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2100年01月01日

ご挨拶

こんにちは。浅海と申します。
2020年、コロナ禍が始まった年に読書の楽しみを覚えた30代です。

現近代文学の面白さにハマり、読書の記録として感想文を書いていきたいと思い、このブログを立ち上げました。
まだまだ読書初心者で、また歴史に関しても勉強中です。間違った認識などありましたら、根拠を元にご指摘頂けますと幸いです。

里見ク中心に白樺派を愛読していますが、その他文学作品やエッセイ、対談集なども読みます。

どうぞよろしくお願い致します。


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浅海
twitter:@mikan3sea
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posted by 浅海 at 00:00| ご挨拶

2022年01月19日

里見ク「潮風」

筑摩書房「里見ク全集第2巻」に収録されている「潮風」を読みました。大正6年に発表された小説です。

あらすじ

「潮風」は、庄司直衛、川瀬悦三、という学習院高等部を卒業し、大学入学を控えた(当時は9月入学)の友人同士の、現・神奈川県藤沢市周辺での一夏の思い出、成長を描いたお話です。


読んだきっかけ

里見先生と、友人の中村貫之さんが実際にこの地を訪れたことがベースに書かれているのですが、研究者の紅野敏郎さんによると、このお話は
直衛にも悦三にも、志賀と里見はじめ当時の「白樺」の仲間の性格、気質、生活の諸要素が配分されている。
(「白樺の本」(昭和57年・青英舎)p38 紅野敏郎より)

とのこと。いろんな友達や、自分自身のことがいたるところに反映されているらしいので、若き日の白樺同人たち・特に里見先生と志賀直哉の交友録に興味がある私は読まずにはいられませんでした。

実は先日、Twitterである方からこの情報を聞いていたので、読み始めから「一体、どなたのことが!どんなふうに!?」と興奮していたのですが、そもそも知識量がなさすぎて序盤を読んだ時点でどのエピソードが誰のものだなんて全然分かりませんでした。なのでそのまま「直衛くん」「悦三くん」という人物として小説として楽しむことにしました。初読ならば間違いなくこっちの読み方が正解ですね!困り


登場人物紹介

まずは主な登場人物紹介です(私が感じた印象も混じっています)。

■庄司直衛
経済を勉強しており、将来は銀行関係の職業に就きたいと考えている、学習院の遊泳部助手(学生の時の水泳技術が大変あり、卒業後も報酬をいただく代わりに遊泳部に出勤しなければならない身の上だそう)にもなるぐらいの水泳の得意な青年。女の子との恋に憧れて、会話もしたことのないような女の子との恋の妄想を繰り広げている、ロマンチストで純粋で真面目な印象。下宿先で働いているお種さんやお才さんがいうには、イケメンらしい。

■川瀬悦三
小説家を志しており、自分の考えをしっかりともっているタイプ。小柄で、お種さんやお才さんがいうにはイケメンとのこと。人との会話の様々な場面から明るく、陽キャという印象を受ける。しかし礼儀はしっかりわきまえてる感じもある。直衛と同じく恋・性欲…など考えているが、悦三の方が現実を知っている感じを受ける。ところどころに散りばめられた心境やエピソードから、里見先生をモデルにしたところが大きそう。

■お種さん
直衛と悦三が下宿する宿で働く女性。30代くらいで、悦三をからかう様子がよくみられる。快活な女性という印象。

■お才さん
17,8歳くらいの宿の女中。日によって美しく見えたり、悪くなったりするとのこと。大人しい。


感想

まずは軽く、全体の感想です。

最初は直衛・悦三ともに気が滅入っている感じから始まります。私もつられて一緒に気が重くなりながらも、二人が様々な出来事・経験を重ねて明瞭さを取り戻していく様子に、だんだん私も楽しくなっていきまいた。序盤はよくわからなかった二人の性格もだんだん感じ取れるようになり、いつの間にか二人のことが大好きになってしまいました。そして最後の場面ではふたりの性格や目指すものの違いを感じながらも、一歩青春の暗夜を乗り越えた直衛くんの明るい気持ちを感じて、心が晴れやかになりました。

読後、語彙力が皆無ですが、「面白かった!楽しかった!」という気持ちでいっぱいになってしまいました。これは確実に私の好きな作品の一つとしてノミネートです。

また、私は里見先生の作品は、モデルが志賀直哉と里見先生としたもの以外は女性が出てくるものばかり好んでいたので、青年二人がメインの登場人物となっている小説は新鮮で、その点からもより面白さを感じたのかもしれません。


🌖荒波 🌖荒波 🌖荒波 🌖荒波 🌖荒波 🌖荒波 🌖荒波 🌖荒波


ここからは、印象に残ったことを少し詳しく書いてみます。

全体を通して印象深かったことなのですが、情景描写の素晴らしさ 会話のテンポの良さに心を打たれました。さすが里見先生です。

■情景描写の素晴らしさについて
特に印象に残っているのは、鵠沼の荒波に潜ったときの様子です。表現の仕方が本当に巧みで、私も一緒に海に潜って体験しているように錯覚するほどでした。読んでいて息が苦しくなって、顔を上げた瞬間に私もスゥーッと大きく息を吸い込んでしまいました。

