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司法試験と司法書士試験の合格者です。(行政書士試験及びその他の資格試験にも合格しています。)本サイトは正確な記載を目指しますが,これを保障するものではありません。従いまして,ブログ内容等につきましては,誤記載のまま改訂されていない状態の記事もありえます。また,本サイトブログは法改正等に対応していない場合もあります。自己責任にてお読みくださいますようお願い申し上げます。(広告等:本サイトはアフィリエイトプログラムに参加しております。広告内容等に関しまして,閲覧者様と本サイト所有者とは何らの契約関係にありません。広告内容等に関しましては,広告表示先の会社等に直接お問い合わせください。)(免責事項:本サイトに起因するいかなる責任も負いかねますので,自己責任にてお読みください。この点について,ご了承願います。)
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2018年01月08日

司法試験・国会の事後の不承認条約の効力

[ はじめに ]

条約については,憲法と条約の形式的効力関係についての憲法優位説と条約優位説,条約に対する違憲審査の可否,国会の事後の承認のない条約の効力,国会の条約の修正権の肯否等が,主な論点となっています。

司法試験においては,言うまでもなくこれらすべてが必須の論点となっています。
しかし,司法書士試験においても,今後は年度を重ねるごとに漸進的に出題論点となっていく可能性があります。

そこで,今回は国会の不承認条約についての国際法上の効力について,短答・択一式問題を作成しました。
新司法試験の従来からの短答式出題形式にはあまり適合しないかもしれませんが,短答が3科目となったことから,今後,旧司法試験の短答式の出題形式の利用も考えられます。
一方,司法書士試験の出題形式においては,今後可能な択一式出題形式であると言えます。
以上のことを考慮した上で問題を作成しました。

また,慎重に問題文を読めば,意外とあっさりと解答できるようにも問題を作ってあります。

知識の理解・整理を第一目標においたからです。

ところで,基本は絶対に外さないことを旨とする受験勉強においては,基本を学習し尽くすことがなによりも大切であると考えます。とりわけ,司法書士試験は基本です。ともかく,基本,基本,基本です。

司法試験では,今回の短答式の知識,理解は殆ど必須ですが,司法試験とは出題科目の異なる司法書士試験においては,憲法のここまでの理解・知識は過ぎたるものとの評価もありえます。なかなか難しいところです。

正解は,参考文献の下に記載してあります。



[ 問 題 ]

以下の記述は,国会の事後の承認のない条約の国際法上の効力に関して,見解を異にする学生A,B,C,Dの会話の一部である。各学生は,次のTからWまでのいずれかの異なる見解に立っている。学生と見解の組み合わせとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

【 『事後に』承認の得られなかった条約の効力についての見解 】
T 国内法的には無効であるが,国際法的には有効であるとする説
U 国内法的には無効であるが,条約法に関するウィーン条約に従って,条約の効力を判定し,国際法上の効力については原則として有効とする説
V 国内法的にも,国際法的にも無効とする説
W 国内法的には無効であるが,国会の承認権規定の具体的意味が諸外国にも「周知」の要件と解されている場合には,国際法的にも無効とする説。すなわち,原則無効の要件を緩和し一定条件に該当する場合に無効を限定する説

A 「条約の国会による『事前』不承認の場合,条約は成立しない。これに対して,『事後』不承認の場合には,確かに,条約の国内法的効力は有効には生じていないものの(つまり,無効ではあるものの),しかし,国際法的効力については争いがある。この国際法上の効力の有効・無効について論ずるのが,まさに『事後』不承認の条約の効力に関する論点だね。」

B 「この点,A君は,条約締結に国会承認の必要なことは当然相手国も承知すべきだし,また,承認につき『事前』と『事後』でその法的効力の有無につき区別を設けるのは,憲法の趣旨に反すると主張するんだね。」

C 「しかし,各国の条約締結手続を相手国が熟知しているとは限らない。そして,条約締結手続が不明確なこともある。だから,当事国は相互に相手国の条約締結権者の行為を信頼すれば足りる。さらに,法的安定性も考慮しなければならい。これがB君の主張だよね。」

D 「C君は,周知の憲法手続に違反した場合のみ国際法上の効力は無効であるとするね。」

A 「D君とC君の見解の趣旨は実質的には同じだね。しかし,C君が『事後』不承認の条約の国際法上の効力につき,これを原則無効とするのに対して,D君は原則有効とする。ところで,B君の見解によると,国会の意思の尊重に欠けるとの批判が予想されるけど,その点はどう対処するのかな?」

B 「そもそも事前の承認を本則とすべきだし,やむを得ない事情で署名のみで条約を成立させるときは,国会の承認を得られないときは,失効する旨の条件を予め附しておけば足りるよ。」

 AV−CW         AT−DU         BW−CU 
 BT−DW         CT−DV        

( 参 考 )
(憲法)
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

(条約法に関するウィーン条約)
第四十六条
1 いずれの国も,条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を,当該同意を無効にする根拠として援用することができない。ただし,違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則に係るものである場合は,この限りでない。
2 違反は,条約の締結に関し通常の慣行に従いかつ誠実に行動するいずれの国にとつても客観的に明らかであるような場合には,明白であるとされる。





[ 解 説 ]

条約締結の国会の事前承認が得られなかった場合には,条約の国内法的効力,国際法的効力のいずれも生じません。

問題は条約締結について国会の事後承認が得られなかった場合です。
条約は,調印により成立する場合には調印により,あるいは批准により成立する場合は批准により,既に成立していることから,国会の事後承認が得られなかった場合の国際法上の効力が問題となります。
なお,国会の事後承認がなければ,条約の国内法的効力が認められないこと,このことは議論の当然の前提となっています(伊藤・憲法p686,内野・憲法解釈の論点p137,渋谷・憲法p568参照)。



[ 学 説 ]

(学説の名称の多くは,渋谷・憲法p568に依った)
[無効説,承認法定成立要件説]

問題文Vの説  国内法的にも,国際法的にも無効とする説

無効説は,@憲法条文上これを端的に見れば,条約成立の要件として,内閣の締結行為と国会の承認の二つが必要であることが明示されていること,及び政府の締結行為に対する国民の代表機関たる国会の民主的コントロールの重要性が認められること,これらを理由に国会による条約の承認は,条約が有効に成立するための「法定成立要件」であるとします。

また,無効説は,A国会の承認について「事前」と「事後」で,その法的効力につき違いを設けるのは,憲法の趣旨に反し根拠がないとします。
憲法条文上(憲法73条3号),国会による条約の承認が必要とされているにもかかわらず,有効説はそれを事前の承認がなければ,条約の効力が発生しない,つまり無効だが,事後の承認に欠ける場合には,今度は逆に条約を有効とする。これでは,事前,事後という時期によってのみ条約承認につきその法的効力の差異を設けるものであって,国政の重要事項に対する国会による民主的コントロール,すなわち国民代表機関たる国会の意思の尊重という憲法の趣旨からは,かかる区別になんらの合理性を見出し得ない,このように無効説は主張します。

さらに,無効説は,B条約締結に国会の承認が必要であることは,憲法上の重要な要請であって,このことは当然相手国においても容易に知り得ることであって,知っているとみなしうることを主張します。
(伊藤・憲法p686~,長尾・日本国憲法第3版p382~参照)


無効説に対しては,次の批判があります。
すなわち,無効説によれば,各国はほしいままに国内法を理由に条約上の義務を免れようとすることになってしまう。その結果,国際条約関係は不断に動揺し,法的安定性を害する。
(橋本・国政と人権p142参照)




[有効説]

問題文Tの説  国内法的には無効であるが,国際法的には有効であるとする説

無効説に対して,有効説は以下のように主張,反論を行います。
@条約は国際法上の法形式であるから,その国際法上の効力は国際法に従って決定されるべきであり,国内法的手続の瑕疵で国際法上の効力が失われるのは適当でない。(伊藤・憲法p687,長尾・日本国憲法第3版p382参照)

A国会承認という憲法の手続規定の履践がないことを以て,条約の国際法上の効力を無効とすることは,条約の法的安定性を害する。
(長尾・日本国憲法第3版p382参照)

B国会の承認について,事前と事後とで条約の法的効力につき区別を設けることは合理的でないとの無効説の主張に対しては,有効説から次の反論があります。
本来,条約は批准を必要としない条約は,署名,調印により,また,批准を必要とする条約は批准により,それぞれ確定的に条約の効力が生じているのだから,条約が確定的に成立する前と後で,承認の法的意味につき違いが生じてくるのは寧ろ当然である。
(橋本・国政と人権p142参照)

C条約締結に国会の承認の要することは,多くの国の憲法に規定されているところであり,相手国も当然に承知すべきものであるとの無効説からの主張に対しても,有効説から次のような反論がなされています。

@)多くの国家において,成文憲法の規定に反する慣習法が成立している。
A)諸国の憲法規定を的確に知ることは困難である。
B)憲法の条項について,学説の対立があり,どの説を以て正当とすべきか判断できない。
(橋本・国政と人権p141参照)

D 無効説によると,相手国が憲法所定の条約手続を遵守したかどうか,これを確認しなければならなくなるが,これでは相手国への内政干渉ともなりかねない。
(橋本・国政と人権p142参照)

ところで,有効説に対しては,国会の意思の尊重に欠けるとの批判が予想されます。その点についての手当ても有効説は主張しています。
すなわち,そもそも事前の承認を本則とすべきだし,やむを得ない事情で署名のみで条約を成立させるときは,国会の承認を得られないときは,失効する旨の条件を予め附しておけばよい,とされています(橋本・国政と人権p143,佐藤功・ポケット注釈全集 憲法(下)[新版]p892参照)。


[条件付無効説,原則無効説,停止条件付無効説]

