2017年03月26日

コンテクスト・オブ・ザ・デッド

拝啓



「コンテクスト・オブ・ザ・デッド」
あなた、まだ、自分が生きていると思っているんですか?


路線バスZ、始まりましたね。キャラは相変わらず立ってましたが、声も相変わらず聞き取りずらかったですが、頑張っておられました。番組レギュラー開始に合わせたような成功者Kの発売、さすがです。そんな羽田圭介によるゾンビ柄小説です。


ゾンビと言えばパニック。xxxオブ・ザ・デッドに連なるタイトルに加え、青白い顔色にがっつりしたクマのある女子高生?の表紙、おまけに血をイメージしたかのようなレッドとなると余計そうかなと。でも、違いました。先入観は怖いですね。


ゾンビは急に発生し、ふらふら歩き噛み付こうとする。意思はない模様。噛まれたらゾンビになる等ここら辺は、ゾンビ映画の通り。でも、パニック度はそこまで高くない。中盤以降から人間対ゾンビの戦いが高まりますが、それまでは「ああ。最近ゾンビいますよね」程度に落ち着いてます。噛み付こうとするけどふらふらしてるから避けれるなら大して気にしない人々、なんでや?となる設定です。なので、パニック系を期待して読むと萎える可能性があります。


また、どんなにゾンビが出ようとも、物語の中心は、物書きのあれこれなので、パニック度は更に薄まってる印象です。


編集者の須賀が、作家Kに心の中で言い放つ「あんた、まだ生きているつもりなのか?」は、随分売れてないのに自分の立ち位置を理解できず、まだ文壇の世界で生きている(しかも受賞当時を忘れられず)と思っていることへの痛烈な皮肉は、強烈です。この須賀、作家Kを始め、久しぶりに小説を発表した美人作家の桃咲カヲル、家族で北へ逃げる小説家志望の南雲晶と物書きが登場人物に多く、各々の視点から文壇が語られます。なので、ゾンビ小説よりは、文学チック。


面白いのは、過去の文豪がゾンビとして復活することやワナビーゾンビという物書きだったひとが噛まれてないのにゾンビになるという設定。ゾンビに噛まれてしまった女子高生の希は、何故か噛めばゾンビを治せる、ただ確実性はなく失敗したらゾンビは爆死というのも普通のゾンビ設定ではないですよね。ここらへんが羽田圭介のオリジナリティなのでしょうか。ゾンビによって復活するKや最後は、受賞書評で締める辺りもパニック系ではない形で書きたかったのが伝わりました。ただ、ボリュームは400Pと若干間延び感があり、もう少しコンパクトにした方がテンポも出て良かったのではと感じました。


という訳でパニックを期待したら肩透かしくらう可能性大と思います。だから、この世界で生き残れるのは誰なのか!とかの紹介はやめたほうが良い気がしますw。あくまで中身は、物書きの世界に対するあれこれ(皮肉もあり)ですから。



敬具



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2017年03月25日

三月は深き紅の淵を

拝啓



「三月は深き紅の淵を」
一つの本をめぐる物語。


私は、恩田陸の小説をたくさん読んでいるわけではない。しかし、この小説を読む限り、小説(物語)とは?に関して強い拘りがあるタイプなのかなと感じました。なぜなら、一つの本をめぐる物語だけならば、そこまで拘りを感じないけど、第1章は、久方読んでないからこそのインパクトかも知れないですが、「よく本について喋る連中だ」と読者(少なくとも私に)に思わせるパワーがあるから。


なんで第1章はそこまで思わせるかとなると、そのよく喋る連中は、きっと恩田陸の本に対する考えや想いを代弁しているからであり、恩田陸の小説家としてのプロットが詰まっているように感じるのです。


フィクションとはいえ、作家の想いを小説の登場人物に代弁させるというのはよくあることだろうから不思議はないけど、こと小説はこうだ、いや、ああだ、という代弁の仕方になると珍しいように思うし、その珍しい代弁の語りには「物語とはこうあるべきだ」といった考え方や「本はやっぱりこうだ。本を読んでいる人はゲームよりも疎まれる」など世俗的な話まで出てきてここまで熱く語られては、恩田陸は当時こんな風な想いがあったんだなと感じざるを得ないですね。


