2013年12月18日
「戦いの原則−人間関係学から組織運営の妙まで」 大橋武夫
本書は戦中は参謀として中国戦線で活躍し、戦後は「兵法経営論」をもって活躍した大橋武夫のものである。「戦争論」「孫子」といった世界各国の兵法書のエッセンスを各兵法書ごとにまとめてある。およそ兵法書というものは必然的にその内容は似通ってくるものである。だから、素人が兵法書から何かを得ようと思えば難解な漢文や専門用語が湧いている専門書を読むよりかは、こういった兵法に通暁した人がまとめ上げた入門書を読むほうがはるかにいい。
著者は無数にある兵法書のうち、我々が読むべきは「孫子」「君主論」「政略論」「戦争論」「統帥綱領」「統帥参考」「作戦要務令」であるとする。そしてリーダー論、統率論を補完するものとして「論語」「孟子」「老子」「荘子」「荀子」「韓非子」を、謀略・策略の補完として「戦国策」「三十六計」「鬼谷子」、兵法の特異な部門として「闘戦経」「呉子」「蔚繚子」「六韜」「三略」を挙げている。
内容としては各兵法書が各章をなしており、各章は「一、戦わずして勝つ」といったその書からの引用・解説・実例のパートで構成されている。著者の根が軍人・経営者とどちらも戦略思考を要する職であるためか、引いてくる実例や解説どれにも無駄がない。兵法をビジネスに応用するといった試みの本はたいてい実例の点で陳腐さが露呈するものが多い。この著者はさらに、各パートごとに、その教えと関連する他書や軍人の言葉の引用まで付けているので理解が進む。
全体の内容としては著者の言うとおり、「孫子」や「戦争論」といった前半の「読むべき」兵法書の方に重きが置かれ、内容も十分なものとなっている。「戦争論」の要約としてこれほど的確にまとめ上げたものはなく、また戦前の日本の「統帥綱領・参考」「作戦要務令」を紹介するものは少ないので貴重である。
個人的には「作戦要務令」の「四、指揮の要訣は、部下を掌握しながらも、独断活用の余地を与うにあり」の項で自身の工場で増員したにもかかわらず生産が減ってしまった時の対処で「作戦要務令」に立ち返り、部下の掌握について幹部に反省を促したエピソードや、「三十六計」にある大兵団の参謀経験者は三十六計は児戯に等しいと顧みぬが、第一線の部隊長では三十六計を妙計とする人がいたといったエピソードには生々しさがあり未だ「実学」として通用する「兵法」を感じた。
兵法を実践しようとする人にはこの本一冊で十分である。
大橋武夫 兵法 経営論
著者は無数にある兵法書のうち、我々が読むべきは「孫子」「君主論」「政略論」「戦争論」「統帥綱領」「統帥参考」「作戦要務令」であるとする。そしてリーダー論、統率論を補完するものとして「論語」「孟子」「老子」「荘子」「荀子」「韓非子」を、謀略・策略の補完として「戦国策」「三十六計」「鬼谷子」、兵法の特異な部門として「闘戦経」「呉子」「蔚繚子」「六韜」「三略」を挙げている。
内容としては各兵法書が各章をなしており、各章は「一、戦わずして勝つ」といったその書からの引用・解説・実例のパートで構成されている。著者の根が軍人・経営者とどちらも戦略思考を要する職であるためか、引いてくる実例や解説どれにも無駄がない。兵法をビジネスに応用するといった試みの本はたいてい実例の点で陳腐さが露呈するものが多い。この著者はさらに、各パートごとに、その教えと関連する他書や軍人の言葉の引用まで付けているので理解が進む。
全体の内容としては著者の言うとおり、「孫子」や「戦争論」といった前半の「読むべき」兵法書の方に重きが置かれ、内容も十分なものとなっている。「戦争論」の要約としてこれほど的確にまとめ上げたものはなく、また戦前の日本の「統帥綱領・参考」「作戦要務令」を紹介するものは少ないので貴重である。
個人的には「作戦要務令」の「四、指揮の要訣は、部下を掌握しながらも、独断活用の余地を与うにあり」の項で自身の工場で増員したにもかかわらず生産が減ってしまった時の対処で「作戦要務令」に立ち返り、部下の掌握について幹部に反省を促したエピソードや、「三十六計」にある大兵団の参謀経験者は三十六計は児戯に等しいと顧みぬが、第一線の部隊長では三十六計を妙計とする人がいたといったエピソードには生々しさがあり未だ「実学」として通用する「兵法」を感じた。
兵法を実践しようとする人にはこの本一冊で十分である。
大橋武夫 兵法 経営論