2018年02月13日
文章を上手に見せるこつ
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本日から、新聞記事で使う読みやすい文章表現について解説していきます。
文章のプロである記者が書いたものを、さらに経験の豊富なデスクや他の幹部らがチェックした記事が、新聞には掲載されています。
元から下手くそな文章はあまり載っていません。
ですから、今回の例文も私がこれまでこのブログで書いてきた下手くそな文章を例に挙げようかと思いました。
しかし、このブログの取り柄はその日の新聞記事の解説を盛り込みながら、新聞記事の読み方、書き方を知りたい方に情報を提供することです。なんとか、これからも毎日、例文を新聞から探したいと思っています。
さて、今もお話ししたように新聞記事は一定水準以下の文章は載っていません。それは、チェックするべき箇所を複数の記者がチェックしているからです。
そのチェックするべき箇所を直すと、下手な文章でも意味が通るようになったり、上手に見える文章になったりします。
チェックするべき箇所はいくつかありますが、まず最も分かりやすいものを紹介します。
それは、同じ単語、表現の重複を避けることです。
当然のことながら、日本語には同じ意味の言葉がたくさんあります。
同義語が全くない場合や固有名詞であれば、繰り返さざるを得ないことはあります。しかし、新聞記事程度の長さの文章で、いくつも同じ単語が出てくると稚拙な印象を与えます。
例えば、このブログの文章では、「掲載」「載る」という単語がしばしば登場します。新聞に「掲載」されている記事の紹介をするブログなので当たり前といえば当たり前。今日もこの段落の前までの時点で、「掲載」という単語を使っています。
だから、私はいつもブログの文章を書くときに「『掲載』をよく使うので、別の言葉に置きかえるようにしよう」と心がけています。「掲載」の同義語は「載る」がありますし、文脈によって「書かれている」「記されている」「記載されている」などと置きかえることができます。
学生さんの文章を見ていると、「しかし」「それで」といった接続詞の多用が目に付く傾向があります。同じ接続詞を連発すると非常に見苦しい印象を与えます。「しかし」は「だが」「ところが」「が」などに置きかえられます。「それで」は「だから」「そこで」「また」「さらに」などに言い換えることができるでしょう。
あるいは、接続詞はなくても意味が通じることがよくあります。削除しても意味が通るなら、取ってしまえば良いのです。
では、ここで本日の新聞記事を例に取りましょう。
朝日新聞の総合3面に「韓国、『米朝対話』に失敗」という記事があります。
平昌五輪開幕式出席のために訪韓したペンス米副大統領と北朝鮮の実力者、金与正氏との会談のお膳立てを韓国政府が試みたものの、米朝双方が拒否していたという内容です。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13357001.html
筆者の牧野愛博ソウル支局長は特ダネ記者として有名で、最近の朝鮮半島情勢に関して独自に取材した記事を連日のように出しています。外国のニュースを発表や地元メディアに頼らず執筆し続けるのは大変なことで、敬意を表するに値します。今回の記事もニュースソースは「複数のソウルの情報関係筋」。おそらく、かつて「KCIA」と呼ばれた「国家情報院」という組織の関係者でしょう。あるいは、日本大使館に出稿している日本の公安調査庁などの職員かもしれませんが、今の日韓関係で情報共有はできていないでしょうから、その可能性は低そうです。
本日の産経新聞にも米朝対話が不発に終わった経緯が紹介されていますが、明らかに安倍晋三首相や日本の外務省幹部らが情報源になっているので、韓国や北朝鮮の視点は入っていません。後で触れますが、「えっ?安倍さんたち、本当に大丈夫?」と思わせる記述すらあります。
本題に戻ります。
牧野支局長の文章表現についてですが、ざっと目を通すと、「だが」が2カ所で使われています。リードの「だが、米朝ともに拒み、「南北対話を米朝対話に結びつける」とした韓国の戦略は不発に終わった。」と4段落目の「だが、北朝鮮は、与正氏とペンス氏との会談に関心を示さなかった。米側も北朝鮮との接触を望まなかった。」
この二つの「だが」のうち、一つは「しかし」に置きかえた方が良かったでしょう。ただ、この二つの「だが」の間には2段落の間隔を置いているので、それほど重複が目立つわけでもありませんから、許容範囲だとは思います。
もう一点、私が一読して気付いたことを指摘すると、この記事は2段落目以降を見ると、文末の繰り返しを避ける努力がされています。
2段落目の文末は「利用。」「乗り出した。」「主張。」「訴えた。」です。
「利用した。」「乗り出した。」「主張した。」「訴えた。」と書いて、「した」を繰り返すと小学生の作文のような感じになってしまいます。
「利用」「主張」というように「した」を省略して文章を終わる表現法を「連体止め」といいます。連体形で文章を終える修辞法で、学校でも習ったと思います。連体止めはリズムを整えることができ、歯切れの良い印象を残します。このため、新聞記事では、この連体止めがよく使われます。
