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2017年04月28日
カードローンの自主規制強化と金融リテラシー
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3メガ銀の自主規制
本日は少しお堅い話です。
以前の記事で、ソーシャルレンディング投資に伴う短期資金を融通するため、私はカードローンを使用して
いるという内容を書きました。
借乳金利よりも、有利な案件に投資できないという機会損失の方が大きいというのが理由です。
そんなカードローンですが、ここに来て自主規制の話が出ているようです。
・みずほ銀行 → カードローンの融資上限額を、年収の1/2から1/3に変更
・三菱東京UFJ銀行 → 融資上限額の引き下げを検討
・三井住友銀行 → 融資審査の厳格化を予定
3メガ銀が相次いで規制強化に動いた事から、他の銀行のカードローンについても後追いをする可能性は
十分にあると思います。
規制の背景と影響
この規制の背景にあるのは、銀行系カードローンの急拡大と、それに伴う自己破産の増加とのことです。
これらを元にして、弁護士連合会は過剰な貸し付けへの規制を求め、金融庁は調査に乗り出しました。
今回の自主規制は、この動きを察知してのものだと思います。
平成20年に改正貸金業法が完全施行され、
@いわゆる「グレーゾーン金利」の撤廃
A年収の1/3を超える貸付の原則禁止
が決定されたのですが、銀行系のカードローンはAの対象外となりました。
また、いつも使っている銀行のATMから現金を引き出せる気安さもあって利用額が急拡大。
今では貸付残高が5兆円を超えているとのことです。
それに伴い、自己破産件数も13年ぶりの増加となり、これが問題視されたのでしょう。
私の場合、少額の短期資金を融通しているだけなので、カードローン規制強化により融資上限額が
引き下げられたとしても問題はありません。
レバレッジをかけて運用されているような投資家の場合は、若干影響を受けるかもしれませんね。
以上、結論としては、カードローンの自主規制がSLに与える影響は軽微だと思います。
ただ、それよりも根本的な問題があります(以下は個人的な意見です)。
対処療法と根治療法
自己破産件数の増加の傾向があるから、カードローンの実態調査をするというのは一応筋が通ります。
ただ、それでは対処療法に過ぎず、根治療法になっていません。
「危なそうだから規制する」という考え方は、「臭い物に蓋」にも達しておらず、
「匂いがしそうだから蓋をする」でしかありません。
この問題の源を考えると、情報の非対称性に尽きるように思います。
当事者双方が持つ情報が非対称、つまり量や質に隔たりがある時は、市場原理任せにすると失敗します。
(参考記事)
当事者の一方(この場合、ローンを借りる側)に、十分な金融リテラシー(知識と判断力)があれば
ローンの破産などの問題は減少します。
十分な金融リテラシーが無いからローン使用者を一時的に守る、というのはいいとして、
では、いつまでも過保護を続けるのか? という問題に突き当たってしまいます。
過保護のままでは健全な金融知識は身に付かず、多様性のある金融商品の登場も望めません。
結局、問題の根っこには、この国の金融教育のレベルが低すぎる事があると思います。
(*その理由には思い当たる節もありますが、ここでは口を噤んでおきます)
ある程度の金融知識をきちんと中学・高校レベルで教えておけば、奨学金が学費ローンに過ぎないことや
リボルビング払いが泥沼の入り口なことも理解できるのではないでしょうか。
ついでに、労務知識もきちんと学校で教えておけば、俗に言うブラック企業問題の解決にも繋がります。
と言いますか、金融知識や労務知識を中学・高校あたりの必修教科にするべきだと思います。本当に。
参考資料
日本の貧弱な金融教育については、国も問題視をしているようです。
