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2017年05月22日

囲碁殺人事件

拝啓



「囲碁殺人事件」
ゲーム3部作。第1弾。


本作は、ゲーム3部作シリーズの第1弾に当たるものです。竹本健治によるシリーズで、天才囲碁棋士の牧場智久と大脳生理学者の須藤信一郎が難事件に立ち向かうミステリーであり、将棋殺人事件、トランプ殺人事件が続きますが、3部の中で最もミステリーちっくらしいとのこと。確かに、首なし死体、犯行予告、アリバイなど、ベーシックなスタンスで進んでいきます。


思春期にも達していない天才囲碁棋士が、探偵をするという今ではありがちな設定ですが、初版は、1980年7月となると約30年前で、当時だったら凄い斬新な主人公かなと思いました。IQ200超え故の推理をズバズバしていく感じでもなく、ピンチありで実直なところもミステリーて感じですね。そもそも囲碁ものって読んだこと無いんで囲碁を使った仕掛けは新鮮でした。死が絡む言葉が多いとか囲碁知らない人からしたら面白い。まして、私はヒカルの碁しか知らないですしw


個人的にツボなのが、智久少年が、服をあてがわれる際に言う「あはっ。スタイリスト」との台詞。2回出てくるんですけど、当時だったら普通?なのか分からないが、こんな言い方するのかなと。たまにこういうちょっとよく分からない表現が、出てくるとツボってしまうのですが、これは、筆者の癖なんだろうか。凄い不思議だw


短編のチェス殺人事件も収録されてます。こっちも囲碁に劣らずちゃんとしたミステリーになってます。



敬具



トランプ殺人事件 (講談社文庫)

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2017年05月19日

或るろくでなしの死

拝啓



「或るろくでなしの死」
震えながら、戦きながら、そうとは知らずに。七人の人間たちが迎えた決定的な死の瞬間。


やっちまった。調子に乗って読んでしまった。惹きつけるものはあるけど、自分に向いてるか否かだったら向いてないなと。「ダイナー」は、疾走感がある分後半は読み切れたけど、これは死を扱ってる+いつものグロテスクさがありありで疲れました。


とはいえ、印象深い短編集ではあります。表題の死は、殺し屋の「俺」が、仕事の現場を小学生のサキに目撃されることから始まります。一見イカれたサキの話かと思いきや(だってハムスターを可愛がって殺すって...)、正当化できる訳ではないが、サキには辛いことが降りかかっていて、それによって殺し屋が変わる?ような話でなんというかどーんとくる。


「或る嫌われ者の死」も印象深いです。日本人がマイノリティになっている世界の話で、凄い差別が出て来てとても悲しい。最後なんか悲し過ぎる。この短編は、グロテスクではないが、差別の残酷性が出ている。辛い。


平山夢明の世界としては普通なのだろうが、こたえる人にはこたえました。ちょっと暫くは笑える小説に浸りたい。



敬具



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ダイナー

拝啓



「ダイナー」
表紙に騙されてはいけない。


これは、表紙に騙されてはいけないやつです。というか、書き手が平山夢明という一点だけでも危険信号が出ているわけで、さらによく見たら表紙の配色からもグルメ探検記やハンバーガーを絡めたユーモアな展開が繰り広げられる!なんて想像はできなく、黒が背景色でハンバーガーが強調された見せ方だけで意味深な印象を受け、案の定中身はぶっ飛んでいて、読了後ハンバーガーは暫く食べたくはない。そんな小説のはずだった。


オオバカナコが、奇妙なバイトに応募したことから全ては始まる。ただの運転手を数時間やるだけで数十万という絶対信じちゃダメなやつなのに、問い合わせ先の対応からそこまで疑わなかったオオバカナコ。いや、絶対ダメだって。。。最終的には、定食屋のオーナーに命を買われ、ウエイトレスとして働き始める彼女。当然、その定食屋じゃなく殺し屋専門のダイナーで、やってくるのはぶっとんだ殺し屋ばかり。一体彼女は、どうなるのか。。。


と、。。。を多用したくなるほどグロテスクでハイリスクなカナコの選択。序盤なんぞメルカトルの方がまだマシと感じたくらい、単純に覚えていないだけかも知れないが、グロテスクな描写や場面が多く、ツライ。


で、このまま進めば、グロテスク小説で終わるところなのだが、そうはならないところが救い。メルカトルとは明らかにテイストを変えており、あのイメージで止まっている読者からしたら、こういう落とし方もあるのね、となると思います。


