2016年07月25日

黒い家

拝啓



「黒い家」
人はここまで悪になりきれるのか。


「新世界より」と並ぶ貴志祐介の代表作品。本作は、第4回(1997年) 日本ホラー小説大賞を受賞した、賞名通りのホラー。人間心理の恐ろしさを傍に感じさせる。あぁ、怖い。こういうの苦手ですね。



若槻慎二は、入社以来5年間、本社の外国債券投資課に配属され、昨年の春、京都支社に異動した。以前は、長期金利や為替相場を扱っていたが、今は死亡保険金の査定業務を行っている。ある日1本の電話がかかってきた。「自殺した際、保険金は出るのだろうか」と。若槻は、彼女に異変を感じ、自分の経験を基に自殺を止めようとするが・・・。この時から、若槻の背後に恐怖が迫っていた。



保険業界の死亡保険金の査定業務という特殊な仕事をメインに書いている小説は、珍しいのではないでしょうか。少なくとも私は初めて読みました。毎日毎日、死亡者の保険金請求書と向き合い、時には事件の背景まで知るという業務って、どんだけ大変なんだろうか。そして、本当に居るのだろうか。保険金を出せと店にやってくる人間は。


感想としては、ホラーとして最も苦手なタイプの小説でした。死亡保険金を出すよう迫る人間が、サイコパス。いつになれば保険金が出るのかと、毎日店にやってくる。暴言は吐かず、淡々と繰り返す。若槻は、業務上何も言えないにも関わらず、奇妙な行動を繰り返すのだ。サイコパスの行動が徐々にエスカレートし、若槻の周りにまで恐怖が迫ってくる。その恐怖は、直接的になり、最後は、特大の恐怖。いかん、怖すぎますね。


サイコパスが2人いるという設定も、恐怖を煽っています。異常者が1人でも怖いのに、実はもう1人いて、そいつがもっと異常者。自分を犠牲にして保険金を出させるのではなく、自分以外を利用して大金を巻き取るという異常な行動が出来る人間の、からっぽの怖さを嫌という程、示すこの2人には、小説と言えど恐怖を感じざるを得ません。


徐々に迫る恐怖を、テンポの良い文調で描いているので非常に読みやすい。しかし、保険金査定業務の特徴も織り交ぜている為、非常に現実感を漂わせている。その為、非常に恐怖が現実感を纏ってしまうw。そこが、怖い。しかし、どうも警察は、毎回頼りにならないですね。嫌がらせの類は、警察が動かない為、大きな事件が発生している現実を織り込んでいる部分も、この小説の現実的な恐怖を強調していると思います。どうにかならないんだろうか。


最後の締めは、ちょっとユーモラスな展開だけど、どうしてもそれまでの恐怖を考えると、またサイコパスが若槻の目の前に来たのではないかと不安が尽きない。



敬具








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2016年07月24日

殺戮にいたる病

拝啓



「殺戮にいたる病」
永遠の愛をつかみたいと男は願った。


叙述トリックを駆使したミステリとして名高いと言う評を目にして読んでみました。叙述トリックなので、いつどのタイミングから犯人だと思っていたのが犯人ではなかったのかを気づくことが、醍醐味であり、それをさせない所に作家としての腕が試されるのですが、本作は、秀逸と呼ばれるだけあると思います。


1.東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねる蒲生稔
2.稔の日々の様子の異変から彼と猟奇的殺人を関係を疑い出す母雅子
3.稔逮捕の瞬間に居合わせた元刑事樋口


以上、3者の視点で構成されて話が進んでいきます。猟奇的殺人を行う為、その殺戮の描写は残酷。グロテスクを好まない人は読むのが辛いと思いますが、稔が初めて犯行を犯してから捕まる迄を遡るように設計されている為、その殺人シーンを読み飛ばすことはできません。


稔の素性など大まかな情報は小出しで出て来るのですが、最後のどんでん返しに繋がる(読者を誘導する)伏線は、至るところに散りばめられています。もちろん、その伏線は猟奇的殺人シーンにもあるので、最後読み終わった際に、一体何処で犯人を勘違いしたのかを探す意味も含めて読み飛ばせない。


