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司法試験と司法書士試験の合格者です。(行政書士試験及びその他の資格試験にも合格しています。)本サイトは正確な記載を目指しますが,これを保障するものではありません。従いまして,ブログ内容等につきましては,誤記載のまま改訂されていない状態の記事もありえます。また,本サイトブログは法改正等に対応していない場合もあります。自己責任にてお読みくださいますようお願い申し上げます。(広告等:本サイトはアフィリエイトプログラムに参加しております。広告内容等に関しまして,閲覧者様と本サイト所有者とは何らの契約関係にありません。広告内容等に関しましては,広告表示先の会社等に直接お問い合わせくださいませ。)(免責事項:本サイトに起因するいかなる責任も負いかねますので,自己責任にてお読みください。この点について,ご了承願います。)
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2017年09月07日

短答・択一 緊急集会 憲法

 はじめに

緊急集会についての知識を準備しておくと,短答,択一においていざという時,役立つことがあるかもしれません(殊に司法試験に限って言えば,ここまでの知識が求められているとの評価が可能でしょう)。

本番でいきなり緊急集会について問われれば,準備していない限り,その問題は恐らく予備校でよく見かける「難易度表」でいうところの「難」の部類に入り得る問題と言えましょう。

言うまでもなく単純知識問題は,知っているか知っていないかで問題の難易度が変化します。多くの受験生が準備手薄であろうところの知識問題が,一般的に「難」になり得る問題だと言えましょう。

受験生一般が使用しているであろう基本書に書いてはあるが,重要性の評価が低く読み飛ばしがちな傾向にあったり,あるいは過去問末出題であったり,また試験結果の実際の正答率など色々なファクトを分析した結果,予備校は「難易度」をレジュメや過去問集等に記載するのでしょう。ここでいう「難」は,そういう意味で想定したところの「難」です。

いずれにせよ知識問題は,知っていれば瞬時に答えが出て解答が波に乗る一方で,躓いて時間をとられると調子が崩れます。調子の乗りのよしあしが,短答,択一の全体としての正答率に影響を及ぼします。

そこで,「教授」と「学生」の対話形式を通じて,緊急集会についての知識確認をするため,以下の対話文を作成してみました。さらに,基本書,テキスト等により,ご確認なされるならば,より正確で漏れのない知識になろうかと思います。



(なお,試験勉強においては,「基本」が大切であることはご案内のとおりです。「基本」を超えて,奇を衒った勉強をすることを推奨しておりません。勉強の合間に当サイトを訪問して下さった閲覧者の方々が,「ちよっと手が届かなかったなあ・・。まあ,読んでみるか。」といった軽い気持ちでお読みいただける記事を作成したものです。普段の勉強において,「基本」こそが大切である事に変わりはありません。念のため。)





 教授と学生の対話



[教授] 緊急集会を求める権能は内閣のみにあるのですか?それとも内閣に加えて議院にもあるのですか?

[学生] 緊急集会を求める権能は,内閣のみにあります。


(長尾・日本国憲法[第3版]p369[全訂第4版]p206,野中ほか・憲法Up121参照)





[教授] 緊急集会が行われるのは,どういう場合ですか? 

[学生] @衆議院の解散中に,A国に緊急の必要がある場合であって,B内閣の求めによって行われます(憲法54条2項但書)。







[教授] 解散によることなく,衆議院議員の任期満了によって衆議院不存在となった場合においても,緊急集会は開かれるのですか? 

[学生]  議員の任期満了の場合においても,理論上,緊急集会の必要は考えられますが,憲法はそういう場合を想定しておりませんので,開かれません。


(佐藤(幸)・日本国憲法論p452参照)





[教授] 緊急集会において,会期の定めはありますか?

[学生]  いいえ,緊急集会には,会期の定めはありません。すべての必要案件が議決されたときに,参議院議長は終了を宣言することになります。これにより,緊急集会は終了します。


(佐藤(幸)・日本国憲法論p453,野中ほか・憲法Up122,木下ほか・新・コンメンタール憲法p487参照)






[教授] 緊急集会において,天皇の召集は必要とされていますか? 

[学生]  いいえ,緊急集会は国会の召集とは異なり国事行為ではないので,天皇の召集は必要とされていません。


(長尾・日本国憲法[第3版]p369[全訂第4版]p206,野中ほか・憲法Up121参照)







[教授] 緊急集会を求める権能が内閣のみに属するとなると,議案の発議権も内閣のみに専属するとして,これにより議員による議案の発議は一切行うことができないのですか? 

[学生]  いいえ,そのようなことはありません。内閣の示した案件に関連するものに限ってではありますが,議員による議案の発議も認められています(国会法101条)。請願についても,同様に取り扱われています(国会法102条)。



(佐藤(幸)・日本国憲法論p453,野中ほか・憲法Up121,木下ほか・新・コンメンタール憲法p487参照)




[教授] 緊急集会において,内閣総理大臣の指名や憲法改正の発議を行うことができますか? 

[学生]  いいえ,できません。緊急集会は,参議院が国会に代わって,緊急案件について,臨時的,応急的,暫定的措置をとるころに実質的意義を有しますので,内閣総理大臣の指名や憲法改正の発議を行うことができないと解されています。



(長尾・日本国憲法[第3版]p370[全訂第4版]p206,木下ほか・新・コンメンタール憲法p488参照)






[教授] それでは緊急集会において,内閣に対する不信任の決議を行うことができますか? 

[学生]  いいえ,できません。なぜなら,緊急集会の権能は,国会の権能に属するものでなければならないところ,内閣に対する不信任の決議は,衆議院の権能に属するものであって,緊急集会の権能には属さないからです。



(長尾・日本国憲法[第3版]p370[全訂第4版]p206参照)







[教授] 緊急集会においても,発言・表決の免責特権(憲法51条),不逮捕特権(憲法50条,国会法100条)を参議院議員は享受することができますか? 

[学生]  はい,できます。


(野中ほか・憲法Up122,木下ほか・新・コンメンタール憲法p487参照)






[教授] 緊急集会において採られた措置について,次の国会開会の後10日以内に,衆議院の同意がない場合に,該緊急集会でとられた措置の効力はどうなりますか? 

[学生]  憲法第54条第3項は「・・・緊急集会において採られた措置は,臨時のものであって,次の国会開会の後10日以内に,衆議院の同意がない場合には,その効力を失う。」旨規定しています。従いまして,衆議院の同意が得られない場合,緊急集会で採られた措置の効力は失われます。







[教授] 緊急集会で採られた措置の効力は,過去に遡って失われることになるのですか?

[学生]  いいえ,そうではありません。緊急集会で採られた措置の効力は,過去に遡って失われるものではありません。将来に向かって,失われます。



(佐藤(幸)・日本国憲法論p453,野中ほか・憲法Up122参照)



日本国憲法
第五十四条  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。







緊急集会と臨時会の比較のため,以下に条文掲載します。
     臨  時  会            
第五十三条  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

     緊 急 集 会 
第五十四条  衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2  衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3  前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。


[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
日本国憲法[第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣
新・コメンタール憲法 木下智史。只野雅人[編] 日本評論社
など


以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。                               以  上








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posted by 略して鬼トラ at 06:35 | 司法試験

2017年08月07日

平成29年度 択一基準点(司法書士試験)




平成29年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)の基準点






午前の部(多肢択一式問題) 満点105点中75点

午後の部(多肢択一式問題) 満点105点中72点












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2017年07月25日

国民審査制の法的性質( 司法試験 )


             最高裁判所裁判官の国民審査制の法的性質

               (司法試験・予備試験 論点)                
 




国民審査制の法的性質についての択一問題を作成しました。

判例の見解を知っていれば,あとは文章の文脈の前後関係でキーワードの連続性,論理性を追っていくと,何とか正解に達することができるのではないでしょうか。


正解は参考文献の下に記載してあります。










[ 問 題 ]

次の甲と乙の会話の中の[ア]から[オ]までの[ ]内に下記AからEまでの文章の中から適切なものを選択して入れると,最高裁判所裁判官の国民審査制の法的性質に関する対話が完成する。[ア]から[オ]までの[ ]内に入れるべきものの組み合わせとして最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。



学生甲 憲法第79条第3項が,国民審査の法的効果として当該裁判官が「罷免される」ことを定めていること,また,国民審査以前に有効に任命され,裁判官はその職務に完全に就いており,裁判官に対する罷免決定は将来に向かってのみ効力を有すること,これらを考えれば,[ ア ]ことは,明らかである。


この説によれば,特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ,それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ,×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであつて、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない)の数に算える国民審査の投票方法について,合憲であるとの結論を導くことができる。



学生乙 甲君は判例と同旨の見解を採っている。
しかし,甲君の説は適格性審査が制度の核心と捉えるが,[ イ ]のだから,かかる国民審査は妥当性に欠けるのではないか。



学生甲 しかし,最高裁判所裁判官としてなしたことのみが判断資料になるのではなく,最高裁判所裁判官になる前の経歴,所業,業績などを資料として,罷免すべきか否かを国民が審査することができる。

ところで,憲法第79条第2項によれば,「最高裁判所の裁判官の任命は,・・・・審査に付し・・」とある。この文言を根拠に,[ ウ ]とする説を乙君は採るのか。



学生乙 いいえ。かかる説によれば,[ エ ]から採らない。

そこで私は,国民審査制度の法的性質について以下の説を採る。
法的効果の面からリコール(解職制度)であるということを承認した上で,さらに内閣の任命行為に対する事後審査としての性格を併有する。
すなわち,[ オ ]とする説を採る。