問題文Wの説  国内法的には無効であるが,国会の承認権規定の具体的意味が諸外国にも「周知」の要件と解されている場合には,国際法的にも無効とする説。すなわち,原則無効の要件を緩和し一定条件に該当する場合に無効を限定する説(条件付無効説)。

かかる条件付無効説は,国民代表機関たる国会の意思の重要性とその尊重,及び内閣の条約締結行為に対する民主的コントロールの必要性,並びに国際条約関係の可及的な法的安定性の現実的要請,これら諸要素を勘案しているものと思われます。

ここにおいて,同説は事後不承認の条約につき原則無効の要件を緩和し,そして一定条件に該当する場合に無効を限定する説となります。
(樋口ほか・注釈日本国憲法 下巻 p1097参照)


[条件付有効説,原則有効説,解除条件付有効説]

問題文Uの説  国内法的には無効であるが,条約法に関するウィーン条約に従って,条約の効力を判定し,国際法上の効力については原則として有効とする説

条件付有効説は,以下のように自説を根拠付けます。


日本国は,条約法に関するウィーン条約(条約法条約)を批准しており,憲法のその拠って立つ国際協調主義(憲法98条2項)から,「条約を締結する権能に関する国内法の規定」について定める条約法条約46条の適用があります。
してみれば,国会の条約に対する事後の不承認は,条約法条約46条1項の定める「基本的な重要性を有する国内法(憲法)の規則」の違反であり,かつかかる違反は,同条項に定める「違反が明白であり」にも該当します。なぜなら,憲法上国会の承認が必要とされていることは,相手国にとっても容易に知り得る,条約締結に係る重要な憲法的手続規定であり,調印・批准により一旦は確定的に成立したとされる条約ではあっても,事後の不承認によって条約の効力が無効とされることがありうること,このことについては,相手国も十分に知り得る立場にあるからです(憲法73条3号)。

したがって,条約法条約によって,条約の国際法的効力を判定すれば,国会の事後の不承認条約に係る国際法上の効力については,同法46条の援用を以て相手国との同意が無効であることを主張できる。

これが条件付有効説からする一つの帰結です(渋谷・憲法p569参照)。

ただし,これに対しては異なる考え方もあります。
確かに,内閣以外の何らかの機関(条約法条約8条参照)が条約を締結したというような場合には,「基本的な重要性を有する国内法(憲法)の規則に係るもの」に「明白」に「違反」したことが「客観的に明らか(条約法条約46条2項)」であり,条約法条約46条1項の「違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法(憲法)の規則に係るものである場合」に該当し,相手国との同意を無効とする根拠として同条項を援用することができるであろう。

しかし,これに対して国会による事後の不承認条約については,事後の不承認に係る憲法の明文規定を欠き,その効力については憲法の解釈問題となるのであるから,憲法の手続規定に「明白に違反」したことがいずれの国とっても「客観的に明らか」(条約法条約46条2項)であるとまではいえない。

したがって,条約法条約によって,条約の国際法的効力を判定すれば,事後の不承認条約に係る国際法上の効力について,同法46条の援用を以て相手国との同意が無効であることを主張することはできない。
このように異なる考え方もあります(佐藤功・ポケット注釈全集 憲法(下)[新版]p895~参照)。


条件付有効説(明白説)に対しては,次のような批判があります。
@明白な違反と明白でない違反との区別が困難であること,A条約上の義務を免れようと各国は,ほしいままに明白な憲法違反を主張して,争いが絶えないこと,その結果,B国際条約関係の法的安定性が害されること,さらに,C条件付有効説(明白説)を貫くと,条約締結機関の説明を信頼した相手国に無理を強いる結果となること,等これら批判があります。
(橋本・国政と人権p142,143参照)




→ところで,条件付有効説も,条件付無効説もその趣旨とするところはほぼ同じであり,結論的には実質的に異ならい,と言えると思います,

条件付無効説の諸説の論旨を読むと,実際の適用において,逆に原則として有効,例外として無効になるのではないか,このように思われるとの評価もあります(橋本・国政と人権p136参照)。


(条約法に関するウィーン条約)
第46条(条約を締結する権能に関する国内法の規定)
1 いずれの国も,条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を,当該同意を無効にする根拠として援用することができない。ただし,違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則に係るものである場合は,この限りでない。
2 違反は,条約の締結に関し通常の慣行に従いかつ誠実に行動するいずれの国にとつても客観的に明らかであるような場合には,明白であるとされる。


第7条(全権委任状)
1 いずれの者も、次の場合には、条約文の採択若しくは確定又は条約に拘束されることについての国の同意の表明の目的のために国を代表するものと認められる。
(a)当該者から適切な全権委任状の提示がある場合
(b)当該者につきこの1に規定する目的のために国を代表するものと認めかつ全権委任状の提示を要求しないことを関係国が意図していたことが関係国の慣行又はその他の状況から明らかである場合
2 次の者は、職務の性質により、全権委任状の提示を要求されることなく、自国を代表するものと認められる。
(a)条約の締結に関するあらゆる行為について、元首、政府の長及び外務大臣
(b)派遣国と接受国との間の条約の条約文の採択については、外交使節団の長
(c)国際会議又は国際機関若しくはその内部機関における条約文の採択については、当該国際会議又は国際機関若しくはその内部機関に対し国の派遣した代表者


第8条(権限が与えられることなく行われた行為の追認) 
条約の締結に関する行為について国を代表する権限を有するとは前条の規定により認められない者の行つたこれらの行為は、当該国の追認がない限り、法的効果を伴わない。




以上から,問題文の各学生のとる学説をまとめると次のようになります。*

学生A [無効説]                               →V説
学生B [有効説]                               →T説
学生C [条件付無効説,原則無効説,停止条件付無効説]             →W説
学生D [条件付有効説,原則有効説,解除条件付有効説]             →U説
(*学説の名称の多くは,渋谷・憲法p568に依った)


[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
国政と人権 橋本公亘 著 有斐閣
ポケット注釈全集 憲法(下)[新版] 佐藤功 著 有斐閣
憲法 第三版 伊藤正巳 著 弘文堂
憲法 第六版 芦部信喜 著 高橋和之 補訂 岩波書店
注釈 日本国憲法 下巻 樋口陽一・佐藤幸治・中村睦男・浦部法穂 著 青林書院
日本国憲法 [第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法解釈の論点 [第4版] 内野正幸 著 日本評論社
憲法 第3版 渋谷秀樹 著 有斐閣
新・コンメンタール憲法 木下智史・只野雅人 [編] 日本評論社
など
正解 1 AV−CW
 

学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます。
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。
                                以 上












posted by 略して鬼トラ at 06:15 | 司法試験

2017年12月05日

司法書士試験 憲法と条約の関係についての憲法優位説と条約優位説

はじめに


今回,憲法と条約の形式的効力関係についての憲法優位説と条約優位説に関する択一問題を作成しました。

ところで,憲法優位説と条約の違憲審査の可否との関係性については,試験での狙い目の一つとして,ひっかかり易い論点となっているようです。

司法書士試験平成29年度午前択一第3問の肢エで上記論点が出題されています。

そこで,かかる論点の理解についても択一を解くうえ上で必要とされる問題を作成しました。
この機会に,基本書等でよくご確認されたほうがよろしいでしょう。

正解は参考文献の下に記載してあります。


[ 問 題 ]

下記(文章)の[   ]内に,憲法と条約の関係についての憲法優位説あるいは条約優位説のいずれかの語句を挿入すると完成した文章となる。完成後の文章における[イ]と[ロ]の説のいずれかに,下記AからFまでの(憲法優位説と条約優位説の各根拠の記述)を,分類した場合,同じ分類に属するものの組み合わせとして正しいものは,後記1から5までのうちのどれか。

(文章)
憲法と条約の形式的効力関係について,[  イ  ]をとるのであれば,条約の憲法適合性は論理的に問題とならないのに対して,[  ロ  ]をとった場合に初めて条約の違憲審査の可否という問題が生じてくる。

この点,[  ロ  ]をとった場合においても,なお,条約の規範形式としての特殊性を重視して,憲法81条の文言に沿って,条約の違憲審査を否定する見解がある。

(憲法優位説と条約優位説の各根拠の記述)
 憲法98条1項において条約がはずされていることに加えて,憲法81条が違憲審査の対象として特に「条約」を除外している。

 憲法99条は国務大臣,国会議員,裁判官に対して憲法を尊重すべき義務を課している。

 憲法改正の手続と条約締結の手続における手続的難易は,憲法と条約の形式的効力の優劣に対応する。

 憲法98条2項は条約遵守義務を規定している。

 条約締結権が憲法によって認められた権能であることを重視すべきである。

 憲法は徹底して国際主義を承認している。


 イ(ADF)  ロ(BCE)
 イ(ABF)  ロ(CDE)
 イ(ACD)  ロ(BEF)
 イ(ACE)  ロ(BDF)
 イ(ADE)  ロ(BCF)


( 参 考 )
憲法第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

憲法第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。




ここまでが問題

ここから先は解説



















[ 解 説 ]


(文章)の[  ]に語句を挿入した後の完成した文章は以下の通り。

(文章)
憲法と条約の形式的効力関係について,イ[条約優位説]をとるのであれば,条約の憲法適合性は論理的に問題とならないのに対して,ロ[憲法優位説]をとった場合に初めて条約の違憲審査の可否という問題が生じてくる。
この点,ロ[憲法優位説]をとった場合においても,なお,条約の規範形式としての特殊性を重視して,憲法81条の文言に沿って,条約の違憲審査を否定する見解がある。
(芦部・憲法p384〜,樋口・憲法p440〜,市川・憲法p360〜参照)


以上からすると,[ イ ]は[条約優位説]であり,[ ロ ]は[憲法優位説]となります。



それでは次に[条約優位説]と[憲法優位説]の各根拠にかかる記述を列挙します。
[問題]の肢に対応してA,B,・・・として掲記します。

[条約優位説]

