2008年08月11日
「雪」

豪雪地方の方には申し訳ありませんが、私は降る雪を見るのが大好きでした。
道東での酪農実習や札幌での寮生活で、北国の雪の厳しさを体験しましたが、それでも雪が好きな気持ちは変わりませんでした。
パタゴニアに暮らし始めても、その気持ちは変わりません。
私の住む地区は冬は雪よりも雨が良く降ります。それでも毎年数日間は雪になりました。
周りの景色がすっかり変わり、音も無くしーんとした中をサクサクと雪を踏みしめて歩く私達の足音だけが響き、犬達が大はしゃぎして走り回る。そんな中、サラサラと絶え間なく降り続く雪の中を歩くのはとても幸せで楽しい時間でした。
二週間停電が続いた年も、車が雪道を登れず一ヶ月町に行けなかった年も、屋根に積もった雪の重みが心配で雪下ろしをした年もありました。不便でしたが、面白いと思う気持ちの方がずっと大きかったです。
ところがここパタゴニアも「地球温暖化」とは無縁ではなく、ここ数年は雪の降る日が殆どなくなりました。特に今年は暖冬で、アンデスの山にも雪が無く、スキー場は開店休業状態が続き、観光業で成り立っている町は大打撃でした。景気が悪いと治安も悪くなり暮らしにくくなりますが、私はそれ以上にこれからの水不足とそれに伴う山火事が心配でした。
「きっと・・もうすぐ・・・」
という淡い期待も裏切られ、真冬の7月が暖かく乾いたままで終わってしまいました。
ところが、7月最後の日の夜、思いがけず雪が降り出したのです。一晩降り続いた雪は、翌朝辺りを雪景色に変えてくれました。久しぶりに見た雪景色です。雪の重みで木の枝が下がり、散歩道を雪のトンネルに変えていました。
ざくざく、きゅきゅっと足の下で鳴る雪の音も心地よく、犬達も童心に返って走り回っています。猫の「福」さえ雪の上を飛ぶように私について来ます。
「ああ、やっとパタゴニアの冬がやってきた。」
と心が弾みました。
この雪が続かない事も、直ぐに天気が回復して雪を溶かしてしまうことも、何となく分かっていました。この程度では、水不足が解消するとも思えませんでした。
それでも、神様が下さった雪という素敵な贈り物です。私は汗をかくまで歩き回って、雪を感じ、雪の音を楽しみました。


