2021年02月12日

模擬授業

卒業生のA君がやってきて、模擬授業をした。
来年度の採用が決まっている若者で、教科が数学だったので、教科で模擬授業を評価することにしたのだ。

A君は私の教え子である。
中学時代は野球部で活躍した生徒である。
高校は系列校に転校してしまったが、とても感じの良い生徒だった。

肘が痛いと言えば、良いと評判の整体に新幹線に乗ってでも連れて行った。
人生を語り、いろいろなことを教えた。

中2、3のときは、私が担任でもあったのだ。

中2の1月。野球部でスキーに出掛けた。
そのとき、A君はアイスバーンになった斜面で一回転し、足の骨を折った。

その後手術が何度かあり、私は何度も病院に通った。
たくさんのビデオメッセージも作って送った。
結局中3の最後の夏の大会は、足にはボルトが入ったままで、任せていたキャッチャーをやらせることができなかった。

その後しばらくスキーには行けなかった。

そんなA君が、大学を卒業し、7年ぶりに戻ってきたのだ。

模擬授業は素晴らしかった。

先生方の評価も高かった。
「明日から、私と変わって欲しい」とさえ言う先生も何人もいた。

「何となく、丹澤先生の授業と似ていますよね。」
という先生もいて、私は思わず吹き出した。

私は、A君を余り教えていたかった。
彼は、私の担当クラスではなかったのだ。

私は、何だか涙が止まらなかった。

「戻ってきてくれてありがとう。」
という感謝の気持ちがぐっと湧いてきたのだろう。

私にとっては、A君の授業などどうでもいい。
おかしな授業をするとは思っていなかったからだ。

そんなことよりも、戻ってきたことが嬉しくて嬉しくて、ただただ感動。

もうこれで、私もいつでも引退できる。

授業後、「こうやって板書を消すんだよ」、と実際にやって見せた。

「じゃあ、また…。」

大して話をすることもなく、その日は別れた。

また会える日が来るのだろう…。

多くを語らなくとも、A君には私の気持ちが伝わっているに違いない。




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