2017年10月14日

熊と踊れ(上)

拝啓



「熊と踊れ(上)」
レオ、フェリックス、ヴィンセントの3兄弟。


これはスウェーデンを震撼させた実話をモデルにした小説です。その実話は、銀行強盗。犯人は、レオ、フェリックス、ヴィンセントの3兄弟+ヤスペル。連続する容赦ない襲撃に対峙するは、市警のブロンクス警部。随分骨太な仕上がりになっています。


印象としては、骨太に加え、暴力。レオ、フェリックス、ヴィンセントの生活の根底にあるのは、父から受ける暴力であり、母も粗暴な父に怯え、彼ら3人はどうしても暴力がしみ込んでいく。そんな生活からするとレオ達はトンデモナイ奴らになるだろう・・・と思いきや、成人したレオは自分で工務店を経営し、弟2人と幼なじみのヤスペルを使って仕事をすることになります。


この時点では真っ当に生きようとして、そこからきっと父に巻き込まれてしまうんだろう。たきつけられて銀行強盗をさせられるのだろう。と思っていたところそうではなかった。念密な銀行強盗計画を練っていた訳です。どうやって銀行を襲うかだけではなく、何を使って襲うかという点を熟考する辺り、凄まじい。まさか軍の武器庫から銃器を盗むなんて世界でも稀にみる武器を武装した強盗団だったんじゃなかろうか。レオ達は、暴力に育てられてしまい、暴力を使って銀行を襲うまでになってしまいました。


暴力という印象を強めているのは、ブロンクス警部もです。正義側のブロンクス警部が醸し出すことにより、警察vs銀行強盗をより骨太にしています。兄が子供達を暴力で支配しようとした父親を殺し、無期懲役囚として服役していることから、ブロンクス警部は非常に暴力を憎んでいます。憎んでいるからこそ、鼻が利き、強盗事件からレオ達の存在を嗅ぎ分ける。そして、兄弟であることまで突き止めるのです。


一方、その頃、レオ達の父親はというと・・・。やはり、この父親は、暴力しかないようだ。そして、意外と鋭い。ここからレオ達の計画が徐々に綻んでいく。兄弟だけだとまだしも、幼馴染はそうはいかない訳です。


緊迫した状況が続く中、レオは、最後の銀行強盗を計画し、それが終わったら足を洗おうとするが・・・。下巻に続く。なんかヤスペルがやらかしそうな気がするな。



敬具



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2017年10月08日

ホワイトラビット

拝啓



「ホワイトラビット」
予測不能の籠城ミステリー。


仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。逃亡不可能な状況下、新手の乱入者に思わぬ住人が加わり、犯人は予想外の要求を警察に繰り出す。そこから息子への、妻への、娘への愛が交錯して、展開は思わぬ方向に。鍵は、オリオン座とレ・ミゼラブル。肝は、正義。


あとがきによると、ああでもないこうでもないと考えている内に、ホステージ、ダイハード、交渉人が混ざり合ったもの、伊坂幸太郎なりのホステージになったとあります。


ホステージは、完全無欠のセキュリティ付館が舞台だったけど、立てこもり犯からすれば、セキュリティ=人質だったのだろうか。家族を人質にとられていたウィルスウィルス=家族を失った(過去から離れられない)夏之目って部分はあるのかな。など考えてみたものの、よくわかりません。


個人的には、レ・ミゼラブルを盛り込んだところに伊坂幸太郎なりの新しい試みを感じました。立てこもり犯、SIT、泥棒、人質(黒澤含む)、それぞれをスポットにした形式にあれやこれやを物申すスタイルを見て、新た世界観のある小説を書いてくれそうだなと。


また、黒澤がこのように主体的な行動(びしばしアグレッシブな)を取るのも珍しい。最も今回は、オリオン座と半々でしたが此処も新鮮。


なにより立てこもりの「実はこうなってました」の部分が見事でした。黒澤が大活躍なのですが、人質となる親子の背景や立てこもりに置ける役割もしっかりあり、オリオン座マニアのオリオのキャラクターもそういう意味があったのね、となるものでした。どうやって立てこもりから話終わらすのだろう。それこそダイハードみたくやるのかなと思いきや、こうなるとはしてやられました。