その部分だけ、「湘南の情報発信基地」様のホームページに引用されていましたのでよろしければ↓
第0170話 里見 ク『潮風』に見る鵠沼海岸海水浴場


もう一つ、あらゆるところで月の描写をされていたことが印象深かったです。

直衛くんは想い人の女性を自身の日記上で「月見草」と例えています。そこから実際に月の描写があったのは、安井くんという学習院の後輩と会う場面です。安井くんは、かつて悦三が恋していた相手であり、安井くんは直衛に好意を示している様子が描かれています。しかし、二人共直衛くんには靡かず、その後すぐに「惚れた女と二人で月の下を歩いていたらいいな」と、すぐに女性との恋に憧れる青年になります。その後も「恋」を考えるような場面では月が登場します。また印象深かったのは、直衛が電車の窓から月を眺めて「君と別れて遇いたい時は、月が鏡となればよい」と、お才さんのことを思い出して口ずさむ場面です。本当にお才さんが月の中に見えたと感じた直衛くんの気持ちを感じて、私も胸がキュっと締め付けられるようでした。

そして最後の場面で、俥の上からみる月をみて、その晩は悦三に振り回されて色々な出来事があったのですが、同じ月が「ずっと自分を見ている」ことに気づいて自己嫌悪に陥ってからの、家に無事に帰り着いたあと「隈もなく月は照り亘っている」と立ち上がって月をみる場面が本当に印象的でした。

上手く言えないのですが、直衛くんは、青春の暗い部分にハマりこまず、うまく抜け出して明るく正しい(この言葉が正しいのかわからないですが)道を進むことを決意したのだと感じて、爽やかな気持ちになりました。その心の揺れ動き、成長の様子を月をうまく使うことで表した里見先生の文章力に本当に感服でした。

蛇足ですが、学習院の後輩の安井くんを描いたのは、学生時代からは完全に卒業したということを示すためだと感じました。そして卒業はしたものの、いろんな女子との恋に憧れながらも、まだ何者でもない大学入学前の青年の心の様子をうまく描いた本当に面白い作品だと思いました。


■会話のテンポの良さについて
会話のテンポはどの会話も本当に秀逸で一番が選べないです!

あえて上げるとすると、女学生の「ね〜え、先生」と悦三が声真似して、直衛くんに鬱陶しがられる様子が可愛くて大好きでした。
その会話の最中の「夏季学校」を「カキ(貝の)学校」と聞き間違うのも「プッ」と吹き出してしまいました。


最後に、私自身がハッとさせられた文章があって、その部分を引用します(旧字体は新字体に直しています)。
もはや私は「若さゆえの根拠のない自信」もなくなった年頃なのですが、昔の自分のことを言われた気になりました。
こういう教訓のようなことも小説の中に入ってくるから、本当に里見先生のことを余計に好きになってしまうのだと思います。
「若い時から、あんまり自信のありすぎるやつは損だね」
と、直衛が不意に、とてつもつかないことを言ひだした。
「うん」
悦三は気のない返事をする。
「だって、そういうやつは、早く主観がきまっちまうだろう? 主観がきまれば、ものごとに選択ができる、つまらないと思うことは、ついやらないという風にならアね。そうすれア、大切な経験の範囲が狭められる。つまらないと思うことでも、やってみれア、そこにまた思わぬ発見もあろうというもんじゃアないか。それをしないから、結局、健全な進歩発展がない。……それア、一方には、──自分の主観の向いている方には延びるだろうけれど、それじゃアどうしたって、一方に偏るからね。オイ、どうだい、先生、そうだろう?」
(「里見ク全集第2巻」筑摩書房 「潮風」p437より)


終わりに

「白樺の人物がモデルとしてたくさん配分されている」ということで気になって読み始めたものではありますが、一作品として本当に素晴らしい作品でした。
初読後、どのエピソードがどの人なのだろうかと考えてはみましたが、結局詳しいことはわからなかったです。研究者レベルにまで詳しく調べないと判別は不能なのでしょうね…!

しかし、志賀直哉と里見クのことは割と調べている方なので、なんとなく志賀直哉と里見先生のエピソードっぽいものは安井くんの登場あたりがそれっぽい感じがしました。(このときの悦三の気持ちはまんま里見先生ではないかと思います。ただ直衛くんは”男にも女にもあまりそういうことをされたことがない”、と書いてあったので、その部分は志賀直哉を感じませんでしたが、安井くんに言い寄られている感じはもしかしたら、志賀直哉なのでは?などと想像しました。)真偽のほどはわかりませんが困り

ただ、「潮風」の解説を書かれた紅野先生が、同書の中で
志賀と里見の交友の一齣より材がとられていることは事実だろう
(「白樺の本」(昭和57年・青英舎)p38 紅野敏郎より)

と書かれているので、どの部分かはわかりませんが、含まれているのでしょうねにこにこ

里見先生、巧みです。


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posted by 浅海 at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 里見ク
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