定めてるとこしかインパクトが無かったようなw。楓も、危険なビーナスにも見えなかったです。



敬具







次はこれ!↓



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2017年01月13日

グアルディオラのサッカー哲学

拝啓



「グアルディオラのサッカー哲学」
強さと美しさを兼備したバルセロナを創り上げたグアルディオラの哲学とは。


グアルディオラは、バルセロナの監督就任初年度に6つのタイトルを獲得し、その後のバルセロナ最強時代の誕生に大きく貢献した人物である。そして、彼が率いたバルセロナは、世界最高のチームとなった。


本書は、最も美しく最も攻撃的でハングリーなチームを創り上げたグアルディオラ(通称ペップ)の監督としての人間としての魅力に迫ったものとなっています。


基本的に、バルセロナ関係者や同業者はペップをべた褒めしています。例えば、ピケは、


「ペップは、選手のモチベーションを高める能力が凄い。彼の話を聞くと、グラウンドに飛び出して、絶対に試合に勝ってタイトルを獲る!と思わされる」と言い、


ガブリエル・マスフロルFCバルセロナ財団副会長は、


「ペップは、彼の目指すサッカーの追求と共にバルセロナのDNAを継承しながらその価値を未来の世代にしっかり繋げていくという難しいプロジェクトに挑戦が待っているが、彼はそのプロジェクトを成功させる為に生まれてきた人物だ」


と言う。極めつけは、シャビの「ペップは監督として満点だ」という激賞であり、ベンゲル(現アーセナル監督)の「サッカーを愛すれば、必然的にバルサを愛することになる」という賞賛がペップの凄さを端的に表していると思います。


ペップは、モチベーターとして戦術家として育成者として、そして統率者として最高の部類に入る存在であるのは間違いないです。2009年CL決勝に向けて、チームメンバー全員が活躍しているシーンを収めた映像を流し、選手を鼓舞したエピソードは、優れたモチベーターの一面を表しているに過ぎないし、就任当初は、当時の大エースであったサミュエル・エトーに戦力外通告をしたことから、チームの最高責任者としてバルセロナを統率するという意識を感じました。


しかし、彼の一番凄い所は、学べることであり過ちを認める所ではないかなと。例えば、エトーの戦力外通告の件は、普通の監督なら、エトーをトップチームから外し、飼い殺しにしても不思議はありません。戦力外通告をした選手は当然不満分子化する可能性が高いからです。


しかし、ペップは、プレシーズンでエトーにチャンスを与え、そのプレーを認め、引き続きトップチームの主軸を任せました。


他チームへの売り込みの為にプレー機会を与えたという側面もあっただろうけど、不満分子化する可能性大の偉大な選手をもう一度チームに取り込むのには勇気がいりますし、何よりも自分の判断を翻し且つエトーのモチベーションを上げる必要があるのですから、その難しさは私には計り知れない。


そう、ペップは、自分の判断が間違ったなら、間違ったと認めることが出来るのです。しかし、だからこそイブラヒモビッチ(現パリ・サンジェルマン)をバルセロナに取り込めなかったのは、個人的に悔いが残ります。


イブラヒモビッチは、ペップを哲学者と比喩していますが、確かにペップはその一面が出過ぎる場合があるのかも知れません。イブラヒモビッチのようなバルセロナの選手とは違い過ぎるメンタリティを持った偉大な選手を取り込めていれば、もう少しペップのバルセロナは世界を席巻していたかも。


現在の監督は、マルティーノ。アルゼンチンで華麗なサッカーを実現してきたように欧州より南米での実績が豊富な監督です。故に、地味な印象は否めないし、カンテラ出身でもないから、バルセロナのサッカーを進化させられるのかという批評があったことはありました。


しかし、今のバルセロナを見てもらったら分かると思いますが、ペップ時代のバルセロナは失われたのでしょうか?