"生まれて初めて開いた絵本から順番に自分が今まで読んできた本を全部見られたらなって思うことありませんか?一つの本棚に順番に収まっている図書館がそれぞれにあって他人の読書ヒストリーを除くっていうのも面白いだろうな"という台詞には、なんか物語への愛情がダダ漏れで過ぎなフレーズですね。


あらすじが後付けですが、こんな感じです。


「三月は深き紅の淵を」は、誰が書いたか分からない幻の本。1人の人物が書いたか合作か。男が作者か女か。目的は何か全くわからない。そんな本は、限られたルートで配布され、作者は明かさないことなど厳重な約束が配布者と読者で交わされる。中でも読めるのは、一晩だけというルールは、きつめ。なぜならこの"三月"は「黒と茶の幻想」、「冬の湖」、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、「鳩笛」の4部作であり、かなりのボリュームなのだ。


上記をベースに本書は「待っている人々」「出雲夜想曲」「虹と雲と鳥と」「回転木馬」の4部作で進んでいきます。物語への愛情諸々が語らい続けられるラフなミステリーは、第1部です。ただ第1部と同様に恩田陸の信念が垣間見えるのが、第2部ですね。こちらも代弁者からよく想いが伝わります。一方、恩田陸の想いではなく純粋な読みものに近いのは、第3、4部だと思います。


初期作品とのことですが、きっと恩田陸の信念は、このころから出来上がっていたんだろうなとちょっと感じさせる一作ですね。「夜のピクニック」から入った人はとっつきにくいと思いますが、恩田陸のプロットを知る上では読むのは一理あり。



敬具



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ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか――宇宙開闢から138億年の「人間」史

拝啓



「ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか――宇宙開闢から138億年の「人間」史」
138億年か、、、。


天文学、物理学が主体の「宇宙史」、太陽系、地球の誕生と大陸移動など天文学、地学が主体の「地球史」、生物が主体の「生命史」などなど138億年の時を語るに相応しい学問が並んどります。予想以上に横にどでかい本書には、これでもかと人類、星、宇宙の生命が語られ、読むのも一苦労。いや、文句じゃなく、頭が疲れる感じですね。あぁ、これも文句みたいになっちゃうか。まあ、言いたいのはビッグヒストリーに相応しい内容ですってことですね。


宇宙史といえば、やはりそもそも宇宙はどうやって出来たのかが1番の論点ですよね。ビッグバンは、神様が引き起こしたものだ、だなんて宗教団体は言わない理由はなんだろう。皆を守ってますなんかよりもよっぽど神様が居る動機付けにはぴったりだと思うけど。


と脱線してしまいましたが、そもそもなぜ宇宙をつくるほどのビッグバンが起きたのか。不思議だ。


宇宙含めた世界には不思議なことがたくさんある。当たり前なこのことを改めて伝えてくれる。分厚いけど中身はしっかりしている良本。



敬具



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2017年03月18日

社会人大学 人見知り学部 卒業見込

拝啓



「社会人大学 人見知り学部 卒業見込」
ダヴィンチで始まったのが、2010年8月。


今やレギュラー何本あるか分からない売れっ子のオードリー。どうもほっとけないあと間違いなくいいヤツな春日と少しひねくれてるだろうが、根はいいヤツな若林。一度漫才を見たことがありますが、かなり面白かったです。そんなオードリーの初期の色々が詰まったコラム。


コラムのテイストは、自分で言ってるようにちょっと捻くれたとこがあります。ダヴィンチってオシャレなイメージがあるからコラムも読んだ本やらオシャレな生活やら芸人らしいウィットに富んだ笑いやらを詰め込んだコラムかと思いきやそうではないのです。


2010年と言えば一気に売れっ子に駆け上がり、世界がガラッと変わった頃。そんな世界を厨二感で観ている若林正恭先輩。等身大ですね。


一押しは春日に関するコラムで間違いないですが、ちょこちょこ捻くれて見えるけど悪くない(と偉そうに!と若林正恭は突っ込むだろうが)視点が挿入されていることは見逃してはならない。厨二感病がいい具合に調合されています。


また、ドーンや限りなく透明に近いブルー等、若林ぽくない小説が引用されていることがツボでした。読書芸人で出てるけどなんかイメージ湧かないんですよね。鴨川ホルモーとか好きそうなんだけどなw