オオバカナコは、序盤からどんどん逞しくなっていき、これだけボンベロ(ダイナーのコック)に噛み付けるならば、ヤバイバイトに応募しなくとも真っ当に生きれただろうにと思いながら、何とか逃げ切ってと思う。登場人物は、皆殺し屋ばかりでもちろんヤバイ奴らなのだけど、テイストを緩めて書いてくれているからか、ちょっと人間味も感じる。ボンベロが徐々に優しくなっていく。また、犬まで出てくる訳で、そいつはジョジョのあいつ並の存在感を放つ。濃いやつらでうじゃうじゃしていて、でも、単なるグロテスクな小説で終わらせない疾走感がある。


メルカトルの次に読んだからなのか、わりかし良い?読了感でした。万人ウケはしないだろうけど、グロテスクさは序盤で抑え、あとはカナコとボンベロ、その他殺し屋の間で繰り広げられる攻防にはアクション性がありますね。



敬具



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2017年05月10日

リバース

拝啓



「リバース」
抱えていた罪。


先週から始まりました。リバース。思っていた以上に面白かったので、継続して見ようかなと思います。ドラマが始まってしまったけど、原作の予約順番が回ってきたため、読んでしまった。とりあえず、ドラマ面白いですよと上司に言っときました。


ドラマで藤原竜也が見事に演じ切っているのが、主人公の深瀬和久。事務機会社に勤めるサラリーマンで、今までの人生でも、取り立てて目立つこともなく、平凡を絵に描いたような男。心が落ち着ける場は、就職してから通いだしたクローバー・コーヒー。そこでコーヒーを飲むこと。今のところドラマではそこまで焦点が当たっているわけではないですが、原作ではかなりの頻度でコーヒーが出てきます。ケニアやコロンビアなど色々な原産豆から作るコーヒー。そこにはちみつをトッピング。いやぁ旨そうだ。飲みたいな。


そんな深瀬は、越智美穂子という女性と知り合う。良い感じになり、いよいよ新たな幸せが見つかるかと思われた矢先に、美穂子の下に「深瀬和久は人殺し」という告発文が届く。その告発文は、大学時代のゼミ仲間にも届けられていて、深瀬は1つの罪を告白し、告発文を届けた犯人を捜し始める。Nのためにに近い過去の罪を遡るタイプのミステリー。


深瀬は、平凡を絵に描いたような男であるが、良い男でもあります。「雨が強くなっているのを見て思ったことと同じことを浅見も雨を見て思った。だから、浅見は、たった1年だけ同じゼミでそれまで話したことすら無かったけど友達だろう」なんて普通は思えない。一方で、暗い部分を抱えているところもある。その暗い部分が、告発文をきっかけに徐々に明らかになり、それは、ゼミ仲間にも同様で考えていたことが透けて見えてきます。


ただ、そこまでゼミ仲間は出てこないです。ドラマでは逆にたくさん出てきそうな感じ。というか、大して仲が良くないのに、旅行にいくのがまず信じられん。


そして最後に、深瀬は自分はなんだったのだろうとなるわけですが、これはそこまで嫌な展開ではない。深瀬は自分が知らなかった親友を知っていく中で、綺麗に言えば心が洗われる様なそんな展開。しかし、そうはいかない。コーヒーはこのための伏線だったのですねと。


何故、こんな終わり方にしちゃうのだろうと。ちょっと湊かなえさんに直撃アポを取りたいところです。



敬具



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2017年05月02日

マイ国家・ひとにぎりの未来

拝啓



「マイ国家・ひとにぎりの未来」
星新一作品集10。


「マイ国家」が読みたくて図書館で探したところ、これだと思ったら作品集でした。作品集なので50くらいのショートショートが収められています。ショートショートと言えば、星新一。SF、ホラー、ユーモア、風刺、童話アレンジなど多種多様。短い分量でバシッと決める。どれも面白いですね。


噂に聞いていた「マイ国家」は、“小住宅に住む真井国三が営業に来た銀行外勤係を捕虜として捕まえる。聞けば、外勤係を独立国家に不法侵入した為、捕虜とすると言う。外勤係は、国三がどうかしてると思うが、国三は本気で自分の家は独立宣言をした国であり、他国の政府や役人が如何にダメかを主張する。”と言う国を個人単位に落とし込んだもの。アイデアもさることながら、国三が悠然に語る政策や他国(日本?)の役人を皮肉るシーン、そして最後のオチまで印象深い。


