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2017年09月28日

目黒のサンマ

これ金弥、金弥を居らぬか

お呼びで御座いますか?

うむ今日は良い天気であるな

はっ、秋晴れとはこの事か存じます

かような上天気の折に屋敷内居っては誠に無粋である
何処ぞに出かけようと思うがどうじゃ?

はっ、それは誠に結構で御座います。

遠乗りを致そう

はっ、遠乗りは武術鍛錬の為にも誠に宜しい事で御座います。

うむ、いずれに参ろうかのう

下屋敷にもほど遠からぬ目黒あたりが如何かと心得まするが

おぉ目黒、以前も参ったことがあった
良いところじゃ
然らば目黒に参ろう
馬を引け!

はっ

ひらり馬上の人となりますとパッパカパッパカ
殿様が出かけたと聞いて家臣がそれはいけないと急いで追いかけていく


遠乗りも疲れるものだなぁ

遅れて家臣団も追いつくと

その方たちに尋ねるが戦場にて馬を射られてらどうする?

はっ、その場合は徒歩にて戦います

うむ
足は鍛えておかなければいけないぞ

御意に御座います。

向こうを見ろ、小高い丘がある
あそこの上に松の木が在るから、その方どもとかけ比べする
いいか?後れを取るなよ

家来も畏まって御座候
駄々っ子を遊ばせているようなもので
しかし中には要領が良くないものがお殿様の前に出ようとすると


これ、なぜ余の前に出る

は?いえ、駆け比べでして

たわけ者、家来が主人の前に出るやつがおるか
控えておれ!

これでは前に出ることが出来ない

やはりその方は余にはかなわないな

恐れ入りました。

空腹を覚えた
弁当をこれにもて

恐れながら火急な為、弁当を持参しておりません

そうか・・・
弁当は無い・・・
左様か
左様であるか・・・

なぜ弁当を持ってこないんだと言うと家臣の中から責任を取るものが出てくる
小さいころからそのような事を言ってはいけませんよと教えられております。
我慢をしたのですが余計にお腹がすいてくる
主従で松の根方に腰を下ろして秋の空をぼんやりと眺めている
空に鳶が飛んでいるのを見て

これ金弥、あの鳥は弁当を食したのであろうか?

御いたわしい、御いたわしゅう御座います。

主従でがっかりしていると少し離れた農家でサンマを焼いている
ちょうど時期ですから脂がのったサンマ、匂いと煙がすごい
お殿様の鼻に入って


これ金弥この異なる匂いは何じゃ?

異なる香り?
あ、サンマで御座います

サンマとは何じゃ?

下魚でして高貴なお方が口には合いません

黙れ!何を言っておる
いったん戦場に出てこれは食べれる、これは食せんなどと言っておられるか
サンマをこれへ
苦しゅうない目通り許す

家来者達も匂いを頼りに農家を見つけ出して

おぉ焼いておるな

申し訳ございません
すぐに消しますので

消さなくてよい
どのくらいあるかな?
殿のがサンマを召したい

そうでございましたか
町に出ましたら安く売っておりましたので二十匹御座います

悪いな全てくれ、飯はどうだ?
一升炊いておるか
そうかそれもそっくり頂こう
これは少ないがお礼だ

いやぁ、小判なんぞ出されましてもお釣りが

みんなその方にやる

そう致しましたらもう一遍、町に出ましてサンマを・・・

いやいやこれだけで十分だ

農家の人も喜びまして、焼きたてのサンマをふちの欠けたお皿に乗っけまして、
大根おろしをつけて悪い醤油では御座いますがジューッとかけましてお殿様の前へ

金弥、これは食して大事ないか?

天下に美味で御座いますぞ

左様か

もぐもぐ


もぐもぐ

これは美味である!!!!!


美味しいでしょうね
運動してお腹がすいているなか、焼きたての脂がのったサンマを初めて食べたんですからまずい訳がない

代わりを持て!

二十匹のサンマを全て食してしまった

あぁ、美味であったぞ
その方たちには骨をつかわす
金弥、余はかように美味しい魚があることを存ぜぬであった
館に帰ったら三度三度サンマを食す

恐れながら申し上げます。
ここでサンマを食したことはご内聞に御座います。

余がサンマを食したらいかんのか?

サンマは下魚
もし館にてサンマを食したと知られたら責任を取るものが御座います。

そうか、その方たちに迷惑をかけるのであるならば余は口外致さん


ご機嫌麗しく帰ってくると、あぁサンマは旨かったなと思う
しゃべってもいけないと言われると寝ても覚めてもサンマ


これ金弥、また目黒に行きたいの

目黒は風光明媚な所にて

風光はどうでもよい
あの時食した、長やかなる、黒い魚

ご内聞に御座います。

分かっておる。余は口外致さん
サンマの事は言わん!



四、五日経ってからお客様として親類方においでになった
御大名はそんな生活をしておりますから楽しみはお料理のご注文
お殿様も知っておりますのでその日が来るのを指折り数えておりした。
当日になるとそわそわしております。

恐れながらお料理の御名を承りたく

余はサンマであるぞ

はっ



お客様のお料理をサンマだと

お殿様がサンマを知っているわけない

いやでも、サンマと言っていました。

お前は粗忽だから聞き間違えたのであろう
もう一回聞いて参れ


恐れながらお料理の御名をもう今一度

分からぬ奴だな、サンマだ
黒き長やかき魚であるぞ

はっ


聞いて参りました。
やはりサンマで御座いました。
黒き長やかき魚とおっしゃっておりましたので間違いありません

へぇ、どこでサンマを・・・
用意していない、まぁそうであろうな
直ぐに仕入れて参れ!

早馬で当時の日本橋にあります魚河岸で極上のサンマを仕入れて参りました。
しかしこんな脂ののったサンマを出してお殿様の体に障ったらどうする?
首になるかな?
脂を抜いてしまえっと言うことで蒸器にかけて脂を全て抜いてしまった
ばっさばっさのサンマの出来上がり
また小骨が在りますので、目のいい職人が毛抜きで一本一本抜いた
だらしのないぐちゃぐちゃのサンマになってしまった
焼く訳にはいかないからお椀に入れて出した
お殿様の方は目黒で食べたサンマを思い描いておりましたところにお椀が出てきた


これ、これはサンマか?

御意。サンマで御座います。


蓋を取るとかすかにサンマの香り

おぉサンマである
そちも堅固で何よりである

もぐもぐ


これ即答を許す
このサンマは何処で仕入れた?

日本橋の魚河岸で御座います。

魚河岸、、それはいかん
サンマは目黒に限るぞ


昭和の名人 古典落語名演集 三代目三遊亭金馬 三::居酒屋/高田の馬場/目黒のさんま [ 三遊亭金馬[三代目] ]


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