2016年05月25日

オールド・テロリスト

拝啓



「オールド・テロリスト」
奴らがやって来た。


キャッチーな表紙に騙されてはいけない。中身は、残酷な小説である。しかし、何処か残酷だから読む必要なし!とかそんな意見は野暮ではないかと思わせる。


主人公はある記者であり、敵役は老人です。只の老人ではなく満州を生きた老人や事業で成功した老人、一回事業を失敗した老人。彼らは、確固たる意志を持っているし、何不自由してる訳でもない(一回事業を失敗してる人も)。彼らは、やらなければならないという意志を以って悪役になるのです。それも単なる悪役ではなく、テロリストというクソ悪役。


もちろん、テロリストはクソ悪役であり、同調するべきとこはないです。しかし、この小説の老人達は、全てが悪だとは思わせない所があります。だからこそ、記者は、彼らを悪とは思いきれない部分があります。何を以って悪なのかを今一度問うとこですね。


主人公が、振り回される点もよいです。テロリストという振り切れた存在に相反する立場として、とても読者側に近い。感情移入しやすいとこがありますね。


悪だけど悪とは決め付けれずに最後を迎えることになりますが、最後の最後で次への伏線があるような。


長編ですが、なかなか良かったです。



敬具





posted by kansasyoshi at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月24日

ワタクシハ

拝啓



「ワタクシハ」
人生賭けたい夢がある。


山木太郎は、何千のライバルに勝ち抜き、高校生でデビューしたギタリストである。未来は約束された。しかし、栄光を一時は味わったが、あっさりバンドは解散→燻り→大学3年の秋を迎え、貯金も減っていく。太郎の周囲は「シューカツ」に向けて慌しく動き出し、その一発逆転システムに魅せられ、就活戦線に身を投じる決意し、いざ就活へ!!これは、山木太郎の就活での戦いの日々の記録である。


太郎が就職活動に臨む。そんな訳ですから、本書には就職活動に臨む学生達が、随所に出てきます。


就職活動サイトの登録、エントリーシート、面接、履歴書の作成から、どうやったら選考を勝ち抜けるのか、企業が学生達には見せない選考基準を突破するにはどうするべきかまで。特に、就職活動時は、様々な情報に惑わされるものです。何が本当の情報か全く分からない世の中ですからね。


登場人物も就職活動の設定に生きたメンツが登場します。しかし、オモロー大阪というネットに就職活動をアップして騒ぐ系の人間は、本当にいそうですね。自分だけの話で他の人の時間を奪うなど言語道断で速攻落とすタイプなんですけど。こりゃ凄い。しかしながら、この人物の存在が、人間なんて色々だなーと思わせるアクセントにはなっています。嫌いだけど。にしても、認識が甘々な学生達がたくさん出て来る。これは、流石に現実離れしていると思うけれども、きっとあながち外れてはいないんだろうなとも思います。



「本場の大阪の笑い?いい加減、その本場の笑いとやらが、自分達の身内空間でしか受け入れられないという事実に気付くべきかと。関西の大阪の大学のサークルのくそ狭い身内空間の中でせいぜいたこ焼きでも食べながら互いに笑かしあっていればいい」



これが一番面白い。”の”を多用して話すところが秀逸ですね。


太郎の就職活動を軸に書いているのですが、彼が就職活動生兼ギタリストである為、芸能界の話が随所に出てきます。ここもポイントですね。


「今はどんなに歌が下手な人でもピッチ補正やエフェクター、コンプレッサーとかで歌声を加工すればすぐCD出せるよ」「モデルがCDデビューしたんだじゃなくて、この歌手ってモデルなんだって認識されたいの」「華やかな会社員であるアナウンサーにでもなり富と名声、会社勤めという安定した地位を得ればよいのに」


上記のような芸能界を皮肉っている様な会話がたくさん出てきます。これが結構面白い。羽田圭介(敬意を込めて敬称略)が、どんな表情でペンを取っていたのだろう。きっとにやにやしながら書いていたんだろうなw


太郎が、就職活動を通じてどう成長していくのか。そこには、就職活動(コネ入社が可能という設定も普通の就職小説では珍しいかなと)はもちろん、関わってくるんですが、一方でギタリストへの未練も絡んできます。