否。


第5節ラージョ戦でボールポゼッションは49%と、約5年4か月振りに相手を下回ったからと言って、ペップ・バルセロナの代名詞を捨てた訳ではない。むしろピケが言うように、ポゼッションの奴隷から解放されたことにより強さを増す可能性もある。


唯一の懸念は、怪我が目立つようになったメッシ。彼を休ませながら勝ち続けることがマルティーノの課題となります。個人的に期待したいのは、ネイマールとテージョ、ソング、そして、デウロフェウ。


デウロフェウは、現在エバートンにレンタル中だけど、冬に帰還して活躍する姿を是非見たい。


10月26日は、共に新監督を迎えた同士のクラシコ。さて、楽しみだ。



敬具







次はこれが気になる↓



posted by kansasyoshi at 02:09| Comment(0) | TrackBack(0) |

レ・ブルー黒書 フランス代表はなぜ崩壊したか

拝啓



「レ・ブルー黒書 フランス代表はなぜ崩壊したか」
レ・ブルーの崩壊。


2010年6月20日、南アフリカ、サッカー、と言われて皆さんは何のことかお分かりだろうか。分かった人は、サッカーファンだろう。


この日は、フランス代表が崩壊した日、前代未聞のW杯中の代表主将エブラ(マンチェスターユナイテッド)が絡んだトレー二ングボイコットが起きた日である。EUROとW杯を制した誇りを背負い、チーム一丸で意味のない批判(フランス代表は、ハンドが絡んだ勝利で予選突破を決めた)を振り払うべきだった彼らは何故崩壊したのか。本書は、6月20日から書き起こされ、EURO12開幕前に完遂された(買おうかと悩んだが、図書館でゲット)ノンフィクションである。


6月20日の運命の日の前に何が起きたか振り返って見よう。まず、19日に活躍を期待されたアネルカ(WBA)が試合中ハーフタイムに監督ドメネクを侮辱、19日にはその衝撃の言葉はレキップ紙で報道され、同日中にアネルカは代表を追放された。さらに20日朝には、ドイツW杯で彗星のごとく現れたリベリ(バイエルン)が生放送中のテレビに駆け込み、突如代表の内情を話し出したのだ。


そしてボイコットを迎えた訳であるが、そもそもこの他にもリベリのグルキュフ(リヨン)への嫉妬や妬みからのいじめ疑惑やリーダーシップを発揮するべきだったアンリ(ニューヨーク・レッドブルズ)の存在感のなさ、さらに監督ドメネクの求心力の低下など(そもそも08EUROの失態で解任されるべきだった)数々の爆弾をレ・ブルー(フランス代表の愛称)は抱えていました。だから、遅かれ早かれ崩壊はあり得た訳ですが、まさかW杯真っ最中に崩壊とは・・・。


この事件は多くの涙を残しただけだったと思います。エブラにもぐら(ちくり屋)を疑われたジャン=ルイ・ヴァランタン代表遠征団団長、エブラを説得しようとしたロベール・デュヴェルヌフィジカルコーチ、15年に渡りレ・ブルーを支えてきたマニュ・ディファリア機材担当総務長らの涙は忘れるべきでは無いと思います。


誰が悪かったのかという犯人捜しはあまり意味をなさないと思います。しかし、多少の同情の余地はあるが選手のエゴを抑えれなかったドメネクとその彼を見下し、エゴを増大させた選手は、猛省すべきであると思わずにはいられない。


だからといって彼らに全てを押し付けることは出来ない。フランスサッカーの代表に関わった全ての人が、この失態から学び、次に生かすしかないはずです。


幸い現在のレ・ブルーを率いるのは、選手時代、98W杯と00EUROを代表のボスとして制覇したディディエ・デシャン。彼は、クラブでも活躍し、監督としても実績を積んできたレジェンドです。


彼の最大の魅力は、統率力。どんなに才能があってもチームを混乱させる選手は許さない冷徹な一面を持ち、レ・ブルーのユニフォームを着るならば、国の誇りを持ってチームの勝利の為に戦うことを彼は求める。


