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2019年10月17日

   内田樹 合従論再考 ブログ変換 その5




 内田樹 合従論再考 ブログ変換 その5

          〜内田樹 合従論再考 2019-10-10〜

 〜AERAに先々週「合従」論を書いた。字数が制限されていたので、少し加筆したものをここに掲げる〜


              10-17-43.jpg 蘇秦「合従」

 前から「東アジア共同体」を提唱して居る。日韓連携を中核として、台湾・香港を結ぶ「合従」を以て、米中二大国の「連衡」戦略に対応すると云うアイディアである。
 荒唐無稽な話だが、最大の利点はこのエリアに居住して居る人々のホボ全員が「合従連衡」と云う言葉を知って居ると云う事である。戦国時代に燕・趙・韓・魏・斉・楚の六国同盟によって大国秦に対抗する事を説いた蘇秦の説が「合従」六国を分断して、個別に秦との軍事同盟を結ばせ様としたのが張儀の説いた「連衡」である。

             10-17-42.jpg 張儀「連衡」

 歴史が教えて呉れる結末は、より「現実的」と思えた連衡策を取った国々は全て秦に滅ぼされたと云う事実である。
 東アジアでは、中学生でも「大国と同盟する」と云う選択肢の他に「同じ難問に直面して居る中小国同士で同盟する」と云う選択肢が存在する事を知って居る。だから、相手が秦であっても、中華人民共和国であっても「ホラ、アレですよ『合従』」と言えば話が通じる。  
 国際関係論上の新説を頭から説明しなくて済む。そして「嫌『連衡』の方が現実的だ」と言い立てる人には「連衡」を採用した国々の末路を思い出して貰う。その舌鋒を聊(いささ)か緩和する位の効果は有るだろう。
 
 日韓に台湾・香港を足すと人口2億1000万人GDP7兆2500億ドルの巨大な経済圏が出来上がる。これはEUの人口5億1000万人GDP12兆8000億ドルには及ば無いが、 人口14億GDP12兆2000億ドルの中国に隣接する共同体としては十分なサイズだと言えるだろう。
 何よりこの四政体は民主主義と云う同一の統治理念を共有して居る。それはこの四政体の社会が何れも直系家族制だからである。直系家族制と云うのは、子の内1人だけが親の家に留まり,家産や職業を継承する仕組みの事である。

 シバシバ祖父母から孫夫婦に至る3世代が生活共同体を形成する。直系家族はフランス・ドイツ・アイルランド・南イタリア・スペイン・日本・韓国・タイ・フィリピン等に見られる。
 エマニュエル・トッドは世界を七つの家族形態によって分類した上で、そう遣って描かれる世界地図において、境界線は人種にも言語にも宗教にも関わりが無い事を明らかにして居る。








 「明白で検証可能な唯一の一致は、家族とイデオロギーのそれであるが、家族とイデオロギーと云うのは一つの価値システムの二つの異なる表現レベルに夫々相当するのである」(『世界の多様性 家族構造と近代性』荻野文隆訳 藤原書店2008年75頁)

 家族形態が同型的であれば、目指す社会の在り方に付いてのイメージも同型的なものに為る。「このメカニズムは自動的に働き、論理以前の処で機能する」(同書50頁)
 
 もう一度言うが、日本、韓国、台湾、香港は何れも直系家族制の社会である。中国は違う。中国は外婚制共同体家族制である。家産は兄弟に平等に分配され、結婚した後も親と子供達は同居する。兄弟の子供同士は結婚出来無い。この家族制を持つ国は、中国・ロシア・ユーゴスラヴィア・ブルガリア・ハンガリー・アルバニア・ベトナム・キューバ等である。20世紀に生まれた全ての共産主義国家はこの家族制の国である。

 それ故、トッドは「共産主義とは何か?」と云う問いにこう答えたのである。「共産主義、それは外婚制共同体家族の道徳的性格と調整メカニズムの国家への移譲である」(同書78頁) 中国が共同体家族制に移行したのは、秦の時代からである。
 秦は共同体家族制であり、東方六国は直系家族制であった。詰まり「合従連衡」は単なる政治単位のマキャベリズム的な数合わせゲームでは無かったのである。無意識の内に、夫々の国民は自分達の家族制に固有の「道徳的性格と調整メカニズム」を国家像に投影して居たのである。

 と云う話を聴くと、21世紀の「合従」論がアナガチ荒誕な夢物語では無い事が判って繰る筈である。では何故嫌韓言説がこれ程迄二ヒステリックに語られるのか?それは日韓の間には「同族間の競争」マインドが伏流して居るからである。私はそう考える。
 直系家族では、誰か一人が「家督」を継が無ければ為ら無い。だから「集団の『盟主』は誰か?」と云う問いが常に兄弟達の間の関心事に為る。

 台湾と香港は、何れも中国によっては「中国の一部」と見為されて居る。と為ると、新しい共同体の中心の座を占めるのは日本か韓国より他に無い。果たして、誰が東アジア共同体の盟主と為って、新しい「合従」を率いるのか?この問いに日本人は「私達だ」と言い切れるだけの自信をもう持って居ない。
 経済的成功の指標である一人当たりGDPで日本は今世界26位韓国は31位である。日本はランキングを転落中で韓国は上昇中であるから、順位の交替は時間の問題である。経済だけで無く、学術的発信力や教育レベルでも韓国の後塵を拝する事を夫々のセクターの人々はもう気付いて居る。

 取り分け市民の政治的成熟度においては日韓には既に乗り越え難い差がある。一方では市民達が民主化闘争を経て軍事独裁を廃し民主制を確立した。他方ではアメリカに与えられた天賦の民主主義が独裁制に移行するプロセスを市民達はボンヤリ口を開けて見詰めて居る。
 東アジア共同体構想が頓挫して進ま無い最大の理由は恐らくソコにある。日本人は「日韓連携を基軸とした四政治単位の合従」と云う選択肢が十分検討に値する解である事を知りつつ、それを選ぶ事を忌避して居る。それは韓国をリーダーとして頂く様な同盟を組む位なら、中国でアレ米国でアレ、強国と「連携」して滅ぼされる方が「未だマシ」だと思って居るからなのである。


          内田樹 2019-10-10 09:26     以上

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 【管理人のひとこと】

 内田氏は面白い着想を持っておられる。確かに四政体連合の盟主の地位は何処の国かと尋ねられると「日本です」とは手は挙げられぬ程我が国は疲弊して居る。そしてそれを殆どの人達が薄々キズイテ居るのにそれを 認めようとせず、相変わらず自公政権を選択する国民だ。
 可笑しな武士道精神が根強く「貧しくとも・・・」と変化を嫌う国民性なのだろう。政治がダメなら、新たな政権を打ち立てて共に頑張ろう・・・とする気概は無いのだ。そんな国民性だから、米英に戦争を仕掛ける軍部の言い成りに負け戦に連れて行かれ300万もの人達を死に追いヤッタのだ。
 氏の云う通り我が国の民主主義も国民が戦って勝ち取ったのでも無く、天から降って来た幸運に縋り着いただけのもの。お上が云う通り、お上は間違い無いと盲目的に従う純情な国民性なのだ。山本太郎氏が元気な内に私達は自己改革に励まなくては為ら無い。内田氏は山本太郎氏と会談し貴重な寄付もされた有志でもある。














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