キャラクターに通じているのは、正義。真っ直ぐな正義ではなく、自分なりの正義。正しいと思うもの、という表現が近いですが、それが各々のキャラクターにあります。夏之目や黒澤の正しいと思うもの(黒澤のはいつもの気まぐれ)、オリオのオリオン座への愛など。


表の物語に実はこうなっていた裏の物語が上手く噛み合った小説です。新たな試みもあり、でもいつもの伊坂幸太郎らしさで最後には落とし込んでる一作。個人的には、ダイハードや交渉人みたいな伊坂幸太郎小説が読みたいですw



敬具



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素敵な日本人 東野圭吾短編集

拝啓



「素敵な日本人 東野圭吾短編集」
素敵という枕詞をどう捉えたらよいのだろう。


"寝る前に一編。夢中になってイッキ読み。寝不足必死のサスペンス。それも良いけど、読書は、もっと優雅なものでもあるのです"と言う言葉が、帯に並ぶ九編の短編集。


意外性に富んだ短編もあるが、素敵な、と題名に付けた意図が知りたいですね。ずうずうすぎて、素敵だと皮肉を込めたいものや、純粋に素敵だとなるもの、恋は盲目で大抵トラップだなと具体的な仕掛けに素敵だとなるもの。色々な意図を込めた素敵な短編があったかなと思いました。これが狙いなのか否か、単純に知りたい。


ずうずうすぎて素敵だ(呆れ)と思っちゃう「正月の決意」は、これぞあるあるを上手く表現した短編だと思いました。この人ら良くもまああそこ迄ずうずうすしくなれるなと呆れることは、一度は誰しもが思うこと。そんな腹立つことで、まさか命を救うことになるだなんて、まあこの人らは思ってないわけで。出だしの伏線の回収され方も好みでした。


「今夜は一人で雛祭り」は、父の娘への想い、母の父への想いが混ざり合った純な話。旦那の母から受ける嫌がらせに見える扱いに耐えた妻を想い、申し訳なく思う旦那。ただその思いは少し違っていた。妻の返しが見事な短編です。ただ、それと娘の未来は別だから、なんか不安なんだけどね。


さて「壊れた時計」は、どの意味で素敵な日本人なんだろうか。個人的には、時計を久しぶりに直せたと喜んだ店主の仕事心が素敵だと言うことだろうか。


落ち着いた読み応えある短編が揃ってます。




敬具



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2017年10月02日

世にも不思議で美しい「相対性理論」

拝啓



「世にも不思議で美しい「相対性理論」」
世界はこんなにも不思議で美しい。


相対性理論を非常に分かりやすく、読みやすく仕上げている書物です。文字も見やすいサイズで図を含めた説明があり、小中学生に科学に興味を持ってもらう教材としてはぴったしですね。


相対性理論って世界に深く関わっているわりには、学問としては専門性が高いイメージがあるかと思いますから、本書みたいな良質な作品は科学の素晴らしさがよく伝わっていいと思います。とはいえ、一般相対性理論になるとぐぐっと専門性が高くなるため、結局とっつきにくいじゃないか!ってなりそうですけど。


相対性理論でいうとブラックホールに並びやっぱりタイムトラベルです。タイムトラベルって実現できるのか?ていう話は、やっぱりワクワクがあります。現在から未来より、現在から過去にどうやって行くのか。実際かなり難しい訳ですが、もしかしたらいけるかも知れないっていう微かな望みにロマンがあったり。これが、解決できたらドラえもんの世界に近づけるんですけどねw


忘れてならないのが、しっかりとした説明が全体的になされているところ。科学に興味を持ってもらってそこから学問に興味を持ってもらうにはとても大事です。その点でも良本かなと思います。



敬具



最強の働き方;世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓

拝啓



「最強の働き方;世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓」
77の教訓。


本書の目的は「自分が自己実現できる分野を選んで、一流の仕事をするためにはどうすればいいか?。という問いに対し、読了後に具体的な行動指針を得られるようにする」こと。それを一流のビジネスマンから叱られ、諭され、指導されたキムさんが以下、5点で要約してます。


