2018年05月20日
安易に「包囲網」を使う産経
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昨日、北朝鮮問題で日本メディアは安易に「包囲網」という言葉を使うと指摘しました。
本日の産経新聞一面にも「韓国、米B52と訓練見送り 米紙 北に配慮 包囲網影響も」という見出しが出ています。韓国政府が今月、米軍のB52戦略爆撃機との共同訓練への参加を見送っていたそうです。「米朝首脳会談を前に北朝鮮を刺激し、緊張が高まる事態を韓国政府が懸念した(と米紙が伝えている)」「韓国の文在寅政権による北朝鮮への配慮姿勢が改めて表面化したことで、対北包囲網への悪影響も懸念されそうだ」と書いています。
文政権が北朝鮮に融和的なのは今に始まったことではありません。だから、「改めて」という言葉が使われています。この「改めて」に続けて、「包囲網への悪影響も懸念されそうだ」と少し不自然な表現で見通しを書いています。「懸念されそうだ」と言うのは「批判が出そうだ」などに類似した表現です。「懸念される」と断言を避け、「悪影響が」ではなく「悪影響も」という少しぼかした感じでかなり弱い観測の伝え方です。おそらくこの記事を書いた記者は本心では「包囲網への悪影響を懸念」していないのでしょう。社論に配慮して「懸念されそうだ」を無理にくっつけた感じがします。サラリーマンはお気の毒です。
新聞で「包囲網」が使われるのは北朝鮮に限りません。
5月17日の朝日新聞朝刊に掲載された吉岡桂子編集委員のコラム「これからの日中関係 包囲網と崩壊論を超えて」によると、全国紙で「中国包囲網」という言葉が1990年以降に登場した頻度を見ると、産経が断トツで多く216本、以下日経、読売、朝日、毎日がそれぞれ129、108、106、82本だそうです。
吉岡編集委員は「台頭する中国を牽制するため、日本が中国以外の国との関係を深める動きとして用いられる場合が多い。ただ、1年前からバンコクに駐在し、アジア各地で実感するのは『包囲網』のむなしさだ」と指摘します。「日本の好感度」が高くても、各国は国益に合っているかどうかで行動しており、「反中親日、親中反日といった単純な色分けでは語りきれない」のだそうです。それは当然でしょう。産経ばかり読んでいると、北朝鮮や中国に対する「包囲網」が着々とつくられていると考えていた人がいるかもしれませんが、世界は産経が書くほど単純ではありません。
昨日のブログの話を続けると、中国は大国ですから、包囲網をつくるとすれば網の目は粗くても大丈夫ですが、相当に頑丈なものでなければなりません。驚異的なスピードで急速に成長する巨大な鯨を網で捕まえようとすることを想像してください。「強靱な網」が簡単に実現できるのであれば、巨鯨の捕獲に協力しようとする人は多いでしょうが、現実には存在しない新素材の開発を前提にしていれば夢物語です。
産経が書くような「中国包囲網」構想に話を合わせても、本気で「日本は正しく、中国は間違っている」「日本は好きだが、中国は嫌い」という善悪や好悪の基準で外交方針を決める国はほとんど存在しません。どの国も「自分たちに得か損か」が判断基準です。
そもそもすでに安倍政権が「中国包囲網」の店じまいを始めています。「中国包囲網」として「インド太平洋戦略」を呼び掛けたはずなのに、安倍晋三首相は李克強首相の訪日を熱心に働き掛け、自身の早期訪中と来年の習近平国家主席の訪日を目指しています。19日に閉幕した島サミットの基調演説で、安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋戦略」という表現を使いませんでした(首脳宣言には「インド太平洋戦略」が明記)。この安倍首相の対応は産経の主張に従えば、「包囲網への悪影響も懸念されそうだ」ということにならないのでしょうか。
日本の新聞が「包囲網」という言葉を使っていたら、「またか」と冷ややかに見ることが適切な対応だと私は考えています。
引き続き質問をお待ちしています。
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文政権が北朝鮮に融和的なのは今に始まったことではありません。だから、「改めて」という言葉が使われています。この「改めて」に続けて、「包囲網への悪影響も懸念されそうだ」と少し不自然な表現で見通しを書いています。「懸念されそうだ」と言うのは「批判が出そうだ」などに類似した表現です。「懸念される」と断言を避け、「悪影響が」ではなく「悪影響も」という少しぼかした感じでかなり弱い観測の伝え方です。おそらくこの記事を書いた記者は本心では「包囲網への悪影響を懸念」していないのでしょう。社論に配慮して「懸念されそうだ」を無理にくっつけた感じがします。サラリーマンはお気の毒です。
新聞で「包囲網」が使われるのは北朝鮮に限りません。
5月17日の朝日新聞朝刊に掲載された吉岡桂子編集委員のコラム「これからの日中関係 包囲網と崩壊論を超えて」によると、全国紙で「中国包囲網」という言葉が1990年以降に登場した頻度を見ると、産経が断トツで多く216本、以下日経、読売、朝日、毎日がそれぞれ129、108、106、82本だそうです。
吉岡編集委員は「台頭する中国を牽制するため、日本が中国以外の国との関係を深める動きとして用いられる場合が多い。ただ、1年前からバンコクに駐在し、アジア各地で実感するのは『包囲網』のむなしさだ」と指摘します。「日本の好感度」が高くても、各国は国益に合っているかどうかで行動しており、「反中親日、親中反日といった単純な色分けでは語りきれない」のだそうです。それは当然でしょう。産経ばかり読んでいると、北朝鮮や中国に対する「包囲網」が着々とつくられていると考えていた人がいるかもしれませんが、世界は産経が書くほど単純ではありません。
昨日のブログの話を続けると、中国は大国ですから、包囲網をつくるとすれば網の目は粗くても大丈夫ですが、相当に頑丈なものでなければなりません。驚異的なスピードで急速に成長する巨大な鯨を網で捕まえようとすることを想像してください。「強靱な網」が簡単に実現できるのであれば、巨鯨の捕獲に協力しようとする人は多いでしょうが、現実には存在しない新素材の開発を前提にしていれば夢物語です。
産経が書くような「中国包囲網」構想に話を合わせても、本気で「日本は正しく、中国は間違っている」「日本は好きだが、中国は嫌い」という善悪や好悪の基準で外交方針を決める国はほとんど存在しません。どの国も「自分たちに得か損か」が判断基準です。
そもそもすでに安倍政権が「中国包囲網」の店じまいを始めています。「中国包囲網」として「インド太平洋戦略」を呼び掛けたはずなのに、安倍晋三首相は李克強首相の訪日を熱心に働き掛け、自身の早期訪中と来年の習近平国家主席の訪日を目指しています。19日に閉幕した島サミットの基調演説で、安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋戦略」という表現を使いませんでした(首脳宣言には「インド太平洋戦略」が明記)。この安倍首相の対応は産経の主張に従えば、「包囲網への悪影響も懸念されそうだ」ということにならないのでしょうか。
日本の新聞が「包囲網」という言葉を使っていたら、「またか」と冷ややかに見ることが適切な対応だと私は考えています。
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