2021年11月30日

城用語 隅石(すみいし)

今回は石垣の話でよく耳にする隅石(すみいし)という言葉についてです。簡単に言えば、
石垣の面と面が出合う角に据え付けられた石のことです。

〈山形城の石垣〉
Stone-wall-corner.JPG
見事な石垣です。石を組み上げて作られた壁が石垣、角に位置する石を隅石といいます。漢字の表記で『角石』となっている時も『すみいし』と読みます。

<山形城の説明板>
Guide-plate-Stone-wall.JPG
この説明板がきっかけで隅石をブログで紹介しようと思いました。冒頭を抜粋させて頂きます。

『隅石は石垣の角に使われる長方形の切石です。石垣は出隅を算木(隅石の交互積み)として高さに耐える構造とするほか、稜線部には「江戸切り」とよぶ先端を鋭利にみせる加工を施しています。』
とのこと。出隅(でずみ)は二つの面が出合う角の部分。算木(さんぎ)は縦横交互にという意味で受け止めて下さい。ここでは長方形の石を揃えて積むのではなく、長辺と短辺を交互に組み合わせて積むことが説明されています。稜線(りょうせん)は山でいうと尾根のことですので、この場合は石垣の角そのもののことですね。「江戸切り」はあまり耳にしない言葉ですが、石の面の仕上げ方の一種で、縁を平らにするのに対し、中央を少し高くして凹凸をつける手法のようです。これだと、石垣の角が尖っているように映りますね。

<算木積み>
corner-stone.JPG
算木積みは隅石の部分に使われる技法です。石が長辺と短辺を交互に組み合わせて積まれていることがわかりますね

説明文は山形城の一文字門の石垣に関する解説が続きますが、ここでは省略させて頂きます。文の後半に『隅石は石垣の要であり、石垣造りにおいて最も慎重さが必要だったと思われます』と記されています。まさにその通りで、隅石は石垣全体の強度がアップする重要ポイントとなります。

ちょっと当ブログで力学的な説明は難しいですが、熊本地震の直後、崩壊した熊本城の石垣で角に残った石が建物を支えていた光景は記憶に新しいですね。

石を積む技術は時代とともに進化していきましたので、訪れる城によって石垣の姿はまちまちです。算木積みが普及するのは関ヶ原の戦いより後と思われます。積み方だけでなく、石を切る技術の進化具合も影響しています。

<二の丸の石垣>
Yamagatajo-Ninomaru.JPG
こちらは山形城西門付近。隅石の稜線がシャープですね

ついでに

<隅石と隅脇石>すみわきいし
ishigaki-sumiishi.JPG
隅石の隣に寄り添うように供えられた石を隅脇石といいます。隅石とセットで、角を強固にする役割を担っています。

ということで

石垣は角が重要!
そこに積まれた石材を隅石という

というお話でした。

■撮影:山形城跡
 ( 霞城公園 )
[山形県山形市霞城町]

■参考及び出典
・現地説明板
・Wikipedia:2021/11/30



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城用語 雁木(がんぎ)

雁木(がんぎ)とは、塁の上へ昇り降りするための石段のことです。

<雁木>
Yamagata-Castle-5.JPG
山形城跡で撮影しました。近代城郭ではよく見かける光景ですね

まぁ石段で良いのですが、雁の群れが斜めに並んで飛んでいる時のようなギザギザの形からそのように呼ばれています。城に限らず、河原に降りる階段などにも使われる言葉です。

では城用語ではないではないか?

はい。城の専門用語ではありませんが、知っている方が城を楽しめるなぁと思ったものは、ちょっと解説を加えながらご紹介させて頂いております。

<説明板>
Gangi-Guide-Plate.JPG
冒頭の画像は山形城二ノ丸南大手門の雁木。土中に埋まっていましたが、発掘調査を経て復元されたようです。冒頭には『雁木とは、石垣や土塁に登るための石造りの階段です』としっかり記されています。これくらい丁寧に解説してくれると、お城の初心者でも城跡を楽しむことができますね。

ということで
雁木のご紹介でした。

Gangi.JPG

■撮影:山形城跡
 ( 霞城公園 )
[山形県山形市霞城町]