抜群の運を持つ男の秘密を描く「特賞の男」、ロボットの売り込みに負けた男の話「うるさい相手」、悲しき刑事の話「子分たち」、帰って来た夫への違和感を感じた妻「ちがい」、うさぎとかめを見事にアレンジした「ねむりウサギ」、ただ切ないショートショートよりショートな「語らい」とどれも面白いですが、マイ国家よりも良かったのは「いいわけ幸兵衛」です!久々に面白いと感じました。


これは、凄い好きなショートショートですね。毎日遅刻する幸兵衛は、上司に怒られるよりも遅刻していくことを選ぶ潔さを持ち、上司にはいつも異なるいいわけを話します。そのいいわけに、上司は最初は怒っているものの次第に幸兵衛のいいわけが聞きたくてというか、それが本当の話であってくれと望むようになる。幸兵衛のいいわけには不思議な力があるのです。そんな幸兵衛にある日、依頼が舞い込んで、、、。という話。オチにも人間のさがを盛り込んでいてたまらん。


奇妙な話であるけど、昔話とかでもありそうな、ユーモア溢れるショートショートで、そのまま世にも奇妙な物語に使えますね。映像でこの凄さを出せるかは、制作部の腕次第ですが、、、。


この「いいわけ幸兵衛」がさぞ良かったのでしょう。借りた本の目次の「いいわけ幸兵衛」には◯がついてました。子供に読み聞かせるショートショートに選んだのだろうか。確かに面白いですから、これ。


星新一は、凄いというけど、ほんとそうだなと感じた一作。どれもよくアイデアをここまで広げれるなと、しかも分量は限られる中で。ぜひご一読を。文庫版もあります。



敬具







posted by kansasyoshi at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年04月13日

清須会議

拝啓



「清須会議」
信長亡きあと、清須城を舞台に、歴史を動かす心理戦が始まった。


清須会議とは、本能寺の変により織田信長を失った織田家の後継者を決める会議(財産分与等も決めないといけなかったが、後継者に勝るものはないだろう)。一般的には、秀吉が三法師を擁立し勝家が信孝を後継者に推して対立したというイメージがあるが、それは江戸期に入ってから成立した川角太閤記が初出とのことらしく、一次史料である「金井文書」「多聞院日記」などによると、織田家の後継者問題では信長の二男・織田信雄と信長の三男・織田信孝が互いに後継者の地位を主張し引かなかったため勝家・秀吉ら宿老たちが事前に信長の嫡孫である三法師を仮の御名代とする事で双方了解済みであったことが記されています。


登場人物は、柴田勝家、羽柴秀吉。丹羽長秀、池田恒興ら重鎮たちに加え、お市、寧、松姫ら女性陣も登場します。各々の視点で描かれている小説で、基本的に彼らは自分たちこそが清須会議をコントロールしている(する)というやる気満々です。柴田は猪突猛進、羽柴は執拗、丹波は冷静などそれぞれキャラクターが立っているため、イメージしやすいですね。立っているキャラクターそのままに会議をかき乱すため、読者はだれを推すのか決めやすいのではないでしょうか。


個人的には、お市が印象的でした。正直、信長協奏曲を1か月前以上に読んでいた為、どうしても漫画でのお市が頭に浮かび、しかもそれほどキャラクターが離れている訳ではない部分もあるにはあったので混合する部分はあったのですが、信長譲りの親玉振りはさすがでしたね。特に、羽柴と柴田を毛嫌いする、それに全く気付かない2人が面白く描かれているだけにそのどS振りが天下人風な感じで。とはいえ、柴田は猪突猛進らしく周りが見えない感じですし、織田家を守れるに値するか不安になるのは仕方なしですがw


柴田は完全にイノシシ状態。相手が何を考えているのか全く見えていない。お市に興奮しっぱなし。それに代わり、羽柴はやはり狡猾さが抜けていて、でもどこかちょっと下品で。で、そんな羽柴をうまくサポートしている官兵衛が一番効果的な役割を果たしていたり・・・。


などなど歴史的な会議の場面をユーモアを忘れずに上手く書いているなーと感じました。後、三谷幸喜は、やはり喜劇作品が得意なのだなと、そして、映画よりも文章の方が、ユーモアのべたべた感とあの独特な三谷ユーモアも薄目で丁度いいなと。



