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2016年05月29日
ロボットやAIに人間の仕事が奪われる【テクノ失業の恐怖】
(日刊SPA!)
ロボットが人間の仕事を奪う――そんなフレーズを聞いたことがあるだろう。
人間の歴史では、テクノロジーの進化によって人が仕事を奪われるというシーンが繰り返されてきた。18〜19世紀の産業革命では、機械化によって農民や手工業者が失業し、1960年代のオートメーション化でも、多くの工場労働者が職を失っている。
そして最近、盛んに言われているのが「テクノ失業」だ。コンピュータやインターネット、さらには今後の普及が予想されるロボットやAI(人工知能)の登場で、単純労働者のみならず知的労働者の仕事までもがテクノロジーに取って代わられる――そんな恐怖のシナリオが、現実になりつつある。
野村総研の試算によると、国内の601種類の職業のうち、実に49%が10〜20年のうちにAIやロボットで置き換えることが可能だという。そこに待ち構えるのは、どんな未来なのだろうか……?
◆アメリカではすでにテクノ失業が進行中
IT先進国のアメリカでは、すでに「テクノ失業」が社会問題になっている……と話すのは、25年間の滞米経験を持つジャーナリストの堀田佳男氏。
「オバマ政権下では失業率が減少したかのように喧伝されているアメリカですが、職業安定所への登録がないために捕捉されていない失業者も多く、実態としては25歳〜54歳の働き盛りの男性の10%前後が失業者だと言われます。その主要因と考えられるのが『テクノ失業』なのです」
レイオフ(一時解雇)という建前でのクビが横行するアメリカでは、コスト削減のために人間を機械に置き換えるなど日常茶飯事。
「例えばテラーと呼ばれる銀行の窓口業務は、ネットバンキングに移行しつつあり、全米のテラー数は’01年〜’09年にかけて約70万人も減少しました。また、同じ時期に、製造業でもロボットの導入などによって約270万人の職が奪われています」
さらに、今後大量の失業者が出ると見られているのが「トラック運転手」だ。
「アメリカではトラックの運転手が約290万人もおり、男性の間では最も雇用者数の多い職業。昨今話題になっている“自動運転車”が与える影響は計り知れません。もちろん、長距離トラックがいきなり無人化されたりはしないでしょうが、まずは空港や物流ターミナルなど、広大な敷地内での運搬に携わる車から無人化されていくはずです。同様に、決まった路線を走る公共バスも無人化のターゲットになるでしょうね」
◆最初から人間を雇わない企業も……
「2018年には成長企業の45%でマシンの数が従業員数を上回るとされています」と話すのは、国際大学GLOCOM客員研究員の林雅之氏。
「今後設立されるスタートアップ企業では、最初から人間の代わりに知能や自己学習機能を備えたマシンを導入するところが増えていくでしょう。結局、企業にとって人を雇うのは、時間とコスト、そしてリスクがともないますからね」
大企業にも変革の兆しはある。
「2014年に、みずほ銀行がIBMの質問応答システムWatsonをコールセンターに導入したのは象徴的な出来事でした。日本企業の中でも、金融は多くの規制に守られている業界の一つです。そこが、あえて多額を投じてWatsonを導入したわけですから、その危機感には並ならぬものが感じられます」
もっとも「AIやロボットは人間の仕事を奪う」と一概に考えるわけにもいかない。先ごろ、経済産業省が発表した「新産業構造ビジョン(中間整理)」では、むしろAIやロボットによる代替を積極的に進めていかないと、国際競争力で負けた日本は市場を喪失し、かえって多くの失業者を生む……とするシナリオが説明されている。
◆クリエイティブ職は激減!?