内定を取る為に就職活動をするのか、仕事をする為に内定を取るのか。太郎は、果たしてどんな決断を下すのだろうか。



敬具




posted by kansasyoshi at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月17日

フェルマーの最終定理

拝啓



「フェルマーの最終定理」
ワイルズのフェルマーへの挑戦。


一言で言うと、この「フェルマーの最終定理」はアンドリュー・ワイルズのフェルマーへの挑戦の歴史が詰まった一冊。しかしこの本のいい所はフェルマーの定理(解明の流れ)を知る前に数学とはどんな歴史を持っているのかを私達に教えてくれること(何より面白いところがこれらの数学の歴史は最終的にフェルマーの定理に通じていることです)。堅苦しい数式や専門用語ばかりが羅列することもなく、教師のように強烈に教えてくる姿勢でもない。歴史と共に数学が存在してきたということを歴代の天才的数学者や英雄の存在を交えてさらっと教えてくれるそんな優しさを感じましたw。私のような専門用語ばっかりはNG人間にはぴったり。


有名な天才人間では、例えば、ピタゴラスが登場します。彼の有名な定理は、中学辺りで出会った「ピタゴラスの定理」です。しかし、実は彼はこの定理以外にも自然現象を支配する数学数列を明らかにしたり、数学的真理が科学の世界にも応用出来ることを示したり、驚きのピタゴラス教団(数と数との関係を理解することで宇宙の霊的神秘が明らかになり、神々に近づけると信じていた)を設立していたり、色々していたことが分かります。そして、オリンピアも登場し、ピタゴラスのラストや汚点も知ることが出来ます。


他にもガロアという名前は聞いたことあるような天才少年の波乱的人生や志村五郎と谷村豊のフェルマー定理解明への大きな貢献、数学に影響を与えた初の女性テアノなど本当に色々な数学人間の歴史と挑戦を知ることが出来ます。これだけたくさんの数学者の名前を知ったのは初ですね。


これら数学の歴史を追いかけながら読んでいくと、最終的に多くの歴史がフェルマーの定理の原理や解明に繋がっていることが理解出来ます。なので非常に納得したり感心したりびびったり出来ます。


「数学だから難しい!」なんて本当に思わないで、ふと手にとってもらえれば自然とどんどん読める良い本です。この本を読むと、数学の魅力が理解でき、「こんな数学なら学びたい」とか「ワイルズが魅力になるのも分かるな」とか思えると思います。


学校の算数や数学も歴史の背景や多くの数学者の挑戦を交えて教えれば、理系離れも減ると思うんですけどね(私は勝つ為の数学で解きまくりの人生でした)。



敬具




posted by kansasyoshi at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月16日

疾風ロンド

拝啓



「疾風ロンド」
犯人死亡の大ピンチ。


本作は、文庫書き下ろし。それよりも「白銀ジャック」とイメージが被ってしまい、「疾風ロンド」は既に読了した気分になっていました。今一度「白銀ジャック」のあらすじを見たところ、こりゃ間違えるなと。


◆あらすじ◆

ある研究所から盗まれた生物兵器を、犯人(葛原)が雪山に埋めたところから始まる。場所を知りたければ3億円を支払え、葛原は、そう研究所所長東郷を脅した。そこまでは、よかった。しかし、その彼は不運にも事故死してしまった。


一方、東郷達は、これは不幸中の幸いと生物兵器の回収に乗り出す(というか、部下の栗林なのだが)。栗林は、最近反抗期な息子と共にとあるスキー場に向かう。頼みの綱は目印のテディベア。



このあらすじからもお分かりの通り、ハラハラドキドキのミステリーです。が、なんといっても一番は、”軽さ”でしょうか。登場人物では、東郷、栗林を始め、随所に軽い所がてんこ盛り。意図的に軽いタッチで描いているのでしょうけど、つっこみ処満載。軽いタッチで描かれている為、一瞬ミステリーを忘れてしまうのだけど、最後の最後に仕掛けもありました。あっさりミステリーですね。


