2020年10月05日
カープの選手の「絆」はどこへ行ったのか?
カープ野球はどこへ行った?【川口和久のスクリューボール】
10/5(月) 10:00
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週刊ベースボールONLINE
慶彦さんの怒り
マウンドでの広島・遠藤。誰かに声を掛けてほしかった
いきなりマイクのスイッチを切ると、俺のほうに顔を近づけ、小さな声で言った。
「カワ、おかしくないか」
慶彦さんの目の中に、怒りの火がチラついていた──。
9月21日から東京ドームでカープが巨人に3連敗をしたが、俺はその2戦目、22日の試合で、カープの先輩・高橋慶彦さんと一緒にレジェンド解説(ドーム内だけのOB特別解説)をした。先発は巨人が菅野智之、広島が3年目の遠藤淳志。注目は菅野の開幕12連勝なるかだった。
巨人が2点先制した後、4回表に丸佳浩の人的補償で巨人から広島に移籍した長野久義が3ラン。菅野が珍しく弱気になり、2ボール1ストライクから甘いスライダーを投げ打たれた。
緊迫感もあっていい試合だった。慶彦さんは現役時代からかわいがってくれた先輩。武勇伝もたくさんある人なので、2人で昔話も交えながら楽しく解説をしていた。
その裏、遠藤がピンチ。二死ながら連続四球で満塁となり、打者・菅野に対し、ボールが2つ先行した。俺は「あれ?」と思った。慶彦さんをチラリと見たら、イライラしているのが分かる。その後、3ボール0ストライク。これはおかしいだろ。断っておくが、遠藤じゃないよ。
その後が冒頭のシーンだ。そして慶彦さんは声を潜めながら続けた。
「誰も声を掛けないぞ。このチーム、どうなっているんだ!」
そう、新米の遠藤のピンチなのに、内野手が誰も行かないんだ。マウンドまで行かないだけじゃなく、二、三歩出て声を掛ける選手もいない。皆、知らん顔をしていた。
ナインは家族
強烈な違和感があった。若手投手がピンチになったら、先輩野手が一言でも声を掛けにいくのがチームじゃないか。特にカープは、伝統的にそういうところがしっかりしていた。
別に激励の優しい言葉じゃなくていい。俺がカープ時代、ストライクが入らなくなってピンチになると、まずショートから慶彦さんが来て怒り口調で言う。
「おい、カワ、何やってんだよ。もういいから打たせちゃえ」
その後、衣笠祥雄さんもサードから来て、
「おい、ストライクを投げろよ」
と面倒臭そうに言う。
でも、それで分かる。2人が俺を心配してくれていることが。こっちの心もスッと楽になる。
現役時代、カープでもジャイアンツでもそうだったが、俺はグラウンドにいる選手はみんな一軒の家にいる家族だと思っていた。特にダイヤモンドにいる6人は声も聞こえるし、表情もよく見える。家族に守られているような気がしていて投げていた。
菅野は三振でチェンジになったが、慶彦さんは「これじゃ、カープは勝てないな」と寂しそうにつぶやいた。
いま、観客が半分までOKになったが、歓声はなく拍手だけだ。だから大観衆の大歓声の中にいれば、もみ消されたものが見える。今回のようなことはもしかして、昨年までもあって、それに俺が気づかなかったのかもしれない。
ただ、あのとき広島の内野陣は、静まり返ったマウンドで若造の遠藤を孤独にさせた。それがたまらなく寂しかった。
慶彦さんはこうも言った。
「みんなが他人みたいだね。家族じゃないんか!」
カープの野球はどこへ行ったんだろう。
週刊ベースボール
この記事を読んだ時にドリヨシはハッとしました。そう言えば、今シーズン、投手がピンチの時、周りの内野手がどれだけ投手の所に歩み寄り、励ましの声をかけていたかと考えると、そんなになかったのではないかと思います。
高橋慶彦さんはカープ黄金期を支えたショートのレジェンドです。ドリヨシが幼少期だったカープの黄金期の内野手は、その慶彦さんや衣笠さんら内野手の皆さんが、投手がピンチの時によくマウンドに集まったり、個別に投手に声をかけたりするシーンが多かったと記憶しています。
2016年からカープはリーグ3連覇しましたが、その代償として、チーム内の「絆」が薄くなってしまったのかもしれません。もし投手同士、野手同士、投手と野手の間の信頼関係に亀裂が入っていたならば、大変な事です。
高橋慶彦さんが東京ドームの試合の中で、違和感を感じられただけに、チーム内で不協和音が発生していないか、ドリヨシも心配になってきました。こんな状態をプラスに持っていくためには、監督、コーチの首脳陣がうまく調整する必要がありますね。しかし、今の監督、コーチ陣にそんな能力、手腕があるでしょうか。厳しい事を言うようですが、もし今季カープがリーグ最下位に甘んじた暁には、監督、コーチ陣の総辞職もありだと思います。
公式戦は残り30試合です。カープの首脳陣、選手の皆さんはこの30試合に全力を注いで欲しいと思います。チームの「絆」を確認し、それを確かめつつ、我々ファンに最高の雰囲気を見せてくれれば、来季の栄冠につながっていくのではないでしょうか。
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家族じゃないんか!…確かにそうですよね。
監督等の首脳陣との確執がそうさせてるならもう辞めて欲しい。
来季もこれは耐えがたい。
こんなんじゃダメだ。