A 憲法98条1項において条約がはずさていることに加えて,憲法81条が違憲審査の対象として特に「条約」を除外している。

・・・憲法の最高法規性を定める憲法98条1項において条約がはずされていること,及び憲法81条の違憲審査の対象から特に「条約」が除外されていることからすれば,憲法は条約との関係において必ずしも最高法規であることを示していない。
(佐藤功・日本国憲法概説p581〜,長尾・日本国憲法第3版p556〜,野中ほか・憲法Up429〜参照)


なお,憲法98条及び81条の規定についていうと,条約の国際法の特質に着眼して修辞上の配慮を示したまでであり,条約に対する法的取り扱いにつき別個にすることを憲法は要求するものではない,との憲法優位説からの反論があります。
(長尾・日本国憲法第3版p556〜参照)



D 憲法98条2項は条約遵守義務を規定している。


・・・憲法98条2項の条約順守義務を誠実に実行するためには,条約の誠実な執行を妨げる国内法の成立は否定されるべきであり,そのためには憲法と条約の形式的効力関係において,条約優位説をとるのが妥当である,との主張がなされます。
(長尾・日本国憲法第3版p556〜,野中ほか・憲法Up429〜参照)



F 憲法は徹底して国際主義を承認している。


・・・日本国憲法が伝統的に国家主権を超えた国際主義的な思想をとっていることを前提とすれば,形式的効力関係において,一国家のみの意思の現れである憲法よりも,国際社会の意思の現れである条約を優位するものと憲法は位置づけている,との主張がなされます。
(佐藤功・日本国憲法概説p581〜,長尾・日本国憲法第3版p556〜参照)


[憲法優位説](判例・通説(芦部・憲法p384〜参照)

B 憲法99条は国務大臣,国会議員,裁判官に対して憲法を尊重すべき義務を課している。

・・・確かに憲法98条2項は,条約遵守義務を規定しているが,しかし同時に憲法99条は,条約締結権を有する内閣の構成員たる国務大臣や,条約締結の承認権を有する国会の議員に対して,憲法を尊重し,擁護すべき義務をも課している。
(佐藤功・日本国憲法概説p581〜,野中ほか・憲法Up429〜参照)


C 憲法改正の手続と条約締結の手続における手続的難易は,憲法と条約の形式的効力の優劣に対応する。


・・・憲法改正には国民主権の現れとされる国民投票が必要とされているが,これに対して条約は,内閣による締結及び国会の承認で足りるとされており,国民投票までは要求されていない。
形式的効力において,憲法に対する条約の優位を肯定すると,国民投票を要する憲法を,国民投票を要しない条約によって憲法を改正してしまうことになりかねない。すなわち,憲法改正手続を経ることなく実質上の改憲が行われることになりかねない。
条約優位説によると,このように国民主権ないしは硬性憲法の建前に反するという事態が生じうる。
そこで,憲法改正手続と条約締結手続における手続的難易は,憲法と条約の形式的効力における優劣に対応すべきであり,憲法優位説が妥当といえる,との主張がなされます。
(佐藤功・日本国憲法概説p581〜,芦部・憲法p384〜,長尾・日本国憲法第3版p556〜参照)


E 条約締結権が憲法によって認められた権能であることを重視すべきである。

・・・条約締結権は,憲法によって認められた国家機関の権能であって,それ故みずからの権能の根拠となった憲法を変更することができるものではなく,憲法の採用する国際協調主義といっても,憲法と条約の形式的効力関係において,条約優位を論理的に導くものではない。
(木下・只野[編]・新・コンメンタール憲法p752参照)



[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
日本国憲法概説 全訂第五版 佐藤功 著 学陽書房
憲法 第6版 芦部信喜 著 高橋和之 補訂 有斐閣
憲法 第三版 樋口陽一 著 創文社
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
日本国憲法[第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法U 第5版 野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利 著 有斐閣
基本講義 憲法 市川正人 著 新世社
新・コンメンタール憲法 木下智史・只野雅人[編]日本評論社
正解 1 条約優位説 イ(ADF)      憲法優位説 ロ(BCE)


以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。

                                         以  上














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2017年11月06日

簡裁訴訟代理等能力認定考査 合格のための 勉強会について

             認定考査 合格のための 勉強会



私自身は,簡裁訴訟代理等能力認定考査合格のための試験勉強会については,余り意義を見出せないのですけれども,それは人によってそれぞれでしょう。もし,勉強会を開催されるということであれば,その参加者をよくよく吟味する必要があると思われます。


例えばの話ですが,自己主張が強すぎるのにもかかわらず,いざその人の作成した準備書面を見ると,まるで要点整理ノートの1ページを破いてきたのかと思われるような,およそ準備書面の体を成していない書面であったり,

また,その内容を見ても,事案の争点を把握しているとは到底思えない書きぶりなど,事案分析能力,事実認定力,要件事実の理解力等に乏しいと思料される特別研修受講生も存在するかもしれません。


しかも,かかる特別研修受講生のなかには,特に自己主張が強く,人の言い分にほとんど耳を貸そうとせず,人物攻撃,人格攻撃ばかりに腐心する大人げないものもいるかもしれません。


かりにかような特別研修受講生と勉強会を開けば,誤った方向へと議論が強引に導かれ,何の益にもならないばかりか,かえって有害ですらありましょう。


やはり直観力で感じた優秀と思われる特別研修受講生を含めて合計で2,3人,多くても4人くらいの人数で,勉強会をするのがよいでしょう。



その際も,勉強会に集まる者のうち半数以上は,予備校の講義を受講している者が含まれていることが,本来的にはより安全と言えるでしょう。

議論が誤った方向に行くのを食い止めてくれる可能性が高くなるからです。


そしてまたこれも忘れてはならないことですが,常識的な意味で適度な協調性のある特別研修受講生であるかどうかも勉強会メンバーの選択にあたっては重要な点であるということです。



以上,簡裁訴訟代理等能力認定考査の合格のための勉強会メンバーについては,よくよく吟味されることをお勧めいたします。 
                                          以 上
                                         
                                            
                                           



(定評ある参考書)
要件事実の考え方と実務[第3版] 加藤新太郎・細野敦 著  民事法研究会
認定司法書士への道 要件事実攻略法[第3版] 伊藤塾講師 蛭町浩 著  弘文堂
司法書士簡裁訴訟代理等関係業務の手引き 平成29年度版
日本司法書士会連合会 編 日本加除出版






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2017年10月07日

司法書士試験ブログ 国政調査権の単純知識・択一問題(憲法)司法試験・司法書士試験・行政書士試験 

[ はじめに ]


国政調査権の択一問題は,いつ出題されてもおかしくありません。単純知識問題として出題される可能性があります。



今回の択一問題は,国政調査権と司法権との関係についての肢を中心に作成しました。



個数問題と言うことで,多少,手古摺る(てこずる)ことがあるかもしれません。



しかし,是非,正解したい問題と言えます。



正解は,参考文献の下に記載してあります。








[ 問 題 


各議院の国政調査権に関する次のAからEまでの記述のうち,正しいものは幾つあるか。



 議院が司法に関する予算審議や立法制定審議のために必要であると判断しても,司法権の独立の観点からは,裁判一般の運営調査について,国政調査権を行使することができない。



 議院の国政調査権は,特定個人の有罪性の探索を唯一の目的として行使することができる。



 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づき出頭した証人は,自己の思想・良心それ自体や,思想・良心に直接かかわる尋問に対しても,証言を拒むことが許されない。



 後続の同種事件を審理する裁判官の自由な心証形成を担保維持するため,裁判内容の批判的調査による裁判官への事実上の影響力を排除すべきであり,裁判の事後審査は判決自体のみによって行われなければならないと解すれば,確定判決の事実認定及び刑の量定につきこれらを批判をするため,議院は国政調査権を行使することができる。



 議院の国政調査権においては,住居侵入,捜索,押収,逮捕の刑事手続上の強制力の行使が認められていない。





1 1個    2 2個    3 3個    4 4個    5 5個















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[ 解 答 ]
(芦部・憲法と議会政p161〜,長尾・日本国憲法全訂第4版p215〜,野中ほか・憲法Up147〜参照)



問題肢A 議院が司法に関する予算審議や立法制定審議のために必要であると判断しても,司法権の独立の観点からは,裁判一般の運営調査について,国政調査権を行使することができない。



誤り。



正解は次のとおり。


議院が司法に関する予算審議,立法制定のための審議に必要と判断するときは,裁判一般の運営調査について,国政調査権を行使することができる。
(勿論,裁判官の裁判活動に対して事実上の重大な影響を及ぼすような調査でないことを前提とする。)






問題肢B 議院の国政調査権は,特定個人の有罪性の探索を唯一の目的として行使することができる。



誤り。



正解は次のとおり。


議院の国政調査権は,特定個人の有罪性の探索を唯一の目的として行使することができない。






問題肢C 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づき出頭した証人は,自己の思想・良心それ自体や,思想・良心に直接かかわる尋問に対しても,証言を拒むことが許されない。



誤り。



正解は次のとおり。


議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づき出頭した証人は,自己の思想・良心それ自体や,思想・良心に直接かかわる尋問に対して,思想・良心の自由を理由として証言を拒むことができる。

(市川・基本講義 憲法p295参照)




問題肢D 後続の同種事件を審理する裁判官の自由な心証形成を担保維持するため,裁判内容の批判的調査による裁判官への事実上の影響力を排除すべきであり,裁判の事後審査は判決自体のみによって行われなければならないと解すれば,確定判決の事実認定及び刑の量定につきこれらを批判をするため,議院は国政調査権を行使することができる。