なぜならそれこそフットボールで勝つ為に必要だと知っているから。フットボールを壊すエゴはいらない。彼には、それを選手に分からせる力があると思うのです。


10W杯で崩壊したレ・ブルーを正常に導いた栄光時代の盟友ブラン(パリ・サンジェルマン監督)の後を継いだデシャン達は、現在14W杯予選でスペインに次ぐ2位。恐らくプレーオフに回るだろうが、彼が率いるレ・ブルーならば、必ずブラジルにやってくるだろう。そして、王国で花咲くシャンパンサッカーを見たい。


因みに、本書は事件の3ヶ月後に出版され、サルコジ大統領を始め多くの登場人物達が地団駄を踏んで悔しがったに違いない詳細なエピソードに溢れている傑作であったが、著者デュリュック氏は政治やスポーツにおける権力によって葬られるどころか、かえってその権威と影響力を高めた所にフランス人とフランスジャーナリズムの健全さが現れていると思います。


日本じゃこうはいかないだろう。



敬具







彼も忘れてはいけない!↓



posted by kansasyoshi at 02:06| Comment(0) | TrackBack(0) |

愛の流刑地(上)

拝啓



「愛の流刑地(上)」
一世を風靡した作家と彼の大ファンである人妻のエロス。


男と女のエロス、それが上巻の全てかなと思います。一時は売れっ子として活動していた小説家・菊治は、自身の大ファンであると言う冬香を紹介され、直ぐに彼女の虜になる。冬香は冬香で菊治を愛し、次第に性を解放していく。


お互いがお互いを求めるだけだったセックスが徐々に変化していく、それが実に怖く、性に溺れ、喜び、探求していく様は実にリアル。このリアルさが無かったら、本作はただセックスするだけの退屈なものになると思います。まぁ、少し飛ばしましたがw


最初はお互いを愛しているから恐らく菊治と冬香は対等。しかし、冬香が性に目覚めたことで、徐々に性に置ける立場が変わっていく。それが怖い。


菊治は冬香を満足させているつもりだろうが、絶頂を知った彼女が菊治のセックスに満足しなくなるのではないかとついつい心配してしまう。その心配に当然菊治は気づかない訳で、これは後に引けなくなるのではないか(実際そうなるのだけど)と思いながら菊治が頑張っている姿を見ていると、遂に冬香が絶頂に達する時に、私を殺してと呟く。更に、彼女はこんな体にしたのはあなたのせいよとも呟くのだ。


こんな言葉をセックスの際に聞いたら、普通は実に怖い。しかし、菊治は少し戸惑いはするけど、喜びや愉しみも同時に感じてしまうのだ。この時点で、冬香は性の序列(そんなものはないはずなのに)において菊治を上回ったように感じました。


上巻は、菊治が妻と離婚する所で終わります。下巻は、いよいよあの場面。一体何故ああなったのかしっかり見届けないと。



敬具




posted by kansasyoshi at 01:58| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年01月11日

蜩ノ記

拝啓



「蜩ノ記」
秋谷の清廉さと罪が結びつかない庄三郎。果たして結末は如何に。


城内の御用部屋で筆の墨が隣席の水上信吾の顔に飛んだ。親友であった庄三郎は、思わずその顔を見て笑ってしまう。しかし、水上信吾は、許せなかった。裃の紋にまで墨が飛んでいたのだ。その紋が羽根藩初代藩主から頂戴したものであり、それが汚されながら黙って下がるわけにはいかなかったのだ。信吾は、奏者番を探そうと立ち上がった庄三郎を逃げると思い込み追いかけ、庄三郎を斬りつけようと刀を振る。


躱した庄三郎は、思わず居合を放ってしまう。信吾は、よろけて転んだ。庄三郎の脇差が信吾の右足を切っていた。この不祥事により、庄三郎は切腹を命じられるはずであったが、ある責務と引き換えに切腹を免れることになる。彼に与えられた仕事は、向山村に幽閉中の元郡奉行である戸田秋谷の監視と彼が起こした密通事件の真相探求であった。


