2018年03月12日

無頼伝涯ー中二病という病と健全さの狭間

 「無頼伝涯」という漫画をご存じの方はそう多くはないと思う。というのも「福本伸行」の作品の中でも異端な漫画であったからだ。

 この物語は孤児である「工藤涯」が無実の罪を被って捕まってしまうところから始まる、脱出と、人間としての他人との在り方を綴った物語。
※主人公の涯(イラスト:ヲヲサキ)

20180112.jpg


 なによりこの連載が「週間少年マガジン」で、しかも打ち切りを食らったことはかなりの衝撃であるだろう。
同じマガジン連載の「賭博覇王伝零」が第二部も連載されたことを考えると、涯がどれほどの漫画であったか気になるのではないだろうか。

 福本作品で打ち切りを食らった漫画は涯くらい……という存在。今回はそんな涯の話をします。

…………▼▽続きを読む▽▼

 工藤涯は中二病といっていいのか?

 工藤涯を語るときはこれをはずすことはできないだろう。そう、「中二病」である。
ただ涯の場合は少し事情が違っているので、それを箇条書きにしてみよう。

 ・リアル中二病世代
 ・両親がいないため、孤児院育ち
 ・顔にやけどのような、広範囲のアザがある
 ・孤児院を脱出して自活
 ・座右の銘(?)が「孤立せよ」


 両親が揃ってそれなりの生活をしている周囲のクラスメートが、よくある父母の悪口を言っているのを見て、彼は一人思う。
「孤立せよ……っ!」
 クラスメイトからの孤立ではなく、いってみれば文句を言うなら養ってもらっておきながら勝手を抜かすな、という持論や、そんな身勝手な人間と一緒にされたくない、という思いから発せられる切実な叫びでもある。

 もっとも涯の場合はこんな生活や、クラスからの「孤立」をしたが為に、「そういうやつだから」と成り立つ言い訳で罪を着せられてしまうわけだが。

 と、安心して「意外と違うな」と思ったかもしれない

 この涯少年、「自分のパンチが鏡の中の自分より早かった」 と宣う
             (※画像でお見せできないのが残念です)


 比較的福本作品界隈で話題にあがることがある有名なシーンである。なんとなく「ホーリーランド」のような雰囲気になってきた気がするけど。まあそれはともかく、涯の生い立ちや性格を見ると、どうも中二病としては正常範囲内なのではないだろうか。
 というのもいわゆる中二病の定義から見ると、かなりイタい話であるものの、自身を完全たる者としては見ていないのだ。
よくある中二病としては独特の魔王設定や、魔法設定、特別感を有している例がある。だが涯の場合は、そういったファンタジー部分を全く有していない。アニメや漫画と親しむ環境がなかったといえばそうなのだが、涯の思想は意外と現実的なのである。

 現実を見る少年

 現実は非情だが、対抗するのは知ろうとする意志である。いうなれば反抗期に近いと言っても過言はないだろう。

 涯は物語の本編に突入するまでがとにかく長い。本当に長い。福本先生の作品は心情描写が細かいため、下手をすると「月刊で一話で一打」が当たり前なのである。ので涯が一巻で話した身の上の話の長さはそれはそれは長い。
 そこを終えて本編を読むと、涯は意外と現実的なのがわかる。今の自身の現状がわかっているからこそ、クラスメートの在り方が実に嫌になる。

 だが、そういった部分からの逃避がパンチの練習だったのだろう。小さな心の抵抗ではあるが、少なくとも己が異端だとは思いたくはない。なんというか、誇りをもって生きているのである。
 涯の性格は激情・現実主義・冷静と思春期特有の複雑さを有している。
施設を未成年で出る、ということは住む場所も、生きる金も、生存活動も全て自身で身を持ってやれ、という事だ。それでもお年玉をちょっとずつためて施設を出たのは、直情な判断であり、しかし生活にかかる金の概念をきちんを把握していたという事でもある。

 「孤立」は「独立」ではない

 さて、そんな生い立ちから生まれた話から物語は一転する。少年院「人間学園」に入れられた涯は、半ば洗脳と折檻・暴力で人間を造る人間学園の中身に嫌悪感を示す。
 何度言っても危険なことをする子供をやむなく殴る、とか、理由を述べて「だからいい子にしてようね」という語りかけとは違う。人間学園のする事が絶対であり、従わなければ電気棒でつつかれ、アクリルのふたをされることで四つん這いを、しかも全裸で強制されるという横暴ぶり。
正義の名の下のエゴもいいところだ。

 だが涯はそれでも脱出を試みる。なぜなら人間はそうやって縛られる人間ではないから。そういう心情に共感して数名が協力することになる。
 そこで涯は気がつく。

 孤立は独立ではない。

 孤立も独立も、誰の力も借りずに生きていくことだ。
だが孤立が誰とも歩む者がいないのに対し、独立とは自らの力で進む道に、誰かがいるのである。
 こうして涯の物語は終わるのである。詰まるところ、涯は思い違いから突っぱねていただけであって、「独立」を受け入れる心の成長を果たしているわけである。
 このことからわかるように、涯はいわゆるふつうの少年、という事がわかるのではないだろうか。



 そんなわけで「涯は意外と常識範囲」という話、いかがでしたか?
これは絶対ではないので、一つの意見と言うことでよろしくお願いします。


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