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2017年05月27日

私見含みの!? 学説整理・国会議員の不逮捕特権その3



                憲法・その3・国会議員の不逮捕特権
                   (司法試験向き)




不逮捕特権については,議論自体は簡明なので勉強すれば記憶に残り易いと思います。


比較的時間の余裕のある方は,一度サラッと流しておくと良いかもしれません。

深堀の必要性はないと思います。

時間に余裕のない方は,このブログ記事は無視してください。

貴重な時間ですから。






1 不逮捕特権の目的



不逮捕特権の目的については,大きく分けると三つの説があります。



一つ目が,不逮捕特権の目的を議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにすることと考える見解(議員の身体的自由保障説)です(第T説)。(後掲 芦部憲法p307参照)



この説を平たく言えば,不当逮捕(政治的動機・政略的動機)から議員の身体の自由を保障する説と言ってもいいでしょう。[議員]に焦点を当てて考える説です。






二つ目が,不逮捕特権の目的を議院の審議権(正常な活動)を確保することとする見解(議院の活動確保説)です(第U説)。(後掲芦部憲法p307参照)



この「議院の活動確保説」は,以下のような理由をその立論の基礎とするものと思われます。


憲法第50条 後段は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定しています。


すなわち,「会期中逮捕されず」,かつ「会期中これ(議員)を釈放しなければならない」と規定しており,「会期中」に限って,この限りにおいて,憲法は議員の身柄の自由を認めているのです。


このような「会期中」という議員の身柄自由の期間限定文言からすれば,憲法は「会期中」を重視していると言えます。これは,「会期中」に議院の審議が行われるためです。ですから,議院での審議権確保に憲法は不逮捕特権保障目的の焦点を当てていると理解するのが合理的なのです。(後掲 憲法学読本p285参照)


すなわち,不逮捕特権の目的を議院の審議権確保に求めて初めて,かかる「会期中」という憲法第50条後段の身柄自由期間限定文言が効果的に生きてくるのです。この文言と不逮捕特権保障目的との間のよりよい整合性が保たれてくるのです。


このように会期中に限っての議員の身柄の自由を重く見れば,不逮捕特権保障目的を議院の審議権確保とする見解(議院の活動確保説)に落ち着くのが合理的なのです。







三つ目が,行政府による逮捕権濫用によって,議員としての職務活動が妨害されるのを防ぎ,もって議院の組織活動力の保全を図るところに,不逮捕特権の保障目的(趣旨)があるとする見解(折衷説)です。(第V説)(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p470-471参照)。





ごく大雑把にこの折衷説を言うと,不逮捕特権保障目的について,「議員の身体的自由保障説」と「議院の活動確保説」とを合体させた説と言えます。
「議員の身体的自由保障説」と「議院の活動確保説」の両説は,相互に排斥する関係には立たないことをその理由とします。


この折衷説は,「議員の身体的自由保障説」イコール手段と捉え,「議院の活動確保説」イコール目的と捉えるのです(後掲 憲法判例百選U第六版p373参照)。


この折衷説は,行政権・司法権の逮捕権濫用に対して議員の職務遂行の自由を保障し,もって議院の自主性(議院の審議権・正常な活動)を確保することに不逮捕特権の保障目的を求める見解(後掲 野中ほか憲法U103参照)と同じことを言っているものと思われます。







2 議院の逮捕許諾の判断基準
 
→(後掲 憲法判例百選U第六版p372・373,判例プラクティス憲法増補版p347参照)

不逮捕特権の保障目的を議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの説(議員の身体的自由保障説)によれば,逮捕許諾の判断基準を逮捕の適法性・正当性に求める見解(逮捕正当性基準説)を原則として採用することになります。

不逮捕特権の沿革からすると,この説が妥当となります(後掲 注解 法律学全集3 憲法Vp93参照)。




不逮捕特権の沿革 

→ イギリス議会制の歴史において,国王君主による議員の不当拘束が行われたことに対して,これを避ける趣旨で議員の不逮捕特権が認められるようになった。
(後掲 憲法学読本p284参照)


→ 議会制発達史の中で,君主権力の妨害から議員の職務遂行の自由を守る制度として,不逮捕特権は重要な役割を担ってきた。
(後掲 注解 法律学全集3 憲法Vp90参照)






  不逮捕特権の目的          逮捕許諾の判断基準
「議員の身体的自由保障説」  →   「逮捕正当性基準説」



→ 逮捕正当性基準説に対しては,議院に果たして本当に逮捕の適法性・正当性についての判断能力があるのか。逮捕の適法性・正当性の判断は,そもそも裁判官の判断によるべきではないのか,といった疑問があります。(逮捕の理由と必要性について,専門家ではない議院の判断によることができるのか,このような疑問が生じてきます。)

憲法第33条は,「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」と規定しているからです。






一方,不逮捕特権の目的を議院の審議権を確保することに求める見解(議院の活動確保説)によれば,逮捕許諾の判断基準を所属議員の逮捕が議院の審議の妨げになるかどうかについて求める見解(審議基準説)を原則として採用することとなります。

 

 不逮捕特権の目的         逮捕許諾の判断基準       
「議院の活動確保説」   →   「審議基準説」











3 期限付逮捕許諾の可否
 
(後掲 憲法判例百選U第六版p372・373,判例プラクティス憲法増補版p347参照)


不逮捕特権保障目的における「議員の身体的自由保障説」(第T説)からは,
「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定」という一連の見解の流れが考えられます。




