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2018年06月21日
中国を最も知る記者の分析力
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北朝鮮の専門家がしばしば大きく見通しを外すということを何度か書きました。
北朝鮮に限らず、「専門家」と呼ばれる人たちは過去の分析にはたけていますが、将来を予想することは苦手です。
なぜなら彼らは過去のことを知りすぎているからです。
その例が昨日の産経新聞のコラムにも見受けられました。
矢板明夫外信部長は「北の“属国”化に成功した中国」という記事で、「中国はぬれ手でアワのように、朝鮮半島に対する影響力を拡大させ、北朝鮮を“属国”化することに成功しつつあるようだ」と書いています。米朝首脳会談を終え、金正恩氏は「手持ちの外交カードをほぼ使い切ってしまった」ため、中国に泣きついているという前提で、中国が「北朝鮮に対し、上から目線で扱うことが増え、以前のような配慮が少なくなった」と指摘しています。
矢板氏は、金正恩氏がシンガポールに向かうときに使った中国機の機体に北朝鮮の国旗が塗装されていなかったことや中国到着直後に金正恩氏が訪中した事実を報道したことを挙げ、「秘密主義の北朝鮮への気配りはなかった」と主張しています。
そして、「中朝関係に詳しい北京在住の学者」の「(中国は最近の北朝鮮を)格が下の国として扱っているようだ」という言葉を引用しています。
でも、本当にそうでしょうか。
公開情報に頼って北朝鮮情勢を分析してきた素人の私からすると、中国の変化というよりも金正恩氏が祖父や父とは異なる発想をしていることが大きいように思えます。
金正恩氏が最高指導者に就任して以来、秘密だった会議の様子を写真付きで報道したり、夫人を随伴して視察や外国訪問をしたりしています。重大事件についての発表は祖父や父の時代に比べると迅速になっています。ミサイル発射が失敗した後もすぐに公表し、過ちを今後に生かすという方針を出したこともあります。金正恩氏が「秘密主義への気配り」をことさらに求めているようには思えません。
中国の機体を利用したことを隠さなかったのは、中国が存在感を示したかったということがあるように思います。また、金正恩氏も「中国が背後にいる」ということを世界にアピールしたい面もあったでしょう。
そして、何よりも3回目の金正恩氏の訪中で、習近平国家主席は滞在中、2回も首脳会談を行ったという事実は大きいでしょう(これは矢板次長のコラムが出た後のことですが)。一般的に外国の賓客が訪問したときに、滞在期間中に首脳が複数回会談に応じれば「厚遇」と言えます。仮に「上から目線」「格が下」という意識を持っているとしても、やはり中国にとって、北朝鮮は「別格」でしょう。核兵器を開発し、それをてこにして米国と対等に首脳会談を行ってきたのですから、習氏は金正恩氏を軽視することはできないはずです。「上から目線」というよりは、中国が北朝鮮を自陣営に引き留めるために必死になっているという解釈の方が自然に思えます。
松下政経塾のウェブサイトにある矢板次長のプロフィールによると、矢板氏は中国残留孤児の子息で15歳まで中国で育ったそうです。おそらく日本メディアの記者の中で最も中国語に堪能な人物でしょう。中国の名門シンクタンクの特別研究員や大学の非常勤講師を経て、産経新聞の入社は30歳のころですから、中国内の人脈も相当なものでしょう。
今回紹介したコラムでも、習近平氏の少年時代の友人の話として、「習氏が尊敬する人物は『父親の習仲勲氏』『漢の武帝』『清の康煕帝』の3人−と教えられたことがある」と明らかにしています。武帝と康煕帝は「いずれも対外拡張に熱心だった帝王である」と言われれば、説得力があるように感じます。
ただし、気を付けないといけないのは、矢板氏が中国を去ったのは1988年。天安門事件前の大らかな時代に中国で育ち、研究者をしていた2000〜02年は高度成長全盛期で共産党体制を直接批判しない限りは一定の言論の自由が認められていました。「習近平 共産中国最弱の帝王」という矢板次長の著書のタイトルを見ても分かるように、習氏の政治手法に反発する勢力と密接な関係があるのでしょう。矢板次長の文章には「反習近平勢力」の主張が色濃く反映されていると考えて間違いありません。
でも、現実はどうでしょうか。習氏は中国共産党の歴代指導者の中で「最弱」ではないでしょう。
取材をすればするほど、細かな事実を知ることができるようになるのですが、大局が見えなくなることがあります。まさに木を見て森を見ずの状態です。私が「専門家」の意見を本気で信じないのは、そういう例をよく見てきたからです。