ただし、連体止めも頻出するといけません。連続は絶対に回避するべきです。
今回例に挙げた記事でも連体止めが、3カ所で使われています。各段落で使われているほどではないので問題はありません。むしろ、過去形が連続しないようにした工夫の結果といえます。
やはり新聞に出ている記事でおかしな文章を探すのは少し時間がかかりますね。
一つ難点を挙げるとすれば、北朝鮮側がペンス米副大統領との接触を拒んだ理由がはっきりしないことです。北朝鮮は米国との直接交渉によって、現在の独裁体制を認めさせることを目指してきたはずです。外交交渉に不慣れな金与正氏が、トランプ政権内で最も明確に北朝鮮に厳しい態度を取り続けてきたペンス氏に詰め寄られることを嫌ったのでしょうか。
ところで、五輪開幕式をめぐる裏舞台については、産経も書いています。
http://www.sankei.com/world/news/180213/wor1802130013-n1.html
ただし、視点は安倍首相。安倍、ペンス両氏の具体的なかぎかっこ(記事に登場する人物の発言のことを「」でくくるので、取材相手の話した故言葉のことを「かぎかっこ」とよびます)がふんだんに盛り込まれています。
その点では、朝日の記事を凌駕しているとも言えるのですが、あまりにも情報が偏っている印象です。
産経の記事らしく、つっこみどころがたくさんありますが、私が一番気になったのは最後の部分。
北朝鮮の形式的な序列2位の金永南氏を「来賓が席を立ち始めたとき、タイミングを見計らって安倍ら日本政府関係者が一気に取り囲んだ」そうです。この状況描写も、なんだかテレビドラマの一場面のようで、安倍首相を持ち上げている気がしますが、問題は最後の段落。
時間にして10分未満。この時の金永南の対応は一切明かされていないが、ある政府高官は「拉致問題解決に向けた安倍の強い遺志は十分伝わった。金正恩の元にも届くのではないか」と期待を寄せた。
金永南氏はベテラン外交官ですが、あくまで形式上のナンバー2。独裁者である金正恩氏と意思疎通をしっかりできるのは金与正氏です。金永南氏と「10分未満」という短時間話したところで、過去の日朝交渉の繰り返しに過ぎないでしょう。
金与正氏を取り囲まなかったのは、外交儀礼に対する配慮もあったのかもしれませんし、ペンス氏と足並みを揃える必要もあったのかもしれません。
いずれにせよ、安倍首相と金永南氏の短時間の会話が拉致問題解決につながると考えるのは状況判断として甘すぎるでしょう。
産経が「期待を寄せた」と書いていることが記者としての良心が残っていることを感じさせますが、あまりにも安倍首相の訪韓の実績を宣伝しようとする意図に満ちた記事のように思えます。
安倍首相をはじめとする日本政府高官が「拉致問題解決に向けた強い遺志が金正恩の元にも届く」などという幻想を本音では抱いていないことを願っています。
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さて、今もお話ししたように新聞記事は一定水準以下の文章は載っていません。それは、チェックするべき箇所を複数の記者がチェックしているからです。
そのチェックするべき箇所を直すと、下手な文章でも意味が通るようになったり、上手に見える文章になったりします。
チェックするべき箇所はいくつかありますが、まず最も分かりやすいものを紹介します。
それは、同じ単語、表現の重複を避けることです。
当然のことながら、日本語には同じ意味の言葉がたくさんあります。
同義語が全くない場合や固有名詞であれば、繰り返さざるを得ないことはあります。しかし、新聞記事程度の長さの文章で、いくつも同じ単語が出てくると稚拙な印象を与えます。
例えば、このブログの文章では、「掲載」「載る」という単語がしばしば登場します。新聞に「掲載」されている記事の紹介をするブログなので当たり前といえば当たり前。今日もこの段落の前までの時点で、「掲載」という単語を使っています。
だから、私はいつもブログの文章を書くときに「『掲載』をよく使うので、別の言葉に置きかえるようにしよう」と心がけています。「掲載」の同義語は「載る」がありますし、文脈によって「書かれている」「記されている」「記載されている」などと置きかえることができます。
学生さんの文章を見ていると、「しかし」「それで」といった接続詞の多用が目に付く傾向があります。同じ接続詞を連発すると非常に見苦しい印象を与えます。「しかし」は「だが」「ところが」「が」などに置きかえられます。「それで」は「だから」「そこで」「また」「さらに」などに言い換えることができるでしょう。
あるいは、接続詞はなくても意味が通じることがよくあります。削除しても意味が通るなら、取ってしまえば良いのです。
では、ここで本日の新聞記事を例に取りましょう。
朝日新聞の総合3面に「韓国、『米朝対話』に失敗」という記事があります。
平昌五輪開幕式出席のために訪韓したペンス米副大統領と北朝鮮の実力者、金与正氏との会談のお膳立てを韓国政府が試みたものの、米朝双方が拒否していたという内容です。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13357001.html
