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司法試験と司法書士試験の合格者です。(行政書士試験及びその他の資格試験にも合格しています。)本サイトは正確な記載を目指しますが,これを保障するものではありません。従いまして,ブログ内容等につきましては,誤記載のまま改訂されていない状態の記事もありえます。また,本サイトブログは法改正等に対応していない場合もあります。自己責任にてお読みくださいますようお願い申し上げます。(広告等:本サイトはアフィリエイトプログラムに参加しております。広告内容等に関しまして,閲覧者様と本サイト所有者とは何らの契約関係にありません。広告内容等に関しましては,広告表示先の会社等に直接お問い合わせください。)(免責事項:本サイトに起因するいかなる責任も負いかねますので,自己責任にてお読みください。この点について,ご了承願います。)
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2017年04月29日

( 司法書士試験 ) 相続放棄・遺産分割と登記《 一 考 》



             相続放棄・遺産分割と登記・・・《 一 考 》


[問 題 提 起]

相続不動産に対する遺産分割または相続放棄により法定相続分と異なる権利を取得した相続人は,その取得した持分を第三者に対して対抗するのに,登記の具備を要するか否かについて判例は概ね以下のように考えています。


(遺産分割においては登記必要)
「不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があり、分割により(法定)相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、(法定)相続分と異なる自己の権利の取得を対抗することができない。」


(相続放棄においては登記不要)
「相続人の相続放棄により(放棄前の法定)相続分と異なる権利を取得した相続人には、民法177条の適用がなく、その旨の登記を経ることなく、相続放棄後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、(放棄前の法定)相続分と異なる自己の権利の取得を対抗することができる。」

要するに判例は,「遺産分割においては登記を必要とするが,相続放棄においては登記を不要とする」立場をとっています。

以下の事例を前提にして,
上記の「遺産分割においては登記を必要とするが,相続放棄においては登記を不要とする」判例の立場を私なりに説明してみたいと思います。



[事例1 遺産分割]
夫X(被相続人)が死亡し,その妻A及びX,Aの子である長男B,次男CがXの土地を相続した。
遺産分割により妻Aと長男Bが,それぞれ2分の1ずつ土地を取得した。

それにもかかわらず遺産分割後において,Cの分割前法定相続分の土地持分をCがYに対して譲渡した。



[事例2 相続放棄]
夫X(被相続人)が死亡し,その妻A及びX,Aの子である長男B,次男CがXの土地を相続した。
Cは相続放棄をした。

それにもかかわらず相続放棄後において,Cの放棄前法定相続分の土地持分をCがYに対して譲渡した。



[ 説 明 ]


1 遡及効の制限規定の有無

相続放棄の登記を不要とする根拠として,遺産分割には分割の遡及効を制限する規定があるのに対し,相続放棄には放棄の遡及効を制限する規定がないことが挙げられます。


相続放棄は,放棄の遡及効を制限する規定がないので,遡及効を徹底します。その結果,相続人は,相続開始当初から相続人ではなかったことになります(民法939条)。
これにより放棄相続人は無権利者となり,その者の持分登記は無権利の登記であるとの結論に至ります。



そして,かかる無権利の登記には公信力がない以上,この登記を信頼した第三者は放棄相続人から持分を取得しないことになります。


これに対して遺産分割には,分割の遡及効を制限する規定があることから,持分の移転を観念できます(民法909条但書)。そのため対抗要件の問題とします。



遺産分割は、相続人が共同相続により一旦取得した土地の権利について,相続人間で新たな持分譲受による持分変更を生じさせたのと実質上異ならないと考えられます。遺産分割後の第三者に対する関係においては分割後に新たな物権変動があったと同視します。



そのため,不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができないと考えられるのです。



これに対して,相続放棄だけでなく遺産分割の場合にも遡及効を貫徹する≪無権利の法理≫の理論を採用する説があります。この説は,以下のように考えます。



遺産分割は相続開始時に遡ってその効力を生ずるので,遺産分割したことにより,相続開始時からCは土地の持分を有していないかったことになる(民法909条本文)。



無権利の法理を採用する説は,かかるCは無権利者でありその無権利者Cから持分を譲
り受けたYも無権利者になるとします。



無権利者は,民法177条の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者に
該当しません。そのため,A,Bと第三者Yは対抗関係に立たないことになります。



すなわち,対抗問題を生じない。A,Bはそれぞれ法定相続分と異なる持分取得につき登記なくして,Yに対して対抗できるということになります。
こうして,遺産分割においても登記は不要であると主張するのです。


(この説に依った場合,無権利者Cからの譲受人Yの保護は,民法94条2項類推等によって保護されることが一応考えられます。)



2 相続放棄の家庭裁判所での調査

相続放棄については家庭裁判所においてその有無を調査できます。
これにより債権者等利害関係人,第三者の取引の安全を一定程度図れます。そのため相続放棄の場合には登記を不要とするのです。


これを具体的に言うと,相続放棄については家庭裁判所に対して,相続放棄の申述の有無について照会を行えます。必要であれば照会により確認した事件番号等で相続放棄申述受理証明書の交付申請を行い,これを取得します。



これにより債権者等利害関係人は相続放棄の有無について一応の確認ができます(但しオールマイティーではない。)。


このようにして第三者の取引の安全を図られるのだから,相続放棄の場合には登記は不要であるとするのです。


一方,遺産分割は,分割後も登記の放置により,分割前の状態である共同相続の外観が呈されることがあるため,債権者等利害関係人,第三者の取引の安全を害します。そのため遺産分割には権利の変動を目に見える形にする必要があり登記の具備を要求するのです。



3 相続放棄の熟慮期間と法定単純承認制度

また,相続放棄に登記を不要とする理由として,相続放棄は限定された期間である熟慮期間内において行わなければならないことが挙げられます(民法915条)。


これにより相続開始から相続放棄までの間に第三者が出現する可能性が少ないということが考えられます。第三者の取引の安全を害する危険性が減少しているのです。そのため相続放棄の場合には取引の安全の機能を有する標識としての登記までは不要とするのです。


また,法定単純承認制度があり,土地を処分した相続人はその後の放棄が認められず単純承認したものとみなされます(民法921条1項1号)。同人から土地を買い受けた第三者は,少なくとも法定単純承認時に共同相続状態のままであれば,放棄相続人の放棄前相続分についてその持分を取得できることになると思われます。


このように債権者等利害関係人,第三者の取引の安全を一定程度図れるため,相続放棄の場合には登記を不要としているのだと考えられます。




4 最終的な権利帰属の確定の有無

また,遺産分割は共同相続人間において,その権利取得を最終的に確定するものです。
遺産分割により最終的な権利帰属が確定した以上,遺産分割による持分移転登記をするのに支障はありません。第三者の取引安全の見地からは,持分移転登記の懈怠は非難に値すると考えられるのです。
そのため判例は持分移転登記を要求することにしたのだと考えられます。
登記できるのに登記しなかったことを登記懈怠と捉えて,妻A,長男BとYを対抗関係で処
理するのです。


これに対して,遺産分割前の共同相続状態では,事情が異なります。
共同相続において相続放棄をする者がいた場合,相続放棄者以外の残りの相続人が相続放棄の段階で自身の持分の移転登記(共同相続登記)を行うことを懈怠したとしても,これについては非難に値しないと考えられます。