誤り。

このDの肢は,全体的に考察すると論理的に齟齬を生じています。

同種事件の裁判官の自由な心証形成を担保するためには,仮令(たとえ),判決確定後においても,裁判内容の批判目的のために国政調査権を行使することはできないと考えるのが論理的です。とくに「裁判の事後審査は判決自体のみによって行われなければならない」と指摘している点に注意が必要です。この両者相俟って,Dの肢は誤りと判断できます。




したがって,正解は次のとおりです。


後続の同種事件を審理する裁判官の自由な心証形成を担保維持するため,裁判内容の批判的調査による裁判官への事実上の影響力を排除すべきであり,裁判の事後審査は判決自体のみによって行われなければならないと解すれば,確定判決の事実認定及び刑の量定につきこれらを批判をするため,議院は国政調査権を行使することができない



より簡明に記載すると,


後続の同種事件についての裁判官の自由な心証形成を担保維持するため,確定した判決内容についても,その事実認定及び刑の量定につきこれらを批判するため,議院は国政調査権を行使することができない。


となります。



裁判内容の批判的調査の可否については,以下の学説があります。

(芦部・憲法と議会政p161〜,野中ほか・憲法Up147〜参照)



T 公判進行中であると,裁判終了後であるとを問わず,いつでも裁判の訴訟指揮,判決の批判的調査ができるとする説(絶対許容説)

学説Tに対しては,司法権の独立の意義を没却するとの批判があります。


U 判決確定後に限り,判決ないしはそれまでの訴訟手続の当否を調査できるとする説(判決確定後許容説)


学説Uに対しては,後続の類似事件を審理する裁判官の法的確信の自由な形成(自由な心証形成)に対する事実上の影響力を看過しているとの批判があります。



V 判決確定の前後を問わず,裁判の批判的調査をすることができないとする説(絶対禁止説)


学説Vは,裁判内容の批判的調査は,権力分立の原則からして,そもそも国政調査権の範囲,限界を超えるものであって違法であり,一切許されないとします。


学説T及びUの両説には,そもそも裁判内容の批判的調査が適法にできるとする点で問題であるとの指摘,批判があります。



本設問の肢Dは,学説Vの[絶対禁止説]について記載したものです。


判決確定の前後を問わず,裁判の批判的調査をすることができないとする説(絶対禁止説)





one more 知識(通説)

現に係属中の裁判事件につき,その裁判手続,訴訟指揮権の行使についてこれを批判し,司法部に指揮勧告する目的のために,議院は国政調査権を行使することができない。


と解されています(野中ほか・憲法Up147〜,新・コンメンタール憲法 木下智史・只野雅人[編]p517参照)




問題肢E 議院の国政調査権においては,住居侵入,捜索,押収,逮捕の刑事手続上の強制力の行使が認められていない。



正しい。

正解は次のとおり。


議院の国政調査権においては,住居侵入,捜索,押収,逮捕の刑事手続上の強制力の行使が認められていない。




憲法第62条[議院の国政調査権]

両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。






[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
憲法と議会政 芦部信喜  著 東京大学出版会
憲法第6版 芦部信喜 著   高橋和之補訂 岩波書店
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
日本国憲法[第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣
基本講義 憲法 市川正人 著 新世社
新・コンメンタール憲法 木下智史・只野雅人[編] 日本評論社
など

正解 1 正しい肢はEの1個


以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。

                                         以  上


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2017年09月07日

短答・択一 緊急集会 憲法

 はじめに

緊急集会についての知識を準備しておくと,短答,択一においていざという時,役立つことがあるかもしれません(殊に司法試験に限って言えば,ここまでの知識が求められているとの評価が可能でしょう)。

本番でいきなり緊急集会について問われれば,準備していない限り,その問題は恐らく予備校でよく見かける「難易度表」でいうところの「難」の部類に入り得る問題と言えましょう。

言うまでもなく単純知識問題は,知っているか知っていないかで問題の難易度が変化します。多くの受験生が準備手薄であろうところの知識問題が,一般的に「難」になり得る問題だと言えましょう。

受験生一般が使用しているであろう基本書に書いてはあるが,重要性の評価が低く読み飛ばしがちな傾向にあったり,あるいは過去問末出題であったり,また試験結果の実際の正答率など色々なファクトを分析した結果,予備校は「難易度」をレジュメや過去問集等に記載するのでしょう。ここでいう「難」は,そういう意味で想定したところの「難」です。

いずれにせよ知識問題は,知っていれば瞬時に答えが出て解答が波に乗る一方で,躓いて時間をとられると調子が崩れます。調子の乗りのよしあしが,短答,択一の全体としての正答率に影響を及ぼします。

そこで,「教授」と「学生」の対話形式を通じて,緊急集会についての知識確認をするため,以下の対話文を作成してみました。さらに,基本書,テキスト等により,ご確認なされるならば,より正確で漏れのない知識になろうかと思います。



(なお,試験勉強においては,「基本」が大切であることはご案内のとおりです。「基本」を超えて,奇を衒った勉強をすることを推奨しておりません。勉強の合間に当サイトを訪問して下さった閲覧者の方々が,「ちよっと手が届かなかったなあ・・。まあ,読んでみるか。」といった軽い気持ちでお読みいただける記事を作成したものです。普段の勉強において,「基本」こそが大切である事に変わりはありません。念のため。)





 教授と学生の対話



[教授] 緊急集会を求める権能は内閣のみにあるのですか?それとも内閣に加えて議院にもあるのですか?

[学生] 緊急集会を求める権能は,内閣のみにあります。


(長尾・日本国憲法[第3版]p369[全訂第4版]p206,野中ほか・憲法Up121参照)





[教授] 緊急集会が行われるのは,どういう場合ですか? 

[学生] @衆議院の解散中に,A国に緊急の必要がある場合であって,B内閣の求めによって行われます(憲法54条2項但書)。







[教授] 解散によることなく,衆議院議員の任期満了によって衆議院不存在となった場合においても,緊急集会は開かれるのですか? 

[学生]  議員の任期満了の場合においても,理論上,緊急集会の必要は考えられますが,憲法はそういう場合を想定しておりませんので,開かれません。


(佐藤(幸)・日本国憲法論p452参照)





[教授] 緊急集会において,会期の定めはありますか?

[学生]  いいえ,緊急集会には,会期の定めはありません。すべての必要案件が議決されたときに,参議院議長は終了を宣言することになります。これにより,緊急集会は終了します。


(佐藤(幸)・日本国憲法論p453,野中ほか・憲法Up122,木下ほか・新・コンメンタール憲法p487参照)






[教授] 緊急集会において,天皇の召集は必要とされていますか? 

[学生]  いいえ,緊急集会は国会の召集とは異なり国事行為ではないので,天皇の召集は必要とされていません。


(長尾・日本国憲法[第3版]p369[全訂第4版]p206,野中ほか・憲法Up121参照)







[教授] 緊急集会を求める権能が内閣のみに属するとなると,議案の発議権も内閣のみに専属するとして,これにより議員による議案の発議は一切行うことができないのですか? 

[学生]  いいえ,そのようなことはありません。内閣の示した案件に関連するものに限ってではありますが,議員による議案の発議も認められています(国会法101条)。請願についても,同様に取り扱われています(国会法102条)。



(佐藤(幸)・日本国憲法論p453,野中ほか・憲法Up121,木下ほか・新・コンメンタール憲法p487参照)




[教授] 緊急集会において,内閣総理大臣の指名や憲法改正の発議を行うことができますか? 

[学生]  いいえ,できません。緊急集会は,参議院が国会に代わって,緊急案件について,臨時的,応急的,暫定的措置をとるころに実質的意義を有しますので,内閣総理大臣の指名や憲法改正の発議を行うことができないと解されています。



(長尾・日本国憲法[第3版]p370[全訂第4版]p206,木下ほか・新・コンメンタール憲法p488参照)






[教授] それでは緊急集会において,内閣に対する不信任の決議を行うことができますか? 

[学生]  いいえ,できません。なぜなら,緊急集会の権能は,国会の権能に属するものでなければならないところ,内閣に対する不信任の決議は,衆議院の権能に属するものであって,緊急集会の権能には属さないからです。



(長尾・日本国憲法[第3版]p370[全訂第4版]p206参照)







[教授] 緊急集会においても,発言・表決の免責特権(憲法51条),不逮捕特権(憲法50条,国会法100条)を参議院議員は享受することができますか? 

[学生]  はい,できます。


(野中ほか・憲法Up122,木下ほか・新・コンメンタール憲法p487参照)






[教授] 緊急集会において採られた措置について,次の国会開会の後10日以内に,衆議院の同意がない場合に,該緊急集会でとられた措置の効力はどうなりますか? 

[学生]  憲法第54条第3項は「・・・緊急集会において採られた措置は,臨時のものであって,次の国会開会の後10日以内に,衆議院の同意がない場合には,その効力を失う。」旨規定しています。従いまして,衆議院の同意が得られない場合,緊急集会で採られた措置の効力は失われます。







[教授] 緊急集会で採られた措置の効力は,過去に遡って失われることになるのですか?