学生甲 しかし,乙君のいう「事後審査」という概念は不明瞭である。また,乙君の説によれば「事後審査」に任命行為を完結させるという意味が含まれておらず,国民審査制度の法的性質に関する限り,私の説と径庭がないように思われる。






(文章群)

A  国民審査は任命行為に向けられたものであるから,国民審査制度は「任命」行為を完成(完結),確定させる公務員選定作用である


B 任命後初の審査は任命行為に対する事後審査,10年を経過する毎に行われる審査は個々の裁判官の過去の職務遂行の業績から判断する解職としての意味を有する       


C 国民審査制度は裁判官の適格性を国民が審査し,不適格者を罷免する国民解職(リコール)の制度である


D 任命から国民審査までの裁判官の地位を説明できない難点がある


E 任命後間もない時期に行われる国民審査においては,最高裁判所裁判官としての実績に乏しく,判断資料が不足している



1   アにA  ウにB       2 イにD  エにE    3 アにC  エにD
4  ウにB  オにC       5 イにE   オにA    





(参考)
憲法
第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4  審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。


                  
               
                以上が問題,この下に行くと解答












































[解 答]

学生甲 憲法第79条第3項が,国民審査の法的効果として当該裁判官が「罷免される」ことを定めていること,また,国民審査以前に有効に任命され,裁判官はその職務に完全に就いており,裁判官に対する罷免決定は将来に向かってのみ効力を有すること,これらを考えれば,ア 国民審査制度は裁判官の適格性を国民が審査し,不適格者を罷免する国民解職(リコール)の制度であることは,明らかである。(ア・C)(解職制度説・リコール説)(宮澤・全訂日本国憲法p642,憲法の争点p266参照)

この説によれば,特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ,それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ,×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであつて、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない)の数に算える国民審査の投票方法について,合憲であるとの結論を導くことができる。

→最高裁昭和27年2月20日大法廷判決(昭和24年(オ)第332号最高裁判所裁判官国民審査の効力に関する異議事件)参照
→佐藤(幸)・日本国憲法論p400,長尾・日本国憲法[第3版]p428参照



学生乙 甲君は判例と同旨の見解を採っている。
しかし,甲君の説は適格性審査が制度の核心と捉えるが,イ 任命後間もない時期に行われる国民審査においては,最高裁判所裁判官としての実績に乏しく,判断資料が不足しているのだから,かかる国民審査は妥当性に欠けるのではないか。(イ・E)(憲法判例百選U[第4版]p397参照)




学生甲 しかし,最高裁判所裁判官としてなしたことのみが判断資料になるのではなく,最高裁判所裁判官になる前の経歴,所業,業績などを資料として,罷免すべきか否かを国民が審査することができる。(宮澤・全訂日本国憲法p643,渋谷・憲法p668−669参照)

ところで,憲法第79条第2項によれば,「最高裁判所の裁判官の任命は,・・・・審査に付し・・」とある。この文言を根拠に,ウ 国民審査は任命行為に向けられたものであるから,国民審査制度は「任命」行為を完成(完結),確定させる公務員選定作用であるとする説を乙君は採るのか。(ウ・A)(任命確定説)(憲法判例百選U[第4版]p397参照)



学生乙 いいえ。かかる説によれば,エ 任命から国民審査までの裁判官の地位を説明できない難点があるから採らない。(エ・D)(野中ほか憲法Up251,憲法判例百選U[第4版]p397)

そこで私は,国民審査制度の法的性質について以下の説を採る。
法的効果の面からリコール(解職制度)であるということを承認した上で,さらに内閣の任命行為に対する事後審査としての性格を併有する。(憲法の争点p266参照,憲法の基本判例p192参照)

すなわち,オ 任命後初の審査は任命行為に対する事後審査,10年を経過する毎に行われる審査は個々の裁判官の過去の職務遂行の業績から判断する解職としての意味を有するとする説を採る。(オ・B)(二面的性格説・併有説)(憲法の争点p266,憲法の基本判例p192参照)




学生甲 しかし,乙君のいう「事後審査」という概念は不明瞭である。また,乙君の説によれば「事後審査」に任命行為を完結させるという意味が含まれておらず,国民審査制度の法的性質に関する限り,私の説と径庭がないように思われる。(憲法判例百選U[第4版]p397,憲法の基本判例p192参照)



[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
全訂日本国憲法 宮澤俊義 著 芦部信喜 補訂 日本評論社
演習 憲法 新版 芦部信喜 著 有斐閣
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
日本国憲法[第3版][全訂第4版] 長尾一紘 著 世界思想社
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣
憲法 第3版 渋谷秀樹 著 有斐閣
注釈日本国憲法 下巻 樋口陽一・佐藤幸治・中村睦男・浦部法穂 著 青林書院
憲法の基本判例[第2版]樋口陽一・野中俊彦 編 有斐閣
憲法判例百選U[第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編 有斐閣 
判例プラクティス憲法 増補版 憲法判例研究会 編 信山社
[ 正解 3 ]


学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。

                                     以  上 










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posted by 略して鬼トラ at 05:00 | 司法試験

2017年06月25日

独立行政委員会


                    独立行政委員会




独立行政委員会についての問題を作成しました。



独立行政委員会の合憲論については,様々な合憲論があります。試験に出そうな合憲論についての問題を作成してみました。



正解は,参考文献の下に記載してあります。






[ 問 題 ]

独立行政委員会が,日本国憲法第65条に違反しないとする合憲論について,以下のA説,B説の見解があるものとする。次のアからオまでの記述のうち,「この見解」がA説を指すものは,幾つあるか。



A説 憲法第65条は,すべての行政を内閣の統制(コントロール)の下に置かなければならないとするが,行政委員会は,何らかの意味において内閣の統制の下にあるから,行政委員会の合憲性が認められる。


B説 憲法第65条は,必ずしもすべての行政について行政権者たる内閣が指揮監督権をもつことを要求するものではないから,行政委員会の独立性(行政委員会が内閣の指揮監督下にないこと)を正面から承認した上で,行政委員会の合憲性を認めることができる。



ア この見解には,内閣に行政委員会の委員任命権や予算権があることを重視し,その限りで国会による内閣を通じての民主的コントロールが行政委員会に及んでなければならないとする基準をみたすから,行政委員会の合憲性を認めることができるとする見解がある。


イ この見解は,憲法第41条が「国会は・・・唯一の立法機関」として,同法第76条が「すべて司法権は・・・裁判所に属す」としているのに対して,同法第65条にはそのような限定はなく,単に「行政権は内閣に属す」と規定するのみであることを根拠とする。


ウ この見解に対しては,その主張する監督の程度で,行政委員会が内閣のコントロール下にあるとするのであれば,裁判所すらも内閣のコントロール下に立つことになってしまうとの批判が可能である。


エ この見解は,憲法第65条の趣旨は行政の民主的コントロールにあるのだから,行政委員会の行政事務が内閣の指揮監督権から独立していても,その分,国会自らが直接コントロールを行い「民主的統制」を及ぼして補完すれば,行政委員会の合憲性が認められるとする。


オ この見解は,三権分立を行政の専恣を抑制する原理として発展してきたものであると解し,行政委員会の設置は,この行政府に対する抑制設定という三権分立原理の目的と合致するから,その合憲性を認めることができるとする。




1 0個   2 1個    3 2個    4 3個   5 4個







( 参 考 )

日本国憲法
第四十一条  国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第六十五条  行政権は、内閣に属する。

第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

























[ 解 説 ]

以下に,各肢の[この見解]の中に具体的にA説・B説を挿入したものを掲記します。


 この見解(A説)には,内閣に行政委員会の委員任命権や予算権があることを重視し,その限りで国会による内閣を通じての民主的コントロールが行政委員会に及んでなければならないとする基準をみたすから,行政委員会の合憲性を認めることができるとする見解がある。


 この見解(B説)は,憲法第41条が「国会は・・・唯一の立法機関」として,同法第76条が「すべて司法権は・・・裁判所に属す」としているのに対して,同法第65条にはそのような限定はなく,単に「行政権は内閣に属す」と規定するのみであることを根拠とする。


 この見解(A説)に対しては,その主張する監督の程度で,行政委員会が内閣のコントロール下にあるとするのであれば,裁判所すらも内閣のコントロール下に立つことになってしまうとの批判が可能である。


 この見解(B説)は,憲法第65条の趣旨は行政の民主的コントロールにあるのだから,行政委員会の行政事務が内閣の指揮監督権から独立していても,その分,国会自らが直接コントロールを行い「民主的統制」を及ぼして補完すれば,行政委員会の合憲性が認められるとする。


 この見解(B説)は,三権分立を行政の専恣を抑制する原理として発展してきたものであると解し,行政委員会の設置は,この行政府に対する抑制設定という三権分立原理の目的と合致するから,その合憲性を認めることができるとする。







[ 問題の所在 ] ( 判例憲法 第3版p329-330参照)


行政機関は,内閣の指揮監督の下に服するのを原則とします(憲法第65条,同法第72条,内閣法第6条参照)。

この原則は,国会に対して連帯して政治的責任を負う内閣による指揮監督権を行政機関各部に及ぼし,これに服させることによって,その民主的な責任を確保する意味を有します(民主的責任行政の原理)。

そこで,程度の差はあるものの行政事務を独立に行うことの認められる独立行政委員会が,行政機関は内閣の指揮監督の下に服するとの原則に反し,憲法に違反するのではないかが問題となります。