■参考及び出典
・現地説明板
・Wikipedia:2021/11/30



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2021年11月29日

城用語 石曳(いしひき)・修羅と呼ばれるソリ

今回は「石曳き」についてです。城用語に分類するのもちょっとヘンですが、石垣関連の話で時々耳にする言葉であることと、意味は何となく分かりながら、具体的な方法がイメージしにくいかと思い、あえて紹介させて頂きます。

では
いきなり説明板の絵図を

<石曳きの説明板>
Explanation-board-Ishihiki.JPG
こちらは山形城に展示される石曳きの絵図です。一目瞭然ですね。石垣に使用する石材を人の手でひいて運ぶ。だから石曳き石引き)。意味は言葉のままですね。問題は具体的な方法。絵図には、石材を木製のソリのような運搬具に乗せ、地面に敷いた丸太の上を滑らせている様子が描かれています。説明文によれば、このソリのような運搬具を「修羅」と呼ぶようです。

<展示されている修羅>
Exhibits-Ishihiki.JPG
修羅と呼ばれる運搬具です

運搬の方法は他にもあるかと思いますが、修羅による石曳きは結構メジャーな方法なのではないでしょうか。ちなみに、大きな石、つまり大石はタイシャクとも読めるため、これを帝釈天に例えて、対抗すべく修羅と名付けられたようです。

ということで
簡単ではありますが石曳きと修羅のご紹介でした。



<展示されている石材>
Stone-Exhibits.JPG
山形城への訪問は久しぶりです。以前はなかったと思いますが、かつての二ノ丸には石垣の石が展示され、石を割る方法やら矢穴・刻印といった城用語に関する説明がなされていました。

<石垣石の加工の説明>
Explanation-board- (1).JPG
こちらも絵図で分かりやすかったです。

<矢穴>やあな
2011米沢山形日帰り分 (61).JPG
矢穴とは、石を切り出す作業の都合で彫られた痕です。矢は弓矢の矢ではなくクサビのことです。

こういった工夫を凝らしてくれると、城の予備知識がなくても楽しむことができますね。人によっては、城に興味を持つきっかけになるかもしれません。いいですね。

今回はその一部を紹介させて頂きました。

■撮影:山形城跡
霞城公園二ノ丸広場
[山形県山形市霞城町]

■参考及び出典
・現地説明板
・Wikipedia:2021/11/29



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2021年06月26日

城用語 根古屋・根古谷・根小屋(ねごや・ねこや)

今回は根古屋という言葉についてです。
<根古屋>ねごや
Negoya-Kisaijo.JPG
こちらは埼玉県加須市根古屋のバス停です。根古屋が地名になっています。

<騎西城>きさいじょう
Kisai-Castle-tower.JPG
すぐそばは騎西城跡。根古屋はこの城と関わりのある呼び名です。

■城と関係ある言葉■
ひとくちに城といっても、時代によってそのあり方が変わります。中世においては、城は有事に立て籠る砦のような役割に特化していました。よって城主や家臣は城そのものには住まず、隣接する敷地に屋敷を構えました(全てではなくそういう事例が多いと受け止めて下さい)。こういった居住のための区域のことを根古屋といいます。字は異なりますが根小屋根古谷根小屋なども同じ意味です。『ねごや』あるいは『ねこや』と読みます。

■関東の山城に多い■
平地に築かれた騎西城を例に出しましたが、根古屋は主に山城の麓、特に関東の山城付近で多く見聞きする言葉です。

関東の山城の例をひとつご紹介します。

<小机城跡>こづくえじょう
shirononagori294 (20).JPG
こちらは神奈川県横浜市の山城跡です。

<入口の説明板>
shirononagori294 (7).JPG
画像中央下の現在位置のところ、山の麓に根古谷と表示されています。

山城は高低差の有利さを活かした城ですが、暮らすには不便です。戦で有利でも、毎日が不便ではたまりませんよね。よって屋敷などは麓に設け、有事に城に詰める方が合理的です。こういったエリアのことを根古屋(根古谷)と呼びます。

そのエリアの権力者でもある城主が暮らす場ともなれば、周りには家臣だけでなく、関りのある庶民も集まりますよね。根古屋はこういう人たちにより形成される生活の場ということになります。