・基本
・自己管理
・心構え
・リーダーシップ
・自己実現


5つの観点で計77の教訓。それらは、若手、中堅、ベテランという年齢層や一般社員、管理職等の役職に問わず、非常に重要なことと思います。


これらをしっかり実践している人間ってマイノリティーなのは間違いないですね。竹中平蔵氏等、一部の政治家が事例として出てきますが、こういう一部を除いたその他政治家なんて77の教訓を実践できている人、かなり少ないと思います。居眠り、脱税、秘書への恫喝、炎上に忙しいですから。真面目な政治家は、ほんと可哀想。


77の教訓以外にもコラムで大事な事を言ってます。例えば、学歴やスキルではいい人に勝てない、ということ。いい人でなければ一流の心得を実践しても周りに人が集まって来ず、引き上げられる、又は支えてくれる機会は回って来ない。なるほど、確かにそうですね。まずは、人間的に魅力にならないと。


印象深いのは、#54 部下を引き締める。簡単にはごまかせないチェックをすることで部下を引き締めるのは、非常に大事です。私は、上司じゃないけどw。


部下側としては、しっかりしたチェックが無いと仕事の品質が上がらないし、いつまでも他の上司下や違う会社じゃ通用しない。自分は成長してるのか?と常に疑問を持ち続けることはかなり辛いと思います。また、1社員としては、ざるの上司の下で長年やってきた人と組んだ時、非常に大変になります。自分じゃなくその人の成果物までチェックしないといけないわけですから。つまり、簡単にはごまかせないぞ!と部下を引き締める上司がいないと困る訳です。部下が上司を転がすべきという本とかもありますが、それはきっとこういうことを含めて指南してるんですかね。


まずは、リスト化してチェックしていこうかなと思います。ハマった瞬間を生み出したいw



敬具



2017年10月01日

AX

拝啓



「AX」
兜登場。


グラスホッパー、マリアビートルに連なる連作集。蜜柑、檸檬、蝉、槿など、お馴染みの殺し屋の中でも一流の殺し屋兜は、家では妻に頭が上がらない男。一人息子の克巳もあきれるほどで、息子が生まれた頃から、殺し屋の世界から足を洗いたがっている。しかし、引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けている、それが、兜なのだ。


兜は、悪性手術をメインに扱うため、報酬は高いはずであり、更に平時は文具の営業マンだからどう考えって収入は半端ない筈なのにまだ金がいるなんてどんな生活水準なのか!というツッコミは置いとこう。たぶん、武器が馬鹿高いのだ。


兜は、家庭ではあくまで恐妻家を持つ男であり、こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。 家族にバレずに足を洗うために危ない仕事に励むそれが兜である。


兜が、ばったばったやっつける。いや、殺し屋だから悪いやつなんですけど、いい奴でもあったりして、そんな悪党90%が殺し屋をやっつけ、ちょっと良いこともしちゃう。そこにユーモラスがあったりウィットがあったりして。と、前2作に近い形になると思いきやそうでもないのです。


妻に頭はあがらないけど、決して卑屈にならず世の旦那を体現する兜の振る舞いや言動はウィットに飛んでいるし、魚肉ソーセージのくだりは、伊坂幸太郎らしい。知らない者同士をぐっと近づけるネタとして、しかも、互いは肩身の狭いところをユーモラスにするところなんかは良いのだが、Crayon、EXIT、FINEに行くにつれてテイストががらっと変わって行くのです。


こんな感じになるとは意外でした。展開含めて、ちょっと予想外。前2作とは少し角度を変えてきた感じです。兜の頼りないけど頼もしい、悪いやつなんだけど悪くない、といった裏表ないこのキャラクターは、とても良い。終わりもよい。


良いのだけど、これは、ちょっと寂しいです。



敬具



2017年08月14日

冷たい校舎の時は止まる(下)

拝啓



「冷たい校舎の時は止まる(下)」
遂に謎が解けました。


後半につれ、どんどん仲間が、マネキンに代わっていく。一人一人のエピソードが加わり、厚みが出てくる下巻です。そして、序盤でのあの謎が解き明かされる論理は、hostの心理を説明しているため、腹落ちしました。ただ、結局、自殺したクラスメイトからの紐づけとしたらかなり深月に負荷が大きかったかなと思いますね。