(なお,独立行政委員会としては,例えば人事院,国家公安委員会,公正取引委員会等があります。)






[ 具体的説明 ]
以下,具体的に説明していきます。


憲法第65条は,一切の例外を認めないとのアプローチからする合憲論


A説は,憲法65条がすべての行政について内閣のコントロールの下になければならないとするところ(例外を認めない),行政委員会も何らかの意味において内閣のコントロールの下にあるから,合憲であるとします。(独立性否定説)

そしてA説は,例えば内閣に行政委員会の委員任命権予算権があることを重視し,これをもって行政委員会も内閣のコントロールの下にあるとして,行政委員会の合憲性を認めます。[肢ア]




しかし,A説に対しては,その主張する監督の程度で,行政委員会が内閣のコントロール下にあるとするのであれば,裁判所すらも内閣のコントロール下に立つことになってしまうとの批判があります。[肢ウ]


これは司法権の独立に抵触するとの批判です。






憲法第65条は,一定の例外を認めるとのアプローチからする合憲論


これに対して,B説は,憲法第65条について,必ずしもすべての行政を内閣の指揮監督権・コントロール(統制)下に服させることまで要求していないと解した上,内閣から独立して行政事務を行う行政委員会の合憲性を認めます。

すなわち,上記の独立性否定説とは異なり,行政委員会の内閣からの独立性を正面から認め(行政委員会が内閣の指揮監督下にないことを正面から認め),独立性を前提とした上で例外として許容される行政委員会の正当化を行い,これによりその合憲性を認める見解がB説です。

→ ただし,「B説の諸説の大勢は,憲法第65条が存在する以上,内閣と完全に無関係な行政機関を設置することはできないと見ているようである(憲法の争点p229参照)。」と言われています。




B説からは,様々な論理による合憲論が主張されています。
以下に試験に出そうなB説からの合憲論をいくつか掲記します。



T 憲法の文言をみると,憲法第41条(立法権配分条項)が「国会は・・・唯一の立法機関である。」と規定し,また憲法第76条(司法権配分条項)が「すべて司法権は・・・裁判所に属する。」と規定しているのに対して,行政権配分規定たる憲法第65条は単に「行政権は,内閣に属する。」と規定するのみで,「唯一」とか「すべて」とか,限定する字句を用いておらず,内閣の行政権限の独占を示唆する文言がない。[肢イ] (憲法の争点p229参照)




U 憲法第65条の趣旨は行政の民主的コントロールにあるのだから,行政委員会の行政事務が内閣の指揮監督権から独立していても,その分国会自らが直接コントロールし民主的統制を及ぼして補完すれば行政委員会の合憲性が認められる。[肢エ](注解法律学全集3憲法Vp189参照)




V 三権分立の目的は,元来行政府に対する抑制設定にある。[肢オ]

→ 行政府の専恣を排除し,行政府に対する抑制を行うところに憲法第65条の趣旨があると解して,特に行政組織が法律によって定められる体制下においては,国会が内閣と独立の行政機関を設けたうえ,それに行政権の一部を帰属させることも可能であるとする。(日本国憲法論p485参照)





W 異議の裁決など準司法的な事務や,警察や選挙管理など内閣の影響を排除した公正・中立性の求められる行政事務,科学技術,経済など技術的専門性の強い事務等,その職務の性質上,内閣の指揮監督の下に服させるのが適当でないものがあり,かかる行政については内閣から独立して行政委員会に権限を行使させても,憲法第65条に反しない。(判例憲法 第3版p330,日本国憲法論p485,注解法律学全集3憲法Vp189参照)

→ A説の中の論者も,事務の性質上,職務権限の行使につき独立性を保障するだけの合理的根拠が存する限り,独立行政委員会の設置は,憲法の趣旨に反しないとして,職務権限の行使について独立性を保障するだけの合理的根拠の存在を要求しています。(注解法律学全集3憲法Vp187参照)







なお,佐藤・日本国憲法論p485,486を,デフォルメして大ざっぱに言うと概ね以下のようになると思います。(注解法律学全集3憲法Vp189は,佐藤(幸)説をA説とB説を総合する有力説C説として掲記しています。)

 憲法第65条が「行政権は、内閣に属する。」としている以上,憲法自体に別段の定めがない限り,内閣から全くの無関係な行政機関を設置することはできない


 独立行政委員会の歴史的展開過程に徴し,制度自体の合理性が認められれば,その限りで職務権限行使の独立を認めうる。


 内閣の行政委員会に対する指揮監督権の不十分なところは,国会自らが民主的コントロールを行政委員会に及ぼしてこれを補完する。



1,2,3を総合して,最終的には制度自体の合理性の存否が,合憲性の最後の決め手となる。(日本国憲法論p486,憲法の争点p228-331参照)















[参考文献]
日本国憲法 橋本公亘 著 有斐閣
[新版] 憲法講義 下 小林直樹 著  東京大学出版会
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
注解法律学全集3憲法V樋口陽一・佐藤幸治・中村睦男・浦部法穂 著 青林書院 
判例憲法 第3版 大石 眞・大沢秀介 著 有斐閣
憲法の争点 大石眞・石川健治 [編]  有斐閣 
憲法判例百選U[第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編 有斐閣 
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など
正解 3 [A説ア,ウ →ア,ウの2個  B説イ,エ,オ ]
 

                                  以   上

学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。











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2017年06月12日

違憲審査権の性格についての学説

               違憲審査権の性格についての学説等




違憲審査権の性格について,択一問題を作成しました。



違憲審査権の性格という論点は,司法試験,司法書士試験,行政書士試験のいずれの試験においても,出題論点となりえます。

ただし,私の解説文章は,司法試験向きに書きました。


また,短答,択一問題においては,下記のA,B-1,B-2,C説のような学説の掲記はなく,もっと単純な形式で出題されると思います。

試験対策的には,肢の1,2,3,4だけ押さえておけば十分だと思います。


肢の5は,試験対策的には準備しなくとも試験に支障はないでしょう。(現場思考で乗り切れるのではないでしょうか。ただ,不安であればサラッと触れておくだけでもよいでしょう。)



特に独立審査権説,法律事項説の内容の細かな理解・記憶は,試験対策的には準備不要かと思われます。試験対策的には本サイトのその該当解説部分を読まなくても,試験に支障はないでしょう。(時間に余裕があれば,サラッと触れておくだけでもよいでしょう。他にやるべき重要な優先事項の勉強の方が大切かと思います。)





正解は参考文献の下に記載してあります。







[ 問 題 ]



憲法第81条に規定する違憲審査制の性格について,次のAないしCの各説があるとして,後記の語句群の中から適切な語句を選択して文章を完成させた場合の下記1から5までのうち,A説の根拠とならないもの,またはA説から他説に対する批判とならないものはどれか。



A 最高裁判所は,具体的事件を前提として,その解決に必要な限りでのみ法令の合憲性を審査・決定する違憲審査権を有するにとどまる。


B−1 上記Aにとどまらず,それに加えて,最高裁判所は,抽象的・一般的に法令の合憲性を審査・決定する独自の違憲審査権を有する。ただし,最高裁判所に独自の違憲審査権の行使を求めるためには,提訴手続き等が法律で定められている必要があり,それがなければ出訴できない。 


B−2 上記Aにとどまらず,それに加えて,最高裁判所は,抽象的・一般的に法令の合憲性を審査・決定する独自の違憲審査権を有する。提訴手続き等の法律は不要であり,最高裁判所に独自の違憲審査権の行使を求めることができる。


C 上記Aにとどまらず,それに加えて,最高裁判所の司法裁判所としての本質に反しない限度で,一定の抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的権限を法律によって最高裁判所に付与できる。



1 (   )的違憲審査権の重要性に照らせば,提訴要件あるいは判決の効力が憲法に明定されている必要があり,また,裁判官の選任についても,特別の配慮がなされている必要があるが,わが憲法上これらに関する規定がない。


2 憲法第81条の違憲審査制は,沿革的に見てアメリカ合衆国憲法の司法審査制を継受したものと解するのが自然である。


3 憲法第81条は,(   )の章に規定されているが,(   )とは伝統的に具体的な権利義務に関する争いを前提として,これに法令を解釈・適用して,終局的にこれを解決する国家作用であるところ,違憲審査権はこれに(   )する作用として,憲法第81条に明記されている。


4 (   )的違憲審査を認めるということは,裁判所による(   )立法を認めることになり,三権分立における立法権・(   )権・(   )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めることになる。



5 裁判所が(   )作用を行う以上,具体的事件の解決の前提として,適用法令の合憲性の審査を行うのは憲法第76条第1項から当然のことであり,それでもなお憲法第81条が違憲審査権を特に明定したのは,(   )審査以上の意味を付与したものと考えられる。





[語句群]


「第4章 国会」     「第5章 内閣」     「第6章 司法」 

 抽象    付随     司法    行政

 消極的   積極的




( 参 考  )

日本国憲法
第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
















[ 解 説 ]


以下に上記問題文の各肢カッコ内に語句を挿入した完成後の文章を掲記します。



1 ( 抽象 )的違憲審査権の重要性に照らせば,提訴要件あるいは判決の効力が憲法に明定されている必要があり,また,裁判官の選任についても,特別の配慮がなされている必要があるが,わが憲法上これらに関する規定がない。