さて、本作は、映画化されるみたいですね。全体的に軽いタッチ&栗林のおとぼけも活かすならば、完全にコメディミステリーになるのだろうか。主演は、阿部寛さん(根津かと思ったら、栗林役っぽいですね)だから見たいんですけど、面白いのかなー。



敬具




posted by kansasyoshi at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月15日

東京奇譚集

拝啓



「東京奇譚集」
見慣れた世界の一瞬の盲点。


これは、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。


◆偶然の旅人
◆ハナレイ・ベイ
◆どこであれそれが見つかりそうな場所で
◆日々移動する腎臓のかたちをした石
◆品川猿


以上5編が収められています。品川猿は書き下ろしで、他は「新潮」2005年3月号〜6月号に掲載されています。


個人的に一番好きなのは、「品川猿」です。名前を忘れる習慣を持つ女性”みずき”と猿の話なのですが、この猿、名前を取る猿なのです。しかも、しゃべる。ある女性に恋い焦がれてしまった品川猿が、みずきの名前を取ることになった経緯、そしてその意味は、みずきに大きな傷を与えます。しかし、その傷は、彼女にとって必要だったように思います。母がみずきを愛していない、みずきが旦那を愛していないことを猿が言い、それを分かっていたと受け入れるみずき。


みずきは、猿の言い分を受け入れ、名前を返してもらう。ようやく手に戻ってきた名前と共に再び過ごしていくことになるのだが、ものごとは上手くいくかもしれないし、上手くいかないかもしれない。しかし、とにかくそれがほかならぬ彼女の名前なのだ。他に名前は無い。これは、彼女が今後、どういう生き方をするのかを想像させる終わり方であり、とても好きなフィナーレでした。


実は、私は、村上春樹小説は何でもござれ!と言う訳では無いので、「品川猿」のような終りは、割かし好きなのです。


他の短編を紹介すると「偶然の旅人」は、ゲイをカミングアウトした男が、偶然出会った女性と知り合うことで仲たがいをしていた実姉と和解していく話。「ハナレイ・ベイ」は、サーファーの息子を失くした女性の年一回の没巡礼の話。「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は、あるマンションの階段での移動時に行方不明になった男を捜索していく探偵の話。「日々移動する腎臓のかたちをした石」は、売れない小説家と不思議な女性との出会いと別れの話。


一番、良く分からないのは、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」でしょうか。ちょっとSFちっくな印象を抱きました。意外だったのは、「ハナレイ・ベイ」。村上春樹らしくない?普通の終わり方でしたね。


不可思議な運命を辿る者達の物語。



敬具




posted by kansasyoshi at 10:16| Comment(0) | TrackBack(1) |

2016年05月13日

ゆらぎの世界―自然界の1/fゆらぎの不思議

拝啓



「ゆらぎの世界―自然界の1/fゆらぎの不思議」
ゆらぎは全ての生物と物質に存在する。この自然界にゆらぎは溢れている。


ゆらぎ研究の歴史は物理や生物、化学に比べてとても浅い。世界は日本より早くゆらぎに興味を持ち出した。特にアメリカは「分からないものを見つけた時、まずとにかく調べてみようとする」らしい。つまり好奇心が先にたつ。一方日本は違うらしいのです。日本の場合「このわからないものを調べたら役に立つのだろうか」と考えるらしい。つまりこれは理解できれば役に立つと分かってから、それを調べだすのです。それゆえに世界と日本の差が生まれる。


その世界と日本との差がゆらぎ研究でも起きているということです。そんな日本のゆらぎ研究を変えようと真っ先に動いた研究者の代表格がこの「ゆらぎの世界」著者・武者利光氏です。彼は世界でも積極的に活動しゆらぎの解明に尽力されました。


この本を読むとゆらぎの世界に触れることが出来ます。私はゆらぎについて学ぶ時に専門的知識はあんまり知らなくても入り込めると思います。それぐらい実は身近にゆらぎは存在しています。例えばティッシュケースも止まって見えていますが、ミクロにしていくと小さな分子が常に動いている状態になっています。つまりティッシュケースも常に不安定な状態でゆれているということになります。


この本はゆらぎがどれだけ人間の生活の周りにあるのか、自然の中にあるのかを教えてくれます。普通に専門書では無く1つの読み物として読むことが出来ます。私は個人的にゆらぎは分かりましたけど、題名に出ている1/fゆらぎは未だになかなか理解出来るけど出来ないような信じれないような不思議な感じですね。本当に効果があるのか?と思っちゃいますねw