全体として凄く良く出来ていると思うミステリーです。ただ、個人的にしっくりこない伏線もありました。以下、ぽちぽちネタバレ。


例えば、自分の大学では流石に顔が割れているのではないかという疑問。稔は助教授であり、自分の大学内で獲物を見つけています。サイコパスのような異常者というよりは変態殺人者であるので、自分の犯行が露呈することをより恐れ、さすがに大学内で生徒を獲物にすることに一定のリスクを感じそうなものなのですが、そんな素振りが全くありませんでした。対する被害者側も助教授くらいならば顔を知っているのではないかと思ったり、そもそも年齢も10は離れているのだから、ほいほいとホテルに行ったりはしないのではないかという疑問も沸きます。


また、結局、稔は息子ではなく夫だったのだけど、息子がいつの間にか殺されてしまいます。雅子、樋口、稔の構成で小説が進むので、この息子が一体どこで稔の犯行に気付き、彼の後を追って殺されてしまったのか。うーーん、どこかに伏線があったのだろうけど、分からない。


他には、被害者の妹の謎の性質にもピンときませんでしたが、全体的には大変面白かったです。犯人を誤認させるような伏線全てを1回目で気づくのは難しいかも。



敬具




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2016年07月11日

塩の街

拝啓



「塩の街」
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。


塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女。「電撃」に相応しい、というかライトノーベルの世界観にぴったしな設定。第10回電撃大賞受賞作にて有川浩のデビュー作でもある「塩の街」には、今の有川浩作品の原型があるように感じました。近未来と恋愛のミックスはここがスタートだったんですね。


塩害により街も人も塩になってしまう。そんな世界の主人公は2人。男の名は秋庭、少女の名は真奈。1人ぼっちでいた真奈を秋庭がほっとけず、2人で暮らし始める。そんな2人さまざまな人々が行き過ぎる。あるときは穏やかに、あるときは烈しく、あるときは浅ましく。


複数のエピソードが連なって長編となっている作品。行き倒れになりかけていた少年を真奈が救った際、この少年も主要キャラクターなのだろうと思っていた所を見事に裏切られました。そしてなんと切ないエピソード。んー、こういうテイストなのですね。


秋庭と真奈の2人の前に1人の男が現れたことで物語は、SF要素も徐々に生かされていく。なぜ自衛隊3部作と言われているのか序盤では良く分かりませんでしたが、ここで分かりました。


有川浩の特徴と個人的に思っているSFと恋愛模様の組み合わせの出発点を知れる作品だと思います。行き倒れ少年の話が一番良かったですね。



敬具








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2016年06月21日

図書館で暮らしたい

拝啓



「図書館で暮らしたい」
好きなものはたくさん。


ミステリー作家辻村深月のエッセイ集。作家になる前から、作家になってから、夢中で追いかけてきた小説、漫画、アニメ、音楽、映画、美味しいものなどなど、感じるままに書き綴っているエッセイで、彼女の人間性が垣間見える作品です。


色んな話題に触れているけれども、題名にある通り一番思い入れがあるのは、本であり図書館なんだと思います。一つ一つのエッセイも短くなく長くなく丁度いい。エッセイとしても作家としての面、主婦の面、女性の面など、描く側面がたくさんあり、様々なテーマを扱っている。読んでいても心地良い。個人的には、伊坂幸太郎のエッセイに並んで好きなタイプですね。


以下、ちょっと印象的なエッセイを紹介します。


☆ドッペルゲンガーの本棚
グアムのホテルでの体験。読みたいと思っていた本を持参し忘れていた悲劇に打ちひしがれていた彼女に起きた奇跡。まるで自分の本棚のようなそれが、まさかグアムにあるなんて。


☆図書館肝試し
自分になじみのないよその町の図書館に行くのが、妙に好きだという彼女。その気持ち、分かります。肝試しとは、中身を隠した本を一冊選んで貰って貸すということ。おしゃれな包み紙でプレゼントの様に貸し出される本。こんなイベントがある図書館に行きたい。


☆悩ましいレストラン
仕事場近くのレストランでの話。ある日訪れた時、客が私1人だけ。だからか、厨房ではおしゃべりが止まらない。心臓が痛い話題なのだ。料理は美味しいだけに通い続けるか悩んでしまう。このレストランの人が読んだらヒヤヒヤもんだろう。


☆インタビューの心情
知り合いのライターが取材を途中で打ち切られた。悪いインタビューとは何か?という深いエピソード。


☆なりたい大人
こんな大人って本当にいるの??と思わせる。いやー、こんな大人になりたいですね。


ちなみに、この本が面白い理由は、エッセイ以外にもあります。実は、第1部はエッセイで構成されているのですが、第2部は好きなものについて、第3部は育児生活、第4部は特別収録されたおじいちゃんとおひさまのかおり。第5部、6部は、自作解説と直木賞後の話が収められているんです。