→ 不逮捕特権保障目的の「議員の身体的自由保障説」からは,逮捕が適法・正当であり,逮捕権の濫用が認められない以上,審議における支障の有無にかかわらず,当該議員の逮捕を無条件に認めることができると考えられるからです。⇐ ( 但し,この論理の流れは必然の関係に立ちません。後掲 注解法律学全集3 憲法Vp93は,「不当に長くなることが想定される自由の拘束に対して,期限をつけることは考えられうる」としています。)


「議員の身体的自由保障説」の本質たる,排除すべき逮捕権濫用の事実が認められない以上,逮捕請求拒否の根拠が見出せないからです。







また,不逮捕特権保障目的における「議院の活動確保説」(第U説)からは,
「議院の活動確保説」→「審議基準説」→「期限付逮捕許諾の肯定」という見解の流れが考えられます。



→不逮捕特権保障の目的を議院の審議権確保に求める「議院の活動確保説」からは,逮捕請求された議員において,審議に加わることの重要性・必要性が認められるのであれば,逮捕の適法性・正当性の有無にかかわらず,議院は所属議員に対する逮捕請求を拒めると考えることができるからです。



⇐ 但し,この論理の流れは必然の関係に立ちません(後掲 注解法律学全集3 憲法Vp93 -94参照)。
この点,東京地裁昭和29年3月6日決定は,逮捕許諾の判断基準について,議院の審議権確保(所属議員の逮捕が議の職務遂行の妨げになるかどうか)を加味するニュアンスをみせながら,しかし,期限付逮捕許諾については,これを否定し,逮捕許諾は無条件でなければならないとしました(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p471参照)。











以上見てきたことから分かることは,
不逮捕特権の目的と逮捕許諾の判断基準,それに期限付逮捕許諾の可否との一連の関連性については,下記の関連図式のような一応の論理の流れを考えることができます(後掲,佐藤憲法第3版p203-203 日本国憲法論p471参照)。( 但し,あくまでも一応の論理の流れを考えることができるのであって,論理必然の関係に立ちません。)

<関連図式>
「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定
あるいは,
「議院の活動確保説」→「審議基準説」→「期限付逮捕許諾の肯定



しかし,かかる関連図式は必ずしも精確な対応関係に立つわけではありません(後掲 判例プラクティス憲法増補版p347参照)。


その例外があります
これを具体的に見ていきましょう。





関連図式の例外 その1

不逮捕特権の保障目的を「議員の身体的自由保障説」(第T説)とし,逮捕許諾の判断基準を「逮捕正当性基準説」に求める見解によっても,期限付逮捕許諾については,逮捕請求を全面的に拒否できる以上,期限付逮捕許諾を肯定することができるとする見解があります。


この見解は,全面的逮捕許諾ができる以上,部分的逮捕許諾もできると考えるのでしょう。
あるいは,全面的に逮捕許諾を拒める以上,部分的に逮捕請求を拒むこともできると考えるのでしょう。



ごく簡単に言ってしまえば,かかる期限付逮捕許諾の肯定説は,「大は小を兼ねる」的な論理を以て,期限付逮捕許諾を憲法上適法と認めるものと言えます。


しかし,この見解に対しては,二つの反論が考えられます。



まず,一つ目の反論です。

逮捕の目的を「議員の身体的自由保障説」(第T説)に求め,逮捕許諾の判断基準を「逮捕正当性基準説」に求める見解によれば,期限付逮捕許諾については,これを否定し,無条件の逮捕許諾を行うのが論理的であるとの反論です。


なぜなら,「議員の身体的自由保障説」(第T説)によれば,不逮捕特権の保障目的の本質は逮捕権の濫用排除にあるのですから,逮捕の適法性・正当性が認められる以上は,ここに逮捕権濫用の事実が看取できず,もはや逮捕許諾を拒む理由が見出せないからです。


すなわち,逮捕の適法性・正当性が認められ逮捕権濫用事実が看取できない以上,議院は部分的な逮捕許諾の拒否にも相当する期限付逮捕許諾を行う合理性・必要性がなく,したがって逮捕請求に対しては無条件・全面的に逮捕許諾を与えなければならないと考えられるからです。





次に,二つ目の反論です。

期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾と考えられます。
しかし,憲法第50条後段は「会期前に逮捕された議員は,その議院の要求があれば,会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。

したがって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。(後掲 憲法判例百選U第四版p373参照)


関連図式の例外 その2

逮捕許諾基準について,「審議基準説」を採用しながら,逮捕許諾を検察・捜査機関の逮捕権に対する「阻止する権限」と解して,期限付逮捕許諾を否定する見解があります。(後掲 憲法判例百選U第6版p373参照)







ここでもう一度繰り返します。


不逮捕特権の目的と逮捕許諾の判断基準,それに期限付逮捕許諾の可否とのこの一連の関連性については,下記の関連図式のような一応の論理の流れを考えることができます(後掲,佐藤先生憲法第3版p202・203参照 )。( 但し,あくまでも一応の論理の流れを考えることができるのであって,論理必然の関係に立ちません。)

<関連図式>
「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定
あるいは,
「議院の活動確保説」→「審議基準説」→「期限付逮捕許諾の肯定


しかし,かかる関連図式は必ずしも精確な対応関係に立つわけではありません(後掲 判例プラクティス憲法増補版p347参照)。
その例外があります


以上で,関連図式及びその例外に関する話を終わります。







それでは,不逮捕特権の保障目的を逮捕権濫用に対して,議員の職務遂行の自由を保障し,もって議院の組織活動力(審議権)の保全を図ることに不逮捕特権の保障目的を求める説(第V説・折衷説)に立脚した上で,期限付逮捕許諾を認めることができるでしょうか。