→付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判






2 憲法第81条の違憲審査制は,沿革的に見てアメリカ合衆国憲法の司法審査制を継受したものと解するのが自然である。

→付随的違憲審査制説の根拠



3 憲法第81条は,(「第6章 司法」)の章に規定されているが,( 司法 )とは伝統的に具体的な権利義務に関する争いを前提として,これに法令を解釈・適用して,終局的にこれを解決する国家作用であるところ,違憲審査権はこれに( 付随 )する作用として,憲法第81条に明記されている。

→付随的違憲審査制説の根拠



4 ( 抽象 )的違憲審査を認めるということは,裁判所による(消極的)立法を認めることになり,三権分立における立法権・( 司法 )権・( 行政 )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めることになる。

→ 付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判



5 裁判所が( 司法 )作用を行う以上,具体的事件の解決の前提として,適用法令の合憲性の審査を行うのは憲法第76条第1項から当然のことであり,それでもなお憲法第81条が違憲審査権を特に明記したのは,( 司法 )審査以上の意味を付与したものと考えられる。

→独立審査権説の根拠





[ 導 入 ]


最高裁判所に付随的違憲審査権が与えられているとする点においては,学説は共通し一致しています。与えられていることを当然の前提としています。

問題はそれ以上に最高裁判所に,抽象的な違憲審査権も与えられているか(憲法裁判所的権限も与えられているか),それとも付随的違憲審査権に限定されていると解するかです。この点について,学説間に争いがあります。(野中ほか憲法p274,ファンダメンタル憲法p275参照)


それでは,上記完成した肢が,どの見解に当てはまるか具体的に見ていきましょう。



ここから違憲審査制の性格についての従来の学説等を検討していきます。

以下では問題文中の各肢番号をそのまま使用します。



[ 学 説 ](全体として野中ほか憲法Up274以下参照)


憲法は司法裁判所型のみ認めていると解する説(憲法裁判所併立型の否定)


[A説  付随的違憲審査制説 ]

憲法第81条の違憲審査制は,具体的な事件を審理判断する前提として,該手続きの中で,該訴訟事件の解決に必要な限りでのみ適用法令の合憲性を審査する違審憲審査権の行使権限を裁判所に認めたにとどまるとする見解。
そして,この見解は,具体的事件を離れて抽象的・一般的に法令等の合憲性を独自に審査・決定する憲法裁判所的権限を憲法第81条は裁判所に認めていないとする。






肢1 ( 抽象 )的違憲審査権の重要性に照らせば,提訴要件あるいは判決の効力が憲法に明定されている必要があり,また,裁判官の選任についても,特別の配慮がなされている必要があるが,わが憲法上これらに関する規定がない。

→付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判





肢2 憲法第81条の違憲審査制は,沿革的に見てアメリカ合衆国憲法の司法審査制を継受したものと解するのが自然である。

→付随的違憲審査制説の根拠
日本国憲法の由来する米国憲法では司法裁判所型違憲審査制(付随的違憲審査制)が採用されているので,わが国の違憲審査制も,その沿革からして米国の制度にならったものと解するのが自然である。




肢3 憲法第81条は,(「第6章司法」)の章に規定されているが,(司法)とは伝統的に具体的な権利義務に関する争いを前提として,これに法令を解釈・適用して,終局的にこれを解決する国家作用であるところ,違憲審査権はこれに(付随)する作用として,憲法第81条に明記されている。

→付随的違憲審査制説の根拠





肢4 ( 抽象 )的違憲審査を認めるということは,裁判所による(消極的)立法を認めることになり,三権分立における立法権・( 司法 )権・( 行政 )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めることになる。(渋谷・憲法p517参照)

→ 付随的違憲審査制説から,独立審査権説および法律事項説に対する批判(野中ほか憲法p275,ファンダメンタル憲法p282参照)


→ 抽象的違憲審査権を認めると,その違憲判決の効力は一般的効力を有するため,その違憲判決によって無効となった法令は当該法令集から自動的に除去されたと実質的に考えられます。これは取りも直さず裁判所に消極的立法を営む権能を認めたことと等しい。
これが「司法を超えたところの第4の権力を裁判所に認めたことと同じになる」という意味だと思われます。
あるいは,「三権分立における立法権・( 司法 )権・( 行政 )権とは別個独立した,いわば第4の権力を裁判所に認めたことになる。」という意味だと思われます。(→ 第4の権力を認めることは,国民主権,三権分立の原理に照らして無理があるといえる。[憲法判例百選U [第3版]p400参照])


そして,かかる重要な権限を認めるならば,その重要性に見合った何らかの手続規定が憲法上,明文をもって規定されていなければならいところ,憲法上かかる規定が明記されていない。

これはそもそも憲法自体が,最高裁判所に対して憲法裁判所的権限を認めていなかったことのあらわれであると考えられます。







憲法は憲法裁判所の性格をも認めていると解する説



[B−1説 独立審査権説 (独立審査法定必要説) ]


付随的違憲審査権が最高裁判所に与えられていることを当然の前提とした上で,それに加えて具体的な事件を離れ法令等の合憲性を抽象的・一般的に審査・決定する,独自の違憲審査権の行使を最高裁判所に憲法第81条は認めているとする見解。

そして,この見解は最高裁判所に対してその独自の違憲審査権の行使を求めるためには,提訴手続き等の特別の法律がなければ,出訴できないとする。




→[B−1説]の根拠 (違憲審査権と司法審査とを憲法が分けて,それぞれ独立の条項として規定)
(渋谷・憲法p516参照)

 肢5 裁判所が( 司法 )作用を行う以上,具体的事件の解決の前提として,適用法令の合憲性の審査を行うのは憲法第76条第1項から当然のことであり,それでもなお憲法第81条が違憲審査権を特に明記したのは,( 司法 )審査以上の意味を付与したものと考えられる。(憲法の争点p272参照)




→[B−1説]の根拠 (最高裁判所に違憲審査を独自に行う権限を肯定するような条項の書き方)
(渋谷・憲法p516参照)


憲法第81条の「決定する」との文言の意味は,最高裁判所に対して,憲法裁判所的権限を与えるという意味である。(憲法の争点p272参照)





→[B−1説]からの反論 
手続きの詳細は法律が定めることとしたのであり,憲法に提訴手続き等の規定が定められていないことは,最高裁判所において憲法裁判所的権限がないことを意味しない。(憲法の争点p272参照)

→ 独立審査法定必要説から付随的違憲審査制説に対する反論です。








[B−2説 独立審査権説 (独立審査法定不要説) ]


付随的違憲審査権が最高裁判所に与えられていることを当然の前提とした上で,それに加えて具体的な事件を離れて法令等の合憲性を抽象的・一般的に審査・決定する,独自の違憲審査権の行使を最高裁判所に憲法第81条は認めているとする見解,

そして,この見解は提訴手続き等の法律は不要であり,最高裁判所に独自の違憲審査権の行使を求めることができるとします。


→[B−2説]の根拠 
 上述の独立審査法定必要説の根拠である違憲審査権と司法審査とを憲法が分けて,それぞれ独立の条項として規定していることや(憲法76条1項,81条),最高裁判所に具体的事件を離れて違憲審査を独自に行う権限を肯定するような憲法条項の書き方がなされていることに加えて(憲法81条),(渋谷・憲法p516参照),独立審査法定不要説は,以下も根拠とします。


すなわち,独立審査法定不要説は抽象的違憲審査権を含み得るような司法権概念の流動性(これは法律委任説も主張しています。)
それに,様々な態様のありうる三権分立の原理であるのに,これを厳格に捉えて憲法裁判権を否定することはできない,こういったことを根拠とします。
(以上は,結局,独立審査法定必要説・独立審査法定不要説の共通の根拠になりうるのではないかと考えます。)

そして,独立審査法定不要説は,憲法81条は,最高裁判所に司法裁判所と憲法裁判所の両方の性格を認めているから,手続法の制定なくして,最高裁判所は,憲法81条により抽象的違憲審査権を含む憲法裁判を行うことができるとしています。(憲法判例百選U [第4版]p414-415参照)



→[B−2説]からの反論

提訴手続きの大綱,提訴権者の範囲,違憲判決の効力等抽象的違憲審査にかかる手続規定を,憲法に明記するか否かについては,正に憲法上の立法政策の問題であり,かかる規定のないことをもって,これが最高裁判所に憲法裁判所的権限のないことを意味しない。(憲法判例百選U[第4版]p414-415参照)








手続法制定に委ねられていると解する説


[C説 法律事項説 (法律委任説)] (論点憲法教室p22-24参照)

付随的違憲審査権が最高裁判所に与えられていることを当然の前提とする。それに加えて,最高裁判所の司法裁判所としての本質に反しない限度で,一定の抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的権限を最高裁判所に法律により付与できるとする見解。


→憲法第81条は,最高裁判所に憲法裁判所的性格を積極的に与えていると解することはできないが,逆にこれを禁じている趣旨とも解されないので,法律・裁判所規則でその権限や手続きを定めて,最高裁判所に一定の抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的機能を果たさせることが許容されるとする見解

→憲法上いずれとも明定されていないから(憲法上白紙の状態),抽象的違憲審査の権限を認めるかどうかは,法律で決めれば良い(立法政策の問題)とする見解



法律事項説は,以下のように自説を根拠づけています。

1 憲法は,憲法の最高法規性を認めている(憲法第98条)。
2 憲法は,最高裁判所を一切の立法や処分の憲法適合性,合憲性審査の終審裁判所として位置づけている(憲法第81条)。
3 憲法は,最高裁判所の裁判官に対して国民審査による国民の民主的コントロールを及ぼしている(憲法第79条第2項)。