ここまで種類が富んでいるものも珍しいですよね。



敬具





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2016年06月19日

百瀬、こっちを向いて。

拝啓


「百瀬、こっちを向いて。」
ありふれた世界にあるありふれた恋模様、とも言えない。


私は、恋愛小説はあまり読まない。似たような起承転結を用いているのが多くて、登場人物も似ている、今立て続けに実写化されている少女漫画みたいに既視感があるからなかなか楽しめない自分がいるからだ。本作に既視感がないとは言わない。でも、その既視感を上回る現実味を含んだ恋愛のさわやかさ、甘酸っぱさ、懐かしさが感じれる。そんなところに惹かれました。「せつない恋心が感動を呼ぶ永遠の名作」とのことに対してどうこうはないですが、現実感を残した恋愛小説を楽しめる一作なのは間違いないです。


◆百瀬、こっちを向いて。
恋愛アンソロジー「I LOVE YOU」に収められている短編。どうやら著者は覆面作家らしい。その点が、他の短編集の伏線としてあり、それが意図的であるならばちょっと粋である。題名から、気になる女子にいっていること様が容易に想像できる。その女子に声を描けるのは、「人間レベル2」の僕である。


命の恩人に偽装カップルを頼まれながら、次第に相手に惹かれていく様は、とても現実感がある。なにより、自分を卑下してしまっている僕が、百瀬を好きになることで次第に変わっていく所がとても良いですね。個人的には自分が「人間レベル2」で、命の恩人が90何だか知らないけど、そんなに自分を卑下するなよと。個人的に一押しは、友人に偽装カップルを告白するところだろうか。友情と恋愛のバランスを表すシーンが良いですね。後、最後の別れもGood。


◆なみうちぎわ
姉にそっくりな私が、登校拒否の少年の家庭教師をするというところから一気に展開が変わってしまう。単に恋愛と一括りに出来ない思いが詰まっている作品。愛だ恋だとかそんなもんではないんですよね。


◆キャベツ畑に彼の声
教師と少女の物語。と言っても高校教師のような恋物語ではないです。学生と教師の一線を越えないながらも、少女の淡い恋模様を上手く描いている作品。小説を絡めている点もとても良い。


◆小梅が通る
百瀬と並ぶのが、小梅。今では当たり前だろう女子と女子のいざこざ。葛藤する上で決断した柚木を誰が責めることが出来ようか。


どれも若い世代の淡い恋愛事情の芽生えを描いている。王道の恋模様ではなく、微妙な心の揺や繊細な心理を時にユーモラスに描写しているため、登場人物をとても応援したくなる(みな恋愛から離れているという背景も効いているが)。


単純に甘い=恋ではないところに魅力があるように思えます。だからこそ、恋愛小説は苦手、勘弁して!という人でも引きつけられるはず。



敬具





posted by kansasyoshi at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年06月05日

火花

拝啓



「火花」
お笑い芸人二人。


遂に読了しました。購入してから随分経っていたけど。漫才師”又吉直樹”が、漫才師を描いた「火花」、芥川賞受賞作品です。既にご承知の方が多いと思いますが、ざくっとあらすじを。



主人公は、”芸人”徳永。ある日徳永は、漫才師”神谷”と出会う。神谷は、徳永にとって天才に見えた。常に面白いことを追及し、何事にも曲げない精神。私生活は、ぐちゃぐちゃながらも、漫才師は漫才師であろうとする。徳永は、彼を師と慕い、笑いの真髄について議論し合う。いつか、神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。



2人の漫才師としての歩みを描いている作品。面白いものを追及し、その面白いものが万人に受けるわけでもないが、万人を笑わせてみたい。だとしても、自分の面白いものは曲げずに笑わせたい。芸人として葛藤する部分が、実に色濃く鮮明に描かれているように感じました。漫才師としての生き方をこれだけ実直に書けるのは、書き手が漫才師であった方が、書ける可能性がある。


しかし、誰でも書けるといったものでもない。書く力が必要です。”芸人”、”書く力”の両方を備えているのが、又吉直樹だった。彼は、芸人として舞台に立ち、舞台からTVに立つ難しさ(素人が考える以上の難しさ)と”笑いとは”を肌で感じている。だからこそ「火花」のような漫才物語を描けたかなと。