逮捕許諾の判断基準につき,議員の逮捕が議院の審議の妨げになるかどうかについて求める見解(審議基準説)をとって,これを可能とする見解があります。


この見解によれば,国政審議の重要性が認められる場合であれば,議院の審議の確保,議院の自主性に重点をおいて,期限付逮捕許諾を認めることができます。


→ どうして,逮捕の許諾基準を「審議基準説」にするかというと,逮捕の適法性・正当性についての議院の適正な調査能力・法技術的な判断能力に疑問があるからです(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p471参照)。
すなわち,議院の調査能力・判断能力を消極的に評価するからです。




<期限付逮捕許諾のケース> 

 不逮捕特権の目的          逮捕許諾の判断基準       
「議員の身体的自由保障説」
   プラス           →   「審議基準説」
「議院の活動確保説」   



なお,東京地裁昭和29年3月6日決定は,逮捕許諾の判断基準について,議院の審議権確保(所属議員の逮捕が議の職務遂行の妨げになるかどうか)を加味するニュアンスをみせながら,しかし,期限付逮捕許諾については,これを否定し,逮捕許諾は無条件でなければならないとしました(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p471参照)。







また,第V説・折衷説に立脚して,逮捕許諾の判断基準につき,「逮捕正当性基準説」及び「審議基準説」の両基準を採用した上,所属議員逮捕の適法性・正当性と所属議員出席の上での議院審議・運営の必要性とを比較衡量し,後者が前者に優位する場合,議院審議・運営の必要性の限度において所属議員逮捕の許諾に期限を付しうるとする見解もあります。(後掲 憲法判例百選U [第6版]p373参照 )

←しかし,これに対しては,逮捕の適法性・正当性についての議院の適正な調査能力・法技術的な判断能力につき疑問がまた生じてきます。(後掲 憲法判例百選U [第6版]p373参照 )







⇐いままで期限付逮捕許諾について議論してきましたが,条件付逮捕許諾についても,期限付逮捕許諾と同様の議論がほとんどそのまま当て嵌まると思います。











まとめ


国会議員の不逮捕特権については,次の関連図式(あくまでも一応の論理の流れを考えることができるのであって,論理必然の関係に立ちません。)を理解しておけば最低限の守りを保てるでしょう(択一問題)。



<関連図式>

不逮捕特権保障の目的   逮捕許諾の判断基準    期限付許諾の可否

「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定

「議院の活動確保説」    →「審議基準説」  →「期限付逮捕許諾の肯定






憲法第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。



不逮捕特権に関する文章を読む上で,注意を要することが一つあります。
『議員』と〖議院〗の言葉の使い分けです。

当該文章は,一体『議員』の主観的地位(議員の身体の自由イコール議員個々人の職務活動の自由)を問題としているのか,それとも〖議院〗の自主組織権(議院の審議権・組織活動力の保全)を問題としているのかです。
(憲法判例百選U [第6版] p373参照)

たった「員」と「院」の一文字の違いですけれども,この違いは大きいです。
文献を読むとき,注意された方がよいかと思います。







[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
憲法 [第3版]  佐藤幸治 著  青林書院
注解法律学全集3 憲法V 樋口陽一 佐藤幸治 中村睦男 浦部法穂 著 青林書院
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
憲法判例百選U [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
判例プラクティス憲法 増補版 憲法判例研究会 編 信山社
憲法T 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など



                                   
                               以    上

学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます。
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。






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posted by 略して鬼トラ at 08:00 | 司法試験

2017年05月21日

その2・国会議員の不逮捕特権・憲法択一


            
                  国会議員の不逮捕特権 その2





この択一問題は難しい問題です。知識的観点からいって難しい問題です。
間違っても全く気にする必要はありません。

ただ,一回知識として触れておくだけで,現場で肢が切れると思い作成した次第です。

肢のオについては,知らなくても全く問題はありません。記憶しておく必要はありません。
肢のア・イ・ウ・エについては,軽く触れておくと役に立つことがあると思います。

正解は,参考文献の下に記載してあります。






[ 問 題 ]



次の対話は,国会議員の不逮捕特権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,明らかに誤りと考えられるものはいくつあるか。


教授 :  憲法第五十条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,緊急集会中の参議院議員に対しても,この不逮捕特権が認められていますか。

学生 : ア 緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たしますので,その期間中の参議院議員に対しても不逮捕特権が妥当すべきものと解されます。



教授 :  憲法第五十条の「逮捕」とは,刑事訴訟法上の逮捕に限定されますか。

学生 : イ いいえ,限定されません。 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして,行政上の身体拘束も含めて,公権力による身体拘束一般を広く含むものと解されています。ただし,確定判決の自由刑執行のための収監は不逮捕特権に含まれません。



教授 :  憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に対して訴追されない特権を認めていますか。

学生 : ウ いいえ。憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に訴追されない特権を認めていません。



教授 :  不逮捕特権保障の目的を,議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの立場(「議員の身体的自由保障説」)から,期限付逮捕許諾を肯定するための理論構成として,どのようなものが考えられますか。

学生 : エ 逮捕許諾を全体として拒否できる以上,条件・期限を付けることも可能である,との理論構成が考えられます。



教授 :  この理論構成をとって,議員の期限付逮捕許諾を認める見解に対しては,どのような反論が考えられますか。

学生 : オ 期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾であると考えられます。
しかし,憲法第五十条後段は「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。
しがたって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。



1 0個    2 1個   3 2個   4 3個   5 4個  


[ 参 考 ]

憲法 第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。




















[ 解 説 ]