[学生]  いいえ,そうではありません。緊急集会で採られた措置の効力は,過去に遡って失われるものではありません。将来に向かって,失われます。



(佐藤(幸)・日本国憲法論p453,野中ほか・憲法Up122参照)



日本国憲法
第五十四条  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。







緊急集会と臨時会の比較のため,以下に条文掲載します。
     臨  時  会            
第五十三条  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

     緊 急 集 会 
第五十四条  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。


[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
日本国憲法[第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣
新・コメンタール憲法 木下智史。只野雅人[編] 日本評論社
など


以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。                               以  上




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posted by 略して鬼トラ at 06:35 | 司法試験

2017年08月07日

平成29年度 択一基準点(司法書士試験)




平成29年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)の基準点






午前の部(多肢択一式問題) 満点105点中75点

午後の部(多肢択一式問題) 満点105点中72点












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2017年07月25日

国民審査制の法的性質( 司法試験 )


             最高裁判所裁判官の国民審査制の法的性質

               (司法試験・予備試験 論点)                
 




国民審査制の法的性質についての択一問題を作成しました。

判例の見解を知っていれば,あとは文章の文脈の前後関係でキーワードの連続性,論理性を追っていくと,何とか正解に達することができるのではないでしょうか。


正解は参考文献の下に記載してあります。










[ 問 題 ]

次の甲と乙の会話の中の[ア]から[オ]までの[ ]内に下記AからEまでの文章の中から適切なものを選択して入れると,最高裁判所裁判官の国民審査制の法的性質に関する対話が完成する。[ア]から[オ]までの[ ]内に入れるべきものの組み合わせとして最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。



学生甲 憲法第79条第3項が,国民審査の法的効果として当該裁判官が「罷免される」ことを定めていること,また,国民審査以前に有効に任命され,裁判官はその職務に完全に就いており,裁判官に対する罷免決定は将来に向かってのみ効力を有すること,これらを考えれば,[ ア ]ことは,明らかである。


この説によれば,特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ,それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ,×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであつて、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない)の数に算える国民審査の投票方法について,合憲であるとの結論を導くことができる。



学生乙 甲君は判例と同旨の見解を採っている。
しかし,甲君の説は適格性審査が制度の核心と捉えるが,[ イ ]のだから,かかる国民審査は妥当性に欠けるのではないか。



学生甲 しかし,最高裁判所裁判官としてなしたことのみが判断資料になるのではなく,最高裁判所裁判官になる前の経歴,所業,業績などを資料として,罷免すべきか否かを国民が審査することができる。

ところで,憲法第79条第2項によれば,「最高裁判所の裁判官の任命は,・・・・審査に付し・・」とある。この文言を根拠に,[ ウ ]とする説を乙君は採るのか。



学生乙 いいえ。かかる説によれば,[ エ ]から採らない。

そこで私は,国民審査制度の法的性質について以下の説を採る。
法的効果の面からリコール(解職制度)であるということを承認した上で,さらに内閣の任命行為に対する事後審査としての性格を併有する。
すなわち,[ オ ]とする説を採る。



学生甲 しかし,乙君のいう「事後審査」という概念は不明瞭である。また,乙君の説によれば「事後審査」に任命行為を完結させるという意味が含まれておらず,国民審査制度の法的性質に関する限り,私の説と径庭がないように思われる。






(文章群)

A  国民審査は任命行為に向けられたものであるから,国民審査制度は「任命」行為を完成(完結),確定させる公務員選定作用である


B 任命後初の審査は任命行為に対する事後審査,10年を経過する毎に行われる審査は個々の裁判官の過去の職務遂行の業績から判断する解職としての意味を有する       


C 国民審査制度は裁判官の適格性を国民が審査し,不適格者を罷免する国民解職(リコール)の制度である


D 任命から国民審査までの裁判官の地位を説明できない難点がある


E 任命後間もない時期に行われる国民審査においては,最高裁判所裁判官としての実績に乏しく,判断資料が不足している



1   アにA  ウにB       2 イにD  エにE    3 アにC  エにD
4  ウにB  オにC       5 イにE   オにA    





(参考)
憲法
第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4  審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。


                  
               
                以上が問題,この下に行くと解答












































[解 答]

学生甲 憲法第79条第3項が,国民審査の法的効果として当該裁判官が「罷免される」ことを定めていること,また,国民審査以前に有効に任命され,裁判官はその職務に完全に就いており,裁判官に対する罷免決定は将来に向かってのみ効力を有すること,これらを考えれば,ア 国民審査制度は裁判官の適格性を国民が審査し,不適格者を罷免する国民解職(リコール)の制度であることは,明らかである。(ア・C)(解職制度説・リコール説)(宮澤・全訂日本国憲法p642,憲法の争点p266参照)

この説によれば,特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ,それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ,×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであつて、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない)の数に算える国民審査の投票方法について,合憲であるとの結論を導くことができる。

→最高裁昭和27年2月20日大法廷判決(昭和24年(オ)第332号最高裁判所裁判官国民審査の効力に関する異議事件)参照
→佐藤(幸)・日本国憲法論p400,長尾・日本国憲法[第3版]p428参照



学生乙 甲君は判例と同旨の見解を採っている。
しかし,甲君の説は適格性審査が制度の核心と捉えるが,イ 任命後間もない時期に行われる国民審査においては,最高裁判所裁判官としての実績に乏しく,判断資料が不足しているのだから,かかる国民審査は妥当性に欠けるのではないか。(イ・E)(憲法判例百選U[第4版]p397参照)




学生甲 しかし,最高裁判所裁判官としてなしたことのみが判断資料になるのではなく,最高裁判所裁判官になる前の経歴,所業,業績などを資料として,罷免すべきか否かを国民が審査することができる。(宮澤・全訂日本国憲法p643,渋谷・憲法p668−669参照)

ところで,憲法第79条第2項によれば,「最高裁判所の裁判官の任命は,・・・・審査に付し・・」とある。この文言を根拠に,ウ 国民審査は任命行為に向けられたものであるから,国民審査制度は「任命」行為を完成(完結),確定させる公務員選定作用であるとする説を乙君は採るのか。(ウ・A)(任命確定説)(憲法判例百選U[第4版]p397参照)



学生乙 いいえ。かかる説によれば,エ 任命から国民審査までの裁判官の地位を説明できない難点があるから採らない。(エ・D)(野中ほか憲法Up251,憲法判例百選U[第4版]p397)

そこで私は,国民審査制度の法的性質について以下の説を採る。
法的効果の面からリコール(解職制度)であるということを承認した上で,さらに内閣の任命行為に対する事後審査としての性格を併有する。(憲法の争点p266参照,憲法の基本判例p192参照)

すなわち,オ 任命後初の審査は任命行為に対する事後審査,10年を経過する毎に行われる審査は個々の裁判官の過去の職務遂行の業績から判断する解職としての意味を有するとする説を採る。(オ・B)(二面的性格説・併有説)(憲法の争点p266,憲法の基本判例p192参照)




学生甲 しかし,乙君のいう「事後審査」という概念は不明瞭である。また,乙君の説によれば「事後審査」に任命行為を完結させるという意味が含まれておらず,国民審査制度の法的性質に関する限り,私の説と径庭がないように思われる。(憲法判例百選U[第4版]p397,憲法の基本判例p192参照)



[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
全訂日本国憲法 宮澤俊義 著 芦部信喜 補訂 日本評論社
演習 憲法 新版 芦部信喜 著 有斐閣
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
日本国憲法[第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣
憲法 第3版 渋谷秀樹 著 有斐閣
注釈日本国憲法 下巻 樋口陽一・佐藤幸治・中村睦男・浦部法穂 著 青林書院
憲法の基本判例[第2版]樋口陽一・野中俊彦 編 有斐閣
憲法判例百選U[第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編 有斐閣 
判例プラクティス憲法 増補版 憲法判例研究会 編 信山社
[ 正解 3 ]


学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。

                                     以  上 





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posted by 略して鬼トラ at 05:00 | 司法試験

2017年06月25日

独立行政委員会


                    独立行政委員会




独立行政委員会についての問題を作成しました。



独立行政委員会の合憲論については,様々な合憲論があります。試験に出そうな合憲論についての問題を作成してみました。



正解は,参考文献の下に記載してあります。






[ 問 題 ]

独立行政委員会が,日本国憲法第65条に違反しないとする合憲論について,以下のA説,B説の見解があるものとする。次のアからオまでの記述のうち,「この見解」がA説を指すものは,幾つあるか。



A説 憲法第65条は,すべての行政を内閣の統制(コントロール)の下に置かなければならないとするが,行政委員会は,何らかの意味において内閣の統制の下にあるから,行政委員会の合憲性が認められる。


B説 憲法第65条は,必ずしもすべての行政について行政権者たる内閣が指揮監督権をもつことを要求するものではないから,行政委員会の独立性(行政委員会が内閣の指揮監督下にないこと)を正面から承認した上で,行政委員会の合憲性を認めることができる。



ア この見解には,内閣に行政委員会の委員任命権や予算権があることを重視し,その限りで国会による内閣を通じての民主的コントロールが行政委員会に及んでなければならないとする基準をみたすから,行政委員会の合憲性を認めることができるとする見解がある。


イ この見解は,憲法第41条が「国会は・・・唯一の立法機関」として,同法第76条が「すべて司法権は・・・裁判所に属す」としているのに対して,同法第65条にはそのような限定はなく,単に「行政権は内閣に属す」と規定するのみであることを根拠とする。


ウ この見解に対しては,その主張する監督の程度で,行政委員会が内閣のコントロール下にあるとするのであれば,裁判所すらも内閣のコントロール下に立つことになってしまうとの批判が可能である。


エ この見解は,憲法第65条の趣旨は行政の民主的コントロールにあるのだから,行政委員会の行政事務が内閣の指揮監督権から独立していても,その分,国会自らが直接コントロールを行い「民主的統制」を及ぼして補完すれば,行政委員会の合憲性が認められるとする。


オ この見解は,三権分立を行政の専恣を抑制する原理として発展してきたものであると解し,行政委員会の設置は,この行政府に対する抑制設定という三権分立原理の目的と合致するから,その合憲性を認めることができるとする。




1 0個   2 1個    3 2個    4 3個   5 4個







( 参 考 )

日本国憲法
第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第六十五条  行政権は、内閣に属する。

第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

























[ 解 説 ]