敬具



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2017年03月11日

かにみそ

拝啓



「かにみそ」
なるほど、かにみそってここからね。


第20回日本ホラー小説大賞の優秀賞を受賞した「かにみそ」。読者賞「ウラミズ」と競り合っての受賞とのことで、更に選考委員に貴志祐介、宮部みゆき、高橋克彦、荒俣宏、って荒俣宏!?荒俣宏ってホラー小説書いてるの?とかて、でもってユニークな題名でどうやってホラーと結びつけたのか気になり手に取りました。


職を転々として今は無職の私は、朝浜辺で見つけた蟹。顔を近づけても撫でてもつついても逃げない蟹を家に持ち帰り、飼い始める。次第に興味が湧いてきた私は、新たな餌、綺麗な砂と蟹に買い与えるが、蟹はどんどん大きくなり、遂には言葉を発し始め、人を喰らうことに固執する。


蟹が話すだけでもホラーだが、あのデカイハサミと何より不気味な真っ黒な目をチラつかせながら音も立てずに綺麗に人を喰い、肉団子を放り出す。不気味この上ない。


しかし、この蟹よりもホラーなのは、20過ぎの私であるのを見逃してはならないと思います。蟹を買うために水槽にいた熱帯魚を庭土に捨て、熱帯魚が跳ねる姿を思い暗く笑う、蟹が吐き出した肉団子を家族の夜ご飯の肉団子の野菜あんかけに紛れ込ませる、蟹を連れ帰りながらも飽きたらばらばらにすればよい 等、明らかに常軌を逸しています。蟹を人喰い蟹にさせるのも私であり、蟹の最後を作るのも私。


人を殺すことを蟹で体現しているような様には、ぞくぞくさせる怖さがあり「生きることは食べること」と言い放つ蟹を見事に食べ上げ、生き生きとした衝動と感じる私には、底が見えない恐怖を抱えている様に思えます。蟹に隠れた私にあるこの怖さこそホラー。




敬具



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2017年03月07日

銀翼のイカロス

拝啓



「銀翼のイカロス」
鬱陶しい大臣が相手。


まず、下町ロケットの次に読み出した故、遅ればせながら気づいたことが。帝国重工と帝国航空、帝国グループは、違う小説同士で繋がってるんですね。白水グループも多分そうなのか。と小気づきでしたw


無敵のバンカー半沢直樹の戦い第4弾。今度の顧客は、帝国航空。業績悪化で瀕死状態の会社。出だしでは、事業計画を単なるペーパーとしかみてないなんてアホじゃないですかっ!!とか思わせるアホさ加減丸出しで半沢を呆れさせる。そんなダメダメ企業に対して半沢は「はっきり申し上げて今がラストチャンスです」と突きつける。数字をいじり社会的意義で自分達のジリ貧を誤魔化す社長に言い放つこの言葉にはいつもの半沢節が詰まっている。うん、変わりなし。


また、今回の敵は、無能大臣率いるタスクフォースチーム(と曽根崎)です。過去半沢に返り討ちにあってきた懐かしき敵に倣い、プロとしてはあり得ない横暴な態度、無様な風貌に加え、半沢に対してあらゆる嫌がらせを突きつけてきますが、どうも物足りない。


大臣お目付のチームにしては実力を感じなさ過ぎるんですよね。悪態よりも腹立つ程実力がある悪役が出て来ないともはや半沢の敵にはならないです。白井という大臣もアホさ意味不明さ丸出しでちょっと無しですね。


そんな物足りない敵ながらも、過去の融資で東京中央銀行の信頼を揺るがす大事件が発生します。バンカーとしての信念を問われる中、中野渡頭取が下す判断は間違いなかったのだが、代役半沢ではなく頭取自身での叩き潰しでも良かったんじゃなかろうかと正直に思います。主人公は半沢だけど、あの場面で出てこなくとも読者はブーブー言わないと思うのだけど。


頭取と共に岐路にたつのは、富岡という表向きは出向待ちの銀行員。しかし、彼には真の姿があった。鮮やかな立ち振る舞いには探偵臭が半端ない。


さて、もはや天下無双の半沢直樹は、頭取が去った銀行をどう立て直すのか。



敬具



posted by kansasyoshi at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年02月19日

中途半端な密室

拝啓



「中途半端な密室」
テニスコートでナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵がかかり、周囲には4mの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げたのか?そんなメンドクサイことを犯人がするのか?表題「中途半端な密室」を含む短編5編収録。