教授 :  憲法第五十条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,緊急集会中の参議院議員に対しても,この不逮捕特権が認められていますか。

学生 : ア 緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たしますので,その期間中の参議院議員に対しても不逮捕特権が妥当すべきものと解されます。[←正しい肢]



教授 :  憲法第五十条の「逮捕」とは,刑事訴訟法上の逮捕に限定されますか。

学生 : イ いいえ,限定されません。 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして,行政上の身体拘束も含めて,公権力による身体拘束一般を広く含むものと解されています。ただし,確定判決の自由刑執行のための収監は不逮捕特権に含まれません。[←正しい肢]


← 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして警察官職務執行法第3条の保護措置も含みます。




教授 :  憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に対して訴追されない特権を認めていますか。

学生 : ウ いいえ。憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に訴追されない特権を認めていません。[←正しい肢]


→ 憲法第五十条の特権は「不逮捕」特権であって,訴追されない特権ではない。






教授 :  不逮捕特権保障の目的を,議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの立場(「議員の身体的自由保障説」)から,期限付逮捕許諾を肯定するための理論構成として,どのようなものが考えられますか。

学生 : エ 逮捕許諾を全体として拒否できる以上,条件・期限を付けることも可能である,との理論構成が考えられます。[←正しい肢]



教授 :  この理論構成をとって,議員の期限付逮捕許諾を認める見解に対しては,どのような反論が考えられますか。

学生 : オ 期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾であると考えられます。
しかし,憲法第五十条後段は「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。
しがたって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。[←正しい肢]



[ 参 考 ]

憲法 第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。








[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂  岩波書店
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
憲法 [第3版]   佐藤幸治 著  青林書院
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著   有斐閣
憲法判例百選U [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
憲法T 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
など
[ 正解 (1) 誤りの肢は 0個 ] アイウエオのすべての肢が,正しい肢です。


                                  以   上



なお,以上の記述の正誤につきましては,ご自身の基本書,テキスト等により是非ご検証,ご確認ください。








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2017年05月17日

憲法択一 国会議員の不逮捕特権 その1



               国会議員の不逮捕特権 その1




国会議員の不逮捕特権についての択一問題を作成しました。
議院の不逮捕特権は,司法試験,司法書士試験における推論問題となり得る事項です。

不逮捕特権を認めた趣旨と期限付逮捕許諾との関連性が択一推論問題として出題される可能性があります。


この論点を一度理解していれば,見せかけだけ難しくしてある問題に対して,実は簡単な問題であるということが見抜けるでしょう。
憲法の問題には,見せかけだけ難しい出題形式を採る問題が結構多いのではないでしょうか。

チャレンジしてみてください。
解答は参考文献の下に記載してあります。





[ 問 題 ]


次の文章は,国会議員の不逮捕特権に関する教授と学生との対話である。(   )の中に後記の語句の中から適切な語句を選択して対話を完成させた場合,(A)から(G)に入る語句の組み合わせとして最も適切なものは,後記1から5までのうちのどれか。

なお,同一のアルファベットには同一の語句が入るものとする。




教授 : 憲法第五十条は,「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,この「法律の定める場合」の具体的内容を答えてください。



学生 : (   A  )と(   B  )(国会法第33条)です。



教授 : 憲法上,議員に不逮捕特権が認められる目的についてはどのように考えますか。


学生 : (   C  )から(   D  )ところに,不逮捕特権の目的があります。



教授 : 目的をそのように考える理由について答えてください。



学生 : 議会制発達史の中で,立憲君主制下の君主政府による妨害から議員の職務遂行の自由を守る制度として重要な役割を果たしてきたという不逮捕特権の沿革があります。
また,国会法第33条が(   A  )について,院の許諾なくして逮捕を認めているのは,(  E  )の場合には犯罪の嫌疑が明白で(   C  )のおそれがないからです。これは,不逮捕特権の制度の基本的趣旨をよく示している実例と考えられます。
したがって,(   C  )から(   D  )ところに憲法上の不逮捕特権の目的があると考えます。



教授 : あなたの立場から,議員の期限付逮捕許諾を認める理論構成は可能ですか。


学生 : はい,可能です。



教授 : どのような理論構成が考えられますか。


学生 : 議院は逮捕許諾を(   F  )に拒むことができる以上,許諾につき期限や条件をつけることも可能と考えられます。



教授 : あなたは,議員の期限付逮捕許諾を認めることに賛成ですか。


学生 : いいえ,反対です。



教授 : それはなぜですか。


学生 : もともとの不逮捕特権の目的が(   C  )の排除にある以上,逮捕請求に対して(   G  )が認められるのであれば,無条件に逮捕の許諾を与えなければならない,とこのように私は考えるからです。





[ 語句群 ]

ア 緊急逮捕       イ 現行犯    ウ 逮捕状による逮捕

エ 逮捕権の濫用     オ 適法性・正当性   

カ 重要案件の審議・議決における議員の出席の必要性

キ 議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにする(議員の身体的自由保障説)

ク 議院の審議権を確保する(議院の活動確保説) 

ケ 部分的       コ 全面的     

サ 院外における現行犯罪の場合      シ その院の許諾がある場合

ス 逮捕許諾権の濫用




1 A  サ        B  シ        C  ス

2 B  ス        C  エ        D  ク

3 C  エ        E  ア        F  コ

4 D  キ        E  イ        G  オ

5 E  ウ        F  ケ        G  カ






[ 参 考 ]


(逮捕状による逮捕)
第百九十九条 第一項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。


(緊急逮捕)
第二百十条 第一項  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

(現行犯逮捕) 
第二百十三条  現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。


















[ 解 説 ]