神谷という人物は、終始、笑いを追求している、様に見えます。しかし、その追及は私には理解しがたい。私生活を良くも悪くも、というかかなり悪い方に偏っているように思うけど、ないがしろにすることと笑いが紐づくことがどうも理解できません。でも、ここら辺の認識の違いも芸人にとっては、だからこそ漫才師だ!って思えちゃうんでしょうね。


描写一つ一つに十分な言葉を使って丁寧に書くところは、純文学っぽいと思うのですが、どうでしょうか。個人的には、次作では漫才や笑い等から離れたジャンルの小説をぜひ書いて欲しいですね。



敬具




posted by kansasyoshi at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月29日

Nのために

拝啓



「Nのために」
それぞれがそれぞれの「N」を思うことで、殺人事件は起こった。


「Nのために」と言えば、"Oh,Silly"というサビフレーズが蘇る。ドラマは、「お。徳井が出てるのか。見てみるか」ということで、ちょこちょこ見てました。が、内容は全く覚えていないので、読んでみました。



ある夫婦が殺された現場に、杉下希美、安藤望、西崎真人が居合わせる。彼らは、同じアパートに住み、それぞれにトラウマと屈折があり、夢がある。彼らは、ある計画に手を染める。全ては、Nの為に。



この小説では、ある夫婦の殺害現場に居合わせた杉下希美、安藤望、西崎真人、成瀬慎司の独白から始まります。彼らは、自らの経歴を話し、なぜ現場に居合わせたのか、お互いの関係性は何なのかを警察に話します。そして、西崎が犯人として逮捕される。しかし、事件は、終わっていなかった、10年後、全ての謎が明かされる。そんな展開です。


それぞれがトラウマと屈折を抱えていることが、ある夫婦(野口夫妻)と密接に関係している所がミソかなと思います。杉下は、婦人が贈った家具であり、安藤は、旦那の生き様(当初はそう感じていた)、西崎は、婦人の生き方に、共鳴、嫉妬、いやな記憶が紐づいてしまう。


紐づいたことで、自分達には夢があり、その夢の為に計画を練る。このトラウマと屈折が結びついてしまうところが、とても儚く哀しい。その計画さえも破綻してしまう。その結果、西崎が逮捕されてしまうのだが、そこには、それぞれにお互いの為に隠した思いがあり、それがほどけていく。恐らくそれをお互いには知りたくもないのだろうが、何か他に方法はなかったのかと読み手に思わせる。


例えば、個人的には、最後の杉下→安藤の為にという所が、しっくりきませんでした。あのタイミングでなぜ安藤の為にああいうこと行動に出たのだろうか。その点については、誰かの為というよりも、気まぐれや欺きに近い様に思えました。そのまま計画通りに進めても、きれいに完結したと思ったのですが。


純粋なミステリーというよりも、犯罪心理を紐解く小説です。



敬具




posted by kansasyoshi at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) |

2016年05月26日

カキフライが無いなら来なかった

拝啓



「カキフライが無いなら来なかった」
センチメンタル過剰で自意識異常な自由律俳句四百六十九句。


せきしろと又吉直樹による自由律俳句と散文集。せきしろは存じ上げないが、コラムニストで小説も書いているらしい。又吉は、言わずもがな。俳句の量は、かなりあるので、個人的に気に入ったものを、散文と一緒にちょこちょこ挙げてみたいと思います。



◆目を開けていても仕方ないので閉じる
◆憂鬱な夜を救ってくれる本といる
◆転んだ彼女を見て少し嫌いになる
◆自動改札機にも無視された
◆ホクロの位置は変わってなかった
◆一つ手前の駅で目が覚めた

◇気づくとたくさんいる
◇五十メートル六秒だったという無意味



目を開けていても仕方ないから目を閉じることは、しょっちゅうあるし、ちょっと集中できるので好きだ。憂鬱な夜を救ってくれる本なんてすごく洒落ている。ホクロの位置は変わってないって、きっと初恋の人でも思い浮かべてのことだろう。どれも情景がすぐ浮かぶ。


散文で秀逸だなーと思ったのは、「気づくとたくさんいる」です。


”すべての蝉が死骸となれば秋だ。そうはさせまいと、蝉の声がまた増え、強くなった”