引き続き質問をお待ちしています。
下のコメント欄にお書きください。
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北朝鮮に限らず、「専門家」と呼ばれる人たちは過去の分析にはたけていますが、将来を予想することは苦手です。
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その例が昨日の産経新聞のコラムにも見受けられました。
矢板明夫外信部長は「北の“属国”化に成功した中国」という記事で、「中国はぬれ手でアワのように、朝鮮半島に対する影響力を拡大させ、北朝鮮を“属国”化することに成功しつつあるようだ」と書いています。米朝首脳会談を終え、金正恩氏は「手持ちの外交カードをほぼ使い切ってしまった」ため、中国に泣きついているという前提で、中国が「北朝鮮に対し、上から目線で扱うことが増え、以前のような配慮が少なくなった」と指摘しています。
矢板氏は、金正恩氏がシンガポールに向かうときに使った中国機の機体に北朝鮮の国旗が塗装されていなかったことや中国到着直後に金正恩氏が訪中した事実を報道したことを挙げ、「秘密主義の北朝鮮への気配りはなかった」と主張しています。
そして、「中朝関係に詳しい北京在住の学者」の「(中国は最近の北朝鮮を)格が下の国として扱っているようだ」という言葉を引用しています。
でも、本当にそうでしょうか。
公開情報に頼って北朝鮮情勢を分析してきた素人の私からすると、中国の変化というよりも金正恩氏が祖父や父とは異なる発想をしていることが大きいように思えます。
金正恩氏が最高指導者に就任して以来、秘密だった会議の様子を写真付きで報道したり、夫人を随伴して視察や外国訪問をしたりしています。重大事件についての発表は祖父や父の時代に比べると迅速になっています。ミサイル発射が失敗した後もすぐに公表し、過ちを今後に生かすという方針を出したこともあります。金正恩氏が「秘密主義への気配り」をことさらに求めているようには思えません。
中国の機体を利用したことを隠さなかったのは、中国が存在感を示したかったということがあるように思います。また、金正恩氏も「中国が背後にいる」ということを世界にアピールしたい面もあったでしょう。
そして、何よりも3回目の金正恩氏の訪中で、習近平国家主席は滞在中、2回も首脳会談を行ったという事実は大きいでしょう(これは矢板次長のコラムが出た後のことですが)。一般的に外国の賓客が訪問したときに、滞在期間中に首脳が複数回会談に応じれば「厚遇」と言えます。仮に「上から目線」「格が下」という意識を持っているとしても、やはり中国にとって、北朝鮮は「別格」でしょう。核兵器を開発し、それをてこにして米国と対等に首脳会談を行ってきたのですから、習氏は金正恩氏を軽視することはできないはずです。「上から目線」というよりは、中国が北朝鮮を自陣営に引き留めるために必死になっているという解釈の方が自然に思えます。
松下政経塾のウェブサイトにある矢板次長のプロフィールによると、矢板氏は中国残留孤児の子息で15歳まで中国で育ったそうです。おそらく日本メディアの記者の中で最も中国語に堪能な人物でしょう。中国の名門シンクタンクの特別研究員や大学の非常勤講師を経て、産経新聞の入社は30歳のころですから、中国内の人脈も相当なものでしょう。
今回紹介したコラムでも、習近平氏の少年時代の友人の話として、「習氏が尊敬する人物は『父親の習仲勲氏』『漢の武帝』『清の康煕帝』の3人−と教えられたことがある」と明らかにしています。武帝と康煕帝は「いずれも対外拡張に熱心だった帝王である」と言われれば、説得力があるように感じます。
ただし、気を付けないといけないのは、矢板氏が中国を去ったのは1988年。天安門事件前の大らかな時代に中国で育ち、研究者をしていた2000〜02年は高度成長全盛期で共産党体制を直接批判しない限りは一定の言論の自由が認められていました。「習近平 共産中国最弱の帝王」という矢板次長の著書のタイトルを見ても分かるように、習氏の政治手法に反発する勢力と密接な関係があるのでしょう。矢板次長の文章には「反習近平勢力」の主張が色濃く反映されていると考えて間違いありません。
でも、現実はどうでしょうか。習氏は中国共産党の歴代指導者の中で「最弱」ではないでしょう。
取材をすればするほど、細かな事実を知ることができるようになるのですが、大局が見えなくなることがあります。まさに木を見て森を見ずの状態です。私が「専門家」の意見を本気で信じないのは、そういう例をよく見てきたからです。
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