次男Cが相続放棄をしても,妻A,長男Bは未だ遺産分割を完了させていない場合には,その段階でわざわざ共同相続の登記まで要求するのは酷であると考えられます。



共同相続登記は,最終的な権利確定前の過渡的登記であり,登記費用等を考えるとこれを要
求するのは酷であるとする価値判断があります。


共同相続の登記を行った上で,遺産分割による持分移転登記を再度行うのは,相続人にとっていわば二重の負担となると見るのです。


遺産分割後に相続登記をストレートに行うほうが費用負担やその他の諸々のことを考えれば簡便です。


そのため相続放棄後・遺産分割前の遺産共有については,登記をできるのに登記をしなかったという対抗問題の土俵にのせないのです。


このような事例も相続放棄について登記を要しない事例として考えることは有用ではないかと思われます。





5 遺産分割前から既に取得していた相続人本来の法定相続分についての注意

なお,ここで注意しなければならなのは次のことです。
判例は本来の法定相続分(遺産分割前から既に取得していた相続人本来の法定相続分)について,A,Bは登記なくしてその持分を第三者Yに対抗できることを当然の前提としています。(注1)



遺産「分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができない(昭和46年1月26日 最高裁判所第三小法廷 判決)。」と判例が判示しているのは,分割により相続分と異なる権利を取得した相続人の本来の法定相続分を超えるところのまさに「分割により新たに取得した持分」について,登記の対抗要件具備を要求しているのです(登記技術的な問題はさておくとして・・)。



以上から遺産分割において判例は,本来の法定相続分について,A,Bは登記なくしてその持分を第三者Yに対抗できることは当然の前提としています。本来の法定相続分については,無権利の法理と同様な処理の仕方をしています。
(判例は相続放棄についても,遡及効を徹底することによって無権利の法理と同様の処理の仕方をしています。)



なお,最高裁の判決等を見ると「無権利の登記」という言い方がなされているのに気づきます。無権利の法理と同様の思考方式が「無権利の登記」といった文言に具現化されているものと思われます。



また「無権利の登記」に続けて「登記に公信力なき・・」という言い方も判例には見受けられます。


「権利外観法理」と「公信の原則(公信力)」の違いについては,権利を失う者に帰責性を要求するかどうかの違いがあると言われることがあります。

「権利外観法理」は,権利を失う者(本人)に帰責性を要求します。
一方「公信の原則(公信力)」は,権利を失う者(本人)に帰責性を要求しません。


なお,我が国においては登記に公信の原則を採用していません。




ところで,判例は,相続分の指定を受けた相続人が,相続不動産についてその指定相続分の取得を第三者に対抗するのに,対抗要件としての登記を不要としています(最判平成5年7月19日 最高裁判所第二小法廷 判決)。

これについても注意を要します。
                                  



「遺産分割と登記」「相続放棄と登記」の論点については,時間にもし余裕があれば判例百選や最高裁判決を判例検索でお調べになって,少しお読みになられた方がよろしいかもしれません。
民法の推論択一にひょっとしたら今後出題されるかもしれません(なんとなくです・・・汗)。




(注1) (これは結局,「遺産分割前においては共同相続登記を行わなくとも,相続人は自己の法定相続分を登記なくして第三者に対抗できる。」という「共同相続と登記」という論点と実質的には同じことになります。)




以上の記述の正誤につきましては,ご自身の基本書,テキスト等で是非ご検証ご確認ください。


                                 以  上



[参考文献]
民法判例百選 V 親族・相続  水野紀子・大村敦志 編 有斐閣
遺産分割のための相続分算定方法 梶村太一・貴島慶四郎 著 青林書院
民法判例集 親族・相続 内田貴・水野紀子・大村敦志・道垣内弘人 著 有斐閣
親族法相続法講義案 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会
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2017年04月26日

(司法書士試験)  受験勉強を淡々とやり抜く



               受験勉強を淡々とやり抜く



受験生の方は,今の時期けっこう択一,記述式で間違って悲観するということがあると思います。

しかし,淡々と受験勉強を冷静にこなしていくことが,なによりも合格への近道です。

このことの大切さについて,私なりに述べさせていただきたいと思います。



1 どうして間違えるのだろう。自問自答の日々。


択一の問題を解いても,解いても間違えることがあります。「どうしてだろう・・・・。」といぶかしく思う。
自分が情けなくなる。

これだけやったのにまだ間違える。前は正解したのに,今度は間違えてしまった。
「この1問,3点が痛い。」

あるいは
これだけやったのにまだ解けない問題があるのか。
まだ知りもしない論点知識があるのか。

ため息の連続です。

町を歩けば,「誰もが楽しそう。ああ,自分は何でこんなことをしているのだろう。」
早く試験勉強から解放されたい。

このような気持ちになられる受験生の方は多いのではないでしょうか。

受験生なら誰もが通る合格への道だと思います。



2 外見からは分からない。人はできるように見えるもの。

 
しかし,合格したらいかなる択一問題でも間違わないで解けるのでしょうか。

それは違うと思います。

合格者でも択一の問題を解かせれば頻繁に間違えます。
合格する前と合格した後で,1日を境にして一瞬に人間が変わることは大抵ありません。


司法書士試験に合格すれば,何でも知っている,大変な知識量を保持している,このようにいえる人は大抵いないでしょう。


現在受験勉強の追い込みをかけていて,基準点超えの上乗せ点を何問とれるかどうか不安に思っている受験生と同程度の知識量をもって,同じく不安な時期を過ごした合格者が多くいたことは間違いありません。


司法書士試験合格者が大変良くできる人だと思えるのは,ある意味錯覚かもしれません。
合格者であっても,次年度も前年度と同じ点をとれるという保証はありません。


さらにいえば実務家であろうと学者であろうと,択一問題を一問も間違えないで解けるとの絶対的な保証があるとはいえないでしょう (私の極めて個人的な推測であることをお断りしておきます。汗)。


外見からは分からない。人はできるように見えるものです。


ですから,択一を間違えたことで必要以上に落ち込むべきではありません。
セルフイメージを自ら下げることは不要です。


セルフイメージを下げると,下げたところで能力の限界点を自ら設定してしまうことになります。自分で自分の能力の芽を摘むことになります。


ですから「自分には能力がある。自分は絶対にスゴイ。」というセルフイメージを大切にすることが重要です。


こう思ったところで,他人に対して尊大な態度に出なければ,誰にも迷惑を掛けるわけではなく,全くもって思想良心の自由です。


したがって,自分のセルフイメージを大切にしてください。



3 気持ちの切りかえ


試験会場に臨んだ合格直前の自分と合格後の自分とで明らかに連続性があります。


心血注いで頑張って受験勉強を行い,試験会場の座席に座った合格直前の自分と合格後の自分とではその知識量において変わらない。


そして,合格する自分になっているかどうか試験直前においても大抵分からない。
そんな状態で多くの合格者が毎年誕生していることを思い出してください。


今の自分を悲観するのではなくただ前進あるのみです。


受験勉強に心血注いで頑張った自分と思えるだけのことはやり抜く,そういう自分を作って試験会場に臨めれば,合格後の自分と繋がる蓋然性が飛躍的に高まります。


ですから,現在択一の解答を間違えることがあっても,記述式の解答を間違えることがあったとしても決して悲観することなく,ただ淡々と受験勉強のノルマをこなしていく,このことに徹することが合格に近づく道だと思います。