敬具







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2017年04月02日

実録山田

拝啓



「実録山田」
“簡単に説明できない内容"“読んだ人同士の感想トークが盛り上がるか否かはわからない"。


深夜の居酒屋親子から始まる「実録山田」。これを読んだ人で
頭の中が??????ってなるか。くっそどうでもいいわーーーーーー

ってなって読むのを止めてしまう人が出てきても致し方がない。


芸能人の場合、本人が1から100まで文章を書きあげることは稀と聞いたことがある。そうであったとしても、山田孝之の代筆者がどこまで彼の考えを忠実に落とし込んでいるのかわからない。山田孝之による実録がどこまでなのかさっぱり分からない。芸人のネタ帳の延長線のようなそんな感じ。だから、俳優としての本だと思って捉えてしまう場合、この本はかなりそれから離れたものなので「これは違う」という感じを得てしまう。これは、山田孝之の妄想癖のようなものが詰まっている本だと捉えてからこの本を読んだ方が良いと思います。


締めは「人類の弱点」。山田孝之の対話者は、武井壮。マスターズお祝いから始まり、ぬるぬるの話になり、遂には上島竜平が出てくる。これが約70ページ続く。俳優山田孝之のファンからすれば、ただただ無意味な読書時間であり、「ちっ。なんで武井壮なんだよ」と思うファンが出てきても仕方がない。


ただ、このカオス的な内容を山田孝之が書きたかったのであれば、仕方ない。外見は俳優然だけど、中身はそこいらの男と変わんない。それが多分山田孝之なのだろう。最後に念押しですが、俳優山田孝之のみを好きな方は、読まないほうが良い、もしくは誰かから借りる軽い感じで読んでもらったがよいかなと。



敬具



posted by kansasyoshi at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) |

天空の蜂

拝啓



「天空の蜂」
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。


原子力発電をメインとした小説。1990年代に執筆されており、現在読むと考えるところは多くあるように思います。原子力発電を廃止すべきだという意見と国の電力を維持するためには必要であるという意見の対立は近年も続いていますが、ぶつけるべき意見が精緻にぶつかっているかと考えると微妙です(私的意見)。


原子力発電廃止派の多くは危険性を訴えるが、ではその危険性をもとに廃止する場合、原子力の代わりにどの動力を使ってエネルギーを創出すべきか。仮に創出できる代替案が存在する場合、その案であれば、何年間かければ今までの原子力分を補えるのか。その代替案を実施するための工数とコストはどこが提示するのか 等、しっかり動機付けして意見を主張しているのか。一方で、原子力継続派は、危険性を訴えている廃止派に対して技術的な意見、事実を事実で伝えることを本当にしているのか。事実は、真っ当な理由になりえますが、事実をしっかり補完する(正規文書の通達 等)ことをしないと数字が独り歩きしてしまい、それが一番厄介かなと思います。真っ当な理解をもって反対している人には、それがないと納得して貰えないです。


本書では、どちらの派閥が正しいかというところではなく、その先にあることを捉えているかということにメッセージの主眼を置いているのかなと感じました。先にある風景や現状を見据えた上で、それを実現する為に逆算した場合、どちらが正しいのか。そもそも廃止派も継続派も安全な生活を実現することが最終目的であるのは同じであるのですから、どちらが正しいではなくミックス案であっても良い訳です。自分たち、その将来世代を考えるとき、どうすべきか。そこが大事ではないですかということだと感じました。


ちなみに話がそれますが、序盤で出てくる夫の悲哀。やっぱ結婚は大変なんですねーw



敬具







posted by kansasyoshi at 18:42| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年03月26日

コンテクスト・オブ・ザ・デッド

拝啓



「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」
あなた、まだ、自分が生きていると思っているんですか?


路線バスZ、始まりましたね。キャラは相変わらず立ってましたが、声も相変わらず聞き取りずらかったですが、頑張っておられました。番組レギュラー開始に合わせたような成功者Kの発売、さすがです。そんな羽田圭介によるゾンビ柄小説です。


ゾンビと言えばパニック。xxxオブ・ザ・デッドに連なるタイトルに加え、青白い顔色にがっつりしたクマのある女子高生?の表紙、おまけに血をイメージしたかのようなレッドとなると余計そうかなと。でも、違いました。先入観は怖いですね。


ゾンビは急に発生し、ふらふら歩き噛み付こうとする。意思はない模様。噛まれたらゾンビになる等ここら辺は、ゾンビ映画の通り。でも、パニック度はそこまで高くない。中盤以降から人間対ゾンビの戦いが高まりますが、それまでは「ああ。最近ゾンビいますよね」程度に落ち着いてます。噛み付こうとするけどふらふらしてるから避けれるなら大して気にしない人々、なんでや?となる設定です。なので、パニック系を期待して読むと萎える可能性があります。


