2012年12月24日
白き部屋の記録46
胸に菌が生えた
ガン病棟である。肺がんであると云う奥田さん七十才、指物師であったという人、小柄な奥さんと娘さんで看病している。
動いてはいけない人なのに、背中を丸めては両手をついて猫のように立ち上がるので油断が出来ない。
一寸も目が離せないので二人してついているのだと、ベッドから降りてトイレに行こうとするのだ。
余り苦痛はないようだけれど末期なので、モヒ注射を打っている。それで痛みを感じないのかも知れない。痛いと云うのを聞いた事がない。
奥田さんは時時面白い事を云う。
「胸に菌が生えたよ母ちゃん。」
「腹ん中を魚が三匹泳いでいるよ母ちゃん。」
「馬も三疋いるよ腹ん中だ。」
モヒ注射のせいかしら。
ガン病棟である。肺がんであると云う奥田さん七十才、指物師であったという人、小柄な奥さんと娘さんで看病している。
動いてはいけない人なのに、背中を丸めては両手をついて猫のように立ち上がるので油断が出来ない。
一寸も目が離せないので二人してついているのだと、ベッドから降りてトイレに行こうとするのだ。
余り苦痛はないようだけれど末期なので、モヒ注射を打っている。それで痛みを感じないのかも知れない。痛いと云うのを聞いた事がない。
奥田さんは時時面白い事を云う。
「胸に菌が生えたよ母ちゃん。」
「腹ん中を魚が三匹泳いでいるよ母ちゃん。」
「馬も三疋いるよ腹ん中だ。」
モヒ注射のせいかしら。