まとめ


合格しても合格直前の自分と合格後の自分とで明らかに連続性があります。


そして,合格する自分になっているかどうか合格直前においても大抵分からない。
そんな状態で多くの合格者が毎年誕生している。


そうであれば,
セルフイメージを高く持ち続け,ただ淡々と受験勉強のノルマをこなしていく,このことに徹することが合格に至る道である。


このように私は思います。

受験勉強応援しております。


                                      以   上





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2017年04月24日

民法 択一推論  不法行為に基づく財産的損害賠償請求権(逸失利益)の相続


         不法行為に基づく生命侵害の[財産的損害賠償請求権(逸失利益)]の相続


民法の推論問題を作成しました。よろしかったら解いてみてください。



[問 題]

不法行為により死亡した被害者の「財産的損害賠償請求権(逸失利益)」が相続の対象となるか否かについて,相続を肯定する説と相続を否定する説がある。

次のアからクまでの記述の「この説」は,上記いずれの説にあたるか。


ア この説は,生命侵害は身体傷害の極限概念であるとする。


イ この説は,生命侵害による損害賠償について権利帰属主体がいないと他説を批判する。


ウ この説は,いわゆる「笑う相続人」については相続一般に内在する問題であり,この説特有の問題ではないとする。


エ この説に対しては,生命侵害の場合と身体傷害の場合とでは,均衡を失しているとの批判がある。


オ この説に対しては,親がその平均寿命を超えた時点以降の子の将来にわたる逸失利益までも相続するのは,不合理であるとの批判がある。


カ この説は,遺族(近親者)の固有の損害の賠償請求を認めれば,損害賠償請求権の相続が認められる受傷後死亡の場合の身体傷害との間で不均衡は生じないと反論する。


キ この説に対しては,賠償額が低くなってしまうとの批判がある。


ク この説は,賠償額の計算基準に客観性があると主張する。






[解 答]


ア 肯定説は,生命侵害は身体傷害の極限概念であるとする。

肯定説は,死亡という生命侵害は身体障害の極限概念であるとして,いったん被相続人に損害賠償請求権が発生し,これを相続人が相続すると主張する(極限概念説)。



イ 否定説は,生命侵害による損害賠償について権利帰属主体がいないと肯定説を批判する。

人は,その死亡(即死)により権利能力を失うのだから,被害者は生命侵害による損害賠償について権利帰属主体となりえない。よって,被相続人が有していない損害賠償請求権を相続人が相続することもない。

これに対して肯定説のうち時間的間隔説は,即死の場合においても受傷から死亡に至るまで,なお時間的間隔を観念できるものとし,傷害の瞬間に被相続人が損害賠償請求権を取得し,これを相続人が相続すると主張する(時間的間隔説)。



ウ 肯定説は,いわゆる「笑う相続人」については相続一般に内在する問題であり,この説特有の問題ではないとする。


否定説は,普段は疎遠な親族が被害者の損害賠償請求権を取得するのは不合理であるとして,肯定説を批判する。いわゆる「笑う相続人」とは,普段は疎遠な親族のことを指す。

これに対して肯定説は,いわゆる「笑う相続人」については相続一般に内在する問題であり,この説特有の問題ではないと反論する。



また,相続肯定説に対しては,本来保護を必要とする内縁の配偶者などが保護されないとの批判がありますが,これについても相続一般に内在する問題であり,相続肯定説特有の問題ではないと反論します。

すなわち,これは損害賠償請求権を対象とした相続に限ったことではなく,その他の財産相続にも起こり得る問題であると肯定説は反論します。
このことは「笑う相続人」の問題についても同様に言える肯定説からの反論です。



エ 否定説に対しては,生命侵害の場合と身体傷害の場合とでは,均衡を失しているとの批判がある。


否定説は,一方において重傷後その負傷が原因で死亡した場合に身体傷害による損害賠償請求権の相続を認めるが,他方で生命侵害の場合の加害行為は損害賠償請求権の対象とはせず,これによる損害賠償請求権の相続を認めない。


これでは生命侵害のほうが身体傷害の場合よりも被害者に対する加害行為,権利侵害の程度,態様としては重大であるにもかわらず,均衡を失していると肯定説は否定説を批判します。


オ 肯定説に対しては,親がその平均寿命を超えた時点以降の子の将来にわたる逸失利益までも相続するのは,不合理であるとの批判がある。


相続を肯定した場合,論理的には以下のことが起こりえます。

例えば,3歳の養子が死亡し,養子死亡時70歳の養父が,この亡くなった養子を相続したと仮定します。

論理上はその子が18歳ころに就職したとして67歳になるまでの逸失利益(収入分)の損害賠償請求権を亡くなった子が取得し,これを養父が相続することが可能となります。

本来先に亡くなるはずの養親がその平均寿命を超えて,後に亡くなるはずであった養子の将来的な逸失利益(収入分)まで損害賠償請求権として相続してしまうことになります。

これでは不合理であると否定説は肯定説を批判します。
いわゆる「逆相続」の問題です。



カ 否定説は,遺族(近親者)の固有の損害の賠償請求を認めれば,損害賠償請求権の相続が認められる受傷後死亡の場合の身体傷害との間で不均衡は生じないと反論する。


否定説は,被害者から扶養を受ける利益の侵害についての損害賠償請求権を遺族(近親者)が固有に取得するので,生命侵害の場合の相続を否定しても,受傷後死亡の間の身体傷害による損害賠償請求権の相続を認めることとの間に不均衡は生じないと反論します。(扶養侵害説)



キ 否定説に対しては,賠償額が低くなってしまうとの批判がある。

扶養を受ける利益の侵害といっても,扶養の期待権侵害に対する裁判上認められる損害賠償額は低く抑えられがちなので,やはり否定説では賠償額が低くなってしまうとの批判があります。



ク 肯定説は,賠償額の計算基準に客観性があると主張する。

否定説では,扶養を受ける利益の侵害にかかる損害賠償額の計算が複雑化します。
肯定説は,賠償額の計算基準に客観性があり,簡易明確であると主張します。



                                    
以上の記述の正誤については,是非,ご自身の基本書等によりご検証ご確認ください。

[参考文献]
債権各論U不法行為法 潮見佳男 著 新世社
親族法相続法講義案 裁判所職員総合研修所監修 司法協会
など







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2017年04月21日

簡裁訴訟代理等能力認定考査の合格の仕方  その3


           簡裁訴訟代理等能力認定考査の過去問の重要性




今回認定考査の過去問を解くことの重要性について,お話しさせていただきたいと思います。



1 合格40点ボーダー滑り込みにおける過去問の重要性

過去問を解くことは,簡裁訴訟代理等能力認定考査の合格にとって必須の条件であると思います。
司法書士試験の択一過去問の勉強が,司法書士試験合格に必須の条件であるのと同様です。

認定考査においても,過去で問われたのと同じような問題が結構の頻度で繰り返し出題されます。この既出あるいは既出に極めて類似する問題で点をとれないとなれば,とてももったいないことです。

特に40点ボーダーに位置している受験者にとっては,とても深刻な問題となります。
過去問をつぶしておけば,37点が40点になった。あるいは過去問つぶしをしていれば,もっとうまく書けたはずだ。そうすれば加点されて39点が40点になったはずだ。
こういう後悔をすることにもなりかねません。

多くの受験者は当然過去問をつぶしてくるはずです。
認定考査は70点満点中40点以上を合格点としています。この合格点に至る採点の基準が,純粋の絶対評価なのかそれとも相対評価(の要素を一部取り入れた基準)なのかについては私には分かりません。

採点基準がどちらなのかは,受験者の方が巷でいろいろと言われていることを聞き知っていらっしゃるので,その内容についてはご存じであろうと思います。しかし,正直言って私にはどちらなのか分かりません。

