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2018年08月10日

[要件事実] 過失(不特定概念)と主要事実 の 論点

[要件事実] 過失(不特定概念)と主要事実 の 論点

過失(不特定概念)と主要事実の論点については、是非とも理解が必要です。択一だけの司法書士試験においては(しかもたったの5問、かつ、理解というよりほとんどが条文の暗記だけ)、この論点に関する理解が及んでない合格者が多いようだ、これが私の実感です。そのため、今回この論点を取り上げさせていただきました。

(なお、学説には、@主要事実適用説、A主要事実・間接事実適用説、B主要事実・準主要事実適用説、C個別判断説等がありますが(民事訴訟法・上田徹一郎著・法学書院・参照)、私の記載は極めて単純化したオーソドックスな説明に終始しております。あらかじめご承知おきください。
学者・実務家の諸先生方が精緻な議論を展開しておられます。
より正確な理解のためには、是非、諸先生方のご著書をどれか一つお読みになられてください。(例えば、弁論主義は主要事実にのみ適用されるとの説に反対する学説もあります。ただし、有限な勉強時間からすれば、試験対策上、いろいろな議論に深入りする時間的余裕もありません。典型的な基本書を通読すれば、それで十分でしょう。)





1 過失を主要事実とする考えでは、訴訟が空転する

過失を主要事実とする考えでは、訴訟が空転する。

過失という、言わば不特定概念・規範的要件(具体的事実に対する裁判所の法的評価・規範的評価)そのものを主要事実とするのでは、訴訟当事者は、何を攻撃防御の目標にして訴訟活動を行ってよいのか、分からなくなってしまう。また、裁判所も訴訟運営の方向性、判決に至るまでの判断対象に窮する。


当該交通事故(物損事故)の損害賠償請求訴訟において、「脇見運転」を争点とすればよいのか、「スピード違反」を争点とすればよいのか、はたまた「適切な車間距離を保って走行していないこと(車間距離不保持運転)」を争点とすればよいのか、訴訟当事者、裁判所としては、まったく訴訟の主題自体が見定まらないことになってしまう。


2 これは弁論主義を考えれば明らかである

これは弁論主義を考えれば明らかになります。

弁論主義は、主要事実に適用される。

まず、このことを確認しておきます。



次に、弁論主義の第1、第2、第3テーゼを確認しておきます。

[第1テーゼ:主張原則] 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎(裁判の資料)としてはならない。




[第2テーゼ:自白原則] 裁判所は、当事者の争いのない事実(自白事実)は、そのまま判決の基礎(裁判の資料)としなければならない。




[第3テーゼ:証拠原則]  裁判所は、争いのあるを事実を証拠によって認定するには、当事者の申出た証拠によらなければならない。これにより職権証拠調べの禁止が導かれます。




以上の三つです。





このうち第1テーゼが、典型的によく引き合いに出され問題とされます。

[第1テーゼ:主張原則] 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎としてはならない。


この主張原則からは、仮に過失といった抽象的な規範的要件・不特定概念を弁論主義の適用のある主要事実と捉えてしまうと、次のような不都合が惹起されます。

すなわち、例えば交通事故(物損事故)において、

原告が被告の一時停止義務違反(道交法第43条)を主張立証し、これに呼応して被告も同義務違反がないことを反証していたとします。

そうしていたところ、過失とい抽象的な規範的要件・不特定概念を弁論主義の適用のある主要事実と捉えてしまうと、裁判所が被告の前方不注視をいきなり認定して、原告の被告に対する、不法行為に基づく損害賠償請求権を認容する判決を言い渡すことが可能となってしまうのです。



具体的事実である一時停止を行わなかったこと、あるいは前方注視を行わなかったことは、弁論主義の適用のある主要事実ではなく、被告の過失という主要事実を立証する間接事実の一つとして位置づけられてしまうからです。

間接事実には、弁論主義の主張責任の適用がなく、したがって、証拠調べ等で現れれば、裁判所は当事者の主張なくして事実認定を行い、裁判の基礎とすることが可能となってしまうのです。




過失という不特定概念・規範的要件を主要事実と考えると、このような不都合が起きてしまいます。



これでは、被告に対する不意打ちも甚だしい。



そこで、過失という不特定概念・規範的要件ではなく、過失を構成するところの、一時停止を行わなかったこと、あるいは前方注視を行わなかったことに該当する具体的事実を主要事実として、かかる行為の不作為を義務違反として捉え、被告の過失を裁判所は認定するのです。(*注1)



このように具体的事実を主要事実とすれば、弁論主義の第1テーゼである主張責任が適用される結果、原告が被告の一時停止義務違反を主張立証し、これに呼応して被告も同義務違反がないことを反証していたところ、裁判所が被告の前方不注視をいきなり認定して、被告の不法行為責任を認める判決を言い渡すことは弁論主義違反となるのです。

裁判所は、当事者の主張しない事実(=前方不注視)を判決の基礎としてはならないのに[第1テーゼ:主張原則]、これに反して、前方不注視を判決の基礎としたからです。

(⇒訴訟において当事者が主張立証(本証)・反証していたのは、一時停止の有無だったはずです。)

以上から、裁判所は、過失という不特定概念・規範的要件ではなく、過失を構成するところの、具体的事実を主要事実と捉えるのです。(勿論、これは一つの見解、学説です。)


敷衍すれば、過失は裁判所の法的評価であって、当該過失を具体的に構成し、基礎づけているところの「脇見運転」、「酒酔い運転」、「スピード違反の運転(法定のスピードを超過する運転)」、「一時停止義務違反の運転(一時停止を行わない運転)」、「徐行義務違反の運転(徐行を行わない運転)」、「車間距離保持義務違反の運転(車間距離を適切に保持しない運転・車間距離不保持運転)」に該当する具体的事実そのものが、主張責任の及ぶ、すなわち、弁論主義の及ぶ主要事実となります。



まとめ 過失を基礎づける具体的事実を主要事実と捉える

過失と主要事実の論点においては、「弁論主義や被告に対する不意打ち防止等の観点から、過失を基礎づける具体的事実を主要事実と捉える。」、このような考え方があることを理解します。(勿論、これは一つの見解、学説ですが・・・。)






(*注1)過失を構成するところの、一時停止を行わなかったこと、あるいは前方注視を行わなかったことに該当する具体的事実が、評価根拠事実であり、主要事実である、とも言える。


余談:訴状に単に「被告に過失がある」とだけ記載し、過失を構成する具体的事実を記載しないで起案した特別研修受講生がいたとすれば、注意喚起が必要でしょう。また、弁論主義や被告に対する不意打ち防止等の観点から、過失を基礎づける具体的事実を主要事実と捉えること(これは一つの説明の仕方(見解・学説)ではあり、他の説明の仕方も勿論あるが)(*注2)、このことを特別研修受講生に対して、説明しない、あるいはできないチューターがいたとしたら、司法試験型の民事訴訟法の勉強による基礎固めが是非とも必要なのではないでしょうか。直截にいいますが、司法書士試験における択一の民事訴訟法の勉強だけでは極めて不十分であると思われます。
これは、司法書士試験に欠陥があると言っているのではありません。司法書士試験の民事訴訟法の択一問題は秀逸です。ただ、合格後に民事訴訟法のさらなる高みを目指して、勉強をする必要があるのではないでしょうか、こういった問題意識の私なりの発露に他なりません。ご理解賜りたく存じます。


(*注2)他の見解・学説によるのであれば、その見解・学説の説明を是非とも行わなければ、過失・不特定概念に関する特別研修受講生の理解が十分になされないまま特別研修が終わってしまうことになるのではないか、こういった一抹の不安が生じます。

























