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2018年02月15日
まれに見る稚拙な記事
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本日は、新聞に掲載されたまれに見る稚拙な文章で書かれた記事を紹介します。
悪文の「お手本」と言って良いかもしれません。
実は昨日取り上げた東京新聞の記事「朴前大統領友人 懲役20年」です。http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201802/CK2018021402000137.html
昨日は事件などの記事は否応なしに書き出しが長くなる傾向があることを説明するために、この記事を提示しました。正直に言うと、私はこの記事の最初の一文しか読んでいませんでした。
しかし、後からきちんと読んでみると、取り上げたことを後悔するようなひどい文章でした。
まず指摘したいのは、同じ表現が重複して使われていることです。
本当は全文を掲載したいのですが、著作権の関係上、問題の部分だけ引用します。
本文に「言い渡した」が3回出ています。
「実刑判決を言い渡した」(リード)
「懲役6年を言い渡した」(2段落目)
「実刑を言い渡した」(4段落目)
裁判に関する記事を書くときは、「判決を言い渡した」が繰り返されるのは避けられません。だから、2度ぐらい書くのは仕方がないと思います。
何度も出てくるようであれば、同じ言い回しを避けるために、「判決を下す」「判決が出た」「(懲役刑が妥当だと)判断した」「(被告は懲役刑の)判決を受けた」などを使えば、重複を避けることができます。
特に、この記事であれば、2段落目は「言い渡された」と受け身に変えた方が自然です。
でも、これだけならそれほど私は不快には思いません。
まだあるのです。
「可能性がある」が2カ所あります。これは本当にひどい。
「(ロッテグループ会長への実刑判決は)経営に打撃となる可能性がある」(3段落目)
「(朴槿恵前韓国大統領の親友である)崔被告に実刑を下したことで、収賄罪などに問われる朴被告の公判にも影響する可能性がある」(最終段落)
新聞記事で使われる「可能性がある」は記者にとってはとても便利な言葉です。
将来予想される出来事を書くときに「可能性がある」と書けばほとんどの場合、間違いにはなりません。訂正を回避できる裏技、取材しなくても「ありそうなこと」を安易に書ける魔法のような表現です。
本来なら関係者や識者に取材しないといけません。そして「『実刑判決は経営に大きな打撃となる』(同社幹部)という見方が広がっている」のような書き方をするべきです。
あるいは、せめて韓国メディアが伝える今後の見通しを書くことはできなかったのでしょうか。
この記事を書いた記者はさぼっていたとしか言いようがありません。
いや取材せずとも、日本だってオーナー企業のトップが実刑を受けて不在になれば経営に大きな影響は避けられないと考えるのは当然でしょう。
まして韓国の財閥です。私の偏見かもしれませんが、日本の企業と比べればほとんど独裁体制でしょう。
「経営に打撃となる可能性がある」ではなく、「経営に大きな打撃となる」と書けるはずです。
この記事は、記者が判断するべきことを回避しているように見えます。
同じ日の日本経済新聞は一面の本記では「経営に影響が及ぶ可能性がある」としていますが、アジアBiz面で「韓国ロッテ会長に実刑 トップ不在、長期戦略に影」という見出しで長文の記事を出しています。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26864560T10C18A2FFE000/
日経の記事のリードは次の通りです。
韓国ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン、重光昭夫)会長に13日、実刑判決が下った。控訴審の行方はみえないが、日本事業を率いた兄との経営権争いを経て日韓ロッテを掌握した辛東彬被告の不在。経営混乱が続くロッテはまた、新たな試練に直面した。
非常に明快ですね。
さらに、東京の記事には、動作の並列の「たり」で誤った表現があります。
これは間違いやすいのですが、新聞に載せてはいけません。
該当部分は4段落目で、次の通りです。
起訴状によると、崔被告は朴被告と共謀し、自身が支配する財団にロッテを含む韓国企業から計七百七十四億ウォン(約七十七億円)を拠出させたり、乗馬選手だった娘を支援するため、サムスングループから約束分も含めて四百三十三億ウォンの賄賂などを受け取ったとされた。
動作の並列の「たり」は「〜したり、〜したり」か「〜したりする」という形にしないと誤りです。
このままでは、「拠出させたり、乗馬選手だった娘を支援したりするため」なのか、「ロッテなどから拠出させたり、サムスンから賄賂を受け取ったりした」なのかが分かりません。
文脈からいうと、「拠出させたり、賄賂を受け取ったり」なのでしょう。
私も最初にこのブログの記事を書いた段階で、誤読してしまいました。失礼しました。
こういう間違った読み方をしてしまうから、「たり」を正しく使わないといけないのです。
そもそもこの一文は長すぎます。昨日も指摘した通り、長い文章は分かりにくいのです。
記者だけでなく、この記事に目を通したデスクの力量にも疑問符が付きます。
いくらソウル支局が忙しいとはいえ、これではいけません。
皆さんは、この記事を反面教師にしてください。
ただ、これは東京新聞だけの問題ではありません。
人間のやることですから、他の新聞でも同じようなミスは起きます。
とんでもない誤報がたまに出ることでも分かりますね。