もし仮に相対評価(の要素を一部取り入れた基準)だとしたら,過去問をつぶしてきた人とそうでない人とではその分差がつきますが,そのついた差は大きいと言わざるを得ません。

またそもそも過去問を解かずして,どのようにして認定考査突破の実力をつけることができるのかも疑問です。

ですから,いずれにせよ過去問つぶしは認定考査合格にとっての必須の条件であろうと思います。



2 実際の「手書き解答」の大切さと,問題文の解答形式に慣れることの重要性

問題文については,(原告)Xの言い分形式,(被告)Yの言い分形式という形で出題されています。言い分形式は,依頼者の方が実際に相談に来られた際の聴取内容に似せているのでしょう。

この言い分が年々長文化してきています。まずこの言い分自体を最後まで読み切るのに一苦労だろうと思います。

この言い分には当事者の気持ち,認識,請求内容,反論内容,紛争に至る経緯等が書かれているわけですが,その中には問題を解答する上で必ずしも必要のない事実までも敢えて記載されています。

請求原因事実や抗弁等に必要のない事実までも敢えて記載されています。
要件事実に必要な事実もあれば,不要な事実も書いてあるわけです。

このX,Yの言い分から請求原因事実や抗弁等に必要な事実を拾い出す練習を行わなければなりません。

この練習においては頭の中だけで一応要件事実を思い浮かべることができるかもしれません。しかし,これを実際に紙に書く段になると大分勝手が違ってきます。

実際紙に書いてみると案外完全には書けないものです。なにかしら間違えるものです。
ちょっとした間違いと思われたものが,実は要件事実的には致命傷だったということも十分ありえるわけです。

ですから実際に紙に書いてみて細かい間違いを修正していく作業がどうしても必要となります。

( 同様のことは,請求原因事実や抗弁等の要件事実の記載問題の解答だけでなく,司法書士倫理,簡裁訴訟代理等関係業務における業務範囲,業務規制等の問題についてもいえます。これらについても実際に解答を紙に手で書いて練習しなければ,認定考査における得点は難しいでしょう。)


また,問題文に解答の仕方の細かい指示が記載してあります。この細かい指示に従った解答をするという練習も必要です。(ことに請求原因事実や抗弁等の記載の仕方についての指示は要注意です。)

解答の指示に従わなかったがために,検討ハズレのことを書いてしまったということにもなりかねません。あるいは解答の指示に従わなかったことによる減点の恐れもあります。

また解答用紙に「300字以内」で解答しなさい。解答用紙に「350字以内」で解答しなさい。こういった字数制限の問題もあります。これは厄介な問題です。

行形式の解答用紙に300字「程度」で解答を書きなさいという問題であればよいのですが,これが仮に原稿用紙の形式で解答部分が作成されている字数制限の厳格にある問題であるとしたならば,これはとても厄介です。

鉛筆書きであれば消しゴムで消して,書き直しができ気もずいぶんと楽なのですけれども,ボールペン書だとこれができません。さらに解答用紙のマス目が小さければ,書き直すこと自体至難の業です。

ですから原稿用紙を実際に使って○○字以内で書きなさいという問題の練習を,実際に手で書いて練習する必要があります。



3 解答時間は思ったよりも長くない,年度によってはバラつきがある

時間の配分にも十分に注意をしなければなりません。すんなり書けてしまうこともあれば,かなり手古摺るということもあります。年度ごとの問題の難易によるバラつきや,自分自身の得意分野,不得意分野によるバラつきがあります。

2時間という解答の制限時間は思ったよりも長くなく,むしろ短いと感じることも十分ありえます。

これは,実際に書いて練習してみないと分からないことです。



4 過去問の練習量と解き始める時期

過去問は平成28年度までで既に15年分もの蓄積があります。
これを一日一問ずつ解くとしても,2週間と1日を要します。

最低でも2回以上(私は人によっては3回以上必要であると考えますが),各年度の過去問の「手書き」解答練習を行わなければなりません。
そうするとこれを一日一問ずつ解くとしても,4週間と2日を要します。

従いまして,できれば4月末までには,全年度の過去問の手書き解答練習を行い始めた方がよいと思います。

2時間の解答時間は結構苦痛です。1時間30分で書き上げたとしても,知力,体力ともに思ったよりもかなり消耗します。

ですから切羽詰まって一日3問も手書き解答練習を行うというのは,かなり苦痛だと思われます。

できるだけ早い時期に手書きの解答練習を行う必要があります。



5 認定考査における解答量のボリュウムや解答文章の内容密度を実感する

認定考査の解答用紙がどういうものかということについても,もしご覧になる機会があったならば実際にご覧になられた方がよろしいかと思います。解答用紙の解答欄を見ないと,どれだけの解答ボリュウムで論述等を書いてよいのか分かりづらいと思います。これは結構不安になるのではないでしょうか。

予備校の模擬試験の解答用紙でも,大体の解答ボリュウムの感覚が掴めます。
実際の認定考査の解答用紙に似せた予備校の解答用紙をご覧になられる機会のある方ならば,これをご覧になってその解答欄における解答ボリュウム感を実感してみることも大切かと思います。

この解答ボリュウム感については,市販の過去問集や予備校の解答例集等も参考にしつつ,予想される解答用紙の解答欄,ご自分の普段書いておられる字の大きさ,ご自分の論述の仕方,癖等を考えあわせて,解答ボリュウム感覚をあらかじめ掴んでおくことが大切かと思います。

また解答における文章の内容密度も,解答例集で確認された方がよいと思います。
「このくらいのことを書くことが要求されているのか。」ということが分かります。

できれば市販の過去問集及び予備校の解答例集で,ご確認なさった方がよいと思います。解答内容の密度におけるだいたいの平均値の感覚が掴めると思います。

それと,予備校の予想問題についても,これがもし実際に出題された場合には,そこで問われた論点を知っている人と知らない人とでは点数に差が付きます。どんな論点が問われたかくらいのことは,ご友人から聞くだけ聞いてみることくらいのことをしても問題はないのではないでしょうか(ちなみに私は,認定考査合格の最良の安全対策は信頼のおける予備校等を最初から利用することであると思います。もちろん「要件事実の考え方と実務(第3版)加藤新太郎,細野敦 著 民事法研究会」等信頼のおけるテキストの読み込みも極めて重要です。)。



まとめ

全年度の過去問の実際の「手書き」練習はとても大切です。
是非,時間を惜しむことなく全年度の過去問の実際の「手書き」練習を実行されることを強くお勧めいたします。

また信頼のおける市販のテキスト(「要件事実の考え方と実務(第3版)加藤新太郎,細野敦 著 民事法研究会」)等の読み込みもしっかりと行われた方がよいと思います。
これにより要件事実の理解が促進されますし,守備範囲が広がり試験で問われて困る穴がなくなっていきます。
                       


                                         以  上












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2017年04月19日

(司法書士試験) 択一民訴  気になる 「訴え取り下げ」の肢  予想



         択一民訴  気になる 「訴え取り下げ」 の肢  予想  (司法書士試験)




○×で解答してみてください。解答は一番下に記載しています。





[ 問 題 ]



1 訴えの取り下げは,口頭弁論期日,弁論準備手続期日においてすることができるが,和解期日,進行協議期日においてすることができない。




2 訴えの取下げは,口頭によってすることができず,すべて訴えの取下書の書面によらなければすることができない。




3 貸金返還請求訴訟の原告が,被告に対して,裁判外において貸金返還債務の履行期を猶予したため,第一審本案の終局判決があった後,訴えを取り下げた場合には,その後被告が,当該猶予後の履行期が到来したのに貸金の返済を怠ったとしても,訴え取り下げの再訴禁止効により,原告は,被告に対して,同一の貸金につき貸金返還請求訴訟の訴えを再度提起することができない。