4 権力分立上の裁判所の任務である「司法」「裁判」の概念は,歴史的に見て流動性のあるものであり,比較法的に見ても幅が見受けられる。


したがって,司法裁判所型の違憲審査制が採用されているからといって,抽象的違憲審査制が論理的に当然排除されるわけではない。

上記の憲法上の条文上の根拠,「司法」概念の流動性に照らし,また憲法の最高法規性を基礎づけている国民の基本的人権保障をよりよく実現するという観点から,一定の範囲で抽象的違憲審査権を含む憲法裁判所的権限をわが国に導入するかどうかは,まさに立法政策に委ねられた事項とする。
(以上,論点憲法教室p22-24参照)




日本国憲法


第七十六条  すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2  特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3  すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。



第七十九条  最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2  最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3  前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4  審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5  最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6  最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。


第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。


第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。



なお,ご承知のとおりで言うまでもないことですが,判例は,下級裁判所に付随的違憲審査権の行使権限を認めています。念のため。



[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
論点憲法教室   中村睦男 著  有斐閣
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
憲法の争点 大石眞・石川健治 [編] 有斐閣
憲法判例百選U [第3版] 芦部信喜・高橋和之 編  有斐閣
憲法判例百選U [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
憲法 第3版  渋谷秀樹 著 有斐閣(同書は,従来の議論の整理が必要であるとしています。また,付随⇔独立,具体⇔抽象の正確な概念整理も必要であるとしています。) 
憲法T 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など
[正解 5 ]


                                   
                               以    上





学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
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従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。
















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2017年06月03日

人権規定の私人間効力 憲法 


                 人権規定の私人間効力




今回の択一は,人権保障規定の私人間効力に関する問題です。


ア,イ,ウの肢は定番の知識です。

エの肢も,向後,定番になりつつあると思います。


オは,難しい肢だと思います。
しかし,解説を読めば,即座に納得がいくと思います。
(ただし,司法書士試験の試験対策としては,平成29年6月3日現時点では余り気にしなくともよいと思います。今後,予備校のテキスト(市販も含む),予備校作問の択一等に記載・出題されだした場合や,本試験に出題されてしまったら話は別です。)



ところで,司法書士試験の憲法択一問題の出題もなかなか訊きにくいところがあるのではないかと思います。

既出の過去問の知識だけで毎年問題を作成するとなると,受験生は容易に正解に達してしまう。


しかし,難しいことはそう訊けない。
なぜなら,司法書士試験の過去問は全科目で見ると膨大な数に上り,かかる過去問の殆どすべては試験範囲といってもおかしくない。

すなわち,司法書士試験の試験範囲としては,すでに膨大な知識量が要求されています。ご承知のとおりです。


この上さらに知識の上乗せを要求するのも受験生に酷です。



ところが試験問題を作成する上で,過去の司法書士試験の限られた憲法択一問題からのみ出題をするのでは窮屈でしょうがない。

少しくらいは,定番の基本書からであれば,知識をすくいあげてみても許されるのではないか,こういったことを問題作成者も考えるのではないかと思います。



末出の知識を一回出せば,かかる知識を翌年度以降の択一問題の肢として心置きなく出題することができます。これにより択一問題が作成しやすくなります。


こんな問題作成者側の心理も読み解きつつ,択一問題を作成してみました。



解答は,参考文献の下に記載してあります。






問 題



次のアからオまでの記述は,人権保障規定の私人間効力についての見解である直接適用説と間接適用説に関する文章である。
下記の( 1 )から( 7 )の中に「直接」または「間接」の二つの語句のうち,いずれか正しい語句を入れた場合の組合せとして,最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。




ア ( 1 ) 適用説は,民法第90条の公序良俗規定や民法第709条の不法行為規定を解釈するにあたって,憲法の人権規定の価値内容を充填し,これを反映させることにより,憲法を( 2 ) 的に私人間に適用し,私人間の人権侵害行為を規律することができる,と主張する。


イ ( 3 ) 適用説に対しては,純然たる事実行為による人権侵害に対して,十分に対処できないとの問題点が指摘されている。


ウ ( 4 ) 適用説に対しては,私的自治の原則や契約自由の原則が害され,私人間の行為が憲法によって大幅に規律される事態が生じるおそれがあるとの批判が可能である。


エ ( 5 ) 適用説に対しては,人権規定の私法の概括的条項,一般条項への価値充填の振幅が大きく,それにより結論も大きく異なり得るとの問題点が指摘されている。


オ ( 6 ) 適用説に対しては,たとえば「知る権利」のように社会権的側面を有する自由権の( 7 ) 適用を私人間に認めると,かえって自由権が制限されるおそれが生じるとの批判が可能である。





1  (1) 間接   (3) 間接   (5) 間接

2  (1) 間接   (4) 間接   (6) 直接

3  (2) 間接   (4) 直接   (6) 間接

4  (2) 直接   (5) 直接   (7) 直接

5  (3) 直接   (5) 間接   (7) 直接























解 説



ア (1 間接) 適用説は,民法第90条の公序良俗規定や民法第709条の不法行為規定を解釈するにあたって,憲法の人権規定の価値内容を充填し,これを反映させることにより,憲法を(2 間接)的に私人間に適用し,私人間の人権侵害行為を規律することができる,と主張する。


→ 間接適用説は,民法第90条や民法第709条といった抽象的規定である一般条項の解釈を通じて(媒介として),憲法上の基本権保障の理念を私人間に及ぼしていく見解といえます。





イ (3 間接) 適用説に対しては,純然たる事実行為による人権侵害に対して,十分に対処できないとの問題点が指摘されている。





ウ (4 直接) 適用説に対しては,私的自治の原則や契約自由の原則が害され,私人間の行為が憲法によって大幅に規律される事態が生じるおそれがあるとの批判が可能である。(芦部憲法p115参照)



→ 直接適用説に対しては,相手方にとって基本権が権利から義務に転化し,具体的立法をまたずして予測しえない義務が憲法から直接導き出される危険性があり,「国家からの自由」という公権力に対抗する人権本来の意義が薄れるとの批判が可能です。(阿部憲法p82参照)







エ (5 間接) 適用説に対しては,人権規定の私法の概括的条項,一般条項への価値充填の振幅が大きく,それにより結論も大きく異なり得るとの問題点が指摘されている。(「憲法上の権利」の作法p136参照,)


→ 間接適用説は,公法,私法の法構造二元主義に立ったうえで,価値基準(法道徳)の統一を図ろうとします。
しかし,憲法の人権規定の価値を私法の一般条項の中にとり込んで解釈する際に,人権価値と一般条項の結合のいかんにより,すなわち人権価値の導入度合いの積極性,消極性により,間接適用説は,直接適用説または無適用説のいずれの見解にも接近し得ます。(阿部憲法p81,82参照) 
          


             
人権価値充填の振幅の度合いが大きい

           直接適用説   ←間接適用説→   無適用説   








オ (6 直接) 適用説に対しては,たとえば「知る権利」のように社会権的側面を有する自由権の(7 直接) 適用を私人間に認めると,かえって自由権が制限されるおそれが生じるとの批判が可能である。(芦部憲法p115参照)


→ 国民の「知る権利」を,市民と報道機関との関係に直接適用すると,国民の知る権利は拡張される一方で,その反面として報道機関の報道の自由が狭められ,制約されるおそれが生じてきます。(芦部憲法p115参照)







→ なお,そもそも私人間効力論の各学説を議論するまでもなく(いかなる説によるかの別なく),明文で又は解釈上(基本権の性質上),当然に私人間においても憲法の基本権が直接適用される場合があります。 
議論の余地も含むものもあるかもしれませんが,例えば,以下の一例があげられます。( そのほかの条文を含めるなど論者により範囲・分類などが異なりえます。)

T 憲法の明文上,私人間に適用されるべきことを定めた規定→私人間に直接適用
   ・選挙における投票の自由(憲法第15条第4項後段)
U 基本権の性質上,私人間においても直接妥当すべき規定→私人間に直接適用
   ・秘密選挙の原則(憲法第15条第4項)
   ・奴隷的拘束からの自由(憲法第18条) 
   ・労働基本権(憲法第28条) 
     (長尾・日本国憲法 全訂第4版p63参照,憲法U 人権 第2版p44参照)
・ご承知のとおり現時点では,間接適用説が判例,通説となっています。(憲法U 人権 第2版p45参照)




民法条文

[基本原則]
第1条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は、これを許さない。

[公序良俗]
第90条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

[不法行為による損害賠償]
第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。






[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
憲法 [改訂]   阿部照哉 著  青林書院
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
日本国憲法 全訂第4版 長尾一紘 著 世界思想社
憲法T 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
「憲法上の権利」の作法 第3版 小山剛 著 尚学社 
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
憲法U 人権 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など
[ 正解 1 ]




                            以   上


学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます
従いまして,以上の記述の正誤につきましては,是非ご自身の基本書,テキスト等によりご検証,ご確認ください。





















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2017年05月27日

私見含みの!? 学説整理・国会議員の不逮捕特権その3



                憲法・その3・国会議員の不逮捕特権
                   (司法試験向き)




