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2017年01月16日
「名医」がなぜ心友として必要か
伊藤肇の「喜怒哀楽の人間学」より池田勇人は三人の心友を持て、ということで「すぐれたジャーナリスト」「立派な宗教家」に続いて今回は「名医」がなぜ心友として必要か、についてです。

以下、伊藤肇の「喜怒哀楽の人間学」より

「名医」がなぜ心友として必要か。
強靭な肉体は強靭な精神を生む。その理非曲直にかかわらず、その状態の多種多様なるにかかわらずである。
では「健康」とはいかなる状態をいうのか。
世界保健機構(WHO)では「七つの条件」を挙げている。

一、何を食べてもうまい。
二、よく眠ることができる。
三、すぐに疲れを覚えない。
四、快い便通がある。
五、風邪ぎみでない。
六、体重がかわらない。
七、毎日が楽しく、明るい。

このうち一つでも欠けたら、「不健康」ということになるが、トップたる者、「肉体的には健康で、精神的には幸福で、社会的には世のため、人のために役立つことができる状態」を維持しなければならない。
それには、どうしても「名医の心友」が必要となってくる。

「心友」でなくてはならないのは、科学は自然を対象とするが、医学は人間を対象とし、ビッセンシャフト<科学>とともにクニスト<芸術、人扱いのコツをも含めた技術>やフィロソフィー<哲学>が要求されるからである。

近鉄会長の佐伯勇は「故種田社長は病気がちの人だったが『元気な時でも、ほどほどの能力しかないのに、病気で寝ていながら、何かと会社の仕事に指図するのが、私は絶対にそれをやらない。病気中は、他の重役たちにまかせて、療養に専念する』といわれた。たしかにその通りで、人間は元気な時でも往々、誤まった判断を下すことがあるのに、ましてや、病気にかかって、肉体的にはもちろん、精神的にも正常でありにくい時に重要な判断を下すことはきわめて危険である」

と述懐しているが、いかなる実力者、名社長といえども、亡くなった日から逆算して、三年間にやったことはすべて失敗である。それは肉体の衰え、頭の呆けが、どうしても判断を誤らせるからだ。

ある高名な法律家が長寿を全うして亡くなった。
葬儀の席で故人をみとり、死後解剖のメスをとった心友の老教授が会葬者に述べた挨拶を龍角散本舗の藤井康男が、その著『病気と仲よくする法』<日経>の中で紹介している。

「故人は生前、高名な弁護士でありながら、思想問題などで弾圧された無名の若い学究の弁護を進んでひき受けられた。そして、多くの人々が故人の高い学識と有能な法廷技術によって救われたのです。
こういう際にも、故人は相手の事情によっては弁護料なども請求されず、調査費用すらも自弁で活動されました。
しかし、晩年になって故人はかわりました。
時として、高額な弁護料を請求されて驚かれた方や、かつて、あれほど無欲無私だった故人が金銭に異常な執着を示されるのに気づかれた方もあられると思います。
死後、故人を解剖してみましたところ、脳の部分に著しい老年性の退行変化がみられました。そのため、人格が一変したかのような印象を与えたものと思います。
申してみれば、故人の脳は人格的には、その持前の立派な能力を生理的な死を迎える何年か前にすでに失っていたものと考えられます。
ご来席の皆様は、その辺の事情をお汲みとりの上、改めて、生前の故人を偲んでご会葬をお願いいたします」

人に迷惑をかける前に一線を退くことを教えてもらうためにも「名医の心友」がどうしても必要なのである。

今回は以上です

「名医」がなぜ心友として必要か、この項の法律家の話に尽きるのではないでしょうか。
心友なればこそ、故人を思い遣る会葬挨拶は、ただただ感じ入るばかりで言葉が出てきません。


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