ロボットやAIに仕事を奪われるのは、専門性のない単純労働が中心と思われがちだが「むしろ単純労働こそが人間にとって最後の牙城となる」と予言するのは経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏。
「コンビニの店員の場合、レジ係はともかく、商品の梱包を解いて陳列して……といった細々とした作業は意外とロボット化しにくいため、当面は人間のほうがコストを抑えることができます。一方、世間的にクリエイティブと思われている職種ほど、実はAIへの置き換えが容易だったりする」
例えば、ネット発のドラマとして世界中でヒットしている『ハウス・オブ・カード』は、ビッグデータを活用して、監督や主演俳優などに“ウケる要素”を詰め込み、まんまと成功したことで知られる。
「そうなると、いわゆる“アイデアマン”的なプランナーはもはや必要なくなります。同様に、作曲の分野でも、人間よりAIのほうがヒットを生み出しやすくなるでしょう。作曲には規則性があるので、“ウケるメロディ”をデータからパターン化するのは難しいことではありません」
◆来る「テクノ失業時代」をサバイブするには ……
こうしたメディアに溢れる悲観論を鵜呑みにする必要はない――と断言するのは、AI研究の第一人者である野村直之氏。
「ここ最近、AIに起きたブレイクスルーとは次のようなものです。約1400万枚の画像の中の物の名前をAIに覚えさせていったところ、ある時点から、まったく新しい画像も含めてそれが何かをAIが自分で判別できるようになった。これ自体は大きな飛躍であり、人手では分析しきれない大量のデータ(ビッグデータ)を扱う際には強力なツールとなる。一方で“AIが人間を置き換える”とは到底言えないのも事実なのです」
現状でAIが得意とするのは、人の脳内の思考を模すというよりも、目や耳からの刺激が何であるのかを判定する能力、すなわち視覚や聴覚に相当する部分だという。
「だからと言って、現状のAIに人間一人の全人格がリプレイスできるわけではないし、その見通しすら立っていない。人の意識とは何か、モチベーションとは何か……そういったことが、まだまったくわかっていないのですから」
そんななかで、われわれが身につけるべきスキルとは。
「自意識や価値観を持たないAIは、丸暗記した対話シナリオ以外では『なぜ』を問うことができません。この“なぜ”を考えられる人であれば生き残れる。また、好奇心や健全な競争意識、健全な見えといった、人間らしいモチベーションも育ててほしいですね。それもまた、AIにはないものですから」
※この記事は週刊SPA!5/31号の特集『[テクノ失業]の恐怖』から一部抜粋したものです
<取材・文/江沢 洋 週刊SPA!編集部>
日刊SPA!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160528-01119177-sspa-soci
ロボットが人間の仕事を奪う――そんなフレーズを聞いたことがあるだろう。
人間の歴史では、テクノロジーの進化によって人が仕事を奪われるというシーンが繰り返されてきた。18〜19世紀の産業革命では、機械化によって農民や手工業者が失業し、1960年代のオートメーション化でも、多くの工場労働者が職を失っている。
そして最近、盛んに言われているのが「テクノ失業」だ。コンピュータやインターネット、さらには今後の普及が予想されるロボットやAI(人工知能)の登場で、単純労働者のみならず知的労働者の仕事までもがテクノロジーに取って代わられる――そんな恐怖のシナリオが、現実になりつつある。
野村総研の試算によると、国内の601種類の職業のうち、実に49%が10〜20年のうちにAIやロボットで置き換えることが可能だという。そこに待ち構えるのは、どんな未来なのだろうか……?