4 前の訴えが取り下げられたが,それは二重訴訟を解消する目的でなされたものであり,かつ前の訴えの請求が後の訴えにおいてもそのまま維持されているときは,前の訴え提起により発生した時効中断の効力は,後の訴えにおいても消滅しない。





5 第一審の本案の終局判決が控訴審において取り消されて差し戻された場合,原告が差戻し後の第一審において終局判決があるまでに訴えを取り下げたときは,当該原告は,同一の訴えを提起することができる。





6 貸金返還請求訴訟の原告と被告との間で,債務一部免除,支払い分割及び訴えを取り下げる旨の裁判外の和解が成立したにもかかわらず,原告が,訴えを取り下げない場合において,被告が,訴えを取り下げる旨の裁判外の和解合意を主張立証したときは,裁判所は当該貸金返還請求訴訟の訴えを却下する。








[ 解 説 ]


1 訴えの取下げは,口頭弁論,弁論準備手続期日においても,和解期日,進行協議期日においてもすることができます。

民訴法261条3項は,
「訴えの取下げは,書面でしなければならい。ただし,口頭弁論,弁論準備手続又は和解の期日においては,口頭ですることを妨げない」
と規定しています。

また,民訴規則95条2項は,
「訴えの取下げ並びに請求の放棄及び認諾は,進行協議期日においてもすることができる。」
と規定しています。



2 「訴えの取下げは,書面でしなければならい。ただし,口頭弁論,弁論準備手続又は和解の期日においては,口頭ですることを妨げない」(民訴法261条2項)。この但し書きが答えです。
 
進行協議期日においても,訴えの取下げを口頭ですることができます。
民訴規則95条2項があり,また同条3項が民訴法261条4項,5項を準用しています。


但し,進行協議期日に電話会議の方法によって関与した当事者は,口頭による訴えの取り下げをすることができない(民訴規則96条3項)。






3 民訴法262条2項は,「本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は,同一の訴えを提起することができない。」と規定しています。
 
この「同一の訴え」とは,単に当事者や権利関係(訴訟物)が同一であるというだけでなく,訴えの利益又は必要性についても同一の事情であることが求められています。

給付訴訟の被告に裁判外で履行を猶予したことから,訴えを取り下げたのに猶予後の履行期に支払いをしないとなると,再度,強制執行のための債務名義が必要となります。
 
この場合,前訴と再訴で,訴えの利益,必要性について同一の事情にあるとは言えません。したがって,同一の訴えにあたらず,再訴できます。

最判昭和52年7月19日によれば,この事案においても,同一の結論となると思われます。



4 正しい(最判昭和50年11月28日)。
そのとおりです。


5 正しい(最判昭和38年10月1日)。
そのとおりです。平成26年度午後択一式第5問5肢では,この最高裁判決が出題されたものと思われます。



6 正しい。最判昭和44年10月17日によれば,この事案においても,同一の結論となると思われます。裁判外の合意において,訴えを取り下げる旨の合意が成立したときは,原告の権利保護に欠けるものとして,訴えを却下します。
1×誤り 2×誤り 3 ×誤り 4 ○正しい 5 ○正しい 6 ○正しい




過去問潰しは当然として,
訴え取り下げの民訴条文は,細かい規定ですけれど,しっかりとマスターしておかれたほうがよろしいでしょう。





以上,正確を期するためご自分で判例六法や基本書等でご検証,ご確認ください。






(追記)
進行協議期日においても,訴えの取下げを口頭ですることができます。
但し,進行協議期日に電話会議の方法によって関与した当事者は,口頭による訴えの取り下げをすることができない(民訴規則96条3項)。











電話会議の方法による弁論準備手続と電話会議の方法による進行協議期日については,下記文献を精査の上,正しい知識を習得してください。

「民事訴訟法講義案(三訂版) 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会」165ページ(注2)
               及び
「民事実務講義案T(五訂版) 裁判所職員総合研修所 監修  司法協会」289,290べージ


[参考文献]
平成26年度午後択一式第5問5肢
例題解説 新民事訴訟法(下) 法曹会
判例六法 有斐閣
詳細 登記六法 一般社団法人 金融財政事情研究会  きんざい
民事訴訟法講義案(三訂版) 裁判所職員総合研修所 監修  司法協会
民事実務講義案T(五訂版) 裁判所職員総合研修所 監修  司法協会
条解民事訴訟規則 最高裁判所事務総局民事局 監修  司法協会
など。






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2017年04月18日

ちょっと耳寄りな択一知識   民訴択一・・・証拠申出の撤回 (認定考査)


                   証拠申出の撤回



証拠申出の撤回の論点は,司法書士択一民訴,認定考査において,大切です。
特に,認定考査においては,証拠申出の撤回について,そのまま論述を求められる可能性がありますので注意が必要です。

以下,証拠申出の撤回の基本的な枠組みを書きます。参考にしてみてください。



1 証拠の申出は,証拠調べが実施されるまでは,これを申出た訴訟当事者において,何時でも自由に撤回を行うことができます。

2 証拠調べが開始された後は,証拠共通の原則の下で,相手方に有利な証拠資料も顕出されている可能性がありますので,証拠申出をした訴訟当事者は,自ら申出た証拠方法といえども,相手方の同意を得ることなく,これを自由に撤回することはできません。

3 証拠調べが完了した後においては,既に裁判官の心証が形成されてしまっていますので,これを撤回できるとすると,裁判官の自由心証を害し自由心証主義(民訴法247条)に反します。

そのため,証拠調べ完了後においては,自ら有利になるとして証拠申出をした訴訟当事者といえども,証拠申出の撤回をすることはできません。
相手方の同意があっても,証拠調べ完了後においては,証拠申出を撤回できません。



論述のポイントは,証拠調べの「実施前」,「開始後」,「完了後」の3段階に分けて証拠申出の撤回を論ずることです。
以下,キーワードを列挙します。


1 証拠調べ 「実施前」 撤回できる
2 証拠調べ 「開始後」 証拠共通の原則  相手方の同意がないと  撤回できない
3 証拠調べ 「完了後」 裁判官の自由な心証形成を害する  自由心証主義に反する 撤回できない 


                                         以  上












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2017年04月17日

自白の撤回の要件・・・もう一度確認 (司法書士試験・民訴択一,認定考査)


                 自 白 の 撤 回 の 要 件


今回は自白の撤回について,お話ししていきたいと思います。
自白の撤回の要件は,司法書士試験,認定考査において大切です。

自白の撤回の要件
1 相手方の同意がある場合
2 刑事上罰すべき他人の行為(相手方を含む)により,自白するに至ったとき
3 反真実,かつ錯誤がある場合


相手方は,他方当事者の訴訟行為を前提にして,その上に自身の立証活動,訴訟行為を積み重ねていきます。後になって「それは,なかったことにして下さい。」と言われても,
不当に相手方の信頼を裏切るものとして,訴訟上の信義則からも,許されるものではありません。

また,自己に不利な事実を敢えて陳述していることから,それは,真実に合致する蓋然性も高いと言えます。
そのため,自白を撤回するのに特別の要件が課されているのです。

貸金返還請求訴訟を例にとって考えてみましょう。


1 相手方の同意がある場合

訴訟において原告が,確かに借金を返して貰ったといって,被告の借金の弁済の事実を認めたとしましょう。

そのため,被告はつい気を抜いて領収書を処分してしまった。
それなのにその後になって,原告から「やはり借金を返してもらっていない。だから返済の事実を撤回します。」と言われたら,被告としては困ります。