教授 : 憲法第五十条は,「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,この「法律の定める場合」の具体的内容を答えてください。



学生 : ( A 院外における現行犯罪の場合)と( B その院の許諾がある場合)(国会法第33条)です。



教授 : 憲法上,議員に不逮捕特権が認められる目的についてはどのように考えますか。


学生 : ( C 逮捕権の濫用)から( D 議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにする(議員の身体的自由保障説))ところに,不逮捕特権の目的があります。



教授 : 目的をそのように考える理由について答えてください。


学生 : 議会制発達史の中で,立憲君主制下の君主政府による妨害から議員の職務遂行の自由を守る制度として重要な役割を果たしてきたという不逮捕特権の沿革があります。
また,国会法第33条が( A 院外における現行犯罪の場合)について,院の許諾なくして逮捕を認めているのは,( E 現行犯)の場合には犯罪の嫌疑が明白で( C 逮捕権の濫用)のおそれがないからです。これは,不逮捕特権の制度の基本的趣旨をよく示している実例と考えられます。
したがって,( C 逮捕権の濫用)から( D 議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにする(議員の身体的自由保障説))ところに憲法上の不逮捕特権の目的があると考えます。



教授 : あなたの立場から,議員の期限付逮捕許諾を認める理論構成は可能ですか。


学生 : はい,可能です。



教授 : どのような理論構成が考えられますか。


学生 : 議院は逮捕許諾を( F 全面的)に拒むことができる以上,許諾につき期限や条件をつけることも可能と考えられます。



教授 : あなたは,議員の期限付逮捕許諾を認めることに賛成ですか。


学生 : いいえ,反対です。



教授 : それはなぜですか。


学生 : もともとの不逮捕特権の目的が( C逮捕権の濫用)の排除にある以上,逮捕請求に対して( G 適法性・正当性)が認められるのであれば,無条件に逮捕の許諾を与えなければならない,とこのように私は考えるからです。





国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。








[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
憲法 U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
注解法律学全集3 憲法V 樋口陽一 佐藤幸治 中村睦男 浦部法穂 著  青林書院 
憲法判例百選 U [第4版]  芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選 U [第6版]  長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
など

[正解] 4 D  キ        E  イ        G  オ




                                以   上



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2017年05月13日

論拠まとめ・憲法択一 内閣の法律案提出権


           憲法 択一 内閣の法律案提出権  論拠のまとめ




内閣による法律案提出権の論点について,肯定説,否定説のそれぞれの論拠をまとめてみました。
先の択一問題の肢で触れられていない論拠も記載しています。






内閣の法律案提出権における「肯定説」の論拠のまとめ




1 憲法第72条に規定されている「議案」の中に法律案も含まれるから,内閣には法律案の提出権が認められる。

→ 憲法第七十二条  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。




2 内閣による法律案の提出は,立法の契機を与えるところの立法の準備行為であって,立法そのものではない。



3 内閣による法律案の提出は,国会の議決権を拘束するものではなく立法作用の一部分とみることができない



4 国会は法律案を審議し,これを自由に修正し,否決,廃案にすることもできるのであるから,国会をもって唯一の立法機関(憲法第41条)とすることに反しない。



5 内閣の法律案提出権を否定してみたところで,内閣総理大臣過半数の国務大臣は,議員の資格で法律案を発議できるのであるから実質的な結論は変わらないといえる。



6 議院内閣制は立法に対する国会と内閣の協働関係を予定しているのだから,内閣の法律案提出権が認められる。



7 憲法第73条第1号は,「国務を総理すること」と規定しており,内閣に国政のあり方に対する全般的な配慮が求められていることからすれば,内閣による法律案提出が認められる。

→ 憲法第七十三条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二  外交関係を処理すること。
三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四  法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五  予算を作成して国会に提出すること。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。






この他に肯定説の論拠としては,次の根拠を挙げることができます。



8  現代国家においては,政策立法の必要性が高まっている。

→ 複雑に変化する社会経済情勢を的確に把握し,これに迅速に対応することのできる内閣(行政)による法律案の提出の必要性が高まっている。

→ 積極国家あるいは行政国家現象の下では,内閣による政策を具体化する立法の必要性が高まっているということもできましょう。
このような状況下において,いかなる立法措置をとるべきかについては,内閣がこれをよく把握している,このように肯定説は言いたいのでしょう



9 国会の慣行的受容によって,内閣の法律案提出権は既に確立していると言える。

→ これに対しては,硬性憲法の下では憲法に反する国会の慣行的受容を認めることはできないとの批判があります。
( 過去の司法試験問題の択一の肢には,「硬性憲法」という用語が使われたことがあります。)



なお,内閣の法律案提出権については,内閣法第5条がこれを認めています。

内閣法 第五条  内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。










内閣の法律案提出権における「否定説」の論拠のまとめ




1 憲法第72条の議案には,本来内閣の権限に属する作用が含まれるのであるが,法律制定作用たる法律案提出権自体は,内閣の本来的権限にそもそも属さない作用である。
したがって,議案の中に法律案を含めることはできない。



2 法律案の提出は,法律制定作用の重要な行為であるから,これを内閣が権限行使するとなれば,国会をもって唯一の立法機関(憲法第41条)とすることに反する
これは「国会単独立法の原則」に反することになる。


→ 国会中心立法の原則ではありません。ひっかけ肢に注意してください。

内閣の法律案提出権を立法作用の一部分とみなすことがでるか否かが,肯定説と否定説の一つの争点となっていますので,「国会単独立法の原則」に反するが,用語としては正しいです。