不逮捕特権については,議論自体は簡明なので勉強すれば記憶に残り易いと思います。


比較的時間の余裕のある方は,一度サラッと流しておくと良いかもしれません。

深堀の必要性はないと思います。

時間に余裕のない方は,このブログ記事は無視してください。

貴重な時間ですから。






1 不逮捕特権の目的



不逮捕特権の目的については,大きく分けると三つの説があります。



一つ目が,不逮捕特権の目的を議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにすることと考える見解(議員の身体的自由保障説)です(第T説)。(後掲 芦部憲法p307参照)



この説を平たく言えば,不当逮捕(政治的動機・政略的動機)から議員の身体の自由を保障する説と言ってもいいでしょう。[議員]に焦点を当てて考える説です。






二つ目が,不逮捕特権の目的を議院の審議権(正常な活動)を確保することとする見解(議院の活動確保説)です(第U説)。(後掲芦部憲法p307参照)



この「議院の活動確保説」は,以下のような理由をその立論の基礎とするものと思われます。


憲法第50条 後段は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定しています。


すなわち,「会期中逮捕されず」,かつ「会期中これ(議員)を釈放しなければならない」と規定しており,「会期中」に限って,この限りにおいて,憲法は議員の身柄の自由を認めているのです。


このような「会期中」という議員の身柄自由の期間限定文言からすれば,憲法は「会期中」を重視していると言えます。これは,「会期中」に議院の審議が行われるためです。ですから,議院での審議権確保に憲法は不逮捕特権保障目的の焦点を当てていると理解するのが合理的なのです。(後掲 憲法学読本p285参照)


すなわち,不逮捕特権の目的を議院の審議権確保に求めて初めて,かかる「会期中」という憲法第50条後段の身柄自由期間限定文言が効果的に生きてくるのです。この文言と不逮捕特権保障目的との間のよりよい整合性が保たれてくるのです。


このように会期中に限っての議員の身柄の自由を重く見れば,不逮捕特権保障目的を議院の審議権確保とする見解(議院の活動確保説)に落ち着くのが合理的なのです。







三つ目が,行政府による逮捕権濫用によって,議員としての職務活動が妨害されるのを防ぎ,もって議院の組織活動力の保全を図るところに,不逮捕特権の保障目的(趣旨)があるとする見解(折衷説)です。(第V説)(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p470-471参照)。





ごく大雑把にこの折衷説を言うと,不逮捕特権保障目的について,「議員の身体的自由保障説」と「議院の活動確保説」とを合体させた説と言えます。
「議員の身体的自由保障説」と「議院の活動確保説」の両説は,相互に排斥する関係には立たないことをその理由とします。


この折衷説は,「議員の身体的自由保障説」イコール手段と捉え,「議院の活動確保説」イコール目的と捉えるのです(後掲 憲法判例百選U第六版p373参照)。


この折衷説は,行政権・司法権の逮捕権濫用に対して議員の職務遂行の自由を保障し,もって議院の自主性(議院の審議権・正常な活動)を確保することに不逮捕特権の保障目的を求める見解(後掲 野中ほか憲法U103参照)と同じことを言っているものと思われます。







2 議院の逮捕許諾の判断基準
 
→(後掲 憲法判例百選U第六版p372・373,判例プラクティス憲法増補版p347参照)

不逮捕特権の保障目的を議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの説(議員の身体的自由保障説)によれば,逮捕許諾の判断基準を逮捕の適法性・正当性に求める見解(逮捕正当性基準説)を原則として採用することになります。

不逮捕特権の沿革からすると,この説が妥当となります(後掲 注解 法律学全集3 憲法Vp93参照)。




不逮捕特権の沿革 

→ イギリス議会制の歴史において,国王君主による議員の不当拘束が行われたことに対して,これを避ける趣旨で議員の不逮捕特権が認められるようになった。
(後掲 憲法学読本p284参照)


→ 議会制発達史の中で,君主権力の妨害から議員の職務遂行の自由を守る制度として,不逮捕特権は重要な役割を担ってきた。
(後掲 注解 法律学全集3 憲法Vp90参照)






  不逮捕特権の目的          逮捕許諾の判断基準
「議員の身体的自由保障説」  →   「逮捕正当性基準説」



→ 逮捕正当性基準説に対しては,議院に果たして本当に逮捕の適法性・正当性についての判断能力があるのか。逮捕の適法性・正当性の判断は,そもそも裁判官の判断によるべきではないのか,といった疑問があります。(逮捕の理由と必要性について,専門家ではない議院の判断によることができるのか,このような疑問が生じてきます。)

憲法第33条は,「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」と規定しているからです。






一方,不逮捕特権の目的を議院の審議権を確保することに求める見解(議院の活動確保説)によれば,逮捕許諾の判断基準を所属議員の逮捕が議院の審議の妨げになるかどうかについて求める見解(審議基準説)を原則として採用することとなります。

 

 不逮捕特権の目的         逮捕許諾の判断基準       
「議院の活動確保説」   →   「審議基準説」











3 期限付逮捕許諾の可否
 
(後掲 憲法判例百選U第六版p372・373,判例プラクティス憲法増補版p347参照)


不逮捕特権保障目的における「議員の身体的自由保障説」(第T説)からは,
「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定」という一連の見解の流れが考えられます。




→ 不逮捕特権保障目的の「議員の身体的自由保障説」からは,逮捕が適法・正当であり,逮捕権の濫用が認められない以上,審議における支障の有無にかかわらず,当該議員の逮捕を無条件に認めることができると考えられるからです。⇐ ( 但し,この論理の流れは必然の関係に立ちません。後掲 注解法律学全集3 憲法Vp93は,「不当に長くなることが想定される自由の拘束に対して,期限をつけることは考えられうる」としています。)


「議員の身体的自由保障説」の本質たる,排除すべき逮捕権濫用の事実が認められない以上,逮捕請求拒否の根拠が見出せないからです。







また,不逮捕特権保障目的における「議院の活動確保説」(第U説)からは,
「議院の活動確保説」→「審議基準説」→「期限付逮捕許諾の肯定」という見解の流れが考えられます。



→不逮捕特権保障の目的を議院の審議権確保に求める「議院の活動確保説」からは,逮捕請求された議員において,審議に加わることの重要性・必要性が認められるのであれば,逮捕の適法性・正当性の有無にかかわらず,議院は所属議員に対する逮捕請求を拒めると考えることができるからです。



⇐ 但し,この論理の流れは必然の関係に立ちません(後掲 注解法律学全集3 憲法Vp93 -94参照)。
この点,東京地裁昭和29年3月6日決定は,逮捕許諾の判断基準について,議院の審議権確保(所属議員の逮捕が議の職務遂行の妨げになるかどうか)を加味するニュアンスをみせながら,しかし,期限付逮捕許諾については,これを否定し,逮捕許諾は無条件でなければならないとしました(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p471参照)。











以上見てきたことから分かることは,
不逮捕特権の目的と逮捕許諾の判断基準,それに期限付逮捕許諾の可否との一連の関連性については,下記の関連図式のような一応の論理の流れを考えることができます(後掲,佐藤憲法第3版p203-203 日本国憲法論p471参照)。( 但し,あくまでも一応の論理の流れを考えることができるのであって,論理必然の関係に立ちません。)

<関連図式>
「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定
あるいは,
「議院の活動確保説」→「審議基準説」→「期限付逮捕許諾の肯定



しかし,かかる関連図式は必ずしも精確な対応関係に立つわけではありません(後掲 判例プラクティス憲法増補版p347参照)。


その例外があります
これを具体的に見ていきましょう。





関連図式の例外 その1

不逮捕特権の保障目的を「議員の身体的自由保障説」(第T説)とし,逮捕許諾の判断基準を「逮捕正当性基準説」に求める見解によっても,期限付逮捕許諾については,逮捕請求を全面的に拒否できる以上,期限付逮捕許諾を肯定することができるとする見解があります。


この見解は,全面的逮捕許諾ができる以上,部分的逮捕許諾もできると考えるのでしょう。
あるいは,全面的に逮捕許諾を拒める以上,部分的に逮捕請求を拒むこともできると考えるのでしょう。



ごく簡単に言ってしまえば,かかる期限付逮捕許諾の肯定説は,「大は小を兼ねる」的な論理を以て,期限付逮捕許諾を憲法上適法と認めるものと言えます。


しかし,この見解に対しては,二つの反論が考えられます。



まず,一つ目の反論です。

逮捕の目的を「議員の身体的自由保障説」(第T説)に求め,逮捕許諾の判断基準を「逮捕正当性基準説」に求める見解によれば,期限付逮捕許諾については,これを否定し,無条件の逮捕許諾を行うのが論理的であるとの反論です。


なぜなら,「議員の身体的自由保障説」(第T説)によれば,不逮捕特権の保障目的の本質は逮捕権の濫用排除にあるのですから,逮捕の適法性・正当性が認められる以上は,ここに逮捕権濫用の事実が看取できず,もはや逮捕許諾を拒む理由が見出せないからです。


すなわち,逮捕の適法性・正当性が認められ逮捕権濫用事実が看取できない以上,議院は部分的な逮捕許諾の拒否にも相当する期限付逮捕許諾を行う合理性・必要性がなく,したがって逮捕請求に対しては無条件・全面的に逮捕許諾を与えなければならないと考えられるからです。





次に,二つ目の反論です。

期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾と考えられます。
しかし,憲法第50条後段は「会期前に逮捕された議員は,その議院の要求があれば,会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。

したがって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。(後掲 憲法判例百選U第四版p373参照)