2017年11月06日

簡裁訴訟代理等能力認定考査 合格のための 勉強会について

             認定考査 合格のための 勉強会



私自身は,簡裁訴訟代理等能力認定考査合格のための試験勉強会については,余り意義を見出せないのですけれども,それは人によってそれぞれでしょう。もし,勉強会を開催されるということであれば,その参加者をよくよく吟味する必要があると思われます。


例えばの話ですが,自己主張が強すぎるのにもかかわらず,いざその人の作成した準備書面を見ると,まるで要点整理ノートの1ページを破いてきたのかと思われるような,およそ準備書面の体を成していない書面であったり,

また,その内容を見ても,事案の争点を把握しているとは到底思えない書きぶりなど,事案分析能力,事実認定力,要件事実の理解力等に乏しいと思料される特別研修受講生も存在するかもしれません。


しかも,かかる特別研修受講生のなかには,特に自己主張が強く,人の言い分にほとんど耳を貸そうとせず,人物攻撃,人格攻撃ばかりに腐心する大人げないものもいるかもしれません。(*注1・余談)(*注2・余談)


かりにかような特別研修受講生と勉強会を開けば,誤った方向へと議論が強引に導かれ,何の益にもならないばかりか,かえって有害ですらありましょう。(*注3・余談)


やはり直観力で感じた優秀と思われる特別研修受講生を含めて合計で2,3人,多くても4人くらいの人数で,勉強会をするのがよいでしょう。



その際も,勉強会に集まる者のうち半数以上は,予備校の講義を受講している者が含まれていることが,本来的にはより安全と言えるでしょう。

議論が誤った方向に行くのを食い止めてくれる可能性が高くなるからです。


そしてまたこれも忘れてはならないことですが,常識的な意味で適度な協調性のある特別研修受講生であるかどうかも勉強会メンバーの選択にあたっては重要な点であるということです。



以上,簡裁訴訟代理等能力認定考査の合格のための勉強会メンバーについては,よくよく吟味されることをお勧めいたします。 
                                          以 上
                                         
                                            



(*注1・余談) このような特別研修受講生は、法律事務所や司法書士事務所に入っても人との衝突ばかりを無用に引き起こし、周りに嫌な思いをさせ迷惑を掛けるばかりでしょう。
弁護士倫理、司法書士倫理に反しない範囲で、依頼者の利益を最大限追及し、適正・迅速に業務を遂行していかなければならい事務所にとって重い負担となりえます。

裁判業務においては、事務所の先輩、同僚、後輩等と礼儀に反しない、冷静な話し合いや、協議・相談のもとで、訴状、答弁書、準備書面等を作成して、弁護過誤をおかさないように業務を遂行していかなければならなりません。こうして作成された書面について、最終的にボス弁等の決済を受けるのです。(これは事務所の形態として、ありうる一つのパターンです。)

人との話し合いを自己顕示欲を満たす競争の場と捉え、相手の一言一言を逐一自己に対する攻撃とみなし、これに反感を抱き、親切な心ある相談・協議相手に対してさえ攻撃的姿勢ばかりを取るようでは、このような者は事務所経営にとって有害です。懲戒処分と隣り合わせの厳しい業務の中にあっては、本来、人との助け合いが心から有り難いものと感じられるはずです。

一人の資格者の失敗が、事務所経営を危険に晒すことがありうることに思いを及ぼすべきです。事務所の経営が安定的であって、初めて資格者、事務職員等の生活が成り立つのです。事務所に何かあれば、所属している弁護士、司法書士、パラリーガル等の生活が脅かされうる、このことにもっと思いを馳せるべきでしょう。

風通しのよい職場環境が求められるのは、なにも格好つけてのこどてはありません。これには弁護過誤をなくし、所員一人一人の生活を安定させるという切実な思いがあるのです。このことを、今一度自覚する必要があるのではないでしょうか。

こういったことが分かっていれば、特別研修にあっても、大人らしい社会人の態度がとれるはずです。

(*注2・余談) このような特別研修受講生は、実務に出ても依頼者との面談において、そのデリカシーに欠ける言葉遣いにより、依頼者の気持ちを逆撫でするようなことすらやらかしかねない。

(*注3・余談) このような特別研修受講生が、班別で提出すべき書面を滅茶苦茶なものにしてしまうのでしょう。


                                           



(定評ある参考書)
要件事実の考え方と実務[第3版] 加藤新太郎・細野敦 著  民事法研究会
認定司法書士への道 要件事実攻略法[第3版] 伊藤塾講師 蛭町浩 著  弘文堂
司法書士簡裁訴訟代理等関係業務の手引き 平成29年度版
日本司法書士会連合会 編 日本加除出版






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2017年04月21日

簡裁訴訟代理等能力認定考査の合格の仕方  その3


           簡裁訴訟代理等能力認定考査の過去問の重要性




今回認定考査の過去問を解くことの重要性について,お話しさせていただきたいと思います。



1 合格40点ボーダー滑り込みにおける過去問の重要性

過去問を解くことは,簡裁訴訟代理等能力認定考査の合格にとって必須の条件であると思います。
司法書士試験の択一過去問の勉強が,司法書士試験合格に必須の条件であるのと同様です。

認定考査においても,過去で問われたのと同じような問題が結構の頻度で繰り返し出題されます。この既出あるいは既出に極めて類似する問題で点をとれないとなれば,とてももったいないことです。

特に40点ボーダーに位置している受験者にとっては,とても深刻な問題となります。
過去問をつぶしておけば,37点が40点になった。あるいは過去問つぶしをしていれば,もっとうまく書けたはずだ。そうすれば加点されて39点が40点になったはずだ。
こういう後悔をすることにもなりかねません。

多くの受験者は当然過去問をつぶしてくるはずです。
認定考査は70点満点中40点以上を合格点としています。この合格点に至る採点の基準が,純粋の絶対評価なのかそれとも相対評価(の要素を一部取り入れた基準)なのかについては私には分かりません。

採点基準がどちらなのかは,受験者の方が巷でいろいろと言われていることを聞き知っていらっしゃるので,その内容についてはご存じであろうと思います。しかし,正直言って私にはどちらなのか分かりません。

もし仮に相対評価(の要素を一部取り入れた基準)だとしたら,過去問をつぶしてきた人とそうでない人とではその分差がつきますが,そのついた差は大きいと言わざるを得ません。

またそもそも過去問を解かずして,どのようにして認定考査突破の実力をつけることができるのかも疑問です。

ですから,いずれにせよ過去問つぶしは認定考査合格にとっての必須の条件であろうと思います。



2 実際の「手書き解答」の大切さと,問題文の解答形式に慣れることの重要性

問題文については,(原告)Xの言い分形式,(被告)Yの言い分形式という形で出題されています。言い分形式は,依頼者の方が実際に相談に来られた際の聴取内容に似せているのでしょう。

この言い分が年々長文化してきています。まずこの言い分自体を最後まで読み切るのに一苦労だろうと思います。

この言い分には当事者の気持ち,認識,請求内容,反論内容,紛争に至る経緯等が書かれているわけですが,その中には問題を解答する上で必ずしも必要のない事実までも敢えて記載されています。

請求原因事実や抗弁等に必要のない事実までも敢えて記載されています。
要件事実に必要な事実もあれば,不要な事実も書いてあるわけです。

このX,Yの言い分から請求原因事実や抗弁等に必要な事実を拾い出す練習を行わなければなりません。

この練習においては頭の中だけで一応要件事実を思い浮かべることができるかもしれません。しかし,これを実際に紙に書く段になると大分勝手が違ってきます。

実際紙に書いてみると案外完全には書けないものです。なにかしら間違えるものです。
ちょっとした間違いと思われたものが,実は要件事実的には致命傷だったということも十分ありえるわけです。