3 内閣総理大臣や国務大臣が,議員の資格で法律案を発議することに対しては,国会法第56条第1項の制限がある。


国会法第56条第1項は,「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」と規定しています。

→ つまり,論理上は内閣総理大臣や国務大臣が,議員の資格で法律案を発議できないことも想定できます。











[参考文献]
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
憲法 U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
など







                                 以   上




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2017年05月08日

憲法 択一 内閣の法律案提出権



                内 閣 の 法 律 案 提 出 権



内閣の法律案提出権に関する択一の推論問題を作成しました。
第一印象は,難しそうに見える問題です。

しかし,肢の文章の言葉の端々を注意して読むと,案外簡単に正解に達することができます。

これは,一瞬捨て問と思わせる問題を故意に作問してみた結果です。
内閣の法律案提出権に関する論点は,司法試験,司法書士試験,行政書士試験のいずれの試験においても,その試験範囲に含まれる論点問題であろうと思います。

チャレンジしてみてください。

解答は参考文献の下に記載してあります。







[ 問 題 ]

次の学生甲ないし己の会話における[A]ないし[V]に,後記アないしニの条項,条文,語句から適切なものを選んで文章を完成させると,内閣の法律案提出権に関する正しい会話の内容となる。

学生甲ないし己は,内閣の法律案提出権を肯定する説,またはこれを否定する説のいずれかの説に立つものである。

内閣の法律案提出権を肯定する説に立つ学生と,これを否定する説に立つ学生の組み合わせとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

なお,同一のアルファベットには,同一の条項,条文,語句が入るものとする。





学生甲:  [ A ]に規定されている[ B ]の中に法律案も含まれるから,内閣には法律案の提出権が[ C ]と思う。



学生乙: [ A ]の[ B ]には,本来内閣の権限に属する作用が含まれるのであるが,法律制定作用たる法律案提出権自体は,内閣の本来的権限にそもそも属さない作用である。
したがって,[ B ]の中に法律案を含めることは[ D ]と思う。



学生丙: 法律案の提出は,法律制定作用の重要な行為であるから,これを内閣が権限行使するとなれば,国会をもって唯一の[ E ](憲法第41条)とすることに[ F ]ことになる。

これは[ G ]の原則に[ F ]ことになると思う。



学生丁: しかし,法律案の提出は,立法の契機を与えるところの[ H ]であって,立法そのものではないともいえるよ。



また,内閣による法律案の提出は,国会の議決権を拘束するものではなく立法作用の一部分とみることができない。
したがって,内閣の法律案提出権を「 I 」したところで,国会をもって唯一の[ E ](憲法第41条)とすることに[ J ]と思う。




すなわち,国会は法律案を[ K ]し,これを自由に[ L ]し,[ M ]することもできるのであるから,国会をもって唯一の[ E ](憲法第41条)とすることに[ J ]と思う。




さらに言えば,内閣の法律案提出権を[ N ]してみたところで,[ O ]や過半数の[ P ]は[ Q ]で,法律案を発議できるのであるから実質的な結論は変わらない。



学生戊: [ O ]や[ P ]が[ Q ]で法律案を発議することに対しては,[ R ]の制限がある。


[ R ]は[ S ]と規定している。


つまり,[ O ]や[ P ] は,[ Q ]で法律案を発議できないこともある。



学生己:  そうは言っても,[ T ]は立法に対する国会と内閣の協働関係を予定しているのだから,内閣の法律案提出権を[ I ]すべきだよ。



また,[ U ]は[ V ]と規定しており,内閣に国政のあり方に対する全般的な配慮が求められていることからすれば,内閣に法律案提出権が[ C ]べきだと思う。







[ 条項,条文,語句群 ]

ア 憲法第72条        イ 憲法第73条第1号    

ウ 国会法第56条第1項

エ 議案    オ 審議    カ 修正    キ 否決

ク 国会単独立法        ケ 立法機関

コ 「国務を総理すること」

サ 内閣総理大臣         シ 国務大臣

ス 「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」

セ 立法の準備行為        ソ 議院内閣制

タ 議院の資格       

チ 認められる    ツ 認められない

テ 反しない     ト 反する

ナ 肯定       ニ 否定




1 肯定説(甲,丙,己),否定説(乙,丁,戊)

2 肯定説(乙,丁,己),否定説(甲,丙,戊)

3 肯定説(甲,丁,己),否定説(乙,丙,戊)

4 肯定説(乙,丙,戊),否定説(甲,丁,己)

5 肯定説(甲,丁,戊),否定説(乙,丙,己)






[ 参 照 条 文 ]


憲法第72条  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。


憲法第73条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二  外交関係を処理すること。
三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四  法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五  予算を作成して国会に提出すること。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。



国会法第56条  議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。
2  議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、発議者又は提出者の要求に基き、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。
3  委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて七日以内に議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
4  前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる。
5  前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。










[ 解 説 (完成した会話)]



学生甲: [A憲法第72条]に規定されている[B議案]の中に法律案も含まれるから,内閣には法律案の提出権が[C認められる]と思う。



学生乙: [A憲法第72条]の[B議案]には,本来内閣の権限に属する作用が含まれるのであるが,法律制定作用たる法律案提出権自体は,内閣の本来的権限にそもそも属さない作用である。
したがって,[B議案]の中に法律案を含めることは[D認められない]と思う。



学生丙: 法律案の提出は,法律制定作用の重要な行為であるから,これを内閣が権限行使するとなれば,国会をもって唯一の[E立法機関](憲法第41条)とすることに[F反する]ことになる。