ここがとても良い。自由な俳句ってどんなもん?とお思いの方、さらっと見てみてはどうでしょう。



敬具




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2016年05月25日

オールド・テロリスト

拝啓



「オールド・テロリスト」
奴らがやって来た。


キャッチーな表紙に騙されてはいけない。中身は、残酷な小説である。しかし、何処か残酷だから読む必要なし!とかそんな意見は野暮ではないかと思わせる。


主人公はある記者であり、敵役は老人です。只の老人ではなく満州を生きた老人や事業で成功した老人、一回事業を失敗した老人。彼らは、確固たる意志を持っているし、何不自由してる訳でもない(一回事業を失敗してる人も)。彼らは、やらなければならないという意志を以って悪役になるのです。それも単なる悪役ではなく、テロリストというクソ悪役。


もちろん、テロリストはクソ悪役であり、同調するべきとこはないです。しかし、この小説の老人達は、全てが悪だとは思わせない所があります。だからこそ、記者は、彼らを悪とは思いきれない部分があります。何を以って悪なのかを今一度問うとこですね。


主人公が、振り回される点もよいです。テロリストという振り切れた存在に相反する立場として、とても読者側に近い。感情移入しやすいとこがありますね。


悪だけど悪とは決め付けれずに最後を迎えることになりますが、最後の最後で次への伏線があるような。


長編ですが、なかなか良かったです。



敬具





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2016年05月24日

ワタクシハ

拝啓



「ワタクシハ」
人生賭けたい夢がある。


山木太郎は、何千のライバルに勝ち抜き、高校生でデビューしたギタリストである。未来は約束された。しかし、栄光を一時は味わったが、あっさりバンドは解散→燻り→大学3年の秋を迎え、貯金も減っていく。太郎の周囲は「シューカツ」に向けて慌しく動き出し、その一発逆転システムに魅せられ、就活戦線に身を投じる決意し、いざ就活へ!!これは、山木太郎の就活での戦いの日々の記録である。


太郎が就職活動に臨む。そんな訳ですから、本書には就職活動に臨む学生達が、随所に出てきます。


就職活動サイトの登録、エントリーシート、面接、履歴書の作成から、どうやったら選考を勝ち抜けるのか、企業が学生達には見せない選考基準を突破するにはどうするべきかまで。特に、就職活動時は、様々な情報に惑わされるものです。何が本当の情報か全く分からない世の中ですからね。


登場人物も就職活動の設定に生きたメンツが登場します。しかし、オモロー大阪というネットに就職活動をアップして騒ぐ系の人間は、本当にいそうですね。自分だけの話で他の人の時間を奪うなど言語道断で速攻落とすタイプなんですけど。こりゃ凄い。しかしながら、この人物の存在が、人間なんて色々だなーと思わせるアクセントにはなっています。嫌いだけど。にしても、認識が甘々な学生達がたくさん出て来る。これは、流石に現実離れしていると思うけれども、きっとあながち外れてはいないんだろうなとも思います。



「本場の大阪の笑い?いい加減、その本場の笑いとやらが、自分達の身内空間でしか受け入れられないという事実に気付くべきかと。関西の大阪の大学のサークルのくそ狭い身内空間の中でせいぜいたこ焼きでも食べながら互いに笑かしあっていればいい」



これが一番面白い。”の”を多用して話すところが秀逸ですね。


太郎の就職活動を軸に書いているのですが、彼が就職活動生兼ギタリストである為、芸能界の話が随所に出てきます。ここもポイントですね。


「今はどんなに歌が下手な人でもピッチ補正やエフェクター、コンプレッサーとかで歌声を加工すればすぐCD出せるよ」「モデルがCDデビューしたんだじゃなくて、この歌手ってモデルなんだって認識されたいの」「華やかな会社員であるアナウンサーにでもなり富と名声、会社勤めという安定した地位を得ればよいのに」


上記のような芸能界を皮肉っている様な会話がたくさん出てきます。これが結構面白い。羽田圭介(敬意を込めて敬称略)が、どんな表情でペンを取っていたのだろう。きっとにやにやしながら書いていたんだろうなw


太郎が、就職活動を通じてどう成長していくのか。そこには、就職活動(コネ入社が可能という設定も普通の就職小説では珍しいかなと)はもちろん、関わってくるんですが、一方でギタリストへの未練も絡んできます。


内定を取る為に就職活動をするのか、仕事をする為に内定を取るのか。太郎は、果たしてどんな決断を下すのだろうか。



敬具




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