金融リテラシーが質の高い金融商品の供給と、家計金融資産の有効活用にとって重要であると明言し、
身につけるべき知識の種類を明らかにしています。
投資家の方々には釈迦に説法となってしまいますが、時間がある時にでもどうぞ。
・金融リテラシー・マップ(概略) (出典:金融広報中央委員会)
・金融リテラシー・マップ(詳細) (出典:日本証券業協会)
・最低限身に付けるべき金融リテラシー (出典:金融庁)
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posted by SALLOW at 11:55
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2017年04月04日
金融庁Webサイトを散歩してみたA:金融レポートが深くて面白い(後編)
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前回の記事の続きです。
金融庁Webサイトを散歩していましたら、H27年の金融レポートを見つけました。
面白い事が色々書いてありましたし、なかなか攻めた内容になっていましたので、紹介します。
平成27事務年度 金融レポート
前回の記事では、上記レポートのP.59〜P.65くらいまでを取り上げましたが、今回はその続きです。
(以下、特記ない限り全ての画像や図表は、金融庁レポートより引用しています)
投資信託を一通り撫で切りにした後、金融レポートの次の標的は保険商品です。
2015年に相続税法が改正され、基礎控除が3割減少した一方、生命保険料について控除が新設されました。
(法改正前)
基礎控除 5,000万円+(法定相続人数×1,000万円)
(法改正後)
基礎控除 3,000万円+(法定相続人数×600万円)
死亡保険金の非課税枠 法定相続人数×500万円(新設)
この法改正により、2015年から保険商品のニーズが高まってはいるのですが、それでもその規模はまだ
投信には及んでいません。ですが、銀行の手数料収入に占める保険の割合はかなり大きくなっています。
これはつまり、前回の記事で取り上げたように「手数料高すぎ」と撫で切りにされた投資信託よりも
保険商品(特に一時払い生命保険)の手数料が輪を掛けて高い、ということです。
しかもその中で、外貨建て保険商品に関してはさらにさらに手数料が高い、と指摘しています。
そして、トドメの一言が下。痛快ですね。
金融庁:
「外貨を一部組み込んだ一時払い保険商品」というのは、投資商品として分解して考えると
「外国国債+低コスト投信かETF+掛け捨て生命保険」で構成できて、そっちの方が手数料低いんだけど、
どうして顧客にそれを提示しないの?
次に、最近よく見かけるファンドラップ(投資一任)です。
こちらも2015年くらいから、口座数・残高ともに増えているのが分かります。
一方でファンドラップは、「顧客のリスク許容度や目標利回りなどを確認した上、これに沿ってプロが
投資を行う」という特性上、通常の投資信託に加えて投資一任報酬が発生します。
平たく言いますと、散々「手数料が高い」と言われた投資信託より、さらに高い手数料が取られます。
金融庁の調査によると、主たるファンドラップの年間手数料は平均2.2%。
これを、一般の手数料の高い投資信託(年間手数料1.5%、買付手数料3%)と比較して運用シミュレートを
行うと、長期的には驚くべき結果になります。
この結果は、金融庁が誘導しようとしている「中長期的な安定した資産形成」という目標と真っ向から
対立するため、レポートの中でもかなり語気強く指摘しています。
またもう一つの突っ込みどころは、下の内容。これも顧客との利益相反を起こす可能性があります。
金融庁:
証券会社や信託銀行提供のファンドラップの中を見ると、系列会社の投資信託が平均で半分、ひどいものは
系列会社の投信だけで7割占めてるけど、これちゃんと顧客目線で選んだ投信パッケージなの?