ですから実際に紙に書いてみて細かい間違いを修正していく作業がどうしても必要となります。

( 同様のことは,請求原因事実や抗弁等の要件事実の記載問題の解答だけでなく,司法書士倫理,簡裁訴訟代理等関係業務における業務範囲,業務規制等の問題についてもいえます。これらについても実際に解答を紙に手で書いて練習しなければ,認定考査における得点は難しいでしょう。)


また,問題文に解答の仕方の細かい指示が記載してあります。この細かい指示に従った解答をするという練習も必要です。(ことに請求原因事実や抗弁等の記載の仕方についての指示は要注意です。)

解答の指示に従わなかったがために,検討ハズレのことを書いてしまったということにもなりかねません。あるいは解答の指示に従わなかったことによる減点の恐れもあります。

また解答用紙に「300字以内」で解答しなさい。解答用紙に「350字以内」で解答しなさい。こういった字数制限の問題もあります。これは厄介な問題です。

行形式の解答用紙に300字「程度」で解答を書きなさいという問題であればよいのですが,これが仮に原稿用紙の形式で解答部分が作成されている字数制限の厳格にある問題であるとしたならば,これはとても厄介です。

鉛筆書きであれば消しゴムで消して,書き直しができ気もずいぶんと楽なのですけれども,ボールペン書だとこれができません。さらに解答用紙のマス目が小さければ,書き直すこと自体至難の業です。

ですから原稿用紙を実際に使って○○字以内で書きなさいという問題の練習を,実際に手で書いて練習する必要があります。



3 解答時間は思ったよりも長くない,年度によってはバラつきがある

時間の配分にも十分に注意をしなければなりません。すんなり書けてしまうこともあれば,かなり手古摺るということもあります。年度ごとの問題の難易によるバラつきや,自分自身の得意分野,不得意分野によるバラつきがあります。

2時間という解答の制限時間は思ったよりも長くなく,むしろ短いと感じることも十分ありえます。

これは,実際に書いて練習してみないと分からないことです。



4 過去問の練習量と解き始める時期

過去問は平成28年度までで既に15年分もの蓄積があります。
これを一日一問ずつ解くとしても,2週間と1日を要します。

最低でも2回以上(私は人によっては3回以上必要であると考えますが),各年度の過去問の「手書き」解答練習を行わなければなりません。
そうするとこれを一日一問ずつ解くとしても,4週間と2日を要します。

従いまして,できれば4月末までには,全年度の過去問の手書き解答練習を行い始めた方がよいと思います。

2時間の解答時間は結構苦痛です。1時間30分で書き上げたとしても,知力,体力ともに思ったよりもかなり消耗します。

ですから切羽詰まって一日3問も手書き解答練習を行うというのは,かなり苦痛だと思われます。

できるだけ早い時期に手書きの解答練習を行う必要があります。



5 認定考査における解答量のボリュウムや解答文章の内容密度を実感する

認定考査の解答用紙がどういうものかということについても,もしご覧になる機会があったならば実際にご覧になられた方がよろしいかと思います。解答用紙の解答欄を見ないと,どれだけの解答ボリュウムで論述等を書いてよいのか分かりづらいと思います。これは結構不安になるのではないでしょうか。

予備校の模擬試験の解答用紙でも,大体の解答ボリュウムの感覚が掴めます。
実際の認定考査の解答用紙に似せた予備校の解答用紙をご覧になられる機会のある方ならば,これをご覧になってその解答欄における解答ボリュウム感を実感してみることも大切かと思います。

この解答ボリュウム感については,市販の過去問集や予備校の解答例集等も参考にしつつ,予想される解答用紙の解答欄,ご自分の普段書いておられる字の大きさ,ご自分の論述の仕方,癖等を考えあわせて,解答ボリュウム感覚をあらかじめ掴んでおくことが大切かと思います。

また解答における文章の内容密度も,解答例集で確認された方がよいと思います。
「このくらいのことを書くことが要求されているのか。」ということが分かります。

できれば市販の過去問集及び予備校の解答例集で,ご確認なさった方がよいと思います。解答内容の密度におけるだいたいの平均値の感覚が掴めると思います。

それと,予備校の予想問題についても,これがもし実際に出題された場合には,そこで問われた論点を知っている人と知らない人とでは点数に差が付きます。どんな論点が問われたかくらいのことは,ご友人から聞くだけ聞いてみることくらいのことをしても問題はないのではないでしょうか(ちなみに私は,認定考査合格の最良の安全対策は信頼のおける予備校等を最初から利用することであると思います。もちろん「要件事実の考え方と実務(第3版)加藤新太郎,細野敦 著 民事法研究会」等信頼のおけるテキストの読み込みも極めて重要です。)。



まとめ

全年度の過去問の実際の「手書き」練習はとても大切です。
是非,時間を惜しむことなく全年度の過去問の実際の「手書き」練習を実行されることを強くお勧めいたします。

また信頼のおける市販のテキスト(「要件事実の考え方と実務(第3版)加藤新太郎,細野敦 著 民事法研究会」)等の読み込みもしっかりと行われた方がよいと思います。
これにより要件事実の理解が促進されますし,守備範囲が広がり試験で問われて困る穴がなくなっていきます。
                       


                                         以  上












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2017年04月18日

ちょっと耳寄りな択一知識   民訴択一・・・証拠申出の撤回 (認定考査)


                   証拠申出の撤回



証拠申出の撤回の論点は,司法書士択一民訴,認定考査において,大切です。
特に,認定考査においては,証拠申出の撤回について,そのまま論述を求められる可能性がありますので注意が必要です。

以下,証拠申出の撤回の基本的な枠組みを書きます。参考にしてみてください。



1 証拠の申出は,証拠調べが実施されるまでは,これを申出た訴訟当事者において,何時でも自由に撤回を行うことができます。

2 証拠調べが開始された後は,証拠共通の原則の下で,相手方に有利な証拠資料も顕出されている可能性がありますので,証拠申出をした訴訟当事者は,自ら申出た証拠方法といえども,相手方の同意を得ることなく,これを自由に撤回することはできません。

3 証拠調べが完了した後においては,既に裁判官の心証が形成されてしまっていますので,これを撤回できるとすると,裁判官の自由心証を害し自由心証主義(民訴法247条)に反します。

そのため,証拠調べ完了後においては,自ら有利になるとして証拠申出をした訴訟当事者といえども,証拠申出の撤回をすることはできません。
相手方の同意があっても,証拠調べ完了後においては,証拠申出を撤回できません。



論述のポイントは,証拠調べの「実施前」,「開始後」,「完了後」の3段階に分けて証拠申出の撤回を論ずることです。
以下,キーワードを列挙します。


1 証拠調べ 「実施前」 撤回できる
2 証拠調べ 「開始後」 証拠共通の原則  相手方の同意がないと  撤回できない
3 証拠調べ 「完了後」 裁判官の自由な心証形成を害する  自由心証主義に反する 撤回できない 


                                         以  上












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2017年04月17日

自白の撤回の要件・・・もう一度確認 (司法書士試験・民訴択一,認定考査)


                 自 白 の 撤 回 の 要 件


今回は自白の撤回について,お話ししていきたいと思います。
自白の撤回の要件は,司法書士試験,認定考査において大切です。

自白の撤回の要件
1 相手方の同意がある場合
2 刑事上罰すべき他人の行為(相手方を含む)により,自白するに至ったとき
3 反真実,かつ錯誤がある場合


相手方は,他方当事者の訴訟行為を前提にして,その上に自身の立証活動,訴訟行為を積み重ねていきます。後になって「それは,なかったことにして下さい。」と言われても,
不当に相手方の信頼を裏切るものとして,訴訟上の信義則からも,許されるものではありません。