◆アメリカではすでにテクノ失業が進行中
IT先進国のアメリカでは、すでに「テクノ失業」が社会問題になっている……と話すのは、25年間の滞米経験を持つジャーナリストの堀田佳男氏。
「オバマ政権下では失業率が減少したかのように喧伝されているアメリカですが、職業安定所への登録がないために捕捉されていない失業者も多く、実態としては25歳〜54歳の働き盛りの男性の10%前後が失業者だと言われます。その主要因と考えられるのが『テクノ失業』なのです」
レイオフ(一時解雇)という建前でのクビが横行するアメリカでは、コスト削減のために人間を機械に置き換えるなど日常茶飯事。
「例えばテラーと呼ばれる銀行の窓口業務は、ネットバンキングに移行しつつあり、全米のテラー数は’01年〜’09年にかけて約70万人も減少しました。また、同じ時期に、製造業でもロボットの導入などによって約270万人の職が奪われています」
さらに、今後大量の失業者が出ると見られているのが「トラック運転手」だ。
「アメリカではトラックの運転手が約290万人もおり、男性の間では最も雇用者数の多い職業。昨今話題になっている“自動運転車”が与える影響は計り知れません。もちろん、長距離トラックがいきなり無人化されたりはしないでしょうが、まずは空港や物流ターミナルなど、広大な敷地内での運搬に携わる車から無人化されていくはずです。同様に、決まった路線を走る公共バスも無人化のターゲットになるでしょうね」
◆最初から人間を雇わない企業も……
「2018年には成長企業の45%でマシンの数が従業員数を上回るとされています」と話すのは、国際大学GLOCOM客員研究員の林雅之氏。
「今後設立されるスタートアップ企業では、最初から人間の代わりに知能や自己学習機能を備えたマシンを導入するところが増えていくでしょう。結局、企業にとって人を雇うのは、時間とコスト、そしてリスクがともないますからね」
大企業にも変革の兆しはある。
「2014年に、みずほ銀行がIBMの質問応答システムWatsonをコールセンターに導入したのは象徴的な出来事でした。日本企業の中でも、金融は多くの規制に守られている業界の一つです。そこが、あえて多額を投じてWatsonを導入したわけですから、その危機感には並ならぬものが感じられます」
もっとも「AIやロボットは人間の仕事を奪う」と一概に考えるわけにもいかない。先ごろ、経済産業省が発表した「新産業構造ビジョン(中間整理)」では、むしろAIやロボットによる代替を積極的に進めていかないと、国際競争力で負けた日本は市場を喪失し、かえって多くの失業者を生む……とするシナリオが説明されている。
◆クリエイティブ職は激減!?
ロボットやAIに仕事を奪われるのは、専門性のない単純労働が中心と思われがちだが「むしろ単純労働こそが人間にとって最後の牙城となる」と予言するのは経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏。
「コンビニの店員の場合、レジ係はともかく、商品の梱包を解いて陳列して……といった細々とした作業は意外とロボット化しにくいため、当面は人間のほうがコストを抑えることができます。一方、世間的にクリエイティブと思われている職種ほど、実はAIへの置き換えが容易だったりする」
例えば、ネット発のドラマとして世界中でヒットしている『ハウス・オブ・カード』は、ビッグデータを活用して、監督や主演俳優などに“ウケる要素”を詰め込み、まんまと成功したことで知られる。
「そうなると、いわゆる“アイデアマン”的なプランナーはもはや必要なくなります。同様に、作曲の分野でも、人間よりAIのほうがヒットを生み出しやすくなるでしょう。作曲には規則性があるので、“ウケるメロディ”をデータからパターン化するのは難しいことではありません」
◆来る「テクノ失業時代」をサバイブするには ……
こうしたメディアに溢れる悲観論を鵜呑みにする必要はない――と断言するのは、AI研究の第一人者である野村直之氏。
「ここ最近、AIに起きたブレイクスルーとは次のようなものです。約1400万枚の画像の中の物の名前をAIに覚えさせていったところ、ある時点から、まったく新しい画像も含めてそれが何かをAIが自分で判別できるようになった。これ自体は大きな飛躍であり、人手では分析しきれない大量のデータ(ビッグデータ)を扱う際には強力なツールとなる。一方で“AIが人間を置き換える”とは到底言えないのも事実なのです」
現状でAIが得意とするのは、人の脳内の思考を模すというよりも、目や耳からの刺激が何であるのかを判定する能力、すなわち視覚や聴覚に相当する部分だという。
「だからと言って、現状のAIに人間一人の全人格がリプレイスできるわけではないし、その見通しすら立っていない。人の意識とは何か、モチベーションとは何か……そういったことが、まだまったくわかっていないのですから」
そんななかで、われわれが身につけるべきスキルとは。
「自意識や価値観を持たないAIは、丸暗記した対話シナリオ以外では『なぜ』を問うことができません。この“なぜ”を考えられる人であれば生き残れる。また、好奇心や健全な競争意識、健全な見えといった、人間らしいモチベーションも育ててほしいですね。それもまた、AIにはないものですから」
※この記事は週刊SPA!5/31号の特集『[テクノ失業]の恐怖』から一部抜粋したものです
<取材・文/江沢 洋 週刊SPA!編集部>
日刊SPA!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160528-01119177-sspa-soci
2016年05月28日
筆文字デザインデータ
2016年05月10日
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2016年05月08日
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2016年05月07日
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