関連図式の例外 その2

逮捕許諾基準について,「審議基準説」を採用しながら,逮捕許諾を検察・捜査機関の逮捕権に対する「阻止する権限」と解して,期限付逮捕許諾を否定する見解があります。(後掲 憲法判例百選U第6版p373参照)







ここでもう一度繰り返します。


不逮捕特権の目的と逮捕許諾の判断基準,それに期限付逮捕許諾の可否とのこの一連の関連性については,下記の関連図式のような一応の論理の流れを考えることができます(後掲,佐藤先生憲法第3版p202・203参照 )。( 但し,あくまでも一応の論理の流れを考えることができるのであって,論理必然の関係に立ちません。)

<関連図式>
「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定
あるいは,
「議院の活動確保説」→「審議基準説」→「期限付逮捕許諾の肯定


しかし,かかる関連図式は必ずしも精確な対応関係に立つわけではありません(後掲 判例プラクティス憲法増補版p347参照)。
その例外があります


以上で,関連図式及びその例外に関する話を終わります。







それでは,不逮捕特権の保障目的を逮捕権濫用に対して,議員の職務遂行の自由を保障し,もって議院の組織活動力(審議権)の保全を図ることに不逮捕特権の保障目的を求める説(第V説・折衷説)に立脚した上で,期限付逮捕許諾を認めることができるでしょうか。



逮捕許諾の判断基準につき,議員の逮捕が議院の審議の妨げになるかどうかについて求める見解(審議基準説)をとって,これを可能とする見解があります。


この見解によれば,国政審議の重要性が認められる場合であれば,議院の審議の確保,議院の自主性に重点をおいて,期限付逮捕許諾を認めることができます。


→ どうして,逮捕の許諾基準を「審議基準説」にするかというと,逮捕の適法性・正当性についての議院の適正な調査能力・法技術的な判断能力に疑問があるからです(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p471参照)。
すなわち,議院の調査能力・判断能力を消極的に評価するからです。




<期限付逮捕許諾のケース> 

 不逮捕特権の目的          逮捕許諾の判断基準       
「議員の身体的自由保障説」
   プラス           →   「審議基準説」
「議院の活動確保説」   



なお,東京地裁昭和29年3月6日決定は,逮捕許諾の判断基準について,議院の審議権確保(所属議員の逮捕が議の職務遂行の妨げになるかどうか)を加味するニュアンスをみせながら,しかし,期限付逮捕許諾については,これを否定し,逮捕許諾は無条件でなければならないとしました(後掲 佐藤憲法p202-203,日本国憲法論p471参照)。







また,第V説・折衷説に立脚して,逮捕許諾の判断基準につき,「逮捕正当性基準説」及び「審議基準説」の両基準を採用した上,所属議員逮捕の適法性・正当性と所属議員出席の上での議院審議・運営の必要性とを比較衡量し,後者が前者に優位する場合,議院審議・運営の必要性の限度において所属議員逮捕の許諾に期限を付しうるとする見解もあります。(後掲 憲法判例百選U [第6版]p373参照 )

←しかし,これに対しては,逮捕の適法性・正当性についての議院の適正な調査能力・法技術的な判断能力につき疑問がまた生じてきます。(後掲 憲法判例百選U [第6版]p373参照 )







⇐いままで期限付逮捕許諾について議論してきましたが,条件付逮捕許諾についても,期限付逮捕許諾と同様の議論がほとんどそのまま当て嵌まると思います。











まとめ


国会議員の不逮捕特権については,次の関連図式(あくまでも一応の論理の流れを考えることができるのであって,論理必然の関係に立ちません。)を理解しておけば最低限の守りを保てるでしょう(択一問題)。



<関連図式>

不逮捕特権保障の目的   逮捕許諾の判断基準    期限付許諾の可否

「議員の身体的自由保障説」→「逮捕正当性基準説」→「期限付逮捕許諾の否定

「議院の活動確保説」    →「審議基準説」  →「期限付逮捕許諾の肯定






憲法第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。



不逮捕特権に関する文章を読む上で,注意を要することが一つあります。
『議員』と〖議院〗の言葉の使い分けです。

当該文章は,一体『議員』の主観的地位(議員の身体の自由イコール議員個々人の職務活動の自由)を問題としているのか,それとも〖議院〗の自主組織権(議院の審議権・組織活動力の保全)を問題としているのかです。
(憲法判例百選U [第6版] p373参照)

たった「員」と「院」の一文字の違いですけれども,この違いは大きいです。
文献を読むとき,注意された方がよいかと思います。







[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
憲法 [第3版]  佐藤幸治 著  青林書院
注解法律学全集3 憲法V 樋口陽一 佐藤幸治 中村睦男 浦部法穂 著 青林書院
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
憲法判例百選U [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
判例プラクティス憲法 増補版 憲法判例研究会 編 信山社
憲法T 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
憲法学読本 第2版 安西文雄 巻美矢紀 宍戸常寿 著  有斐閣
など



                                   
                               以    上

学説及び判例あるいは判決事例の解読・理解・説明には,非常に微妙な点が多数現出します。
説明の過程において,どうしても私見となる部分が出てきます。
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posted by 略して鬼トラ at 08:00 | 司法試験

2017年05月21日

その2・国会議員の不逮捕特権・憲法択一


            
                  国会議員の不逮捕特権 その2





この択一問題は難しい問題です。知識的観点からいって難しい問題です。
間違っても全く気にする必要はありません。

ただ,一回知識として触れておくだけで,現場で肢が切れると思い作成した次第です。

肢のオについては,知らなくても全く問題はありません。記憶しておく必要はありません。
肢のア・イ・ウ・エについては,軽く触れておくと役に立つことがあると思います。

正解は,参考文献の下に記載してあります。






[ 問 題 ]



次の対話は,国会議員の不逮捕特権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,明らかに誤りと考えられるものはいくつあるか。


教授 :  憲法第五十条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,緊急集会中の参議院議員に対しても,この不逮捕特権が認められていますか。

学生 : ア 緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たしますので,その期間中の参議院議員に対しても不逮捕特権が妥当すべきものと解されます。



教授 :  憲法第五十条の「逮捕」とは,刑事訴訟法上の逮捕に限定されますか。

学生 : イ いいえ,限定されません。 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして,行政上の身体拘束も含めて,公権力による身体拘束一般を広く含むものと解されています。ただし,確定判決の自由刑執行のための収監は不逮捕特権に含まれません。



教授 :  憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に対して訴追されない特権を認めていますか。

学生 : ウ いいえ。憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に訴追されない特権を認めていません。



教授 :  不逮捕特権保障の目的を,議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの立場(「議員の身体的自由保障説」)から,期限付逮捕許諾を肯定するための理論構成として,どのようなものが考えられますか。

学生 : エ 逮捕許諾を全体として拒否できる以上,条件・期限を付けることも可能である,との理論構成が考えられます。



教授 :  この理論構成をとって,議員の期限付逮捕許諾を認める見解に対しては,どのような反論が考えられますか。

学生 : オ 期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾であると考えられます。
しかし,憲法第五十条後段は「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。
しがたって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。



1 0個    2 1個   3 2個   4 3個   5 4個  


[ 参 考 ]

憲法 第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。




















[ 解 説 ]



教授 :  憲法第五十条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,緊急集会中の参議院議員に対しても,この不逮捕特権が認められていますか。

学生 : ア 緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たしますので,その期間中の参議院議員に対しても不逮捕特権が妥当すべきものと解されます。[←正しい肢]



教授 :  憲法第五十条の「逮捕」とは,刑事訴訟法上の逮捕に限定されますか。

学生 : イ いいえ,限定されません。 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして,行政上の身体拘束も含めて,公権力による身体拘束一般を広く含むものと解されています。ただし,確定判決の自由刑執行のための収監は不逮捕特権に含まれません。[←正しい肢]


← 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして警察官職務執行法第3条の保護措置も含みます。




教授 :  憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に対して訴追されない特権を認めていますか。

学生 : ウ いいえ。憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に訴追されない特権を認めていません。[←正しい肢]


→ 憲法第五十条の特権は「不逮捕」特権であって,訴追されない特権ではない。






教授 :  不逮捕特権保障の目的を,議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの立場(「議員の身体的自由保障説」)から,期限付逮捕許諾を肯定するための理論構成として,どのようなものが考えられますか。

学生 : エ 逮捕許諾を全体として拒否できる以上,条件・期限を付けることも可能である,との理論構成が考えられます。[←正しい肢]



教授 :  この理論構成をとって,議員の期限付逮捕許諾を認める見解に対しては,どのような反論が考えられますか。

学生 : オ 期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾であると考えられます。
しかし,憲法第五十条後段は「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。
しがたって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。[←正しい肢]



[ 参 考 ]

憲法 第五十条  両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。








[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂  岩波書店
日本国憲法論   佐藤幸治 著  成文堂
憲法 [第3版]   佐藤幸治 著  青林書院
憲法U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著   有斐閣
憲法判例百選U [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選U [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
憲法T 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
など
[ 正解 (1) 誤りの肢は 0個 ] アイウエオのすべての肢が,正しい肢です。


                                  以   上



なお,以上の記述の正誤につきましては,ご自身の基本書,テキスト等により是非ご検証,ご確認ください。




















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2017年05月17日

憲法択一 国会議員の不逮捕特権 その1



               国会議員の不逮捕特権 その1




国会議員の不逮捕特権についての択一問題を作成しました。
議院の不逮捕特権は,司法試験,司法書士試験における推論問題となり得る事項です。

不逮捕特権を認めた趣旨と期限付逮捕許諾との関連性が択一推論問題として出題される可能性があります。


この論点を一度理解していれば,見せかけだけ難しくしてある問題に対して,実は簡単な問題であるということが見抜けるでしょう。
憲法の問題には,見せかけだけ難しい出題形式を採る問題が結構多いのではないでしょうか。