また,自己に不利な事実を敢えて陳述していることから,それは,真実に合致する蓋然性も高いと言えます。
そのため,自白を撤回するのに特別の要件が課されているのです。

貸金返還請求訴訟を例にとって考えてみましょう。


1 相手方の同意がある場合

訴訟において原告が,確かに借金を返して貰ったといって,被告の借金の弁済の事実を認めたとしましょう。

そのため,被告はつい気を抜いて領収書を処分してしまった。
それなのにその後になって,原告から「やはり借金を返してもらっていない。だから返済の事実を撤回します。」と言われたら,被告としては困ります。

原告の言葉を信頼して気が緩んでいたものだから,何気に領収書を他の郵便物と一緒にシュレッダーにかけて処分してしまったということもあるわけです。この場合,被告は,証拠の散逸,逸失の状態となっています。
  
これを考えると,原告による自白の撤回には,被告の同意を要するとしないと,被告にとってとても不公平な結果となります。
そこで,相手方の同意がある場合が,自白の撤回の要件となっているのです。

この場合,原告の自白の撤回を認めても,原告の自白によって,本来利益を受けるはずであった被告自身が,それでいいと言っているのですから,それ以上に,被告本人を保護する必要はありません。

そのため,被告の同意がある場合,原告の自白の撤回を認めてあげているのです。


2 刑事上罰すべき他人(相手方を含む)の行為により,自白するに至ったとき

原告が,「あんた! 私からお金借りたことに違いはないだろう。」と言って,こわめのお兄さんと二人して睨みきかし,訴訟外で被告を威圧したとします,

気の強くない被告なら「いやぁ借りた覚えはないですけれど・・・。借りましかね・・・。いやぁ,はい,借りました。」なんて,心にもないことを言わないとも限りません。そして,その影響下で,口頭弁論でも自白するとも限りません。

そこで,刑事上罰すべき他人(相手方を含む)の行為によって,自白した者は,自白を撤回できるとしました。

この場合,原告は刑事裁判で,脅迫罪だとか恐喝罪だとかの有罪の確定判決を下されている必要はありません。

被告が,かかる原告の卑劣な行為を,民事裁判で主張,立証すればよいのです。
これを「再審事由の訴訟内顧慮」といいます(再審に関する民訴法338条1項5号,2項参照)。


3 反真実かつ錯誤がある場合

先述のように,自己に不利な事実を敢えて陳述していることから,それは,真実に合致している蓋然性が高いとして,自白の撤回に特別の要件が課されているわけです。

そうであれば,真実に反している場合に,自白の撤回を認めてあげてもいいことになります。

そこで,錯誤,反真実が認められるなら,自白の撤回を認めてあげましょう,ということになりました。
ただ,錯誤の立証は,自白者の内心の問題でもあるわけです。その立証は困難です。

その結果,「真実に反することの証明があった場合には,自白は錯誤によるものと認める。」としたのが判例です。
学説には,「反真実の証明があるならば,錯誤を推定する。」としているものもあります。
両者同じことをいっているのでしょう。

以上が,自白の撤回の要件です。

ただ,ここで注意しておきたいのは,自白の撤回の前提としての自白の拘束力です。
自白の拘束力という場合のその自白とは,一体何の自白について言っているのかです。

それは,主要事実です。
弁論主義の三つのテーゼ

[第1テーゼ:主張原則] 裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎(裁判の資料)としてはならない。(主張責任)


[第2テーゼ:自白原則] 裁判所は、当事者の争いのない事実(自白事実)は、そのまま判決の基礎(裁判の資料)としなければならない。(自白の作用右矢印1不可撤回効・審判排除効)


[第3テーゼ:証拠原則]  裁判所は、争いのあるを事実を証拠によって認定するには、当事者の申出た証拠によらなければならない。(職権証拠調べの禁止)


が当て嵌まる主要事実です。
この主要事実に関して,自白の拘束力(不可撤回効・審判排除効)が生じているのです。



そこでこの拘束力の生じている主要事実の自白についての撤回の要件が,ここで論ぜられているのです。

これを金銭消費貸借についてみてみます。
択一でよく問題となる金銭消費貸借契約の「成立」の主要事実は(*注1)
@ 金銭の返還合意(返還約束)
 と
A 金銭の交付(要物性)
です。
この事実に,自白の拘束力が生じています。

この主要事実である@金銭の返還合意とA金銭の交付,これらすべての事実でもいいですし,片一方の事実でもいいです。
これら主要事実について,自白の撤回が問題となっているのです。

もう一度確認してみてください。

ただ,撤回することができるといっても、いつまででもできるわけではありません。
ものには限度というものがあります。
訴訟遅延の原因を作ってもらっては困るわけです。

そのため民訴法157条1項には,こう書いてあります。
「当事者が故意又は重大な過失により時期に遅れて提出した攻撃防御の方法については,これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは,裁判所は,申立てにより又職権で,却下の決定をすることができる。」

ですから,訴訟遅延とならぬよう,適時に,自白の撤回を行わなければなりません。そうでなければ,却下の憂き目にあうこともあります。



ところで,間接事実や補助事実は,弁論主義(第1テーゼ・第2テーゼ)の適用対象にはなりません。判例,通説は,間接事実や補助事実については,自白の拘束力を認めていません。

そうすると,ここでまた問題です。

補助事実に自白の拘束力が認められないというのであるならば,文書の成立の真正も補助事実です。
よって,被告が金銭消費貸借証書の文書の成立の真正を認めても,これには自白の拘束力が及びません。

したがって,自白の撤回の要件である
1 相手方の同意がある場合
2 刑事上罰すべき他人の行為(相手方を含む)により,自白するに至ったとき
3 反真実,かつ錯誤がある場合
これらいずれの要件にも該当していなくても,文書の成立の真正を一旦認めた被告は,後になってこれを撤回することができるのです。                                                         以  上






[以下、処分証書に関する認否・立証・反証・裁判所の判断等について、余論として述べさせていただきます。]


なお,補助事実は,本来立証責任(客観的証明責任)を観念しないものですけれど,民訴法228条1項には,「文書は,その成立が真正であることを証明しなければならない。」と規定し,敢えて「証明しなければならい。」と明言しております。

ですので,原告には文書の成立の真正に関する証明責任の適用があります。

文書の成立の真正に関する事実は補助事実ですけれども,証明責任(客観的証明責任)が原告に課されているわけです。

そこで,被告が,文書の成立の真正を否認しても,文書の成立の真正の立証責任は,原告にあるままで,被告には立証責任が転換されないという例のあの論点に辿り着くわけです。

これを先の貸金返還請求訴訟の例で考えてみますと,以下のようになります。

貸金返還請求訴訟において,お金を返せと請求する立場の原告には,借用証書の文書の成立の真正について,証明責任があります。原告に立証責任があります。
これに対して,被告には,文書の「不」真正についての立証責任はありません。

ごくごく簡単に言いますと
「私は,この借用書を知らない。息子が勝手に私の印鑑を冒用して,私の名前を書いただけです。この文書は偽造です。」と被告が否認したとします。

右矢印1(ところで、なんでこんなにくどくどと、文書の成立を否認するのに理由を言わなければならないのでしょうか!?
それは、民事訴訟法規則145条が「文書の成立を否認するときは、その理由を明らかにしなければならない。」と規定しているからです。)





そうなりますと,原告には,「その借用書は偽造ではありませんよ。本物ですよ。」と証明する責任が生じてきます。裁判官に「本物」であることを「確信」させる立証責任が生じてきます。そこで、民事訴訟法228条4項の「二段の推定」の出番となるわけです。


成立に争いのある私文書に本人の印章による印影が存在する場合には,その印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定され,ひいては当該私文書が真正に成立したものと推定される。(司法試験予備試験 短答式 平成30年度第40問肢4)




一方、被告は裁判官に偽造であることを「確信」させるまでの立証をする必要はありません。
厳密には「反証」そのものではありませんが、しかし、文書の成立の真正につき、裁判官に確信を抱かせないようにする程度の反証活動すれば、それで足ります。