例えば、
街路樹も決まった間隔で置いていくよりも少し距離を変えて置いていく方が人間を心地良くさせるそうです。また、道路や服にも1/fゆらぎを取り込むことで人間はより快適になれる(そう感じれる)らしいのです。


信じれないですよね、自分が体感しないとw



敬具





posted by kansasyoshi at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月11日

Okiraku 2

拝啓



「Okiraku 2」
草g剛の軌跡。


本書は、雑誌「月刊ザテレビジョン」誌上で1996年春から開始し、20周年を迎える長期連載となった「草g剛のお気楽大好き! 」の書籍化第2弾です。先々週だったか、ゴロウ・デラックスで著者(あえてそう呼ぼう)草g剛が登場し、本書について僅かながら触れていた為、発売を知り手に取った次第です。


帯には”SMAPへの思い、人生、結婚観・・・全てが詰まったクロニクル”とあるが、まさにその通りの一冊であり、SMAP、草g剛のファンはもちろん、やや好きな人はもっと好きに、やや嫌いな人は、少し気になる存在に、絶対に好きにならないという人が万が一いるならば、おっ!ちょっと気になってきたなと思えるだろう。そして、もともと好きな人は、もっと好きになるだろう。


中身は、

◆巻頭グラビア 草なぎ剛Short Trip ジーンズタウン児島へ
◆SMAP親友スペシャル対談 草なぎ剛×香取慎吾
◆連載グラビアPlayBack
◆07年春から16年までのエッセイ全掲載
◆草g剛ロングインタビュー



全てを語るには、本書評では到底難しい為、私の独断と偏見でお勧めと思われる部分に触れたいと思います。


まずは、巻頭グラビア 草なぎ剛Short Trip ジーンズタウン児島へ、ですが、草g剛のクールな表情は流石の一言である。これだけの年齢になりながらもアイドルとして仕事をするところは、男の中の男に感じます。後、ジーンズの愛情が詰まりに詰まったコメントも良いのだけども、着ている服がとてもカッコいい。どこで売ってんだろ、教えて下さい。さすが、つよポンである。欲しい( ゚Д゚)


香取慎吾との対談も見逃せない内容となっています。二人の関係性が、SMAPだけではなく人と人で繋がっていると強く感じれるコメントがこれ。



香取「つよポンはまっすぐでいいところもあるけど”過ぎる”ところもあって。ハマりすぎるとか、周りが見えなくなりすぎるとか。お気楽でもいいんだけど、お気楽すぎても困るし。でも芯にある太いものは変わらずにあるから、そこさえちゃんと持っていてくれればいい。ある程度、過ぎる・はみ出るところは僕が全力でフォローする。そんな感じですかね」



まあ慎吾(あえてそう呼ぼう)のコメントなんだけどもとても人間味が溢れていると思います。もちろん、このコメント前後にもつよポン(慎吾に倣って)も良いこと言っているんだけど、このコメントがSMAP以外の関係性も踏まえた良い言葉だと思います。


エッセイにも1つ1つ触れていきたいところですが、さすがにそれは大変なので、是非読んで頂ければと。間違いなく言えるのは、つよポンのSMAP愛が溢れているということ。TV等、様々な媒体でずっと言ってきていることですが、如何にSMAPが大切なのかが、ここでも十分すぎるほどわかります。


確かに「言えばよかった」はカッコいいし、「夜空ノムコウ」はいつ聴いても良いし、裏スマver. Majorも良い。クサナギ−ニョだってバルセロナでうけていたし(ゲッツではあるが)、「アヒルと鴨のコインロッカー」も良いのだ。というか、つよポンは読書するんですね。これは、知らなかったw


そして、やっぱりこれは外せない。それは、仕事への思い。これは、ほんと素晴らしいと思います。目が回る忙しさを20年以上も続ける中で、ものすごいバイタリティー、プロ意識、そして努力と。ほんと、これがプロ中のプロなんだなと。一方、こんな風に働きたいと思いながらも、すっごい大変なんだろうなと思いながら、結局怠ける自分。なんと情けないことか。