・中途半端な密室


・南の島の殺人


・竹と死体と


・十年の密室・十分の消失


・有馬記念の冒険


私としては「十年の密室・十分の消失」が一番印象的でした。犯人の動機、過去の背景、そして鮮やかな犯行と其々が納得出来るものでした、強引な論理展開もいつもより少なめな気がしますし。また「南の島の殺人」は読者から推測出来るように論理が進められているので、楽しめました。


「中途半端な密室」は十川と片桐の推理の掛け合いがとてもテンポ良くスイスイ読むことが出来ました。また事件現場に彼らが出向くともなく、新聞の2つの記事をもとに推測していく点は東川氏作品では新鮮かもしれませんね。


個人的にはこの作品は東川氏の作品の中で結構お気に入りです。頑張れミキオ。



敬具



posted by kansasyoshi at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) |

下町ロケット

拝啓



「下町ロケット」
夢が詰まった物語。


言わずとしてた第145回直木賞受賞作。もはや様々な媒体で語り尽くされたあらすじですが、ざっと述べると、



ロケット研究を一度は諦めた佃航平が、多くのライバル企業や経営問題、内部分裂危機に直面し、それらを乗り越えながら経営者として骨太になり、また研究者としてのロケットへの夢を実現していく



そんな非常にあつ〜い物語。働く中で自分の夢を忘れがちになることが多い今、その中で苦しみながらも凛々と輝く佃の想い、仕事という現実を捉えながらも佃の夢に向き合おうとして必死に働く社員達を見たら胸が熱くならずにはいられないですね。


佃に関しては、ドラマは見ていなかった為、離婚していたことも知りませんでしたし、読んで見たら正直、妻が理不尽だと思ってのですがどうでしょうか。ロケットが部品を切り離すように夫を切り離して去っていたのには腹立っちゃしましたが、こんなもんなんですかね。


神谷という凄腕弁護士がナカシマ工業を叩き潰すのは見所。他の作品では、半沢直樹など主役が叩き潰す役を担ってきましたが、下町ロケットでは、前半戦の主役の相棒の相棒?くらい位置の彼がやってくれます。勧善懲悪がここにありで誰が読んでも腹立つナカシマ工業をぶっ倒す様は気持ちいいです。和解裁判を終えてから出番が無くなるのは残念ではあるのですが。


帝国重工内部の話は、今迄の作品同様、会社のプライド、方針、大企業なりの組織社会が描かれており、財前と富山の対峙も見所です。


財前は初めて佃製作所を知った際には、単純な驚きを以っていつもの悪役と違うのかなと思いきや、特許を買い取ろうと佃に現れた際には大企業の傲慢さを見せます。しかし、佃製作所の作業風景を見たら、考えが少し変わっていく。帝国の技術力を越える不思議さを佃製作所に感じ取ったからこその単純な驚きなはずなのに、交渉の場ではそれが微塵もない傲慢さという書きぶりには違和感ありましたが。また、帝国の佃製作所テストでの帝国側の手の平返しには素早すぎってなったり、殿村の啖呵の際に富山がいたとなっているがその描写がなかったり個人的に気になるとこは多々あるんですが、面白いことには変わりなし。


後、主人公側の軋轢がよく描かれてると思います。不合格品にロット打つなんてクラスの内紛は今迄出てこなかった気がします。そんなバラバラな佃製作所の中で部品納入には反対ながら帝国の傲慢なテストに腹を立て、佃に対するもやもやを一旦置き、打倒帝国の為に闘うことを誓う迫田には、一社員の意地とプライドを見た気がします。


最後は、見事にロケットを飛ばし、佃製作所は次の夢へ。こちらもドラマに含まれたみたいですが、原作を読んでみたいと思います。



敬具



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2017年01月24日

煙か土か食い物

拝啓



「煙か土か食い物」
ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー!第19回メフィスト賞受賞作。


この小説の特徴は、何と言っても破格のスピード感(妙なリズム)がダダ漏れな文体・文圧です。ヘイヘイヘイな意気揚々なリズム感が半端なく、これにやられて途中リタイアしてしまう読者もいると思います。冒頭は、以下。



サンディエゴにはおよそ三百万人の市民が住んでいるが、そいつらがどういうわけだかいろんな怪我や病気を背負い込んでホッジ病院にやってくるから、ERにいる俺は馬車馬三頭分くらいハードに働いてそいつらを決められたところに追いやる。チャッチャッチャッ一丁上がり。チャッチャッチャッもう一丁。やることもリズムも板前の仕事に似ている。板前と違うのは奴らが切り開いたり切り刻んだりするだけのところを、俺達は最終的に全部元通り縫い合わせてしまうというところだ。