被告は,借用書について、裁判官に偽造の「疑い」「懸念」を生じさせれば、それで十分なのです。


以上は、被告が借用証書につき、文書が真正に成立したことを否認した場合ですが、勿論、文書の成立の真正を認める(争わない)場合もあるわけです。

その場合には
文書の成立についての自白は裁判所を拘束するものではないが,私文書の成立について当事者間に争いがない場合には,裁判所は,証拠に基づかなくても,当該私文書が真正に成立したものと認めることができる。(司法試験予備試験 短答式 平成30年度第40問肢1)

ということになります。


また、逆に被告が借用証書につき、文書の成立の真正を認める(争わない)場合においても、それでもなお裁判所は、借用証書が偽造であることを認定できます。
文書の成立についての自白は裁判所を拘束するものではないからです。

その場合には

消費貸借契約に基づく貸金返還請求訴訟において,原告が借用証書を書証として提出し,被告が当該借用証書が真正に成立したことを認める陳述をした場合においても、裁判所は,当該借用証書が真正に成立しなかったものと判断することができる。


ということになります。



これには、司法試験予備試験 短答式 平成29年度 第38問において、誤りの肢として出題された肢1を、「正しい肢に書き換える」ことで参考に供することができます。

(誤りの肢)

1.売買契約に基づく代金請求訴訟において,原告が売買契約書を書証として提出し,被告が当該売買契約書が真正に成立したことを認める陳述をした場合には,裁判所は,当該売買契約書が真正に成立しなかったものと判断することができない。




これを「正しい」肢に書き換えますと、以下のようになります。

すなわち、

1.売買契約に基づく代金請求訴訟において,原告が売買契約書を書証として提出し,被告が当該売買契約書が真正に成立したことを認める陳述をした場合にはにおいても,裁判所は,当該売買契約書が真正に成立しなかったものと判断することができないできる。


ということになります。


           


今回は自白の撤回の要件について,お話しさせていただきました。

                                       以  上
 
(*注1)「貸借型理論」によるのであれば、以下が要件事実である。

@ 金銭の返還合意(返還約束)
A 金銭の交付(要物性)
B 金銭の弁済期の合意
C 弁済期の到来




[参考文献]
民事訴訟法講義案 (三訂版) 裁判所職員総合研修所 監修 司法協会
民事訴訟法 [第7版] 上田徹一郎 著  法学書院
など








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2017年04月14日

民訴法228条4項 二段の推定に対する反証・ ・ ・考慮すべきキーワードとは?!

            民訴法228条4項の二段の推定に対する反証

民訴法228条4項は,一段目の推定も,二段目の推定も,事実上の推定ですから「立証責任の転換」はなく,被告に否認されたら,被告の立証活動としての反証活動に対して,原告は本証を行わなければなりません。

すなわち,一段目の推定の否認反証に対しては,私文書の当該署名,押印が被告本人の意思に基づく署名,押印であることにつき,原告は本証しなければなりません。

また,二段目の推定の私文書の作成が,被告本人の意思に基づいて作成された文書ではないと否認反証されたら,当該私文書が被告本人の意思に基づいて作成された文書であることにつき,原告は本証しなければなりません。

本証は,裁判官に確信を抱かせるまでの心証度を要求する立証活動です。
これに対して,反証は,裁判官の確信を動揺させ,真偽不明の状態にすればよい立証活動です。事実が存在しないことを裁判官に確信させる必要はなく,あくまで裁判官の事実が存在するとの確信の心証をぐらつかせ,事実の存否不明,真偽不明の状態に裁判官の心証をすれば足りる立証活動です。

反証は,文書の成立の真正に疑念を生じさせれば足り,文書の不真正まで立証する必要はないということです。
さらに簡単に言うと,偽造であると確信させる必要はなく,偽造かもしれないとの合理的疑いを,裁判官に生じさせれば足りる立証活動です。



        第1 民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証

これは,本人は,署名をしていないし,また押印もしていない,さらに印影も自分の印章のものではないと否認する場合の反証です。

1(本人の印章,署名でないことの反証)
私文書の印影に対応する印章が,第三者が勝手に印鑑登録した印章であるとか,家族等の共用,共有にかかる印章であって,本人が,自分ひとりで所有管理し使用している印章でない場合等,そもそも「私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」と規定する民訴法228条4項の「押印」に対応するところの「印章」じたいに該らないとする反証活動です。
また,本人は全く署名したことはないとの反証です。

反証の具体例
(1) 第三者が勝手に印鑑登録した印章
(2) 家族との共用又は共有にかかる印章
(3) 第三者との共用又は共有にかかる印章
(4) 第三者による署名
であるとの反証

2 (本人の印章の印影ではないことの反証)
第三者が,被告本人のものと同一の印影を有する印章を入手して,これを押印した蓋然性が高いとする反証。
これは,文房具店で販売されているような三文判を,印鑑登録してしまっているような場合に生じ得る事案における反証です。



        第2 民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証

印章を紛失した,盗取盗用された,預託目的外に使用された等の反証をします。
これにより,[被告本人の意思に基づく]押印を否認します。

具体的には,
1 印章紛失
2 印章の盗取盗用
3 預託目的外使用
4 私文書の記載内容,体裁,作成経緯の不合理,不自然性
5 強迫されて署名した(署名の場合)
等の事実を抽出して反証を展開します。

コメント

2の印章の盗取盗用にいては,
@印章の保管状況
A印章の種類
B印章の使用された状況 
C盗取者と印章専用者(印章の所有者)との関係
等の事実を抽出して,反証を展開します。
反証においては,家族の者が,印章を入手しやすい状況であったのか否か,実印(印鑑),認印(三文判)いずれの印章であったのか等事実を拾っていくことになります。



        第3 民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証

署名,押印後に被告の意思に基づかない(合意のない)内容の私文書が作成されたとする反証。

例えば,
1 「白紙」に署名,押印後,合意に反する条項等の記載がなされた
2 署名,押印後,私文書の内容の改ざん,変造等がなされた
との事実を抽出して,反証を展開します。



[若干の説明]

冒頭において,「反証」と言わず,わざわざ「立証活動としての反証活動」と回りくどい言い方をしたのは,補助事実には,主要事実と異なり,本来的には立証責任(客観的証明責任)を観念しえないためです(「本証」は立証責任を負担する者の立証。「反証」は立証責任を負担しない者の立証。「本証」「反証」は本来的には,これらを意味する。)。裁判所職員総合研修所監修の民事訴訟法講義案(三訂版)が,補助事実には本証・反証の観念を持ち込む余地はないとして,「立証活動としての反証活動」という文言を使用していることに依拠したものです。

ただ,ここまで認定考査において厳密に言わなくともいいような気がします。言わんとするところは,本来の本証と反証の概念とほとんど同じだと思われます。裁判官に確信させるのが本証であり,その裁判官の確信をぐらつかせ動揺せしめ疑念を生じさせるのが反証です。言わんとするところは同じでしょう。
したがって,本文記載においても,厳密な使い分けはしておりません。


認定考査においては,時間も答案用紙のスペースにも限りがありますから,単に「本証」,「反証」と書いても,問題ないと私個人は思います。そもそも認定考査の答案採点者である弁護士の先生も,「立証活動としての反証活動」という厳密な概念定義自体に,馴染みがない,知らないように思われます。
したがって,繰り返しになりますが本文記載においても,厳密な使い分けはしておりません。

また、訴訟においては,これは一段目の推定に対する反証活動であるとか,これは,二段目の推定に対する反証活動であるとか,明確な区分けを意識した反証活動が行われているわけではなく,ただ被告本人の反証に有利で重要な間接事実の主張とこれらの立証が,代理人によって行われているのが多くの現実であろうと思われます。