草g剛とSMAPが詰まるに詰まったクロニクルです。これからもずっと応援していこう。あー、ライブとか行きたいなー。



敬具




posted by kansasyoshi at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月07日

ラスト・ワルツ

拝啓



「ラスト・ワルツ」
D機関が疾走する。


ジョーカーシリーズとは、結城中佐をボスとするスパイ組織”D機関”の活躍を描いた小説です。第1弾、2弾は、結城中佐が活躍することが幹となり、本作4弾は、ほとんど彼が出てこない為、面白さとしてはやや落ちるというのが正直なところです。特に、"D機関”の教えは、既視感がとても強い(それは、結城中佐の教えを基に育ったスパイ達が話に出て来るのですから当たり前ではありますが)。


「アジア・エクスプレス」が、個人的には一番良かったです。"D機関"の教訓を駆使した教え子の活躍が描かれています。主人公となるスパイが特技であるフェンシングを駆使したり、”D機関”で習得したマジックを披露したり、子供を上手く使って敵スパイを見つけ出したりと、スパイらしい活躍でした。また、列車の特性を生かした設定になっており、話としてもなるほどなと。


◆アジア・エクスプレス
疾走する特急列車内で、情報提供者が殺された。結城中佐の教えを基に、スパイは敵スパイを探し始める。マジック、フェンシング、列車の特性を生かした技術で、敵スパイを発見できるのか。子供心を上手く利用したところがGood。


◆舞踏会の夜
華族に生まれ、陸軍中将の妻となるが退屈な生活に倦んでいる顕子。米大使館で催された仮面舞踏会の会場で、なぜか、ある男のことがしきりに思い出された。かつて窮地を救ってくれた彼と、かつての顕子はいつか一緒に踊ることを約束した。少女の頃の約束を果たす為、舞踏会に立ち続ける顕子は、健気だなーと思いきや、1策張ってありました。去り際が、まさにスパイ。頭の中で、その物語がとても映像化しやすい短編。


◆ワルキューレ
ドイツの映画撮影所で、ナチス幹部と対峙する。2重、3重のトリックが仕掛けられ、加速するナチスとの頭脳戦。本作で唯一の中編。スパイはこうであって欲しいという姿を描いているというある人物の一言から、映画「ジョーカー・ゲーム」の為に書き下ろしているような印象を受ける。実際、"D機関"が掲げるスパイ像とは違い、非常に派手。まさに、ルパン三世のよう。それながら、最後には、しっかり"D機関"の存在を匂わせ、今後のナチスドイツとの関係の行き先を暗示させる終りになっている点も個人的には、良かったですね。此処がないと、ジョーカーシリーズではなくなってしまうので。


ちなみに、第3弾をすっ飛ばしてしまっていた為、パラダイス・ロストを読もうと思います。結城中佐が出て来るものが面白いのは分かりますが、教え子たちの話でも面白いものを期待したい。



敬具




posted by kansasyoshi at 07:01| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年04月29日

毒味師イレーナ

拝啓



「毒味師イレーナ」
それは少女が生きるための、ただ1つの手段。


本書「Poison Study」は、2005年に出版された異世界ファンタジー小説です。訳者が出会ったのは、2008年、当時高校生だった娘と友人達に「胸がどきどきするようなファンタジーを探しておいて」と言われ、探しておいたのはこの「Posion Study」です。毒味役という設定に興味を持ち、想像以上に面白く、娘達に勧めたという流れです。確かに、読んでみると面白い。


舞台は、異世界にあるイクシアと呼ばれる国家。かつては王族が支配する国だった地は、叛乱によって王族が退けられ、最高司令官と呼ばれる人物を頂点とする軍事独裁政権によって支配されている。イクシアには、敵国シティアが存在し、両国の政治も全く異なる。そんな異世界。


物語は、軍事政権を支える将軍”ブラゼル”の息子を殺害した罪で処刑を待つ少女イレーナが、謎めいた防衛長官ヴァレクから、死刑か毒味師になるかという究極の選択を迫られるシーンから始まる。イレーナは、いつ死ぬかわからない恐怖と戦うことになっても、1日でも長く生き延びるチャンスがある毒味師への道を選ぶ。ヴァレクの厳しい指導を受けながら、少しずつ毒味師の仕事に慣れていくイレーナ。しかし、イレーナは毒味師として成長していくと同時に、イクシア領内にうごめく謎めいた陰謀に巻き込まれていく。


