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白き部屋の記録35

鳩ポッポお婆ちゃん

ポッポッポ ハトポッポ

マメガホシイカソラヤルゾ

ミンナデナカヨクタベニコイ

ポッポッポ ハトポッポ

マメガホシイカ・・・・・・・

ナニカチョウダイヨー チョウダイヨー

チョウダーイと喚く声

続いて何を云っているのかわからないがまるで牛のような声、ほえるような低い声。

向かいの病室である。

おかめ美人の若い付添さんがドアを開け「オダンゴタベナイ」と誘う。

遠慮なしに入ってみると、何と小柄な可愛いお婆ちゃんである、ドラ声の主とは思えない。

元英語の先生であったと云う、牛のほえるように聞こえたのはその英語をしゃべっていたのだと云う、脳軟化になっても昔の記憶ははっきりしているものだと聞いているが、このお婆ちゃん、口で云うのがもどかしくなると、紙に英文で用事を書くのだと云う、新制中学出の付添さんは負けずに横文字でイエスと書く。

それを見たお婆ちゃん「字下手だね」と。

食べた事をすぐ忘れるお婆ちゃん、付添さんは何時もオセンべを細かく千切って用意しておく、チョーダイヨーが始まると口に入れてあげる、一寸留守にすると先のようにチョーダイヨーチョウダイと喚くのです。

「英語の先生であろうと無学であろうと、婆さんになれば元元(もともと)さ、只の婆さんよ。」と付添さん。

白き部屋の記録34

杏の木

昔昔中国の医者で病気全快の度に杏の木を一本づつ患者から貰い、それを治療費にしていた人がいたと云う。

杏の木のたくさんある病院である。

手術を受けた友人に頼まれて、この病院に来ました。

或る日真紅の花を手にフカフカの毛のコートを着たお嬢さんが見舞いに見えました。

大きな瞳、貴族的な面立ちの人である。

「私二郎さんの友人でございます。」わが友Aさんは軽く頷いている、話に聞いていた息子さんのフィアンセであるらしい。

背の高いハンサムな二郎君にお似合いの人と見る。

大学で一緒であったと云う、豪邸にお父様と二人住まいであると云うこの人には孤独な影がただよう、真紅の花を壷に生け、ソファーに掛けている細細とした姿、名は梨可さん。

杏の木の間を白いベンツが廻るように門外へ、梨可さんのお帰へりです。

白き部屋の記録33

五人の男

足を折った五人の男が、それぞれに右足を包帯し、台の上に足を上げて寝ている。

一種壮観である。六人部屋。

工事現場で働いていた人達であると云う。

中の一人五十才位の人は巻いた包帯も人の倍位大きい、当木をしてあるらしい。

クレーンからおちて来た鉄骨に足を砕かれ秒の差で体もやられる処であったと云う。

足の骨はめちゃめちゃになっていると云う。

奥さんと息子さんと二人で面倒を見ている。

五人は大声で話をし大声で笑い、てんでにテレビを持込み音を出しててんでに見ていて賑やかな事。

老人部屋や結核病棟とは大異いである。

私の患者さんは四十二才、歩いてはいけないと云うのに一人でトイレに行く、「おかしくて、ベッドで小便垂れられるかい。」と、体もさっさと自分で拭いてしまう。

これでは私の出る幕はないので、ナースに話をし止めることにしました。

白き部屋の記録32

付添さん4

買物車に鍋釜積んで病室に来たのは七十才位の夜勤の人、鍋釜持った人を見るのははじめて、「病院で鍋釜は入りません、すぐ始末して下さい。」看護婦さんに怒られる。

この方入って来るなりべらべらと喋りつづけているのです、喋り病とでも云いたい位。

脳軟化のお翁さんが、まわらぬ舌で「オシッコ、オシッコ」と云っているのに聞こえないらしい、ベッドの脇の椅子に腰掛けて喋っているのです。

次の日病院に行くとこの人は居りません。

一晩で病院から断はられたのだと云う。

オチョボ口に口紅をつけてお化粧をして、真白い顔をして寝巻きを着て(夜勤は昼のまま寝る)寝る処を看護婦さんに見られたのだと、もう一人の夜勤さんが云いました。

その寝化粧の品名は「マックスファクターなのよ。」と七十才のお婆ちゃんは云ってましたと。
   
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