以下に,各肢の[この見解]の中に具体的にA説・B説を挿入したものを掲記します。


 この見解(A説)には,内閣に行政委員会の委員任命権や予算権があることを重視し,その限りで国会による内閣を通じての民主的コントロールが行政委員会に及んでなければならないとする基準をみたすから,行政委員会の合憲性を認めることができるとする見解がある。


 この見解(B説)は,憲法第41条が「国会は・・・唯一の立法機関」として,同法第76条が「すべて司法権は・・・裁判所に属す」としているのに対して,同法第65条にはそのような限定はなく,単に「行政権は内閣に属す」と規定するのみであることを根拠とする。


 この見解(A説)に対しては,その主張する監督の程度で,行政委員会が内閣のコントロール下にあるとするのであれば,裁判所すらも内閣のコントロール下に立つことになってしまうとの批判が可能である。


 この見解(B説)は,憲法第65条の趣旨は行政の民主的コントロールにあるのだから,行政委員会の行政事務が内閣の指揮監督権から独立していても,その分,国会自らが直接コントロールを行い「民主的統制」を及ぼして補完すれば,行政委員会の合憲性が認められるとする。


 この見解(B説)は,三権分立を行政の専恣を抑制する原理として発展してきたものであると解し,行政委員会の設置は,この行政府に対する抑制設定という三権分立原理の目的と合致するから,その合憲性を認めることができるとする。







[ 問題の所在 ] ( 判例憲法 第3版p329-330参照)


行政機関は,内閣の指揮監督の下に服するのを原則とします(憲法第65条,同法第72条,内閣法第6条参照)。

この原則は,国会に対して連帯して政治的責任を負う内閣による指揮監督権を行政機関各部に及ぼし,これに服させることによって,その民主的な責任を確保する意味を有します(民主的責任行政の原理)。

そこで,程度の差はあるものの行政事務を独立に行うことの認められる独立行政委員会が,行政機関は内閣の指揮監督の下に服するとの原則に反し,憲法に違反するのではないかが問題となります。


(なお,独立行政委員会としては,例えば人事院,国家公安委員会,公正取引委員会等があります。)






[ 具体的説明 ]
以下,具体的に説明していきます。


憲法第65条は,一切の例外を認めないとのアプローチからする合憲論


A説は,憲法65条がすべての行政について内閣のコントロールの下になければならないとするところ(例外を認めない),行政委員会も何らかの意味において内閣のコントロールの下にあるから,合憲であるとします。(独立性否定説)

そしてA説は,例えば内閣に行政委員会の委員任命権予算権があることを重視し,これをもって行政委員会も内閣のコントロールの下にあるとして,行政委員会の合憲性を認めます。[肢ア]




しかし,A説に対しては,その主張する監督の程度で,行政委員会が内閣のコントロール下にあるとするのであれば,裁判所すらも内閣のコントロール下に立つことになってしまうとの批判があります。[肢ウ]


これは司法権の独立に抵触するとの批判です。






憲法第65条は,一定の例外を認めるとのアプローチからする合憲論


これに対して,B説は,憲法第65条について,必ずしもすべての行政を内閣の指揮監督権・コントロール(統制)下に服させることまで要求していないと解した上,内閣から独立して行政事務を行う行政委員会の合憲性を認めます。

すなわち,上記の独立性否定説とは異なり,行政委員会の内閣からの独立性を正面から認め(行政委員会が内閣の指揮監督下にないことを正面から認め),独立性を前提とした上で例外として許容される行政委員会の正当化を行い,これによりその合憲性を認める見解がB説です。

→ ただし,「B説の諸説の大勢は,憲法第65条が存在する以上,内閣と完全に無関係な行政機関を設置することはできないと見ているようである(憲法の争点p229参照)。」と言われています。




B説からは,様々な論理による合憲論が主張されています。
以下に試験に出そうなB説からの合憲論をいくつか掲記します。



T 憲法の文言をみると,憲法第41条(立法権配分条項)が「国会は・・・唯一の立法機関である。」と規定し,また憲法第76条(司法権配分条項)が「すべて司法権は・・・裁判所に属する。」と規定しているのに対して,行政権配分規定たる憲法第65条は単に「行政権は,内閣に属する。」と規定するのみで,「唯一」とか「すべて」とか,限定する字句を用いておらず,内閣の行政権限の独占を示唆する文言がない。[肢イ] (憲法の争点p229参照)




U 憲法第65条の趣旨は行政の民主的コントロールにあるのだから,行政委員会の行政事務が内閣の指揮監督権から独立していても,その分国会自らが直接コントロールし民主的統制を及ぼして補完すれば行政委員会の合憲性が認められる。[肢エ](注解法律学全集3憲法Vp189参照)




V 三権分立の目的は,元来行政府に対する抑制設定にある。[肢オ]

→ 行政府の専恣を排除し,行政府に対する抑制を行うところに憲法第65条の趣旨があると解して,特に行政組織が法律によって定められる体制下においては,国会が内閣と独立の行政機関を設けたうえ,それに行政権の一部を帰属させることも可能であるとする。(日本国憲法論p485参照)





W 異議の裁決など準司法的な事務や,警察や選挙管理など内閣の影響を排除した公正・中立性の求められる行政事務,科学技術,経済など技術的専門性の強い事務等,その職務の性質上,内閣の指揮監督の下に服させるのが適当でないものがあり,かかる行政については内閣から独立して行政委員会に権限を行使させても,憲法第65条に反しない。(判例憲法 第3版p330,日本国憲法論p485,注解法律学全集3憲法Vp189参照)

→ A説の中の論者も,事務の性質上,職務権限の行使につき独立性を保障するだけの合理的根拠が存する限り,独立行政委員会の設置は,憲法の趣旨に反しないとして,職務権限の行使について独立性を保障するだけの合理的根拠の存在を要求しています。(注解法律学全集3憲法Vp187参照)







なお,佐藤・日本国憲法論p485,486を,デフォルメして大ざっぱに言うと概ね以下のようになると思います。(注解法律学全集3憲法Vp189は,佐藤(幸)説をA説とB説を総合する有力説C説として掲記しています。)

 憲法第65条が「行政権は、内閣に属する。」としている以上,憲法自体に別段の定めがない限り,内閣から全くの無関係な行政機関を設置することはできない


 独立行政委員会の歴史的展開過程に徴し,制度自体の合理性が認められれば,その限りで職務権限行使の独立を認めうる。


 内閣の行政委員会に対する指揮監督権の不十分なところは,国会自らが民主的コントロールを行政委員会に及ぼしてこれを補完する。



1,2,3を総合して,最終的には制度自体の合理性の存否が,合憲性の最後の決め手となる。(日本国憲法論p486,憲法の争点p228-331参照)















[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
[新版] 憲法講義 下 小林直樹 著  東京大学出版会
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
注解法律学全集3憲法V樋口陽一・佐藤幸治・中村睦男・浦部法穂 著 青林書院 
判例憲法 第3版 大石 眞・大沢秀介 著 有斐閣
憲法の争点 大石眞・石川健治 [編]  有斐閣 
憲法判例百選U[第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編 有斐閣 
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など
正解 3 [A説ア,ウ →ア,ウの2個  B説イ,エ,オ ]
 

                                  以   上

学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。








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2017年06月12日

違憲審査権の性格についての学説

               違憲審査権の性格についての学説等




違憲審査権の性格について,択一問題を作成しました。



違憲審査権の性格という論点は,司法試験,司法書士試験,行政書士試験のいずれの試験においても,出題論点となりえます。

ただし,私の解説文章は,司法試験向きに書きました。


また,短答,択一問題においては,下記のA,B-1,B-2,C説のような学説の掲記はなく,もっと単純な形式で出題されると思います。

試験対策的には,肢の1,2,3,4だけ押さえておけば十分だと思います。


肢の5は,試験対策的には準備しなくとも試験に支障はないでしょう。(現場思考で乗り切れるのではないでしょうか。ただ,不安であればサラッと触れておくだけでもよいでしょう。)



特に独立審査権説,法律事項説の内容の細かな理解・記憶は,試験対策的には準備不要かと思われます。試験対策的には本サイトのその該当解説部分を読まなくても,試験に支障はないでしょう。(時間に余裕があれば,サラッと触れておくだけでもよいでしょう。他にやるべき重要な優先事項の勉強の方が大切かと思います。)





正解は参考文献の下に記載してあります。







[ 問 題 ]



憲法第81条に規定する違憲審査制の性格について,次のAないしCの各説があるとして,後記の語句群の中から適切な語句を選択して文章を完成させた場合の下記1から5までのうち,A説の根拠とならないもの,またはA説から他説に対する批判とならないものはどれか。



A 最高裁判所は,具体的事件を前提として,その解決に必要な限りでのみ法令の合憲性を審査・決定する違憲審査権を有するにとどまる。


B−1 上記Aにとどまらず,それに加えて,最高裁判所は,抽象的・一般的に法令の合憲性を審査・決定する独自の違憲審査権を有する。ただし,最高裁判所に独自の違憲審査権の行使を求めるためには,提訴手続き等が法律で定められている必要があり,それがなければ出訴できない。 


B−2 上記Aにとどまらず,それに加えて,最高裁判所は,抽象的・一般的に法令の合憲性を審査・決定する独自の違憲審査権を有する。提訴手続き等の法律は不要であり,最高裁判所に独自の違憲審査権の行使を求めることができる。


C 上記Aにとどまらず,それに加えて,最高裁判所の司法裁判所としての本質に反しない限度で,一定の抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的権限を法律によって最高裁判所に付与できる。



1 (   )的違憲審査権の重要性に照らせば,提訴要件あるいは判決の効力が憲法に明定されている必要があり,また,裁判官の選任についても,特別の配慮がなされている必要があるが,わが憲法上これらに関する規定がない。