また、どんなにゾンビが出ようとも、物語の中心は、物書きのあれこれなので、パニック度は更に薄まってる印象です。


編集者の須賀が、作家Kに心の中で言い放つ「あんた、まだ生きているつもりなのか?」は、随分売れてないのに自分の立ち位置を理解できず、まだ文壇の世界で生きている(しかも受賞当時を忘れられず)と思っていることへの痛烈な皮肉は、強烈です。この須賀、作家Kを始め、久しぶりに小説を発表した美人作家の桃咲カヲル、家族で北へ逃げる小説家志望の南雲晶と物書きが登場人物に多く、各々の視点から文壇が語られます。なので、ゾンビ小説よりは、文学チック。


面白いのは、過去の文豪がゾンビとして復活することやワナビーゾンビという物書きだったひとが噛まれてないのにゾンビになるという設定。ゾンビに噛まれてしまった女子高生の希は、何故か噛めばゾンビを治せる、ただ確実性はなく失敗したらゾンビは爆死というのも普通のゾンビ設定ではないですよね。ここらへんが羽田圭介のオリジナリティなのでしょうか。ゾンビによって復活するKや最後は、受賞書評で締める辺りもパニック系ではない形で書きたかったのが伝わりました。ただ、ボリュームは400Pと若干間延び感があり、もう少しコンパクトにした方がテンポも出て良かったのではと感じました。


という訳でパニックを期待したら肩透かしくらう可能性大と思います。だから、この世界で生き残れるのは誰なのか!とかの紹介はやめたほうが良い気がしますw。あくまで中身は、物書きの世界に対するあれこれ(皮肉もあり)ですから。



敬具



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2017年03月25日

三月は深き紅の淵を

拝啓



「三月は深き紅の淵を」
一つの本をめぐる物語。


私は、恩田陸の小説をたくさん読んでいるわけではない。しかし、この小説を読む限り、小説(物語)とは?に関して強い拘りがあるタイプなのかなと感じました。なぜなら、一つの本をめぐる物語だけならば、そこまで拘りを感じないけど、第1章は、久方読んでないからこそのインパクトかも知れないですが、「よく本について喋る連中だ」と読者(少なくとも私に)に思わせるパワーがあるから。


なんで第1章はそこまで思わせるかとなると、そのよく喋る連中は、きっと恩田陸の本に対する考えや想いを代弁しているからであり、恩田陸の小説家としてのプロットが詰まっているように感じるのです。


フィクションとはいえ、作家の想いを小説の登場人物に代弁させるというのはよくあることだろうから不思議はないけど、こと小説はこうだ、いや、ああだ、という代弁の仕方になると珍しいように思うし、その珍しい代弁の語りには「物語とはこうあるべきだ」といった考え方や「本はやっぱりこうだ。本を読んでいる人はゲームよりも疎まれる」など世俗的な話まで出てきてここまで熱く語られては、恩田陸は当時こんな風な想いがあったんだなと感じざるを得ないですね。


"生まれて初めて開いた絵本から順番に自分が今まで読んできた本を全部見られたらなって思うことありませんか?一つの本棚に順番に収まっている図書館がそれぞれにあって他人の読書ヒストリーを除くっていうのも面白いだろうな"という台詞には、なんか物語への愛情がダダ漏れで過ぎなフレーズですね。


あらすじが後付けですが、こんな感じです。


「三月は深き紅の淵を」は、誰が書いたか分からない幻の本。1人の人物が書いたか合作か。男が作者か女か。目的は何か全くわからない。そんな本は、限られたルートで配布され、作者は明かさないことなど厳重な約束が配布者と読者で交わされる。中でも読めるのは、一晩だけというルールは、きつめ。なぜならこの"三月"は「黒と茶の幻想」、「冬の湖」、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、「鳩笛」の4部作であり、かなりのボリュームなのだ。


上記をベースに本書は「待っている人々」「出雲夜想曲」「虹と雲と鳥と」「回転木馬」の4部作で進んでいきます。物語への愛情諸々が語らい続けられるラフなミステリーは、第1部です。ただ第1部と同様に恩田陸の信念が垣間見えるのが、第2部ですね。こちらも代弁者からよく想いが伝わります。一方、恩田陸の想いではなく純粋な読みものに近いのは、第3、4部だと思います。


初期作品とのことですが、きっと恩田陸の信念は、このころから出来上がっていたんだろうなとちょっと感じさせる一作ですね。「夜のピクニック」から入った人はとっつきにくいと思いますが、恩田陸のプロットを知る上では読むのは一理あり。



敬具



posted by kansasyoshi at 18:26| Comment(0) | TrackBack(1) |
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