これは[G国会単独立法]の原則に[F反する]ことになると思う。



学生丁: しかし,法律案の提出は,立法の契機を与えるところの[H立法の準備行為]であって,立法そのものではないともいえるよ。



また,内閣による法律案の提出は,国会の議決権を拘束するものではなく立法作用の一部分とみることができない。
したがって,内閣の法律案提出権を「I肯定」したところで,国会をもって唯一の[E立法機関](憲法第41条)とすることに[J反しない]と思う。




すなわち,国会は法律案を[K審議]し,これを自由に[L修正]し,[M否決]することもできるのであるから,国会をもって唯一の[E立法機関](憲法第41条)とすることに[J反しない]と思う。




さらに言えば,内閣の法律案提出権を[N否定]してみたところで,[O内閣総理大臣]や過半数の[P国務大臣]は[Q議員の資格]で,法律案を発議できるのであるから実質的な結論は変わらない。



学生戊: [O内閣総理大臣]や[P国務大臣]が[Q議員の資格]で法律案を発議することに対しては,[R国会法第56条第1項]の制限がある。


[R国会法第56条第1項]は[S「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」]と規定している。


つまり,[O内閣総理大臣]や[P国務大臣] は,[Q議員の資格]で法律案を発議できないこともある。



学生己: そうは言っても,[T議院内閣制]は立法に対する国会と内閣の協働関係を予定しているのだから,内閣の法律案提出権を[I肯定]すべきだよ。



また,[U憲法第73条第1号]は[V「国務を総理すること」]と規定しており,内閣に国政のあり方に対する全般的な配慮が求められていることからすれば,内閣に法律案提出権が[C認められる]べきだと思う。







[参考文献]
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
憲法 U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣 
など


[正解] 3 肯定説(甲,丁,己),否定説(乙,丙,戊)



                              以   上




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2017年05月06日

憲法 択一 総議員・出席議員 定足数・表決数



条文知識をただ記憶しているだけで,簡単に解けしまう問題が憲法にはあります。



これは難しいと思われる肢がある問題であっても,条文知識で簡単に解ける肢を使った消去法と肢の組み合わせによって,正解に達することのできる問題があります。

ですから憲法の条文知識はしっかりと固めておいたほうがいいでしょう


以下に,分数に係る条文をまとめます。

ブランクの分数を思い出してみてください。また,出席議員か総議員かも思い出してみください。




〔臨時会の召集〕
第53条内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の  議員の    以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。


〔資格争訟裁判〕
第55条両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、  議員の    以上の多数による議決を必要とする。


〔議事の定足数,過半数議決〕
第56条両議院は、各々その  議員の    以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、  議員の   でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

〔会議の公開原則,秘密会,会議録〕
第57条両議院の会議は、公開とする。但し、  議員の    以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3   議員の    以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない

〔役員の選任,議院の自律権,議院規則制定権〕
第58条両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、  議員の    以上の多数による議決を必要とする。

〔法律案議決,衆議院解散〕
第59条法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で  議員の    以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

〔憲法改正の発議、国民投票,公布〕
第96条この憲法の改正は、各議院の  議員の    以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その   の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。



以下にブランクを埋めた後の条文を掲記します。




〔臨時会〕
第53条内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。


〔資格争訟裁判〕
第55条両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。


〔議事の定足数,過半数議決〕
第56条両議院は、各々その議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

〔会議の公開原則,秘密会,会議録〕
第57条両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない

〔役員の選任,議院の自律権,議院規則制定権〕
第58条両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

〔法律案議決,衆議院解散〕
第59条法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

〔憲法改正の発議、国民投票,公布〕
第96条この憲法の改正は、各議院の議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。




分数については,2/3 ,1/3 ,1/4 ,1/5は記憶します。
「総議員」については,議事・議決の定足数,憲法改正の国会発議,臨時会召集の中で登場します。




                                    以    上


以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。






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2017年05月03日

司法書士試験 憲法 法令違憲の判決の効力とは・・?

              
              法令違憲の判決の効力について



法令違憲の判決の効力について,推論問題を作成しました。頭の整理のため,ひねりは加えておりません。ストレートに解答を求める問題です。よろしかったらお解きになってください。



[ 問 題 ]

次の対話は,最高裁判所の法令違憲判決の効力に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する学生の解答として誤っている記述は,後記アからコまでのうちどれか。



教授 : 最高裁判所の法令違憲判決の効力については,その法律が当該事件についてのみ適用が排除され,依然として法律の効力を有するとする説(個別的効力説)と,当該事件だけでなくそれを超えて一般的・客観的にその法律を無効とし効力を失わせるとする説(一般的効力説)とがあります。
 それでは一般的効力説についての根拠を説明してください。




学生 : ア 憲法第98条第2項は「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。」と規定しています。





同条項で「この憲法・・の条規に反する法律・・・は,その効力を有しない」と規定されているため,法律違憲判決は,当該事件だけでなくそれを超えて一般的・客観的にその法律を無効にする効力を有すると一般的効力説は説明します。



教授 : 一般的効力説に対する批判について述べてください。




学生 : イ この説に対しては,法律の一般的性格に反して予見可能性及び法的安定性を害し,また不公平を生じさせ法の下の平等(憲法第14条,平等原則)に反するとの批判があります。




ウ また,法令違憲の判決の効力が当該事件限りにとどまるのではなく,一般的に法律を無効にする効力があるとすると,裁判官はその影響力の大きさを慮って,違憲判決を差し控えることになり,結果として裁判所の違憲審査権が有効に機能しなくなるとの批判があります。