2 憲法第81条の違憲審査制は,沿革的に見てアメリカ合衆国憲法の司法審査制を継受したものと解するのが自然である。


3 憲法第81条は,(   )の章に規定されているが,(   )とは伝統的に具体的な権利義務に関する争いを前提として,これに法令を解釈・適用して,終局的にこれを解決する国家作用であるところ,違憲審査権はこれに(   )する作用として,憲法第81条に明記されている。


4 (   )的違憲審査を認めるということは,裁判所による(   )立法を認めることになり,三権分立における立法権・(   )権・(   )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めることになる。



5 裁判所が(   )作用を行う以上,具体的事件の解決の前提として,適用法令の合憲性の審査を行うのは憲法第76条第1項から当然のことであり,それでもなお憲法第81条が違憲審査権を特に明定したのは,(   )審査以上の意味を付与したものと考えられる。





[語句群]


「第4章 国会」     「第5章 内閣」     「第6章 司法」 

 抽象    付随     司法    行政

 消極的   積極的




( 参 考  )

日本国憲法
第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
















[ 解 説 ]


以下に上記問題文の各肢カッコ内に語句を挿入した完成後の文章を掲記します。



1 ( 抽象 )的違憲審査権の重要性に照らせば,提訴要件あるいは判決の効力が憲法に明定されている必要があり,また,裁判官の選任についても,特別の配慮がなされている必要があるが,わが憲法上これらに関する規定がない。

→付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判






2 憲法第81条の違憲審査制は,沿革的に見てアメリカ合衆国憲法の司法審査制を継受したものと解するのが自然である。

→付随的違憲審査制説の根拠



3 憲法第81条は,(「第6章 司法」)の章に規定されているが,( 司法 )とは伝統的に具体的な権利義務に関する争いを前提として,これに法令を解釈・適用して,終局的にこれを解決する国家作用であるところ,違憲審査権はこれに( 付随 )する作用として,憲法第81条に明記されている。

→付随的違憲審査制説の根拠



4 ( 抽象 )的違憲審査を認めるということは,裁判所による(消極的)立法を認めることになり,三権分立における立法権・( 司法 )権・( 行政 )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めることになる。

→ 付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判



5 裁判所が( 司法 )作用を行う以上,具体的事件の解決の前提として,適用法令の合憲性の審査を行うのは憲法第76条第1項から当然のことであり,それでもなお憲法第81条が違憲審査権を特に明記したのは,( 司法 )審査以上の意味を付与したものと考えられる。

→独立審査権説の根拠





[ 導 入 ]


最高裁判所に付随的違憲審査権が与えられているとする点においては,学説は共通し一致しています。与えられていることを当然の前提としています。

問題はそれ以上に最高裁判所に,抽象的な違憲審査権も与えられているか(憲法裁判所的権限も与えられているか),それとも付随的違憲審査権に限定されていると解するかです。この点について,学説間に争いがあります。(野中ほか憲法p274,ファンダメンタル憲法p275参照)


それでは,上記完成した肢が,どの見解に当てはまるか具体的に見ていきましょう。



ここから違憲審査制の性格についての従来の学説等を検討していきます。

以下では問題文中の各肢番号をそのまま使用します。



[ 学 説 ](全体として野中ほか憲法Up274以下参照)


憲法は司法裁判所型のみ認めていると解する説(憲法裁判所併立型の否定)


[A説  付随的違憲審査制説 ]

憲法第81条の違憲審査制は,具体的な事件を審理判断する前提として,該手続きの中で,該訴訟事件の解決に必要な限りでのみ適用法令の合憲性を審査する違審憲審査権の行使権限を裁判所に認めたにとどまるとする見解。
そして,この見解は,具体的事件を離れて抽象的・一般的に法令等の合憲性を独自に審査・決定する憲法裁判所的権限を憲法第81条は裁判所に認めていないとする。






肢1 ( 抽象 )的違憲審査権の重要性に照らせば,提訴要件あるいは判決の効力が憲法に明定されている必要があり,また,裁判官の選任についても,特別の配慮がなされている必要があるが,わが憲法上これらに関する規定がない。

→付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判





肢2 憲法第81条の違憲審査制は,沿革的に見てアメリカ合衆国憲法の司法審査制を継受したものと解するのが自然である。

→付随的違憲審査制説の根拠
日本国憲法の由来する米国憲法では司法裁判所型違憲審査制(付随的違憲審査制)が採用されているので,わが国の違憲審査制も,その沿革からして米国の制度にならったものと解するのが自然である。




肢3 憲法第81条は,(「第6章司法」)の章に規定されているが,(司法)とは伝統的に具体的な権利義務に関する争いを前提として,これに法令を解釈・適用して,終局的にこれを解決する国家作用であるところ,違憲審査権はこれに(付随)する作用として,憲法第81条に明記されている。

→付随的違憲審査制説の根拠





肢4 ( 抽象 )的違憲審査を認めるということは,裁判所による(消極的)立法を認めることになり,三権分立における立法権・( 司法 )権・( 行政 )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めることになる。(渋谷・憲法p517参照)

→ 付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判(野中ほか憲法p275,ファンダメンタル憲法p282参照)


→ 抽象的違憲審査権を認めると,その違憲判決の効力は一般的効力を有するため,その違憲判決によって無効となった法令は当該法令集から自動的に除去されたと実質的に考えられます。これは取りも直さず裁判所に消極的立法を営む権能を認めたことと等しい。
これが「司法を超えたところの第4の権力を裁判所に認めたことと同じになる」という意味だと思われます。
あるいは,「三権分立における立法権・( 司法 )権・( 行政 )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めたことになる。」という意味だと思われます。(→ 第4の権力を認めることは,国民主権,三権分立の原理に照らして無理があるといえる。[憲法判例百選U [第3版]p400参照])


そして,かかる重要な権限を認めるならば,その重要性に見合った何らかの手続規定が憲法上,明文をもって規定されていなければならいところ,憲法上かかる規定が明記されていない。

これはそもそも憲法自体が,最高裁判所に対して憲法裁判所的権限を認めていなかったことのあらわれであると考えられます。







憲法は憲法裁判所の性格をも認めていると解する説



[B−1説 独立審査権説 (独立審査法定必要説) ]


付随的違憲審査権が最高裁判所に与えられていることを当然の前提とした上で,それに加えて具体的な事件を離れ法令等の合憲性を抽象的・一般的に審査・決定する,独自の違憲審査権の行使を最高裁判所に憲法第81条は認めているとする見解。

そして,この見解は最高裁判所に対してその独自の違憲審査権の行使を求めるためには,提訴手続き等の特別の法律がなければ,出訴できないとする。




→[B−1説]の根拠 (違憲審査権と司法審査とを憲法が分けて,それぞれ独立の条項として規定)
(渋谷・憲法p516参照)

 肢5 裁判所が( 司法 )作用を行う以上,具体的事件の解決の前提として,適用法令の合憲性の審査を行うのは憲法第76条第1項から当然のことであり,それでもなお憲法第81条が違憲審査権を特に明記したのは,( 司法 )審査以上の意味を付与したものと考えられる。(憲法の争点p272参照)




→[B−1説]の根拠 (最高裁判所に違憲審査を独自に行う権限を肯定するような条項の書き方)
(渋谷・憲法p516参照)


憲法第81条の「決定する」との文言の意味は,最高裁判所に対して,憲法裁判所的権限を与えるという意味である。(憲法の争点p272参照)





→[B−1説]からの反論 
手続きの詳細は法律が定めることとしたのであり,憲法に提訴手続き等の規定が定められていないことは,最高裁判所において憲法裁判所的権限がないことを意味しない。(憲法の争点p272参照)

→ 独立審査法定必要説から付随的違憲審査制説に対する反論です。








[B−2説 独立審査権説 (独立審査法定不要説) ]


付随的違憲審査権が最高裁判所に与えられていることを当然の前提とした上で,それに加えて具体的な事件を離れて法令等の合憲性を抽象的・一般的に審査・決定する,独自の違憲審査権の行使を最高裁判所に憲法第81条は認めているとする見解,

そして,この見解は提訴手続き等の法律は不要であり,最高裁判所に独自の違憲審査権の行使を求めることができるとします。


→[B−2説]の根拠 
 上述の独立審査法定必要説の根拠である違憲審査権と司法審査とを憲法が分けて,それぞれ独立の条項として規定していることや(憲法76条1項,81条),最高裁判所に具体的事件を離れて違憲審査を独自に行う権限を肯定するような憲法条項の書き方がなされていることに加えて(憲法81条),(渋谷・憲法p516参照),独立審査法定不要説は,以下も根拠とします。


すなわち,独立審査法定不要説は抽象的違憲審査権を含み得るような司法権概念の流動性(これは法律委任説も主張しています。)
それに,様々な態様のありうる三権分立の原理であるのに,これを厳格に捉えて憲法裁判権を否定することはできない,こういったことを根拠とします。
(以上は,結局,独立審査法定必要説・独立審査法定不要説の共通の根拠になりうるのではないかと考えます。)

そして,独立審査法定不要説は,憲法81条は,最高裁判所に司法裁判所と憲法裁判所の両方の性格を認めているから,手続法の制定なくして,最高裁判所は,憲法81条により抽象的違憲審査権を含む憲法裁判を行うことができるとしています。(憲法判例百選U [第4版]p414-415参照)



→[B−2説]からの反論

提訴手続きの大綱,提訴権者の範囲,違憲判決の効力等抽象的違憲審査にかかる手続規定を,憲法に明記するか否かについては,正に憲法上の立法政策の問題であり,かかる規定のないことをもって,これが最高裁判所に憲法裁判所的権限のないことを意味しない。(憲法判例百選U[第4版]p414-415参照)








手続法制定に委ねられていると解する説


[C説 法律事項説 (法律委任説)] (論点憲法教室p22-24参照)