ということで
根古屋のご紹介でした。根古屋という地名や呼び名を見かけたら、すぐそばに城があった可能性は大きいです。この言葉自体が『城のなごり』ということになりますね。

■画像撮影
騎西城(別名:根古屋城)
[埼玉県加須市根古屋]
小机城 (別名:根古屋城)
[横浜市港北区小机町]


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2020年11月09日

城用語 天端石・間石・飼石・裏込・根石

今回は石垣の石のそれぞれの呼び名についてです。

<浜松城の説明板>
shirononagori493d.JPG
出典は100%この説明板です!右側の『野面積み』については別途投稿させて頂きましたので、今回は左下の石の呼び名について。

<実物>
shirononagori494 (1).JPG
浜松城の石垣。石を加工しないで積み上げる野面積みです。適当に積んでるわけではなく、石それぞれに役割があります。

<説明板拡大>
shirononagori494 (2).JPG
分かりやすい!では説明板にそって微力ながら補足させて頂きます。

■天端石■てんばいし
絵図を見ての通りですね。石垣の最上部の石です。天面の端に置く石とも言えます。

■間 石■あいいし
石と石の隙間をうめるための小さな石のことです。

■積み石■
そのままですね

■飼 石■かいいし
積み石と積み石の間に入れ、安定させるための石です。ただ隙間をうめるというより、しかりと支える役割も担っています。介石と記される場合もあります。

■裏 込■うらこみ
石垣の裏側に積み込まれる小さな石を指します。裏込石、あるいは栗石(ぐりいし)とも呼ばれます。これは積み石を固定しながら、石垣内部の排水を促す効果があります。石垣には内部に水が溜まり過ぎると崩壊するリスクがあります。水はけをよくするための石垣の構造、そのための石とご理解下さい。

■根 石■ねいし
石垣の一番下の石です。最も下の段ですから、石垣の基礎となる部分です。地面を掘り下げて石が動かないように固定します。地盤が弱い場合(または単に強化したい場合)は、根石の更に下に木材(木杭や胴木)を用いて石を固定させたりします。

簡単ですが以上です。

私の説明は、城好きの間では一般的にそう言われているという程度に受け止めて下さい。よって、本格的な土木用語の定義とちょっと違っていたらお許し下さい。

shirononagori494 (3).JPG
お世話になりました

[出典元:浜松城説明板]


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2020年08月09日

城用語 堀障子(ほりしょうじ)

堀の底を細かい区画に仕切るために設ける障害物を堀障子といいます。障子にはもともと「隔てるもの」という意味があります。その「隔てるもの」を堀の底に設けるから堀障子。家庭にある障子のようだからというのは誤解です。

<発掘調査の写真>
shirononagori464a.jpg
[出典:岩槻城址公園説明板]

ここは岩槻城跡。発掘調査の結果、曲輪と曲輪の間の堀で、掘底に堀障子が確認されたようです。

<発掘調査の場所>
shirononagori464d.jpg
こちらで見つかったのですね。発掘調査が終わると埋め直してしまうので、残念ながら実物を見ることはできません。

<説明板>
shirononagori464b.jpg
この説明だと、堀障子は畝(うね)ともいうようですね。いずれにせよ、堀の内側の障害物を指して堀障子と呼びます。堀の内側に入った敵の動きを制限する。これが目的ですね。攻め手の動きを鈍くすることは守る側に有利。飛び道具の命中率も高くなります。

説明文に小田原城と並んで山中城も紹介されていますので、画像だけ貼っておきます。

<山中城跡>
shirononagori464v.jpeg
[静岡県三島市山中]
山中城跡の障子堀です。区画の仕切りの部分を堀障子といいます。調査後に埋めてしまわず、この状態で維持されている例は稀です。

ということで
堀障子のご紹介でした。実際には堀障子と障子堀は混合されて使われています。用語の説明をしておいてなんですが、あまり厳密に言い分けるより、この堀が果たす役割とか機能を感じとってもらう方が嬉しいです。