筆者の牧野愛博ソウル支局長は特ダネ記者として有名で、最近の朝鮮半島情勢に関して独自に取材した記事を連日のように出しています。外国のニュースを発表や地元メディアに頼らず執筆し続けるのは大変なことで、敬意を表するに値します。今回の記事もニュースソースは「複数のソウルの情報関係筋」。おそらく、かつて「KCIA」と呼ばれた「国家情報院」という組織の関係者でしょう。あるいは、日本大使館に出稿している日本の公安調査庁などの職員かもしれませんが、今の日韓関係で情報共有はできていないでしょうから、その可能性は低そうです。
本日の産経新聞にも米朝対話が不発に終わった経緯が紹介されていますが、明らかに安倍晋三首相や日本の外務省幹部らが情報源になっているので、韓国や北朝鮮の視点は入っていません。後で触れますが、「えっ?安倍さんたち、本当に大丈夫?」と思わせる記述すらあります。
本題に戻ります。
牧野支局長の文章表現についてですが、ざっと目を通すと、「だが」が2カ所で使われています。リードの「だが、米朝ともに拒み、「南北対話を米朝対話に結びつける」とした韓国の戦略は不発に終わった。」と4段落目の「だが、北朝鮮は、与正氏とペンス氏との会談に関心を示さなかった。米側も北朝鮮との接触を望まなかった。」
この二つの「だが」のうち、一つは「しかし」に置きかえた方が良かったでしょう。ただ、この二つの「だが」の間には2段落の間隔を置いているので、それほど重複が目立つわけでもありませんから、許容範囲だとは思います。
もう一点、私が一読して気付いたことを指摘すると、この記事は2段落目以降を見ると、文末の繰り返しを避ける努力がされています。
2段落目の文末は「利用。」「乗り出した。」「主張。」「訴えた。」です。
「利用した。」「乗り出した。」「主張した。」「訴えた。」と書いて、「した」を繰り返すと小学生の作文のような感じになってしまいます。
「利用」「主張」というように「した」を省略して文章を終わる表現法を「連体止め」といいます。連体形で文章を終える修辞法で、学校でも習ったと思います。連体止めはリズムを整えることができ、歯切れの良い印象を残します。このため、新聞記事では、この連体止めがよく使われます。
ただし、連体止めも頻出するといけません。連続は絶対に回避するべきです。
今回例に挙げた記事でも連体止めが、3カ所で使われています。各段落で使われているほどではないので問題はありません。むしろ、過去形が連続しないようにした工夫の結果といえます。
やはり新聞に出ている記事でおかしな文章を探すのは少し時間がかかりますね。
一つ難点を挙げるとすれば、北朝鮮側がペンス米副大統領との接触を拒んだ理由がはっきりしないことです。北朝鮮は米国との直接交渉によって、現在の独裁体制を認めさせることを目指してきたはずです。外交交渉に不慣れな金与正氏が、トランプ政権内で最も明確に北朝鮮に厳しい態度を取り続けてきたペンス氏に詰め寄られることを嫌ったのでしょうか。
ところで、五輪開幕式をめぐる裏舞台については、産経も書いています。
http://www.sankei.com/world/news/180213/wor1802130013-n1.html
ただし、視点は安倍首相。安倍、ペンス両氏の具体的なかぎかっこ(記事に登場する人物の発言のことを「」でくくるので、取材相手の話した故言葉のことを「かぎかっこ」とよびます)がふんだんに盛り込まれています。
その点では、朝日の記事を凌駕しているとも言えるのですが、あまりにも情報が偏っている印象です。
産経の記事らしく、つっこみどころがたくさんありますが、私が一番気になったのは最後の部分。
北朝鮮の形式的な序列2位の金永南氏を「来賓が席を立ち始めたとき、タイミングを見計らって安倍ら日本政府関係者が一気に取り囲んだ」そうです。この状況描写も、なんだかテレビドラマの一場面のようで、安倍首相を持ち上げている気がしますが、問題は最後の段落。
時間にして10分未満。この時の金永南の対応は一切明かされていないが、ある政府高官は「拉致問題解決に向けた安倍の強い遺志は十分伝わった。金正恩の元にも届くのではないか」と期待を寄せた。
金永南氏はベテラン外交官ですが、あくまで形式上のナンバー2。独裁者である金正恩氏と意思疎通をしっかりできるのは金与正氏です。金永南氏と「10分未満」という短時間話したところで、過去の日朝交渉の繰り返しに過ぎないでしょう。
金与正氏を取り囲まなかったのは、外交儀礼に対する配慮もあったのかもしれませんし、ペンス氏と足並みを揃える必要もあったのかもしれません。
いずれにせよ、安倍首相と金永南氏の短時間の会話が拉致問題解決につながると考えるのは状況判断として甘すぎるでしょう。
産経が「期待を寄せた」と書いていることが記者としての良心が残っていることを感じさせますが、あまりにも安倍首相の訪韓の実績を宣伝しようとする意図に満ちた記事のように思えます。
安倍首相をはじめとする日本政府高官が「拉致問題解決に向けた強い遺志が金正恩の元にも届く」などという幻想を本音では抱いていないことを願っています。
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