はい。どうでしょうか。主人公"腕利きの救命外科医 奈津川四郎"がどんな奴かをさらっとリズムに乗って説明しているくだりですが、私はこのくだりから四郎=日本人っていう結びつきがイマイチ出来ませんでした。こういう文体は、アメリカ小説で見る事が多かったのが原因なのですが、加えて妙にぶっ飛んでいるんですよね。なんか物語に入りきれない。こんな文体が、ずっと続きますw


ただ、この文体がつらつら続くだけだと、恐らく私はドロップアウトしていたこと間違いなしでしたが、展開にスピード感がある為、なんとか読んでいけました。


連続主婦殴打生き埋め事件の被害者に母親が含まれたことから、復讐の為に独自で動く四郎。警察がホイホイ四郎に協力したり、帰省して直ぐに同級ルパンに遭遇したり、警察と検事に同級がいたりと色々強引な所もあるお陰で、どんどん進んでいきます。また、四郎に降りかかるアクシデントやイベントもバシバシ発生するため、怒涛のラップみたいになってます。


1番不思議なのは、四郎の推理です。もはや思考のショートカットが凄い。天才の域に達しており、この強引な設定に対して首を捻る読者が出てきても仕方ないですね。と、この小説には色々強引に見える所がありますが、その強引さがスピード感溢れる作品の完成に一役買ってるのは間違いなし。


スピード感に並び、目立つのは暴力性です。四郎の家族には愛より暴力があり、小説のいたるところに暴力があります。ただその暴力性は、家族愛と密接に絡んでおり、「人は死んでからも生きた証を色々な形で残す」「家族は生きてるうちに、そして死んでからも引き付け合う」など重要なテーマに触れていきます。特に、暴力しかないような二郎と丸雄、憎み毛嫌いしていた丸雄から見えた愛情等から人間の在り方を問う所は、冒頭のイメージだった"訳わからない感"を消し去るのには十分でした。


暴力的でめちゃくちゃではあるが、実は人間、特に愛に付いて触れているぶっとんだ小説です。



敬具



posted by kansasyoshi at 21:30| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年01月18日

チェーン・ポイズン

拝啓



「チェーン・ポイズン」
本当に死ぬ気なら、一年待ちませんか?人気絶頂のバイオリニスト、陰惨な事件の被害者家族、三十代のOL。三つの自殺に不思議な関連性を見出した週刊誌記者・原田は、“死のセールスマン”が運んだらしき、謎のメッセージの存在を知る。「命の取り引き」がもたらす意外な結末とは?


この「チェーン・ポイズン」は、「ある日1人のOLが自殺をする。すると彼女の前後にも2人の自殺者がいた。自殺は毒殺により共通している、しかし3人には過去も接点も無い。それでも、記者である原田が疑問を持ち、取材を開始する」という流れで進んでいきます。


この流れでも中心は原田とOLである自殺した高野悦子の2人です。彼ら2人の視点を中心として、自殺をしようとする人物の心理と自殺を不審に思う人物の心理を読むことが出来ます。しかし、ここで驚きもあります、実は高野悦子には伏線が張ってあるんです。


私は最初の「死のセールスマン」の辺りでの伏線を拾っていませんでしたw(というか読み返してみても伏線がない気がしますが、まだ拾い切れていないんでしょうかw)


そんな出だしにおける伏線に気づけるかが肝だと思います。他にももしかしたらあるかもしれません。


この作品の良い所は「死にたいという気持ちとそこから見る視点の現実性」です。3人のうち、バイオリニストの死への関心はなかなか共感できるものですし、恐らく真のプロであるとありえそうなことです。そして高野悦子です。


何故生きるのか?何故死にたいのか?そして何故生きたくなったのか?


そんな彼女の死への懇願と心理の変化が非常に現実性を持っています。だからこそ彼女の行動一つ一つには共感を感じました。


そして最後驚くべき展開があります。なんとなく読み取れた部分はあるんですけど、最後がああいう展開で締めるのならば、最初のアレはどうなるんだろうか?ということが気になりますw



敬具







次はこれが気になる↓



posted by kansasyoshi at 21:04| Comment(1) | TrackBack(0) |
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