さらに,民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証と,同条同項の一段目の推定そのものに対する反証を区別せずに,両者ひっくるめて論じている文献もあり,これらを区別することに特段の有意味を見出せないかもしれません。

しかし,頭の整理には,「非常に」役立つと思います。そのため私は,説明の便宜上区別して説明しました。





(追記)
民訴法228条4項の二段の推定に対する反証の論点は,刑法の視点で考えると分かり易いと思います。

民訴法228条4項の一段目の推定の「前提問題」に対する反証は,ごく簡単に言うと,筆跡,印影の同一性の問題で,印影,筆跡の同一性が認められなければ構成要件該当性じたいが認められない。

筆跡,印影の同一性が認められると,民訴法228条4項の一段目の推定の構成要件該当性が認められる。
構成要件該当性が認められると違法性,有責性が推定される。
すなわち,署名,押印が本人の意思に基づくものと推定される。これが刑法の違法性,有責性が推定されるのと似ています。

そして,違法性阻却事由,責任阻却事由に相当するものが,民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証であり,民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証です。

また,犯罪の立証における証明責任を検察官が負い,被告人は負わないのとも似ています。
これは,民訴法228条4項は,一段目の推定も,二段目の推定も,事実上の推定ですから「立証責任の転換」はなく,被告に否認されたら,被告の立証活動としての反証活動に対して,原告は本証を行わなければならない,これと似ています。

そして,民訴法228条4項の一段目の推定,二段目の推定に対する,被告の立証活動としての反証活動は,違法性阻却,責任阻却の争点形成責任に類似しています。

「文書の成立を否認するときは,その理由を明らかにしなければならい。」と民訴規則145条は規定しているからです。しかも,被告の立証は,反証で足りる。これも,刑法(刑事訴訟法)と「感覚的には」類似しています。


                                        以   上







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2017年04月13日

[認定考査・択一民訴]民訴法228条4項の二段の推定とは・・・   その2


民訴法228条4項の二段の推定って,・・・・・本当のところ分からないんですけど!
結局,どうなっているんですか? この疑問に,私なりにお答えします。
                   そ の 2



(前回は,一段目の推定についてお話ししましたが,今回は二段目の推定です。前回の「その1」を読まれていない方は,「その1」をお読みになってください。)



 さて,
次に二段目の推定です。

 初めに
「私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」(民訴法228条4項)
との規定をあげました。

そして,この民訴法228条4項に判例に使われている文言を入れて読み替えました。

「私文書は,本人又はその代理人の <その意思に基づく> 署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」
と読み替えました。

<その意思に基づく>とは,一段目の推定に関するものであることは,前回申し上げました。

それでは,「私文書は,・・・・真正に成立したものと推定する。」の「私文書は・・・真正に成立した」とは,何のことを言っているのでしょうか?

これは,「文書の成立の真正」のことを言っています。

 ここで,はっきりと「文書の真正」の定義を確認しましょう。
<文書の真正とは,作成者の意思に基づいて文書が作成されたこと>を意味する。

この文書の真正の定義を,判例の一段目の推定に関する文言とともに民訴法228条4項にあてはめて読みやすく書き換えてみます。
そうすると,民訴法228条4項は

「私文書に,本人の <その意思に基づく> 署名又は押印があるときは,当該私文書は<本人の意思に基づいて作成された文書>であると推定する。」(取敢えず代理人考えない)

と,こうなります。
 
以上,二段の推定をまとめると以下のようになります。

1 本人の専用にかかる印章の印影が,文書に顕出されていれば,かかる押印は,本人の意思に基づくものと推定される。(一段目の推定)
2 押印が本人の意思なら,押印されて印影が顕出されているその文書じたいも,本人認識のもと,その意思により作成されたものであろうと推定される(二段目の推定)。

このような論理の流れで,文書の成立の真正を推定していくのが,民訴法228条4項ということになります。

別の言い方をすると,このような論理の流れで,作成者の意思に基づいて文書が作成されたことを推定していくのが,民訴法228条4項ということになります。

これを,二段の推定といっているのです。

それでは,「本人の <その意思に基づく> 署名又は押印があると」なぜ,「当該私文書は<本人の意思に基づいて作成された文書>であると推定する。」ことになったのでしょうか?

それは,文書に人の意思に基づく署名又は押印があれば,その文書は,作成者とされる者の意思に基づいて作成されたと認められることが多いという経験則があるからです。

このように「意思に基づく」が,民訴法228条4項には実質的に2回登場してくることになります。これが,二段の推定の理解を難しくしているようです。

しかし,最初の「意思に基づく」が,二番目の「意思に基づく」を推定する関係に立つと考えれば,理解は難しくありません。
      最初   →  二番目
1 意思に基づく押印が,意思に基づく文書の作成を推定する。

そして,遡ると(遡り思考)
          ↓矢印
2 本人専用の印鑑の印影が,意思に基づく押印を推定する。

要は徹頭徹尾,文書の作成名義人とされる者の「意思責任」を問うているのです。

以上から,一段目の推定に関する判例の文言,文書の真正の定義を民訴法228条4項に落とし込んで,分かり易く大胆に読み替えると次のようになります。

「 作成者の意思に基づいて文書が作成されたか否かを判断するのに,本人の その意思に基づく 署名又は押印が文書にあるときは,当該私文書は,作成者本人の意思に基づいて作成された文書であると推定する。
 ただし,本人の印章の印影があれば,その押印は,本人の意思に基づくことを推定する。また,本人の署名があれば,その署名は,本人の意思に基づくことを推定する。 」

これが,民訴法228条4項の正体と考えられます。


究極のまとめ

1 意思に基づく押印が,意思に基づく文書の作成を推定する。(二段目の推定)
2 本人専用の印鑑の印影は,本人の意思に基づく押印を推定する。(一段目の推定)
3 「意思に基づく」「推定」は(事実上の推定)
4 (事実上の推定)は特段の事情による反証を許容する。

一段目の推定は,判例により明らかにされたもの。
二段目の推定は,民訴法228条4項に書いてあるもの。(押印の前の「意思に基づく」は,判例により意味充填解釈)
そして,
1,2,3は,本人への法的責任の追及
4は,本人の法的責任の回避
以上から「意思に基づく」の乱れ打ちが判明。
それは,なぜか。
「自分のあずかり知らぬところで勝手にやられたことの責任はとれませんよ。」
この一言につきます。

                                      以    上


追記 顕名代理,署名代理の場合の私文書の作成者は,本人か代理人か,一体誰かという議論はありますが,とりあえず置いておきます。
また,民訴法228条4項は,法定証拠法則を規定したものと言われています(法定証拠法則説)。










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2017年04月12日

民訴法228条4項の二段の推定とは・・・。そ の 1(認定考査・択一民訴)

民訴法228条4項の二段の推定って・・・本当のところ分からないんですけど!
       結局どうなっているんですか? この疑問に,私なりに答えさせていただきます。 
                 
                   そ の 1

それでは,お話をはじめさせて頂きます。

「文書は,その成立が真正であることを証明しなければならい(民訴法228条1項)」
ところ,民訴法には

「私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」(民訴法228条4項)
と規定されています。

この民訴法228条4項を読み替えます。

「私文書は,本人又はその代理人の <その意思に基づく> 署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」
と読み替えます。

要するに,「その意思に基づく」を条文の中に,読み込みます。

考えてみてください。いくら自分のハンコの印影が,金銭借用書の連帯保証人欄にあったからといって,人に勝手に押されたハンコで,「はい。そうですか。」といって法的責任をとれますか?