以上が、大まかなあらすじ。密通事件の真相探求がメインかと思いきや、武士と百姓間にあるわだかまりに端を発した事件が発生し、秋谷は悲痛な事態に遭遇することになります。


テーマは、武士の心。「武士として領民と藩のために」という信念が秋谷にあり、友の為に家老に直談判しようとする息子にも同質ではないが「武士としての心」がある。武士としてあるべき姿を貫き通す姿は百姓と対比されることで余計に異質ではあるものの「いつか秋谷の息子がわしの前に現れるだろう。それまで家老にしがみつかねば」という悪役としては文句ない台詞を吐く家老を前にすると秋谷の武士の心が少し儚く思えてしまいます。しかし、これが当時代の武士だったのだろうと。終わりとしても秋谷の清廉さを証しており、特に異論はないです。


その秋谷以上に印象深い人物であったのは、秋谷の息子である郁太郎の友達「源吉」です。嫌なことがあっても笑い飛ばせる心持ち、妹であるお春をかばう男気、「世の中には覚えておくべきことは多くない。その中の1つは友人(郁太郎)だ」と言える素直さに加え、父を愚弄した役人に対して石を投げようとした郁太郎を制することが出来る大人な面も併せ持ち、ダメな父親万治が役人殺しの犯人と疑われる中、大人になったら万治を迎えに行っちゃると言い逃がすところ 等、これが齢十の少年なのか。源吉よ、と。


彼も秋谷とは違う武士だったと思います。故に、万治の情けなさが一層際立つ。



敬具



posted by kansasyoshi at 17:41| Comment(0) | TrackBack(1) |

2017年01月09日

屍(し)の命題

拝啓



「屍の命題」
とある湖畔の別荘に集められた6人は、やがて全員が死体となって発見された。


屍の命題と書いて、シノメイダイと読む。アガサクリスティの小説の中で最も評価が高いとされる"そして誰もいなくなった(And Then There Were None)"。その不朽の名作の根を成すクローズド・サークルを基に書かれたミステリーです。


舞台は、主要登場人物の篠原、蓑田、真標の大学時代の恩師であった故・教授の館。彼ら3名を加えた6人は、教授夫人の招待を受けて館にやってきた。しかし、当の夫人は館には居らず、招待状はいつも筆を使う夫人らしくなくワープロ打ちで簡素なもの。館には、ギロチン台を始めとする拷問兵器と主人公のバラバラに標本にされた昆虫が飾られており、帰ろうと思った時には全ての車のタイヤがパンクしており・・・という設定。


登場人物の1人が推理小説を書いており、真標との会話の中で「推理小説においては、リアリティも重要だが、最低限のリアリティに留めたあっと驚くトリックの方が、読者は記憶に残りやすい」というものがあります。この会話を体現しようとした小説がこの「屍の命題」かと思いました。


よくよく読めばおかしいポイントを盛り込んでいるため、何かおかしいと気付けるようになっており、どんどん追い詰められていくところは、クローズド・サークルとしては王道です。メインとしては、篠原と推理小説作家視点を中心に進められていくのですが、その中で自分以外を疑う心理が出てきて、というか、推理小説作家はいきなり感が凄いが、人間関係も描かれています。ただ、そこまで深く書いているわけでもなく、事件とはあまり連動性が無い感じです。


気になるといえば、中盤まで話がスローなところ。ボリュームは結構ありますが、序盤は大分カットできたのではないかなと。また、犯人の動機という点でも蓋然性が無いため、しっくりこないですね。ただただ、真標が可哀そうという気持ちだけが残りました。ちょっと、ひどい。


クローズド・サークルものが好きな人で、トリックは論理的なものよりも記憶に残るのも大事だよ!という方は気にいるかも知れません。ただ、動機について納得がいかないとなる可能性も十分に秘めていると思いますw



敬具



posted by kansasyoshi at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) |
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