プロでも間違うということを肝に銘じて、「新聞に書いているから正しい」という思い込みは捨ててください。
あらゆることを疑う姿勢が大事です。
引き続き質問をお待ちしています。
下のコメント欄にお書きください。
日中、気になったニュースをリツイートしたり、つぶやいたりしています。
https://twitter.com/sagamimuneo
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昨日は事件などの記事は否応なしに書き出しが長くなる傾向があることを説明するために、この記事を提示しました。正直に言うと、私はこの記事の最初の一文しか読んでいませんでした。
しかし、後からきちんと読んでみると、取り上げたことを後悔するようなひどい文章でした。
まず指摘したいのは、同じ表現が重複して使われていることです。
本当は全文を掲載したいのですが、著作権の関係上、問題の部分だけ引用します。
本文に「言い渡した」が3回出ています。
「実刑判決を言い渡した」(リード)
「懲役6年を言い渡した」(2段落目)
「実刑を言い渡した」(4段落目)
裁判に関する記事を書くときは、「判決を言い渡した」が繰り返されるのは避けられません。だから、2度ぐらい書くのは仕方がないと思います。
何度も出てくるようであれば、同じ言い回しを避けるために、「判決を下す」「判決が出た」「(懲役刑が妥当だと)判断した」「(被告は懲役刑の)判決を受けた」などを使えば、重複を避けることができます。
特に、この記事であれば、2段落目は「言い渡された」と受け身に変えた方が自然です。
でも、これだけならそれほど私は不快には思いません。
まだあるのです。
「可能性がある」が2カ所あります。これは本当にひどい。
「(ロッテグループ会長への実刑判決は)経営に打撃となる可能性がある」(3段落目)
「(朴槿恵前韓国大統領の親友である)崔被告に実刑を下したことで、収賄罪などに問われる朴被告の公判にも影響する可能性がある」(最終段落)
新聞記事で使われる「可能性がある」は記者にとってはとても便利な言葉です。
将来予想される出来事を書くときに「可能性がある」と書けばほとんどの場合、間違いにはなりません。訂正を回避できる裏技、取材しなくても「ありそうなこと」を安易に書ける魔法のような表現です。
本来なら関係者や識者に取材しないといけません。そして「『実刑判決は経営に大きな打撃となる』(同社幹部)という見方が広がっている」のような書き方をするべきです。
あるいは、せめて韓国メディアが伝える今後の見通しを書くことはできなかったのでしょうか。
この記事を書いた記者はさぼっていたとしか言いようがありません。
いや取材せずとも、日本だってオーナー企業のトップが実刑を受けて不在になれば経営に大きな影響は避けられないと考えるのは当然でしょう。
まして韓国の財閥です。私の偏見かもしれませんが、日本の企業と比べればほとんど独裁体制でしょう。
「経営に打撃となる可能性がある」ではなく、「経営に大きな打撃となる」と書けるはずです。
この記事は、記者が判断するべきことを回避しているように見えます。
同じ日の日本経済新聞は一面の本記では「経営に影響が及ぶ可能性がある」としていますが、アジアBiz面で「韓国ロッテ会長に実刑 トップ不在、長期戦略に影」という見出しで長文の記事を出しています。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26864560T10C18A2FFE000/
日経の記事のリードは次の通りです。
韓国ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン、重光昭夫)会長に13日、実刑判決が下った。控訴審の行方はみえないが、日本事業を率いた兄との経営権争いを経て日韓ロッテを掌握した辛東彬被告の不在。経営混乱が続くロッテはまた、新たな試練に直面した。
非常に明快ですね。
さらに、東京の記事には、動作の並列の「たり」で誤った表現があります。
これは間違いやすいのですが、新聞に載せてはいけません。
該当部分は4段落目で、次の通りです。
起訴状によると、崔被告は朴被告と共謀し、自身が支配する財団にロッテを含む韓国企業から計七百七十四億ウォン(約七十七億円)を拠出させたり、乗馬選手だった娘を支援するため、サムスングループから約束分も含めて四百三十三億ウォンの賄賂などを受け取ったとされた。
動作の並列の「たり」は「〜したり、〜したり」か「〜したりする」という形にしないと誤りです。
このままでは、「拠出させたり、乗馬選手だった娘を支援したりするため」なのか、「ロッテなどから拠出させたり、サムスンから賄賂を受け取ったりした」なのかが分かりません。
文脈からいうと、「拠出させたり、賄賂を受け取ったり」なのでしょう。
私も最初にこのブログの記事を書いた段階で、誤読してしまいました。失礼しました。
こういう間違った読み方をしてしまうから、「たり」を正しく使わないといけないのです。
そもそもこの一文は長すぎます。昨日も指摘した通り、長い文章は分かりにくいのです。
記者だけでなく、この記事に目を通したデスクの力量にも疑問符が付きます。
いくらソウル支局が忙しいとはいえ、これではいけません。
皆さんは、この記事を反面教師にしてください。
ただ、これは東京新聞だけの問題ではありません。
人間のやることですから、他の新聞でも同じようなミスは起きます。
とんでもない誤報がたまに出ることでも分かりますね。
プロでも間違うということを肝に銘じて、「新聞に書いているから正しい」という思い込みは捨ててください。
あらゆることを疑う姿勢が大事です。
引き続き質問をお待ちしています。
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