やはり,自分が「よっし。これでいこう!」と思って,自分でハンコを押したから,あるいは人に押して貰ったからこそ,ハンコの責任をとれるのです。

だから,裁判所は「その人の意思に基づく」という文言を条文に読み込んだのです。

では,「その人の意思に基づく」って,どうやって証明したらいいんですか?
「その人の意思に基づく」という証明は,人の内心にかかわることだから難しいですよね。

そこで我が国の社会慣習からくる経験則を利用したのです。
人が普段から,自分一人で所有し,使用管理しているハンコが,借用書にバッチリ押されて印影が顕出されたら,ハンコを大切にする我が国の社会慣習からは,「それはもうその人の意思に基づく押印と考えていいでしょ。」こう世間一般は考える。

そこで,「Yのハンコの印影が借用書にあったら,<Yの意思に基づく>押印を推定してあげましょう。」こう裁判所は考えたわけです。
内心という困難な立証を救済したのが,ハンコを大切にするという我が国の社会慣習からくる経験則に基づく,Yの意思の「事実上の推定」です。
これが,一段目の推定です。

大切なので,もう一度繰り返します。
人が普段から自分一人で所有し,使用管理しているハンコが,借用書にバッチリ押されて印影が顕出されていたら,それはもうその人の意思に基づく押印だろうと世間一般の人が考える。ハンコを大切にする我が国の社会慣習があるからです。

ハンコを大切にする我が国の社会慣習というのは,要するにハンコってむやみやたらと人に預けたりはしないということです。
大切なハンコの印影が借用書にあるのだから,Yの了解の基で押印されたのだろうと,世間一般の人は思うわけです。
この経験則を利用することで,Yのハンコの印影があれば,Yの意思に基づく押印があると裁判所は推定したのです。裁判所風に言うと,「事実上の推定」です。

「人の意思に基づく」という人の内心にかかわる困難な立証を救済する方法が,人のハンコの印影が,契約書上に顕出されていることの立証です。

これが「その人の意思に基づく」って,どうやって証明したらいいの?
に対する答えです。

ただ,ここで話は終わりません。

なぜなら,「その人の意思に基づく」って,言いきられちゃうと,またこれはこれで困ったことが起こるのです。

例えば,「うちの放蕩息子が,勝手にハンコを持って行って,無断で借用書にハンコを押してきやがった。」と,Yが親父であれば一言いいたいことだって,起こるわけです。
「そのハンコは,俺の意思で押されたんじゃないよ。」と,言いたいことだって起こるわけです。

そごて,親父Yの反論を聞いてやらないと,かわいそうですよね。それで,やっぱり親父の意思じゃなかった,放蕩息子が勝手にやったことだという反論の余地を残してあげとくのです。勝手にハンコが使われることも現実の生活ではあるわけですから。
その結果,意思に基づくことも決して「確定」ではなく,あくまで「推定」としたのです。
法律的にいうと反証の余地を残さない「擬制」ではなく,反証によって事実の覆る余地を認める「推定」としたのです。

以上の話をまとめるとこうなります。
親父のハンコの印影が借用書にあると,借用書の押印は,親父の了解,その意思に基づく押印だろうと世間一般の人は「思う」。この経験則により,裁判所は,借用書に親父のハンコの印影があると,これは親父の意思に基づくものだと事実上の推定をする。

そして,この世間一般が「思う」というのが大事で,「思う」という言葉からは「推定」が導かれる。事実の確定を意味する「擬制」ではありません。反証の余地を残す「推定」です。
しかも,「最初」の「思います。」という「推定」だから,「一段目の推定」ということになるのです。
すなわち,「その人の意思に基づく」ことが,「事実上推定」されるのです。

これが一段目の推定です。

ただ,以上の話は,印影に対応するハンコが親父のハンコであることが前提です。親父のハンコじゃなかったら,推定もなにもならないです。親父のハンコって認められたからこそ,話がはじまったのです。

民訴法228条4項の適用をしようかっていう話がはじまったのです。親父のハンコじゃなかったら,民訴法228条4項の適用の前提のところで話がもめることになる。

「私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」(民訴法228条4項)の「本人又はその代理人の署名又は押印」とは,親父のハンコの印影があるという意味です。

被告に親父のハンコの印影じゃないと否認されたら,まず,親父のハンコの印影であることを,原告で立証しなければならない。でないと,一段目の推定の話に行きつかない。一段目の推定は,印影と親父のハンコが一致していることが前提ですから。

この民訴法228条4項の適用の前提問題でのせめぎ合いが,まさに印影や筆跡の同一性の立証なわけです。

 以上が,一段目の推定です。
                                     以    上    

次回は,二段目の推定をお話しさせて頂きます。最後までお読みいただきまして,ありがとうございました。














『行政書士』になるなら

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2017年04月10日

(簡裁訴訟代理等能力認定考査)筆跡や印影の同一性立証とは・・・

             筆跡や印影の同一性立証 (認定考査)

 訴訟当事者の「署名の同一性の立証」は,

(1)裁判所の訴訟記録に綴り込まれている訴訟委任状の署名
(2)当事者尋問の際の出頭カードの署名
(3)当事者尋問の際の宣誓書の署名
(4)他の契約書,陳述書等書証の署名

 によって行うことができます。

出頭カード,宣誓書の署名は,第三者の署名の同一性の立証にも用いることができます。

もちろん,当事者尋問,証人尋問の「人証調べ」によっても,署名の同一性を立証できます。


 対象をするのに適当な相手方の筆跡がないときは,裁判所は,対象の用に供すべき文字の筆記を相手方に命ずることができます(民訴法229条3項)(*注)。そこで,訴訟当事者は,裁判所に対して相手方に筆記を命じるよう申立てを行います。裁判所は申立てに理由があると認めれば,相手方に筆記を命じる決定をします。

 これにより,例えば当事者尋問において,対照をするのに適当な筆跡のない訴訟当事者の筆記も命ぜられます。

 また,私的鑑定書によっても,署名の同一性を立証できます。かかる私的鑑定書を書証として裁判所に提出します。


 また,訴訟当事者が裁判所に鑑定の申し立てを行い,裁判所の指定した鑑定人による筆跡鑑定をもって署名の同一性を立証することもできます(民訴法213条)。

 私的鑑定は,訴訟当事者がその判断で鑑定人を選定した上依頼できます。他方,裁判所の筆跡鑑定は,私的鑑定と異なり,当事者が指定しても,それに拘束されることなく裁判所の裁量により鑑定人を指定します(民訴法213条)。


 「印章と印影の同一性」については,印鑑証明書により立証します。他の契約書等の書証によっても立証します。もちろん,当事者尋問,証人尋問の人証調べによっても,印章と印影の同一性を立証できます。筆跡同様,私的鑑定や裁判所の鑑定によることもできます。


(*注)その他,筆跡・印影の対照文書にかかる文書の提出命令や,文書送付嘱託の申立ても検討します(民訴法229条2項)。


[筆跡・印影の同一性立証   認定考査向け 論述キーワード,条文]
・訴訟委任状 署名
・当事者尋問の際の出頭カード 署名
・宣誓書 署名
・他の契約書,陳述書等書証の署名
・私的鑑定書
・裁判所の筆跡鑑定
・人証調べ → 当事者尋問 証人尋問
・筆跡等の対象による証明
・対象をするのに適当な相手方の筆跡がないときは,裁判所は,対象の用に供すべき文字の筆記を相手方に命ずることができる(民訴法229条3項)。
・その他,筆跡・印影の対照文書にかかる文書の提出命令や,文書送付嘱託の申立てを行う(民訴法229条2項)。


 キーワードを使って,頭の中で論述を展開してみてください。
 特に司法書士倫理は,このような練習をしないと,いざとなっても筆が進まないので過去問の倫理事例を中心に練習された方がよろしいでしょう。

 司法書士権限事例も過去問中心に練習された方がよろしいでしょう。 
 これらの補強に,「司法書士 簡裁訴訟代理等関係業務の手引 平成29年版 日本加除出版」を十分に使いこなします。
 