上巻である程度彼女の弱さが、描かれていたとはいえ、あそこまで背負わす意味はあったのかなと思いました。結局、自殺したクラスメイトと8名の関係性は希薄ですし、でも希薄だから結びつけをするとなると、深月とのバックボーンに、となるかんじでしょうか。


その謎の真相よりも鷹野と榊の関係性と菅原と榊のリンクの方が印象深いです。校舎に閉じ込められた背景よりもこっちでの伏線の回収の方が心地よかったです。特に菅原に関しては、そういう訳ですね。


ちなみに、キャラもそれぞれ立っているのも特徴ですね。鷹野と昭彦は、ちょっと被ってる感があるけど、繊細過ぎで誰にも優しい恐らくクラスNO.1美少女の深月(じゃないと高校生にもなって幼馴染と登校する、なんて描写をしないだろう)に、ヤンキー系だけど絶対美少女な梨香に、中性的なモテ女でばっちし描かれてる才女な景子、絶対可愛い系な清水に、ひ弱で心優しい(大学では2枚目風な書きぶり)充に、癖ありだけど一番の仲間思い菅原と、色々。こうみると、男子側の鷹野は、ちょっと弱いですね。


とありながらも、裕二が一番いいとこ取りなのは気のせいだろうか。主要キャラではないけど、序盤では鷹野の良き友人で、中盤以降は景子関連で存在感を発揮し、最後は最高にかっこよいアシスト。でで、校舎が動き出したら、諦めていた景子をものにしちゃって。どうなってんの。


と裕二に話が逸れましたが、人間の中に人間が閉じ込められたその起因には、腹落ちしない部分はあるけど、鷹野が榊に会いにいくとこで終えた分、ハッピーエンドで纏めた感じです。


しかし、ボリューム半端ないな。



敬具



posted by kansasyoshi at 17:46| Comment(0) | TrackBack(0) |

冷たい校舎の時は止まる(上)

拝啓



「冷たい校舎の時は止まる(上)」
クラス委員の8人が、高校にとじこめられた。


辻村深月デビュー作が、メフィスト賞だったのは、ちょっと意外でしたが、中身がオカルトホラー要素満載の密室、しかも、時が止まり、外には出れず、現実世界から隔離されたもう1つの世界、となると納得。


主人公の位置づけである深月は、ある雪の日、幼馴染の鷹野と何時も通りに仲良く青南学院高校に通学した。ところが、クラスの皆は、登校してこない。やがて、仲が良い景子、充、昭彦、あやめ、梨香、そして停学明けの菅原も登校してくるが、その他生徒に加え、教師も他クラスも登校してこない。痺れを切らした菅原が、学校から出ようとすると登校時には開いた扉が開かない。窓も割れない。電話も繋がらない。そして時計も動かない。8人は謎の空間に閉じ込められる。あやめが、人の中に人が閉じ込められる事例を持ち出し、やがてある仮説に辿り着く。


と、正にオカルト王道を行くストーリー。とはいえ、この物語の背景にあるのは、深月と彼女と仲の良かった角田春子との確執であり、いや、確執ではなく春子による一方的な攻撃と虐めでなんですけどね。


自分がいくら勉強しても成績は上がらないけど、自分より勉強してなく見え部活も継続する深月は、常に上位。だから気にくわないと攻撃を始める春子。進学校ならば当たり前の課題であり、深月が可哀想で仕方がなかったです。自分で自己消化しろと。虐められる側は、そんなはっきり主張できないですよ。虐める側が異常な訳でね。だから、深月のそばに鷹野や昭彦らがいて良かったなと。


上巻では、何故この空間か発生したのか。次第に皆に浮かぶ自殺したクラスメイトの漠然とした記憶に、マネキンに代わっていく仲間、とオカルト感満載です。誰もが、この空間のhostをつかめない中、迫る恐怖と戦う。すごい怖い訳では無いですが、徐々に伝わる仲間の絆の強さの方が響きました。冒頭に、


冷たい校舎の中で、彼らと一緒に過ごしたこと。今また、あなたが新たにページを開き、雪降る通学路を歩き出そうとしていること。それを思う時、前が向けます。これはわたしの名刺代わりの話になりました。初めまして、辻村深月です。