最後に、クラウドファンディングについて何か書いていないか探してみました。
レポートのP.76〜77に、「企業がその発展の度合いにより、色々な資金調達ができる事が重要」とあり、
その方法として、IPOやベンチャーキャピタルと並んでクラウドファンディングの文字がありました。
ただ残念ながら、ここで取り上げられていたのは投資型クラウドファンディングであり、金融レポートの
中には、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の言及はありませんでした。
2017年度版の金融レポートでの、SLの登場に期待します。
以上、金融レポートから主に「金融商品目線」「投資家目線」で一部を抜粋して記事にしました。
ここで書いた以外にも、内容は盛りだくさんのレポートですので、是非一読をお勧めします。
本記事の最初の方にあるリンクから、金融庁の該当ページに飛ぶことができます。
ランキングに参加しています。
リンク先には同じ話題を取り扱うブログが沢山あります。こちらもいかがでしょうか。
金融庁Webサイトを散歩していましたら、H27年の金融レポートを見つけました。
面白い事が色々書いてありましたし、なかなか攻めた内容になっていましたので、紹介します。
平成27事務年度 金融レポート
前回の記事では、上記レポートのP.59〜P.65くらいまでを取り上げましたが、今回はその続きです。
(以下、特記ない限り全ての画像や図表は、金融庁レポートより引用しています)
6.貯蓄性保険(特に一時払いと外貨建て)は高コスト
投資信託を一通り撫で切りにした後、金融レポートの次の標的は保険商品です。
2015年に相続税法が改正され、基礎控除が3割減少した一方、生命保険料について控除が新設されました。
(法改正前)
基礎控除 5,000万円+(法定相続人数×1,000万円)
(法改正後)
基礎控除 3,000万円+(法定相続人数×600万円)
死亡保険金の非課税枠 法定相続人数×500万円(新設)
この法改正により、2015年から保険商品のニーズが高まってはいるのですが、それでもその規模はまだ
投信には及んでいません。ですが、銀行の手数料収入に占める保険の割合はかなり大きくなっています。
これはつまり、前回の記事で取り上げたように「手数料高すぎ」と撫で切りにされた投資信託よりも
保険商品(特に一時払い生命保険)の手数料が輪を掛けて高い、ということです。
しかもその中で、外貨建て保険商品に関してはさらにさらに手数料が高い、と指摘しています。
そして、トドメの一言が下。痛快ですね。
金融庁:
「外貨を一部組み込んだ一時払い保険商品」というのは、投資商品として分解して考えると
「外国国債+低コスト投信かETF+掛け捨て生命保険」で構成できて、そっちの方が手数料低いんだけど、
どうして顧客にそれを提示しないの?
7.ファンドラップは手数料に注意
次に、最近よく見かけるファンドラップ(投資一任)です。
こちらも2015年くらいから、口座数・残高ともに増えているのが分かります。
一方でファンドラップは、「顧客のリスク許容度や目標利回りなどを確認した上、これに沿ってプロが
投資を行う」という特性上、通常の投資信託に加えて投資一任報酬が発生します。
平たく言いますと、散々「手数料が高い」と言われた投資信託より、さらに高い手数料が取られます。
金融庁の調査によると、主たるファンドラップの年間手数料は平均2.2%。
これを、一般の手数料の高い投資信託(年間手数料1.5%、買付手数料3%)と比較して運用シミュレートを
行うと、長期的には驚くべき結果になります。
この結果は、金融庁が誘導しようとしている「中長期的な安定した資産形成」という目標と真っ向から
対立するため、レポートの中でもかなり語気強く指摘しています。
またもう一つの突っ込みどころは、下の内容。これも顧客との利益相反を起こす可能性があります。
金融庁:
証券会社や信託銀行提供のファンドラップの中を見ると、系列会社の投資信託が平均で半分、ひどいものは
系列会社の投信だけで7割占めてるけど、これちゃんと顧客目線で選んだ投信パッケージなの?
8.クラウドファンディングについて
最後に、クラウドファンディングについて何か書いていないか探してみました。
レポートのP.76〜77に、「企業がその発展の度合いにより、色々な資金調達ができる事が重要」とあり、
その方法として、IPOやベンチャーキャピタルと並んでクラウドファンディングの文字がありました。
ただ残念ながら、ここで取り上げられていたのは投資型クラウドファンディングであり、金融レポートの
中には、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の言及はありませんでした。
2017年度版の金融レポートでの、SLの登場に期待します。
以上、金融レポートから主に「金融商品目線」「投資家目線」で一部を抜粋して記事にしました。
ここで書いた以外にも、内容は盛りだくさんのレポートですので、是非一読をお勧めします。
本記事の最初の方にあるリンクから、金融庁の該当ページに飛ぶことができます。
ランキングに参加しています。
リンク先には同じ話題を取り扱うブログが沢山あります。こちらもいかがでしょうか。
posted by SALLOW at 12:20
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