チャレンジしてみてください。
解答は参考文献の下に記載してあります。





[ 問 題 ]


次の文章は,国会議員の不逮捕特権に関する教授と学生との対話である。(   )の中に後記の語句の中から適切な語句を選択して対話を完成させた場合,(A)から(G)に入る語句の組み合わせとして最も適切なものは,後記1から5までのうちのどれか。

なお,同一のアルファベットには同一の語句が入るものとする。




教授 : 憲法第五十条は,「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,この「法律の定める場合」の具体的内容を答えてください。



学生 : (   A  )と(   B  )(国会法第33条)です。



教授 : 憲法上,議員に不逮捕特権が認められる目的についてはどのように考えますか。


学生 : (   C  )から(   D  )ところに,不逮捕特権の目的があります。



教授 : 目的をそのように考える理由について答えてください。



学生 : 議会制発達史の中で,立憲君主制下の君主政府による妨害から議員の職務遂行の自由を守る制度として重要な役割を果たしてきたという不逮捕特権の沿革があります。
また,国会法第33条が(   A  )について,院の許諾なくして逮捕を認めているのは,(  E  )の場合には犯罪の嫌疑が明白で(   C  )のおそれがないからです。これは,不逮捕特権の制度の基本的趣旨をよく示している実例と考えられます。
したがって,(   C  )から(   D  )ところに憲法上の不逮捕特権の目的があると考えます。



教授 : あなたの立場から,議員の期限付逮捕許諾を認める理論構成は可能ですか。


学生 : はい,可能です。



教授 : どのような理論構成が考えられますか。


学生 : 議院は逮捕許諾を(   F  )に拒むことができる以上,許諾につき期限や条件をつけることも可能と考えられます。



教授 : あなたは,議員の期限付逮捕許諾を認めることに賛成ですか。


学生 : いいえ,反対です。



教授 : それはなぜですか。


学生 : もともとの不逮捕特権の目的が(   C  )の排除にある以上,逮捕請求に対して(   G  )が認められるのであれば,無条件に逮捕の許諾を与えなければならない,とこのように私は考えるからです。





[ 語句群 ]

ア 緊急逮捕       イ 現行犯    ウ 逮捕状による逮捕

エ 逮捕権の濫用     オ 適法性・正当性   

カ 重要案件の審議・議決における議員の出席の必要性

キ 議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにする(議員の身体的自由保障説)

ク 議院の審議権を確保する(議院の活動確保説) 

ケ 部分的       コ 全面的     

サ 院外における現行犯罪の場合      シ その院の許諾がある場合

ス 逮捕許諾権の濫用




1 A  サ        B  シ        C  ス

2 B  ス        C  エ        D  ク

3 C  エ        E  ア        F  コ

4 D  キ        E  イ        G  オ

5 E  ウ        F  ケ        G  カ






[ 参 考 ]


(逮捕状による逮捕)
第百九十九条 第一項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。


(緊急逮捕)
第二百十条 第一項  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

(現行犯逮捕) 
第二百十三条  現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。


















[ 解 説 ]



教授 : 憲法第五十条は,「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,この「法律の定める場合」の具体的内容を答えてください。



学生 : ( A 院外における現行犯罪の場合)と( B その院の許諾がある場合)(国会法第33条)です。



教授 : 憲法上,議員に不逮捕特権が認められる目的についてはどのように考えますか。


学生 : ( C 逮捕権の濫用)から( D 議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにする(議員の身体的自由保障説))ところに,不逮捕特権の目的があります。



教授 : 目的をそのように考える理由について答えてください。


学生 : 議会制発達史の中で,立憲君主制下の君主政府による妨害から議員の職務遂行の自由を守る制度として重要な役割を果たしてきたという不逮捕特権の沿革があります。
また,国会法第33条が( A 院外における現行犯罪の場合)について,院の許諾なくして逮捕を認めているのは,( E 現行犯)の場合には犯罪の嫌疑が明白で( C 逮捕権の濫用)のおそれがないからです。これは,不逮捕特権の制度の基本的趣旨をよく示している実例と考えられます。
したがって,( C 逮捕権の濫用)から( D 議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにする(議員の身体的自由保障説))ところに憲法上の不逮捕特権の目的があると考えます。



教授 : あなたの立場から,議員の期限付逮捕許諾を認める理論構成は可能ですか。


学生 : はい,可能です。



教授 : どのような理論構成が考えられますか。


学生 : 議院は逮捕許諾を( F 全面的)に拒むことができる以上,許諾につき期限や条件をつけることも可能と考えられます。



教授 : あなたは,議員の期限付逮捕許諾を認めることに賛成ですか。


学生 : いいえ,反対です。



教授 : それはなぜですか。


学生 : もともとの不逮捕特権の目的が( C逮捕権の濫用)の排除にある以上,逮捕請求に対して( G 適法性・正当性)が認められるのであれば,無条件に逮捕の許諾を与えなければならない,とこのように私は考えるからです。





国会法第三十三条  各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。








[参考文献]
憲法 第6版   芦部信喜 著  高橋和之 補訂   岩波書店
憲法 U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
注解法律学全集3 憲法V 樋口陽一 佐藤幸治 中村睦男 浦部法穂 著  青林書院 
憲法判例百選 U [第4版]  芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編  有斐閣
憲法判例百選 U [第6版]  長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編  有斐閣
など

[正解] 4 D  キ        E  イ        G  オ




                                以   上



なお,以上の記述の正誤につきましては,ご自身の基本書,テキスト等により是非ご検証,ご確認ください。













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2017年05月13日

論拠まとめ・憲法択一 内閣の法律案提出権


           憲法 択一 内閣の法律案提出権  論拠のまとめ




内閣による法律案提出権の論点について,肯定説,否定説のそれぞれの論拠をまとめてみました。
先の択一問題の肢で触れられていない論拠も記載しています。






内閣の法律案提出権における「肯定説」の論拠のまとめ




1 憲法第72条に規定されている「議案」の中に法律案も含まれるから,内閣には法律案の提出権が認められる。

→ 憲法第七十二条  内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。




2 内閣による法律案の提出は,立法の契機を与えるところの立法の準備行為であって,立法そのものではない。



3 内閣による法律案の提出は,国会の議決権を拘束するものではなく立法作用の一部分とみることができない



4 国会は法律案を審議し,これを自由に修正し,否決,廃案にすることもできるのであるから,国会をもって唯一の立法機関(憲法第41条)とすることに反しない。



5 内閣の法律案提出権を否定してみたところで,内閣総理大臣過半数の国務大臣は,議員の資格で法律案を発議できるのであるから実質的な結論は変わらないといえる。



6 議院内閣制は立法に対する国会と内閣の協働関係を予定しているのだから,内閣の法律案提出権が認められる。



7 憲法第73条第1号は,「国務を総理すること」と規定しており,内閣に国政のあり方に対する全般的な配慮が求められていることからすれば,内閣による法律案提出が認められる。

→ 憲法第七十三条  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一  法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二  外交関係を処理すること。
三  条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四  法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五  予算を作成して国会に提出すること。
六  この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。






この他に肯定説の論拠としては,次の根拠を挙げることができます。



8  現代国家においては,政策立法の必要性が高まっている。

→ 複雑に変化する社会経済情勢を的確に把握し,これに迅速に対応することのできる内閣(行政)による法律案の提出の必要性が高まっている。

→ 積極国家あるいは行政国家現象の下では,内閣による政策を具体化する立法の必要性が高まっているということもできましょう。
このような状況下において,いかなる立法措置をとるべきかについては,内閣がこれをよく把握している,このように肯定説は言いたいのでしょう



9 国会の慣行的受容によって,内閣の法律案提出権は既に確立していると言える。

→ これに対しては,硬性憲法の下では憲法に反する国会の慣行的受容を認めることはできないとの批判があります。
( 過去の司法試験問題の択一の肢には,「硬性憲法」という用語が使われたことがあります。)



なお,内閣の法律案提出権については,内閣法第5条がこれを認めています。

内閣法 第五条  内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。










内閣の法律案提出権における「否定説」の論拠のまとめ




1 憲法第72条の議案には,本来内閣の権限に属する作用が含まれるのであるが,法律制定作用たる法律案提出権自体は,内閣の本来的権限にそもそも属さない作用である。
したがって,議案の中に法律案を含めることはできない。



2 法律案の提出は,法律制定作用の重要な行為であるから,これを内閣が権限行使するとなれば,国会をもって唯一の立法機関(憲法第41条)とすることに反する
これは「国会単独立法の原則」に反することになる。


→ 国会中心立法の原則ではありません。ひっかけ肢に注意してください。

内閣の法律案提出権を立法作用の一部分とみなすことがでるか否かが,肯定説と否定説の一つの争点となっていますので,「国会単独立法の原則」に反するが,用語としては正しいです。



3 内閣総理大臣や国務大臣が,議員の資格で法律案を発議することに対しては,国会法第56条第1項の制限がある。


国会法第56条第1項は,「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」と規定しています。

→ つまり,論理上は内閣総理大臣や国務大臣が,議員の資格で法律案を発議できないことも想定できます。











[参考文献]
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
憲法 U 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著  有斐閣
など







                                 以   上




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