 それから,全ての年度の認定考査の過去問を実際に時間を計って「書いて」解く。このことを特に強調させていただきたいと思います。

                             
                                   以   上







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2017年04月08日

処分証書の文書の成立の真正立証における当事者尋問

売買契約書は,処分証書です。

 
処分証書は,極めて重要な証拠価値を有します。
 

なぜなら,意思表示その他の法律行為が記載された処分証書は,その文書の成立の真正が認められると,特段の事情がない限り,当該処分証書記載の法律行為が認定されるからです。
 

 処分証書は,訴訟の勝敗を決する上で,極めて重要な証拠なのです。

ですから,代理人は,処分証書の署名,押印が否認されると,一生懸命になって文書の成立の真正の立証に努めます。
 

例えば,売買代金請求訴訟において,複数の売買契約書の文書の成立の真正が争われたとしましょう。どこが争われているかが問題です。



そもそも,自分は署名していない,第三者による偽造だといった場合,二段の推定の一段目の推定が働かないので,一段目の推定を働かせるため,売買契約書における署名が,被告自身の署名であることを立証しなければなりません。

 署名の同一性が立証されなければ,民訴法228条4項の適用以前の問題となります。


ただ,署名が被告によるものではなくても,押印された印影が被告の印章と同一であることを被告が認めれば,特段の事情なき限り,一段目の推定が働き,そして二段目の推定が働く結果,売買契約書の文書の成立の真正が推定されます。



 ところが,印章と印影の同一性まで被告に否認された場合はどうでしょう

しかも,売買契約書の印影から推察される印章が,文房具店で売られている三文判で印鑑登録もしない印章であって,さらに,売買契約書の印影の全てが契約書ごとに異なっている場合です。

 

この場合,被告の印章と売買契約書の印影の同一性を立証するよりも,売買契約書にある署名が被告による署名であることに重点を置いて,立証活動を行う原告代理人がいてもおかしくありません。

 

原告代理人は,被告の印章と印影の同一性を立証するよりも,署名が被告によるものであることに重点を置いて立証活動し,民訴法228条4項の適用により売買契約書の文書の成立の真正の推定を獲得しようとするのです。
 

 そこで,改めて次のような事例を検討してみましょう。


例えば,複数ある売買契約書のうち一部は自分が署名押印したものだが,その他の売買契約書は,誰かほかの第三者が,自分の名前を勝手に使って署名押印したもの,つまり,偽造文書である旨証言するのです。本当は,全部の契約書に署名押印したのに,全部の偽造を主張すると,嘘に聞こえるので,一部だけ本当の署名押印だと認め,残りは偽造だと否認するのです。(ただし,すべての売買契約書の印影が各々微妙に異なるものとする。)
 
 

 真実の中に嘘を織り交ぜるわけです。

 真実の中に紛れた嘘は,発見しにくい。

 虚実相まみれると,嘘も真実に聞こえてくる,ということです。



一部の売買契約書の文書の成立の真正を認めても,全部の売買契約書の成立の文書の成立の真正を認めるよりも,原告から請求される売買代金の請求金額は,全部を認めるよりも安くて済みます。ですから,このようなことを行うのです。

 真実の中に嘘を織り交ぜるわけです。

しかしながら,複数の事実の中に嘘を織り交ぜると,どれが本当で,どれが嘘なのか,当の被告本人自身が,わからなくなります。


つまり,被告は,複数の売買契約書のどれに署名していないと虚構の事実設定をし,どれに署名したままの,つまり真実の事実を維持しようとしたのか,わからなくなるのです。(すべての売買契約書の印影が各々微妙に異なるため,印影を手掛かりとしても自己に有利な正確な供述証言ができない。)


ここで,被告が,署名の真正につきバラバラな証言をしてしまうと,証言の一貫性を失い,被告の証言の信用性に一気に疑いが生じます。


こんなとき,被告側の代理人が,複数の売買契約書の書証にそれぞれ自分の尋問のための手控えとして,大きく○とか,×とか書証に書いておいたことが,被告に有利に作用することがあります。


 

○は,確かに被告が署名した。×は,被告が署名していない。第三者による偽造だ。このようにして,被告代理人が尋問で真正な文書と不真正な文書とを,取り違えて尋問しないように,書証に自ら○×を鉛筆書きしていることがよくあるのです。


その鉛筆書きの書証を被告代理人が,悪意なく,善意でそのまま被告に示して,尋問してしまうことがあるのです。

 

被告代理人が「甲第○号証の平成○年○月○日付け売買契約書を示します。」といって,その○,×の書いてある売買契約書を次々に,被告に示して,「この売買契約書,あなたが署名したものですか?これは,・・・,それではこれは・・・」といって矢継ぎ早に次々に質問してしまうことがあるのです。
 
 
 答えが,書証たる売買契約書に書いてあるわけですから,被告だって間違えようがありません。
 

しかも,矢継ぎ早に質問されて,それに間をおかずに躊躇なく,被告は淀みなく答えるわけですから,いかにも証言の信用性が増すわけです。


 代理人の中には,うっかりこんなことをしてしまう者もありえるのです。


だから,原告代理人は,相手方被告代理人が書証を被告に示す時には,事案によっては証言台まで歩いて行って,一緒にその提示されている書証の内容を確認しなければなりません。


 もし,被告代理人の提示する書証に○×が書いてあったら,裁判所に異議を述べることになります。


そして,被告代理人が提示する甲号証の売買契約書の原本は,そもそも原告代理人がもっているのですから,被告代理人にかわって,原告代理人が証言台まで歩いて行って,被告にそれらを示せばよいのです。


特別研修受講生に,ここまで教示してくださった講師弁護士の先生がいらっしゃったとしたら,とても親切です。


 それでは,この被告代理人は,偽証教唆,幇助になるのでしょうか?


 なりません。


 当事者尋問には,宣誓を行っても偽証罪が適用されないからです。


 それでは,訴訟当事者以外の第三者の証人にこれと同じことを行ったらどうなるでしょうか?


被告と内通している第三者を悪意でなく,善意で証人申請し裁判所に採用されて,証人尋問した場合の話です。複数の売買契約書のうち,被告が文書の成立の真正を認めた売買契約書の契約締結の現場に立ち会ったとされる第三者などを証人尋問した場合の話です。


 一見すると,偽証罪の教唆,幇助になると思えるかもしれません。


 宣誓した証人には偽証罪が適用されるからです。


 しかし,ここからが問題です。
 じっくり考えてみてください。


 被告訴訟代理人も,一生懸命,訴訟の準備をしてくるわけです。

訴訟代理人が自分の手持ちの書証に,○や×をつけるなんて日常茶飯事です。
それをいちいち咎められていたら,仕事ができません。


 安易に構成要件該当性を認めて処罰していては,緊張の連続で訴訟代理人の身がもちません。


 ここで,思い出してください。


 教唆,幇助は,故意犯ですか? 過失犯ですか?


 そう教唆,幇助は,故意犯です。(通説)

 故意犯処罰の原則を思い出してください。

 罪刑法定主義を思い出してください。



 過失による教唆,幇助は,罪刑法定主義上処罰されません。(通説)



そうです,上記の代理人は,手持ち証拠の○,×の鉛筆書きを消しゴムで消し忘れて,
被告に提示しただけなのです。


○×の書証を見た証人が偽証しても,過失による教唆,幇助として被告代理人は罪刑法定主義上処罰されません。


被告代理人が書証を示して質問するときは,事案によっては原告代理人が,一挙手一投足の労を惜しむことなく,証言台まで歩いて行って,書証の内容をその目で確認すべきでしょう。


もし,被告代理人の提示する書証に○×が書いてあったら,裁判所に異議を述べ,
被告代理人にかわって,原告代理人が甲号証の売買契約書の原本を被告に示してあげればよいのです。

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