とあるように500ぺージでボリュームが多いが、意気込みは伝わりました。



敬具



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2017年07月17日

劇場

拝啓



「劇場」
一番 会いたい人に会いにいく。


演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った。


力のある作家とは、ぐぐっと熱くさせる物語、表現、描写、文章を書くことができる人だと個人的に思います。その点を鑑みたら、又吉は力のある作家です。


永田は、演劇を通じて世界に向かうと言えば聞こえが良いですが、実は自己世界を変えることができない、自己を客観的に見れない。良く言えば、自己に誇りがあると言えるが、決してそうではない。沙希の底知れぬ優しさに甘え続けた堕落の人間です。


甘え続けるダメな人間で終わっていたら、これは最後まで読めない。しかし、中盤から終盤にかかるにつれ、永田は、人間のずるさや弱さ、卑屈さを沙希にぶつけ始め、更に元劇団員に対しても、自己を正当化して全てをたたきつけながらも、この熱が凄い。永田が元劇団員にたたきつけるメールの会話なんて、人間のマイナスを全てさらけ出した感じになっており、一気に引き込まれるパワーがあります。これだけでも、凄いなと。


そして、沙希の優しすぎる人間性に甘え続ける永田からも、なんて人間は弱くちっちゃいんだろう。でも、人間てこんなもんよね。と思わせます。んで、最後の沙希の優しさが底をつき、弱さを出して、永田も弱さ丸出しで無理に笑いに持っていく。この締めが最後でした。この最後で全てチャラにはなることはないが、少しくらいは男としてしゃきっとしましたね、永田よ。ぐぐっと胸が熱くなりました。


火花よりもぐぐっと完成度上がってます。中盤から終盤までの展開は最高ですね。



敬具



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2017年07月09日

短編少年

拝啓



「短編少年」
少年をテーマにした短編9編を収録したアンソロジー。


伊坂幸太郎。あさのあつこ。佐川光晴。朝井リョウ。柳広司。奥田英朗。山崎ナオコーラ。小川糸。石田衣良。それぞれがそれぞれの視点で少年を切り取ってます。佐川光晴は、初めてであり、柳広司の少年ものは読んだことが無かったので、良かったなと。でも、もう少し明るいイメージを想定していたぶん、ちょっと違った感はあるかな。


大丸2️逆ソクラテス
個々のキャラクターから滲み出てる伊坂幸太郎風は変わらず。彼らは、大人と子供が共存する中で、どちらに傾く訳ではない絶妙なバランスの下、ふらふらと揺れている。また、伊坂幸太郎は、必ずと言って良いほどこれぞというキャラクターを用意しています。今回は、安斎。物語をリードし、最後はさっと悲しみと不思議さを残すやつ。


大丸2️下野原光一くんについて
バッテリーのあさのあつこ。小学校から高校にあがるまで煙突と呼ばれていた円藤が、密かに見つめてきた光一くん。少年がテーマに見えて、女子視点のラブストーリー。青春らしい甘酸っぱく最後はかなしいやつ。


大丸2️四本のラケット
佐川光晴という作家さんを初めて知りました。太二の中学テニス部では、昼休みにコートをぶらしがけする作業があり、それを伝統のグーパーじゃんけんの少ない方がやる。そんな作業でとある不穏な空気が(ま、普通に考えられる)。それを解決する太二に、父親の影響が出てほっこり。少年がテーマなアンソロジーなはずなんだけど、父親にぐっときました。


大丸2️正直なこども
城之内栄。小学二年生。ぽっちゃり。今苦手なマラソン中だ。山咲王次郎。今朝転校してきた小柄な男子。開口一番の挨拶でAKBに入ることが夢という、くねくね女子見たく振る舞う。マラソン一位。出だしからすると友情を育むのかなと思いきや、何か後味がぞっとしました。王次郎の母親もなんかいやな感じだし。本作の中で一番の味。


と前半3篇と一番印象に残ったコーラさんのを書いてみました。みな、少年らしい幼さ、未熟さ、子供らしさ、いじらしさ、ずるがしこさがあります。



敬具







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