2008年04月17日
「人間が残せる3つのもの」

これは秋田南米交流会さん、秋田県人会(在亜千秋会)さん、Sさん、Iさんのご厚意によるものです。
昨年と一昨年、Iさんがブエノスアイレスで種から育てた苗木を2000km離れたパタゴニアまでトラック輸送で送って下さいました。約80本を我が家、20本をマジン村公営園芸センター、そして6人の友人に2本ずつ贈り移植してもらいました。ブエノスアイレスとパタゴニアの気候と土壌の差、夏の干魃などで残念ながら枯れてしまった苗木もあります。それでも多くの苗木達は厳しい気候に慣れながら頑張って育っています。
先週、パスポート更新の為ブエノスアイレスに行ったので、この機会を利用して送り主のIさんの所へご挨拶に伺いました。Iさんの農場には見事な秋田杉が数多く育っていました。
貴重な秋田杉を送って頂いたお礼を申し上げると、Iさんは「それは反対です。私の方があなた達にお礼を言いたいのです。」とおっしゃるのです。
Iさんは秋田杉の種を播いたその時から、パタゴニアに苗木を送る事を夢見ていたそうです。
緯度が似ている以外、夏の干魃、粘土質の土壌など秋田と私達の農場とでは大きな違いがあり、正直言うと秋田杉達には決して過ごしやすい場所ではありません。それでも千年後を想定して、どんなに大きくなっても大丈夫な様に十分な間隔で移植出来る場所が私達にはありました。
パタゴニアでは食べることができない刺身や握り鮨をご馳走になりながら、Iさんがこんな話しをして下さいました。
アルゼンチンの諺に「人間の残せる物は3つある。一つは子供。もう一つは本を書いて残すこと。そして最後は種を播いて木を残すこと。」というのがあるそうです。
「ぼくには子供はいないし、本を書くなんてとても出来ない。でも木を植えて残すことはできる。だから木を育てているんです。長年の夢だったパタゴニアに秋田杉を植えると言うことが出来て本当に嬉しいんです。」
アルゼンチンにそんな素敵な諺があることに感動しましたが、それ以上にIさんの言葉に心を打たれました。
「木を植える。森を作る。」
それは私達の目標でもあったからです。そして私達にも子供はいません。
木を育てること、森をつくること、それはきっと今の地球に最も必要なことだと思うのです。なぜなら私は自然の森のない地球に豊かで幸せな子供が育つとは思えないからです。
かつて無い程の異常高温、異常乾燥の厳しい夏を乗り切った秋田杉たちが、やっと降り始めた雨に気持ちよさそうに打たれています。
この木が大木となる千年後、二千年後に思いをはせながら、そのほんの一時でもその秋田杉達と同じ大地に立てた事を、とても嬉しいと思っています。