付随的違憲審査権が最高裁判所に与えられていることを当然の前提とする。それに加えて,最高裁判所の司法裁判所としての本質に反しない限度で,一定の抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的権限を最高裁判所に法律により付与できるとする見解。


→憲法第81条は,最高裁判所に憲法裁判所的性格を積極的に与えていると解することはできないが,逆にこれを禁じている趣旨とも解されないので,法律・裁判所規則でその権限や手続きを定めて,最高裁判所に一定の抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的機能を果たさせることが許容されるとする見解

→憲法上いずれとも明定されていないから(憲法上白紙の状態),抽象的違憲審査の権限を認めるかどうかは,法律で決めれば良い(立法政策の問題)とする見解



法律事項説は,以下のように自説を根拠づけています。

1 憲法は,憲法の最高法規性を認めている(憲法第98条)。
2 憲法は,最高裁判所を一切の立法や処分の憲法適合性,合憲性審査の終審裁判所として位置づけている(憲法第81条)。
3 憲法は,最高裁判所の裁判官に対して国民審査による国民の民主的コントロールを及ぼしている(憲法第79条第2項)。

4 権力分立上の裁判所の任務である「司法」「裁判」の概念は,歴史的に見て流動性のあるものであり,比較法的に見ても幅が見受けられる。


したがって,司法裁判所型の違憲審査制が採用されているからといって,抽象的違憲審査制が論理的に当然排除されるわけではない。

上記の憲法上の条文上の根拠,「司法」概念の流動性に照らし,また憲法の最高法規性を基礎づけている国民の基本的人権保障をよりよく実現するという観点から,一定の範囲で抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的権限をわが国に導入するかどうかは,まさに立法政策に委ねられた事項とする。
(以上,論点憲法教室p22-24参照)




日本国憲法


第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。



第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4  審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。


第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。


第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。



なお,ご承知のとおりで言うまでもないことですが,判例は,下級裁判所に付随的違憲審査権の行使権限を認めています。念のため。



[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
論点憲法教室   中村睦男 著  有斐閣
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
憲法の争点 大石眞・石川健治 [編] 有斐閣
憲法判例百選U [第3版] 芦部信喜・高橋和之 編  有斐閣
憲法判例百選U [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
憲法 第3版  渋谷秀樹 著 有斐閣(同書は,従来の議論の整理が必要であるとしています。また,付随⇔独立,具体⇔抽象の正確な概念整理も必要であるとしています。) 
憲法T 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など
[正解 5 ]


                                   
                               以    上





学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。












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2017年06月03日

人権規定の私人間効力 憲法 


                 人権規定の私人間効力




今回の択一は,人権保障規定の私人間効力に関する問題です。


ア,イ,ウの肢は定番の知識です。

エの肢も,向後,定番になりつつあると思います。


オは,難しい肢だと思います。
しかし,解説を読めば,即座に納得がいくと思います。
(ただし,司法書士試験の試験対策としては,平成29年6月3日現時点では余り気にしなくともよいと思います。今後,予備校のテキスト(市販も含む),予備校作問の択一等に記載・出題されだした場合や,本試験に出題されてしまったら話は別です。)



ところで,司法書士試験の憲法択一問題の出題もなかなか訊きにくいところがあるのではないかと思います。

既出の過去問の知識だけで毎年問題を作成するとなると,受験生は容易に正解に達してしまう。


しかし,難しいことはそう訊けない。
なぜなら,司法書士試験の過去問は全科目で見ると膨大な数に上り,かかる過去問の殆どすべては試験範囲といってもおかしくない。

すなわち,司法書士試験の試験範囲としては,すでに膨大な知識量が要求されています。ご承知のとおりです。


この上さらに知識の上乗せを要求するのも受験生に酷です。



ところが試験問題を作成する上で,過去の司法書士試験の限られた憲法択一問題からのみ出題をするのでは窮屈でしょうがない。

少しくらいは,定番の基本書からであれば,知識をすくいあげてみても許されるのではないか,こういったことを問題作成者も考えるのではないかと思います。



末出の知識を一回出せば,かかる知識を翌年度以降の択一問題の肢として心置きなく出題することができます。これにより択一問題が作成しやすくなります。


こんな問題作成者側の心理も読み解きつつ,択一問題を作成してみました。



解答は,参考文献の下に記載してあります。






問 題



次のアからオまでの記述は,人権保障規定の私人間効力についての見解である直接適用説と間接適用説に関する文章である。
下記の( 1 )から( 7 )の中に「直接」または「間接」の二つの語句のうち,いずれか正しい語句を入れた場合の組合せとして,最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。




ア ( 1 ) 適用説は,民法第90条の公序良俗規定や民法第709条の不法行為規定を解釈するにあたって,憲法の人権規定の価値内容を充填し,これを反映させることにより,憲法を( 2 ) 的に私人間に適用し,私人間の人権侵害行為を規律することができる,と主張する。


イ ( 3 ) 適用説に対しては,純然たる事実行為による人権侵害に対して,十分に対処できないとの問題点が指摘されている。


ウ ( 4 ) 適用説に対しては,私的自治の原則や契約自由の原則が害され,私人間の行為が憲法によって大幅に規律される事態が生じるおそれがあるとの批判が可能である。


エ ( 5 ) 適用説に対しては,人権規定の私法の概括的条項,一般条項への価値充填の振幅が大きく,それにより結論も大きく異なり得るとの問題点が指摘されている。


オ ( 6 ) 適用説に対しては,たとえば「知る権利」のように社会権的側面を有する自由権の( 7 ) 適用を私人間に認めると,かえって自由権が制限されるおそれが生じるとの批判が可能である。





1  (1) 間接   (3) 間接   (5) 間接

2  (1) 間接   (4) 間接   (6) 直接

3  (2) 間接   (4) 直接   (6) 間接

4  (2) 直接   (5) 直接   (7) 直接

5  (3) 直接   (5) 間接   (7) 直接























解 説



ア (1 間接) 適用説は,民法第90条の公序良俗規定や民法第709条の不法行為規定を解釈するにあたって,憲法の人権規定の価値内容を充填し,これを反映させることにより,憲法を(2 間接)的に私人間に適用し,私人間の人権侵害行為を規律することができる,と主張する。


→ 間接適用説は,民法第90条や民法第709条といった抽象的規定である一般条項の解釈を通じて(媒介として),憲法上の基本権保障の理念を私人間に及ぼしていく見解といえます。





イ (3 間接) 適用説に対しては,純然たる事実行為による人権侵害に対して,十分に対処できないとの問題点が指摘されている。





ウ (4 直接) 適用説に対しては,私的自治の原則や契約自由の原則が害され,私人間の行為が憲法によって大幅に規律される事態が生じるおそれがあるとの批判が可能である。(芦部憲法p115参照)



→ 直接適用説に対しては,相手方にとって基本権が権利から義務に転化し,具体的立法をまたずして予測しえない義務が憲法から直接導き出される危険性があり,「国家からの自由」という公権力に対抗する人権本来の意義が薄れるとの批判が可能です。(阿部憲法p82参照)







エ (5 間接) 適用説に対しては,人権規定の私法の概括的条項,一般条項への価値充填の振幅が大きく,それにより結論も大きく異なり得るとの問題点が指摘されている。(「憲法上の権利」の作法p136参照,)


→ 間接適用説は,公法,私法の法構造二元主義に立ったうえで,価値基準(法道徳)の統一を図ろうとします。
しかし,憲法の人権規定の価値を私法の一般条項の中にとり込んで解釈する際に,人権価値と一般条項の結合のいかんにより,すなわち人権価値の導入度合いの積極性,消極性により,間接適用説は,直接適用説または無適用説のいずれの見解にも接近し得ます。(阿部憲法p81,82参照) 
          


             
人権価値充填の振幅の度合いが大きい

           直接適用説   ←間接適用説→   無適用説   








オ (6 直接) 適用説に対しては,たとえば「知る権利」のように社会権的側面を有する自由権の(7 直接) 適用を私人間に認めると,かえって自由権が制限されるおそれが生じるとの批判が可能である。(芦部憲法p115参照)


→ 国民の「知る権利」を,市民と報道機関との関係に直接適用すると,国民の知る権利は拡張される一方で,その反面として報道機関の報道の自由が狭められ,制約されるおそれが生じてきます。(芦部憲法p115参照)







→ なお,そもそも私人間効力論の各学説を議論するまでもなく(いかなる説によるかの別なく),明文で又は解釈上(基本権の性質上),当然に私人間においても憲法の基本権が直接適用される場合があります。 
議論の余地も含むものもあるかもしれませんが,例えば,以下の一例があげられます。( そのほかの条文を含めるなど論者により範囲・分類などが異なりえます。)

T 憲法の明文上,私人間に適用されるべきことを定めた規定→私人間に直接適用
   ・選挙における投票の自由(憲法第15条第4項後段)
U 基本権の性質上,私人間においても直接妥当すべき規定→私人間に直接適用
   ・秘密選挙の原則(憲法第15条第4項)
   ・奴隷的拘束からの自由(憲法第18条) 
   ・労働基本権(憲法第28条) 
     (長尾・日本国憲法 全訂第4版p63参照,憲法U 人権 第2版p44参照)
・ご承知のとおり現時点では,間接適用説が判例,通説となっています。(憲法U 人権 第2版p45参照)




民法条文

[基本原則]
第1条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は、これを許さない。

[公序良俗]
第90条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

[不法行為による損害賠償]
第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。






[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
憲法 [改訂]   阿部照哉 著  青林書院
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
日本国憲法 全訂第4版 長尾一紘 著 世界思想社
憲法T 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
「憲法上の権利」の作法 第3版 小山剛 著 尚学社 
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
憲法U 人権 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など
[ 正解 1 ]




                            以   上


学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。








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