原告の言葉を信頼して気が緩んでいたものだから,何気に領収書を他の郵便物と一緒にシュレッダーにかけて処分してしまったということもあるわけです。この場合,被告は,証拠の散逸,逸失の状態となっています。
  
これを考えると,原告による自白の撤回には,被告の同意を要するとしないと,被告にとってとても不公平な結果となります。
そこで,相手方の同意がある場合が,自白の撤回の要件となっているのです。

この場合,原告の自白の撤回を認めても,原告の自白によって,本来利益を受けるはずであった被告自身が,それでいいと言っているのですから,それ以上に,被告本人を保護する必要はありません。

そのため,被告の同意がある場合,原告の自白の撤回を認めてあげているのです。


2 刑事上罰すべき他人(相手方を含む)の行為により,自白するに至ったとき

原告が,「あんた! 私からお金借りたことに違いはないだろう。」と言って,こわめのお兄さんと二人して睨みきかし,訴訟外で被告を威圧したとします,

気の強くない被告なら「いやぁ借りた覚えはないですけれど・・・。借りましかね・・・。いやぁ,はい,借りました。」なんて,心にもないことを言わないとも限りません。そして,その影響下で,口頭弁論でも自白するとも限りません。

そこで,刑事上罰すべき他人(相手方を含む)の行為によって,自白した者は,自白を撤回できるとしました。

この場合,原告は刑事裁判で,脅迫罪だとか恐喝罪だとかの有罪の確定判決を下されている必要はありません。

被告が,かかる原告の卑劣な行為を,民事裁判で主張,立証すればよいのです。
これを「再審事由の訴訟内顧慮」といいます(再審に関する民訴法338条1項5号,2項参照)。


3 反真実かつ錯誤がある場合

先述のように,自己に不利な事実を敢えて陳述していることから,それは,真実に合致している蓋然性が高いとして,自白の撤回に特別の要件が課されているわけです。

そうであれば,真実に反している場合に,自白の撤回を認めてあげてもいいことになります。

そこで,錯誤,反真実が認められるなら,自白の撤回を認めてあげましょう,ということになりました。
ただ,錯誤の立証は,自白者の内心の問題でもあるわけです。その立証は困難です。

その結果,「真実に反することの証明があった場合には,自白は錯誤によるものと認める。」としたのが判例です。
学説には,「反真実の証明があるならば,錯誤を推定する。」としているものもあります。
両者同じことをいっているのでしょう。

以上が,自白の撤回の要件です。

ただ,ここで注意しておきたいのは,自白の撤回の前提としての自白の拘束力です。
自白の拘束力という場合のその自白とは,一体何の自白について言っているのかです。

それは,主要事実です。
弁論主義の三つのテーゼ

[第1テーゼ:主張原則] 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎(裁判の資料)としてはならない。(主張責任)


[第2テーゼ:自白原則] 裁判所は、当事者の争いのない事実(自白事実)は、そのまま判決の基礎(裁判の資料)としなければならない。(自白の作用右矢印1不可撤回効・審判排除効)


[第3テーゼ:証拠原則]  裁判所は、争いのあるを事実を証拠によって認定するには、当事者の申出た証拠によらなければならない。(職権証拠調べの禁止)


が当て嵌まる主要事実です。
この主要事実に関して,自白の拘束力(不可撤回効・審判排除効)が生じているのです。



そこでこの拘束力の生じている主要事実の自白についての撤回の要件が,ここで論ぜられているのです。

これを金銭消費貸借についてみてみます。
択一でよく問題となる金銭消費貸借契約の「成立」の主要事実は(*注1)
@ 金銭の返還合意(返還約束)
 と
A 金銭の交付(要物性)
です。
この事実に,自白の拘束力が生じています。

この主要事実である@金銭の返還合意とA金銭の交付,これらすべての事実でもいいですし,片一方の事実でもいいです。
これら主要事実について,自白の撤回が問題となっているのです。

もう一度確認してみてください。

ただ,撤回することができるといっても、いつまででもできるわけではありません。
ものには限度というものがあります。
訴訟遅延の原因を作ってもらっては困るわけです。

そのため民訴法157条1項には,こう書いてあります。
「当事者が故意又は重大な過失により時期に遅れて提出した攻撃防御の方法については,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは,裁判所は,申立てにより又職権で,却下の決定をすることができる。」

ですから,訴訟遅延とならぬよう,適時に,自白の撤回を行わなければなりません。そうでなければ,却下の憂き目にあうこともあります。



ところで,間接事実や補助事実は,弁論主義(第1テーゼ・第2テーゼ)の適用対象にはなりません。判例,通説は,間接事実や補助事実については,自白の拘束力を認めていません。

そうすると,ここでまた問題です。

補助事実に自白の拘束力が認められないというのであるならば,文書の成立の真正も補助事実です。
よって,被告が金銭消費貸借証書の文書の成立の真正を認めても,これには自白の拘束力が及びません。

したがって,自白の撤回の要件である
1 相手方の同意がある場合
2 刑事上罰すべき他人の行為(相手方を含む)により,自白するに至ったとき
3 反真実,かつ錯誤がある場合
これらいずれの要件にも該当していなくても,文書の成立の真正を一旦認めた被告は,後になってこれを撤回することができるのです。                                                         以  上






[以下、処分証書に関する認否・立証・反証・裁判所の判断等について、余論として述べさせていただきます。]


なお,補助事実は,本来立証責任(客観的証明責任)を観念しないものですけれど,民訴法228条1項には,「文書は,その成立が真正であることを証明しなければならない。」と規定し,敢えて「証明しなければならい。」と明言しております。

ですので,原告には文書の成立の真正に関する証明責任の適用があります。

文書の成立の真正に関する事実は補助事実ですけれども,証明責任(客観的証明責任)が原告に課されているわけです。

そこで,被告が,文書の成立の真正を否認しても,文書の成立の真正の立証責任は,原告にあるままで,被告には立証責任が転換されないという例のあの論点に辿り着くわけです。

これを先の貸金返還請求訴訟の例で考えてみますと,以下のようになります。

貸金返還請求訴訟において,お金を返せと請求する立場の原告には,借用証書の文書の成立の真正について,証明責任があります。原告に立証責任があります。
これに対して,被告には,文書の「不」真正についての立証責任はありません。

ごくごく簡単に言いますと
「私は,この借用書を知らない。息子が勝手に私の印鑑を冒用して,私の名前を書いただけです。この文書は偽造です。」と被告が否認したとします。

右矢印1(ところで、なんでこんなにくどくどと、文書の成立を否認するのに理由を言わなければならないのでしょうか!?
それは、民事訴訟法規則145条が「文書の成立を否認するときは、その理由を明らかにしなければならない。」と規定しているからです。)





そうなりますと,原告には,「その借用書は偽造ではありませんよ。本物ですよ。」と証明する責任が生じてきます。裁判官に「本物」であることを「確信」させる立証責任が生じてきます。そこで、民事訴訟法228条4項の「二段の推定」の出番となるわけです。


成立に争いのある私文書に本人の印章による印影が存在する場合には,その印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され,ひいては当該私文書が真正に成立したものと推定される。(司法試験予備試験 短答式 平成30年度第40問肢4)