本書のユニークな点は色々あります。例えば、イクシアとシティアの政治的な違い。軍事国家イクシアは、節制が徹底され、モラルに厳しい。平等社会であり男女同権も進んでいるが、音楽や芸術が厭われ、個人の選ぶ権利は限られている。一方、シティアは、芸術や食べ物を愛する文化があり、今のイクシアでは食べれないものも多い。そして、両国の決定的な違いは、魔術師がいるかいないかである。イクシアでは、魔術師は疎まれる存在だが、シティアは魔術師が牛耳る。この魔術師の存在が、重要なキーとなっています。イクシアにとってはもちろん、ヴァレクとイレーナにとっても非常に意味のある存在です。


もちろん、毒味師という設定も絶賛ユニークポイントです。様々な毒が出て来るのですが、この毒味師をただの最高司令官の食事の毒味をするというだけの役で終わらせていないところが、また、本書を一層面白くしていますね。


とはいえ、一番はイレーナであることは間違いないです。異世界ファンタジーの主人公というと、剣士や騎士で、適をばっさばっさ切り倒し、時には魔法も唱えてしまうそんな強いものをイメージするかと思います。しかし、そのイメージとイレーナは全く正反対の存在です。イレーナは、イクシアでの壮絶な過去を抱え、死刑囚となった身。剣士や騎士のような逞しい肉体を持っている訳でも、魔法を使う訳でもない。


そんなイレーナが、意志の強さ、考える力、そして前向きな性格を以て、様々な恐怖を乗り越えていきます。精神的に強い、自立したヒロイン、それがイレーナなのです。そんなイレーナが、徐々に1つ1つ強さを磨いていき、仲間も増やし、本当に強くなっていくところが、大きな見どころであり、魅力です。


因みに、仲間の中で一押しは、アーリですね!訳者の娘さん達は、圧倒的にヴァレクが好きみたいですが、アーリの方が、響きますw


物語は、イレーナが遂にシティアに帰還するところで終わります。さて、どんな展開になるのか。ヴァレクは登場するのか、非常に楽しみです。



敬具




posted by kansasyoshi at 11:04| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年04月26日

野兎を悼む春

拝啓



「野兎を悼む春」
シェトランド署のサンディ刑事は、帰省したウォルセイ島で、祖母ミマの遺体の第一発見者となってしまう・・・。ウサギを狙った銃に誤射されたように見えるその死に、漠然とした疑惑を抱いたペレス警部はサンディ刑事と共に彼の親族や近くで遺跡を発掘中の学生らに接触し、事情を探りだす。果たして小さな島で起きた死亡事件にはどんな真相が隠されているのか?本当にウサギを狙った銃に誤射されたのか?それともそれはカモフラージュで大きな闇が隠されているのか?


現代英国ミステリー珠玉「シェトランド四重奏」第三弾!とのことですが、私は初めてこの作品を読みました。読んだのは第三弾ですけど、これだけでも十分面白いです。


私は英国ミステリーの雰囲気が何故か好きなんですが、この「野兎を慎む春」にも英国風を強く感じました。また展開もミステリーらしい展開の仕方なので、推理系やミステリー系が好きな人には是非お勧めしたいですね!


個人的に魅力はやはりサンディとべレスの捜査でしょうか。ミステリーでは捜査は一番大事な点だと思いますし、捜査の部分がぴんとこなかったら作品の魅力が減るとも思います。ですがこの作品における捜査とそれを行う刑事は非常に読者をひきつけます。


この第三弾を読んで前2作も読んでみよう、と思わせる作品でした。



敬具




posted by kansasyoshi at 01:07| Comment(0) | TrackBack(0) |
<< 2016年05月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
プロフィール
kansasyoshiさんの画像
kansasyoshi
読んだ本をアップしてます。
ブログ
プロフィール
最新記事
リンク集
カテゴリアーカイブ
洋書(22)
(584)