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白き部屋の記録48

死を待つ人

私の患者さんは直腸ガン、もう末期の人である。

3ヵ月前から口もきかず食事もとらず、上を向いたまま寝て居て、只息をしていると云うだけの人、二十四時間点滴の為生きていると云うだけで目はもう死んでいるように動かない。

そ〜っと清拭をする、じょく瘡は大きくもう治療しようもない、看護婦さんは毎日ガーゼを取替えてくれるだけ。まだ四十代だと云うのに老人のように見える。

体格のいい人だったと奥さんは云う、顔は細く、並の人の半分ほどの顔巾しかない。

奥さんは亡くなった後の生活の事をあれこれと考へていると云う、「三人の子供が居るのです、働かなくては。」と度度繰返へす。

それは自分の勇気を振起こす為のように、自分に云いきかせているように聞こえるのです。暫くしてこの方は亡くなりました。
   
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