一方、被告は裁判官に偽造であることを「確信」させるまでの立証をする必要はありません。
厳密には「反証」そのものではありませんが、しかし、文書の成立の真正につき、裁判官に確信を抱かせないようにする程度の反証活動すれば、それで足ります。

被告は,借用書について、裁判官に偽造の「疑い」「懸念」を生じさせれば、それで十分なのです。


以上は、被告が借用証書につき、文書が真正に成立したことを否認した場合ですが、勿論、文書の成立の真正を認める(争わない)場合もあるわけです。

その場合には
文書の成立についての自白は裁判所を拘束するものではないが,私文書の成立について当事者間に争いがない場合には,裁判所は,証拠に基づかなくても,当該私文書が真正に成立したものと認めることができる。(司法試験予備試験 短答式 平成30年度第40問肢1)

ということになります。


また、逆に被告が借用証書につき、文書の成立の真正を認める(争わない)場合においても、それでもなお裁判所は、借用証書が偽造であることを認定できます。
文書の成立についての自白は裁判所を拘束するものではないからです。

その場合には

消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟において,原告が借用証書を書証として提出し,被告が当該借用証書が真正に成立したことを認める陳述をした場合においても、裁判所は,当該借用証書が真正に成立しなかったものと判断することができる。


ということになります。



これには、司法試験予備試験 短答式 平成29年度 第38問において、誤りの肢として出題された肢1を、「正しい肢に書き換える」ことで参考に供することができます。

(誤りの肢)

1.売買契約に基づく代金請求訴訟において,原告が売買契約書を書証として提出し,被告が当該売買契約書が真正に成立したことを認める陳述をした場合には,裁判所は,当該売買契約書が真正に成立しなかったものと判断することができない。




これを「正しい」肢に書き換えますと、以下のようになります。

すなわち、

1.売買契約に基づく代金請求訴訟において,原告が売買契約書を書証として提出し,被告が当該売買契約書が真正に成立したことを認める陳述をした場合にはにおいても,裁判所は,当該売買契約書が真正に成立しなかったものと判断することができないできる。


ということになります。


           


今回は自白の撤回の要件について,お話しさせていただきました。

                                       以  上
 
(*注1)「貸借型理論」によるのであれば、以下が要件事実である。

@ 金銭の返還合意(返還約束)
A 金銭の交付(要物性)
B 金銭の弁済期の合意
C 弁済期の到来




[参考文献]
民事訴訟法講義案 (三訂版) 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会
民事訴訟法 [第7版] 上田徹一郎 著  法学書院
など








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2017年04月16日

(司法書士試験) えっ! パスした問題のマーク欄に,次の問題のマーク ?


今回は,マーク―シートのマークミスの話です。

マークシートのマークミスは,手痛い結末を招来します。一年一回の試験では,また来年ということになります。

来年まで知識を維持するのは,大変です。
また,ピークまでもっていくのには,同じことの繰り返しで,人間は同じことを繰り返すことに苦痛を感じます。

ですから,絶対にマークミスはあってはならないことです。

例えばマークミスで,こんなことがあると大変です。

解けない問題をパスして,次の問題を解いたが,問題を解くごとにマークをしていったため,解けなかったパス問題のマーク欄に,次の問題の解答を塗りつぶしてしまった。

問8をパスして,問9を解いたが,問9の解答を問8のマーク欄に塗りつぶしてしまった。

それを気付かずに,そのまま問題を解くごとにマークを塗りつぶしていった。
そして35問まで解答していった。
ところが34問目のマークで,もう一つマーク欄が余った。

そこで,初めてマークミスに気付く。

それが,試験終了前1分を切っていた。
すべてのマークをやり直すのには,時間が足りない。


血の気が引く瞬間です。


こんなことだってあり得るかもしれません。


私は,後で解こうと思ってパスした問題のマーク欄に,次の問題の答えをマークして,マークシート欄の解答ズレを起こしたことがあります。

私は,大抵全ての問題を解いてから,最後にマーク―シートを塗りつぶします。
しかし,このときは解き残し3問くらいの問題があるうちに,32問分くらいのマークをしはじめたのです。

これが原因で,解き残し問題のマーク欄に次の問題のマークをしたのです。
結果,答練で解答ズレのマークミスをしでかしたのです。


これが答練だからよかったのです。


パスして問題を解いたときには,マーク欄を間違えていないか,よほど注意深く確認してマークをしないと大変なことになります。

マークは,絶対に正確につける,これを心に誓います。


心に力強く誓う。
これだけで,だいぶ違うと思います。



マークは,絶対に正確につける!!

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2017年04月15日

(司法書士試験) 択一 と 無念無想

                  択一 と 無念無想


司法書士試験の午前の択一も,午後の択一も,1ページ目を開いた瞬間に,あれっ!と一瞬凍りつく問題がだされていることがあります。

ページを開いた瞬間,頭の中が,真っ白になる。
周りの受験生のページを開く音もなにも聞こえなくなる。
いい意味なのか,悪い意味なのか,これぞ無念無想の境地です。

いやいや,択一問題サクサク解いて,集中して周りが気にならない,聞こえないならいいんです。
そうじゃなくて,問題が解けなくて,視野の狭窄,思考の狭窄が生じて,無念無想なんです。

心臓の鼓動がバクバクして,ちょっと息が苦しいかもしれない。ちょうど,かけっこするときの,あのスタートの瞬間,あれです。

これ,試験問題作成者の策略です・・・・。
・・・・いえいえ,一生懸命に問題の配列をお考えになったのでしょう。

過去問そのまんまの焼き直しじゃ,暗記したものだけが,受かってしまう。合格した後が心配だ。

さりとて,受験生の鉛筆転がしで合格して貰っては,司法制度の危機に陥ります。

ほどよい問題を出題したい。

受験生が勉強した成果を問いたいけれども,そうはいっても「全員が全員順調に問題解けました。」といったら,今度は基準点どうしよ。試験問題作成側もそりやぁ大変です。

そこで,考えた。
しょっぱらの1ページ目で,ちょっと宙を舞ってもらいましょう。白日夢みてもらいましょう。

しょっぱらの第一問目でああでもない,こうでもないと悩んでもらって,時間をつぶしてもらいましょう。
これが試験問題作成者の策略と言わないでなんといいましょうか。(冗談ですよ。本気にしないで下さい・・笑)


いや撤回します。

これが試験問題作成者の策略と言わないでなんといいましょうか。(冗談ですよ。本気にしないで下さい・・笑)


あっ! また,言ってしまった!

今度こそ,撤回します。

これが試験問題作成者の策略と言わないでなんといいましょうか。


話を戻しまして,

しょっぱらの第一問目でああでもない,こうでもないと悩んでもらって,時間をつぶして貰いましょう。これが,問題作成者の狙いです。

その後は,崩れる人は,崩れるし,持ち直す人は,持ち直す。

ちょっと手厳しいけれど,試験制度の政策上,どうしようもない。

互角の人間が戦うのだから,なにかしら,そこに仕掛がないと,合否を決める点数の差がつかない。厳しい現実です。

本当に,大変です。問題を作る側も。解く側も。

そこでです。
受験生としては,心構えをしておきます。

1ページ目に,足止め問題出たら,ひとまず冷静に考えて,とばす。つぎの問題にいく。
これをやると,ずいぶん問題を解く流れのスムーズを維持できます。

ただ,受験生にこう考えている人が多いとわかると,今度は,23問目に手のかかる問題をズラして,配列を変えて出題してくることも考えられます。
あるいは,問題配列の中盤あたりで・・一問。
ともかく,問題配列上,最初の方で,手のかかる問題が故意に出題されてくることがあると一応考えておけば,なにかの時に役立つかもしれません。


以上は,インパクトを持たせるためユーモアを交えて書きました。
ちょっとリラックスしていただけましたでしょうか。
受験勉強応援しております。
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2017年04月14日

民訴法228条4項 二段の推定に対する反証・ ・ ・考慮すべきキーワードとは?!

