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2018年09月29日

返却された背番号

合同チームを組んでいるO先生のクラスにはA君という不登校の生徒がいる。
中一の頃から不登校傾向が続き、今ではほとんど学校に来られない状況。
だから、週に一度、先生たちが家庭訪問し、学校まで連れてくる。

不登校の原因は、複雑なご家庭事情。
祖母に育てられ、両親とは一緒に暮らしていないそうだ。
思春期になり、状況が理解できるようになっても、「両親に捨てられた」と思っているのだろう。
こうした特殊な経験は、どうしても社会性の面で不適応を起こしてしまう。

学校に来ても、保健室で過ごし、給食を食べて帰っていく。
公立学校なら、これで登校扱いになる。

実は、A君は野球部員でもあり、今回の新人戦でも背番号を与えていた。

いよいよ、明日が新人戦という日に、家庭訪問の保健室登校。その時、背番号が本人に渡された。
しかし、A君は背番号を受け取らなかったようだ。

野球はそこそこ上手で、「野球には自信を持てるから。」、との配慮で、練習にも出てきていないA君に背番号、しかもチームの末尾でない番号をきめたのだが、その背番号をつけて、学校に来ることはなかった。

O先生が、試合前日、職員室に戻ると、先生の机の上に、A君に渡した背番号が置かれていたそうだ。

机の上の背番号がすべてを語っている。

試合当日、O先生が興奮気味に、事のいきさつを話したことも納得できる。

「でも、わざわざ背番号をO先生の机の上に置かなくてもいいんじゃないの?A君が自分で返した訳じゃないでしょ。」
と同情した。
「家庭訪問に行った先生が、置いたのだと思います。」
とO先生。

野球の世界にとって、背番号には重みがある。
その番号で、どのポジションかも分かるし、レギュラーかどうか、上手下手までがその番号に象徴されてしまう、とても大切なものだ。
私は、それを、机の上にそっくり置いてしまうというのも、配慮が足りないのではないか、と思った。
その背番号を見たときの、O先生のショックはいかばかりか…。

「A君、『いつか、いろいろな人の助けてくれていたんだなぁ』と、気づきといいですね。」
私はO先生を励ますつもりで、声をかけ続けた。

「生徒の事を真剣に悩むっていうのは、苦しいけど、教員にとってとても大切な経験なんですよ。その経験が、五年、十年、二十年後に必ず効いてくるです。」

O先生が立ち直るまで、今しばらく時間がかかりそうだ。

生徒の事を本気で、考え、寄り添おうとするのが教師だ。仕事だからそうするのではない。本気で、生徒たちを育てたいと思う心が、そうさせるのだ。だから教師の仕事は、時間の切り売りであってはいけないし、サラリーマンのような感覚でもいけないと思う。
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