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2015年07月09日

陸上部 先輩の美穂×後輩の紗由理





 7月も後半に突入して、梅雨や台風が通り過ぎた後のじめじめとした湿気と、元気すぎる太陽から降り注ぐ暑い日差しが相まって、歩くだけでも汗が吹き出てくる。とても憂鬱だが、とても高い場所にある目標のため、今日も私は練習に励むのだ。

「ふっ……はっ………ッ!!」

 50mという短い距離。それを駆け抜ける瞬間、私はこの世界から切り離されたように無心になれる。暑さによる不快さも、これからへの不安も、全部忘れて風を感じていられるこの瞬間が大好きだ。
 ふぅ、と息をついていると、男子陸上部の方がやたらと騒がしい。見れば、今年最後の大会を控える高3の先輩のところに、女子マネージャーがこぞって群がっているのだ。確かに格好いいとは思うけど、練習は練習。ピリピリした雰囲気が壊された気持ちでむっとしていると、トントンと肩を軽く叩かれた。

「ふぇ?」

「何をヘンテコな声を出してるんですか、美穂先輩。…あぁ、あの先輩今人気ですもんね。見惚れてたんですか?」

 突然のことだったから、そりゃあ声も裏返るわよ。後輩の紗由理が意地悪そうな顔で冗談を飛ばしてきながら、冷えたタオルを渡してきた。「ありがと。」と小さくお礼を言うと、軽く顔と首を拭いて、はぁとため息をつく。

「違うわよ。ただなんかさ、真剣勝負の場にふわふわした感情が入ってきて違和感、みたいな。なんか嫌なのよ。あの先輩もまんざらでもなさそうじゃない。もう大会まで何日もないってのにさ…。」

「はぁ。そんなもんですか。」

 なんだか冷たい返事が戻ってきた。ぐぬぬ…先輩なのに押されるわけにはいかない。運動部は上下関係しっかりしておかないと!紗由理はマネージャーだけど…あれ?そうだ、紗由理もマネージャーなんだよね。

「紗由理はあっち行かないのね。もしかして…。」

 ”同情なの?”と聞こうとして、やめた。でも、ほとんどの女子マネージャーが男子部員のところに行ってドリンクやタオルを渡したり、媚びを売るように応援しているのに、良く言えば青春してる中、ただひたすら真面目に練習しているだけの私のところにくるなんて、変わってるって思ったんだもの。

「同情とかじゃないですよ。」

 ぎくり、とした。言いかけていたことはしっかり伝わっていたらしい。その反応を見て、紗由理はぷっと笑いだした。

「私はね、あの男子たちより…美穂先輩のほうが、格好いいと思ってるんですよ。」

 耳を疑った。え、いったいどういうこと?困惑する私に、落ち着いた笑みを浮かべて彼女は続ける。

「いつだって一生懸命で、走っている姿はどんくさい私にはできないくらい綺麗なフォームで、とても楽しそうな顔をしてるんです。そりゃ、私だって恋はしてみたいですけど、なぜか先輩に目が奪われちゃうんですもん。」

 かぁぁ〜っと一気に顔が真っ赤になる。褒められたこともそうだけど、そうやって尊敬してくれていたり、頑張っていることを認めてくれたり、なんだか誇らしさと恥ずかしさが混ざって、口がもごもごとしか動かない。お礼とか、それこそサラッと言えたりしないのか、私の口!

「それで、どうですか?美穂先輩。」

「え、な、なにが?」

「あの男子の先輩みたいに、女子マネージャーにアピールされてふわふわした空間にいる心地は。体の力が抜けたんじゃないですか?私は――そんな時間も、あってもいいんじゃないかって思いますよ。」

 あぁ、それでさっき冷たかったのか。そして、一本とられてしまった。確かに、心は大分落ち着いているし、なんだか晴れ晴れしたような気さえする。澄ましたような顔をしているけれど、彼女の顔はほんのり赤く染まっていて、可愛らしいなと思うと、不思議と力がでてくる。もっといいところ、見せたいなって、なんだろう、この気持ち。

「……悪くは、ないかもね。」

 結局、最後まで押されっぱなしの私は、こうやってぶっきらぼうに返事をするしかなかった。




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