教授 : 個別的効力説の根拠を述べてください。




学生 : エ 個別的効力説は,付随的違憲審査制のもとでは当該事件の解決に必要な限りでのみ憲法判断を行うのであるから,その法律違憲の判決の効力も,当該事件限りものであり該法律を法令集から除去するまでの一般的効力までは認められないと自説を根拠づけます。



教授 : 個別的効力説に対する批判を述べてください。




学生 : オ この説に対しては,違憲審査権の発動の契機・形式と,その結果である判決の効力が論理必然的に結びつくものではないとの批判があります。



 
カ また,この説に対しては,一般的遡及的無効を認めれば,かえって法的安定性を害するとの批判があります。



 
キ さらに,この説に対しては,一種の消極的立法作用があり,国会の立法権(憲法第41条)を侵害するとの批判があります。



教授 : 最高裁判所の法律違憲判決が確定した後に,該法律の国会での廃止手続きが行われていない段階で,合憲に判例変更された場合に,該法律がそのままの状態で執行可能な状態に再び生き返ることを無理なく説明できる説はいずれの説ですか。


学生 : ク 個別的効力説です。



教授 : 内閣が,違憲とされた法律を誠実に執行しなければならない(憲法第73条第1号)とするのは不合理であると批判される説はいずれの説ですか。


学生: ケ 個別的効力説です。




教授 :  自説の問題点に対しては,違憲と判断された該法律規定の国会での改廃措置を行い,また内閣での該法律の執行を差し控え,さらには検察での該法律による起訴を行わないことが礼譲として期待されるから不都合はないと反論する説はいずれの説ですか。



学生 : コ 一般的効力説です。










   ここまでが問題,ここから先に解答   (正解は参考文献の下に記載しています。)




























[ 解 答 ]

以下に,教授の質問に対する学生の解答を正しい記述に修正した後の正解の会話を記載します。



(正解の会話)

教授 : 最高裁判所の法令違憲判決の効力については,その法律が当該事件についてのみ適用が排除され,依然として法律の効力を有するとする説(個別的効力説)と,当該事件だけでなくそれを超えて一般的・客観的にその法律を無効としその効力を失わせるとする説(一般的効力説)とがあります。
 それでは一般的効力説についての根拠を説明してください。




学生 : 憲法第98条第2項は「この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。」と規定しています。




同条項で「この憲法・・の条規に反する法律・・・は,その効力を有しない」と規定されているため,法律違憲判決は,当該事件だけでなくそれを超えて一般的・客観的にその法律を無効にする効力を有すると一般的効力説は説明します




教授 : 一般的効力説に対する批判について述べてください。


学生 : この説に対しては,一種の消極的立法作用があり,国会の立法権(憲法第41条)を侵害するとの批判があります。


また,法律違憲の判決の効力が当該事件限りにとどまるのではなく,一般的に法律を無効にする効力があるとすると,裁判官はその影響力の大きさを慮って,違憲判決を差し控えることになり,結果として裁判所の違憲審査権が有効に機能しなくなるとの批判があります。




さらに,この説に対しては,一般的遡及的無効を認めれば,かえって法的安定性を害するとの批判があります。




教授 : 個別的効力説の根拠を述べてください。




学生 : 個別的効力説は,付随的違憲審査制のもとでは当該事件の解決に必要な限りでのみ憲法判断を行うのであるから,その法律違憲の判決の効力も,当該事件限りものであり該法律を法令集から除去するまでの一般的効力までは認められないと自説を根拠づけます。



教授 : 個別的効力説に対する批判を述べてください。



学生 : この説に対しては,法律の一般的性格に反して予見可能性及び法的安定性を害し,また不公平を生じさせ法の下の平等(憲法第14条,平等原則)に反するとの批判があります。




また,この説に対しては,違憲審査権の発動の契機・形式と,その結果である判決の効力が論理必然的に結びつくものではないとの批判があります。

 


教授 : 最高裁判所の法律違憲判決が確定した後に,該法律の国会での廃止手続きが行われていない段階で,法律が合憲に判例変更された場合に,該法律がそのままの状態で執行可能な状態に再び生き返ることを無理なく説明できる説は,いずれの説ですか。



学生 :  個別的効力説です。



教授 : 内閣が,違憲とされた法律を誠実に執行しなければならない(憲法第73条第1号)とするのは不合理であると批判される説はいずれの説ですか。



学生:  個別的効力説です。



教授 :  自説の問題点に対して,違憲と判断された該法律規定の国会での改廃措置を行い,また内閣での該法律の執行を差し控え,さらに検察での該法律による起訴を行わないことが礼譲として期待されるから不都合はないと反論する説はいずれの説ですか。



学生 :  個別的効力説です。



                                      以   上






そのほか一般的効力説に対しては,適用違憲的手法をとる判決の場合に,これをどのように扱うのか不明であるとか,違憲審査制は下級裁判所においても認められるところ,下級裁判所の法令違憲判決に対しては無効の一般的効力を貫徹できないなど,こういった批判があります。


また,法令違憲判決の効力に関しては,法律の定めるところによるとする法律委任説があります。



しかし,この法律委任説に対しては,法令違憲判決の効力に関して規定する法律が不十分,不存在の場合に,一体これにどのように対処したらよいのか再び問題となるといった批判があります。






[参考文献]
憲 法 U 第5版 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利 著 有斐閣
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
など

[問題の解答 学生の誤りの解答肢は イ,カ,キ,コ です。]





以上の記述の正誤につきましては,ご自身の基本書,テキスト等により是非ご検証,ご確認ください。      

                                  










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