            民訴法228条4項の二段の推定に対する反証

民訴法228条4項は,一段目の推定も,二段目の推定も,事実上の推定ですから「立証責任の転換」はなく,被告に否認されたら,被告の立証活動としての反証活動に対して,原告は本証を行わなければなりません。

すなわち,一段目の推定の否認反証に対しては,私文書の当該署名,押印が被告本人の意思に基づく署名,押印であることにつき,原告は本証しなければなりません。

また,二段目の推定の私文書の作成が,被告本人の意思に基づいて作成された文書ではないと否認反証されたら,当該私文書が被告本人の意思に基づいて作成された文書であることにつき,原告は本証しなければなりません。

本証は,裁判官に確信を抱かせるまでの心証度を要求する立証活動です。
これに対して,反証は,裁判官の確信を動揺させ,真偽不明の状態にすればよい立証活動です。事実が存在しないことを裁判官に確信させる必要はなく,あくまで裁判官の事実が存在するとの確信の心証をぐらつかせ,事実の存否不明,真偽不明の状態に裁判官の心証をすれば足りる立証活動です。

反証は,文書の成立の真正に疑念を生じさせれば足り,文書の不真正まで立証する必要はないということです。
さらに簡単に言うと,偽造であると確信させる必要はなく,偽造かもしれないとの合理的疑いを,裁判官に生じさせれば足りる立証活動です。



        第1 民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証

これは,本人は,署名をしていないし,また押印もしていない,さらに印影も自分の印章のものではないと否認する場合の反証です。

1(本人の印章,署名でないことの反証)
私文書の印影に対応する印章が,第三者が勝手に印鑑登録した印章であるとか,家族等の共用,共有にかかる印章であって,本人が,自分ひとりで所有管理し使用している印章でない場合等,そもそも「私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」と規定する民訴法228条4項の「押印」に対応するところの「印章」じたいに該らないとする反証活動です。
また,本人は全く署名したことはないとの反証です。

反証の具体例
(1) 第三者が勝手に印鑑登録した印章
(2) 家族との共用又は共有にかかる印章
(3) 第三者との共用又は共有にかかる印章
(4) 第三者による署名
であるとの反証

2 (本人の印章の印影ではないことの反証)
第三者が,被告本人のものと同一の印影を有する印章を入手して,これを押印した蓋然性が高いとする反証。
これは,文房具店で販売されているような三文判を,印鑑登録してしまっているような場合に生じ得る事案における反証です。



        第2 民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証

印章を紛失した,盗取盗用された,預託目的外に使用された等の反証をします。
これにより,[被告本人の意思に基づく]押印を否認します。

具体的には,
1 印章紛失
2 印章の盗取盗用
3 預託目的外使用
4 私文書の記載内容,体裁,作成経緯の不合理,不自然性
5 強迫されて署名した(署名の場合)
等の事実を抽出して反証を展開します。

コメント

2の印章の盗取盗用にいては,
@印章の保管状況
A印章の種類
B印章の使用された状況 
C盗取者と印章専用者(印章の所有者)との関係
等の事実を抽出して,反証を展開します。
反証においては,家族の者が,印章を入手しやすい状況であったのか否か,実印(印鑑),認印(三文判)いずれの印章であったのか等事実を拾っていくことになります。



        第3 民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証

署名,押印後に被告の意思に基づかない(合意のない)内容の私文書が作成されたとする反証。

例えば,
1 「白紙」に署名,押印後,合意に反する条項等の記載がなされた
2 署名,押印後,私文書の内容の改ざん,変造等がなされた
との事実を抽出して,反証を展開します。



[若干の説明]

冒頭において,「反証」と言わず,わざわざ「立証活動としての反証活動」と回りくどい言い方をしたのは,補助事実には,主要事実と異なり,本来的には立証責任(客観的証明責任)を観念しえないためです(「本証」は立証責任を負担する者の立証。「反証」は立証責任を負担しない者の立証。「本証」「反証」は本来的には,これらを意味する。)。裁判所職員総合研修所監修の民事訴訟法講義案(三訂版)が,補助事実には本証・反証の観念を持ち込む余地はないとして,「立証活動としての反証活動」という文言を使用していることに依拠したものです。

ただ,ここまで認定考査において厳密に言わなくともいいような気がします。言わんとするところは,本来の本証と反証の概念とほとんど同じだと思われます。裁判官に確信させるのが本証であり,その裁判官の確信をぐらつかせ動揺せしめ疑念を生じさせるのが反証です。言わんとするところは同じでしょう。
したがって,本文記載においても,厳密な使い分けはしておりません。


認定考査においては,時間も答案用紙のスペースにも限りがありますから,単に「本証」,「反証」と書いても,問題ないと私個人は思います。そもそも認定考査の答案採点者である弁護士の先生も,「立証活動としての反証活動」という厳密な概念定義自体に,馴染みがない,知らないように思われます。
したがって,繰り返しになりますが本文記載においても,厳密な使い分けはしておりません。

また、訴訟においては,これは一段目の推定に対する反証活動であるとか,これは,二段目の推定に対する反証活動であるとか,明確な区分けを意識した反証活動が行われているわけではなく,ただ被告本人の反証に有利で重要な間接事実の主張とこれらの立証が,代理人によって行われているのが多くの現実であろうと思われます。

さらに,民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証と,同条同項の一段目の推定そのものに対する反証を区別せずに,両者ひっくるめて論じている文献もあり,これらを区別することに特段の有意味を見出せないかもしれません。

しかし,頭の整理には,「非常に」役立つと思います。そのため私は,説明の便宜上区別して説明しました。





(追記)
民訴法228条4項の二段の推定に対する反証の論点は,刑法の視点で考えると分かり易いと思います。

民訴法228条4項の一段目の推定の「前提問題」に対する反証は,ごく簡単に言うと,筆跡,印影の同一性の問題で,印影,筆跡の同一性が認められなければ構成要件該当性じたいが認められない。

筆跡,印影の同一性が認められると,民訴法228条4項の一段目の推定の構成要件該当性が認められる。
構成要件該当性が認められると違法性,有責性が推定される。
すなわち,署名,押印が本人の意思に基づくものと推定される。これが刑法の違法性,有責性が推定されるのと似ています。

そして,違法性阻却事由,責任阻却事由に相当するものが,民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証であり,民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証です。

また,犯罪の立証における証明責任を検察官が負い,被告人は負わないのとも似ています。
これは,民訴法228条4項は,一段目の推定も,二段目の推定も,事実上の推定ですから「立証責任の転換」はなく,被告に否認されたら,被告の立証活動としての反証活動に対して,原告は本証を行わなければならない,これと似ています。

そして,民訴法228条4項の一段目の推定,二段目の推定に対する,被告の立証活動としての反証活動は,違法性阻却,責任阻却の争点形成責任に類似しています。

「文書の成立を否認するときは,その理由を明らかにしなければならい。」と民訴規則145条は規定しているからです。しかも,被告の立証は,反証で足りる。これも,刑法(刑事訴訟法)と「感覚的には」類似しています。


                                        以   上







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