障子堀については、別途投稿していますので、良かったら覗いてみて下さい
→『記事へ進む

<岩槻城址公園>
shirononagori463c.jpg
説明板を引用させて頂きました城址公園です。お世話になりました。



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2020年07月11日

城用語 御前曲輪 御前とは(高天神城 御前曲輪)

要害の地に築かれた高天神城の本丸付近に『御前曲輪』と呼ばれる曲輪があります。この御前は、身分の高い武将に対する敬称ではなく、神仏を指すと受け止める方が適切のようです。曲輪とは城の区画のことですので、それに御前がつくということは、何らかの祭祀の場と思われます。

<御前曲輪近くの鳥居>
shirononagori443 (3).JPG
こちらは高天神城の御前曲輪に隣接する天神社です。江戸時代に別の曲輪へ移されましたが、もともとはここ鎮座していました。

<元天神社>もとてんじんしゃ
shirononagori443 (2).JPG
いわゆる天神さまですね。城の守護を担う神社として創建されたことに始まりますが、廃城後も地元の人の信仰を集め現在に至ります。

<高天神社>たかてんじんじゃ
shirononagori443 b.JPG
こちらは現在の天神社で、西の丸付近に鎮座しています。

ちなみに、城も地名も『高天神』と呼んでいますが、「高い所にある天神様」という意味ですので、こちらの神社は高という呼び名の天神社ということですね(ちょっと理屈っぽいですかね)。

<御前曲輪>ごぜんくるわ
shirononagori443 (4).JPG
高天神城の御前曲輪はこの観光用の城主パネルが目印です。これを見てしまうと、「ご老公の御前である!」ではないですが、高位の武士やその側室の『御前』を連想してしまいませんかね。そうではなく、当時の天神社のすぐ目の前の曲輪だから御前曲輪ということですね。

<縄張り図>
sn443c.JPG
高天神城の御前曲輪は、城の中核である本丸とほぼ一体となった区画です。本丸付近の祭祀の場だったと受け止めるのが自然ですね。

ということで
『御前』の意味についてでした。全国の城すべてに共通かどうかまで調べていませんが、高天神城を訪れる方が、そんな目で御前曲輪と天神社を眺めてくれると嬉しいです。


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2020年06月15日

城用語 井戸曲輪 (いどくるわ)

城には本丸や二の丸といった主要な曲輪以外に、大小様々な区画が設けられています。ネーミングも様々ですが、今回は比較的よく耳にする『井戸曲輪』について触れさせて頂きます。

■井戸曲輪■いどくるわ
名前の通りで、井戸が設けられている曲輪ですが、溜池が確保されているとか、要するに城内の貴重な水を確保している区画という大きな意味で受け止めてもらった方が良いかもしれません。
<高天神城の井戸曲輪>
sn438 (2).JPG

<高天神城の絵図>
sn437b (1).JPG
[現地撮影:高天神城想像図]
中央に大きく「井戸曲輪」と記載されています。単なる水汲みの場ではなく、一定の区画を設けて曲輪としています。

<井戸>
sn438 (3).JPG
『かな井戸』と呼ばれる井戸があります。現地説明文によれば、『かな』は鉄分が含まれていることと関係がありそうです
sn438 (1).JPG
内部が石積された深い井戸です

籠城の際などは、飲み水などを供給できる井戸曲輪は生き残りをかけた生命線となります。防衛上重要な役割を担う場所ということですね。


別の城の井戸曲輪を見てみますかね

<石垣山城の井戸曲輪>
shirononagoriI437c.jpg
ここは山中の湧水地。そしてその四面を石垣で囲むという大掛かりな曲輪です。

<井戸跡と説明板>
sn438f (1).jpg
もともと沢のようになっていた地形を利用して造られたようです。井戸は『淀君化粧井戸』とも呼ばれているそうです。秀吉が呼び寄せた淀君もここを利用したのでしょうね。

<石垣>
sn438ad.jpg
野面積みのこの石垣は当時のまま。多少は崩れているものの、何度も大きな地震を経験しながら形を保っていることが驚きです。

重要な曲輪。頑丈に造られていたわけですね。

以上です。水手曲輪(みずのてくるわ)という言葉を耳にすることもありますが、同じ意味です。
posted by Isuke at 04:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 城用語
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