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2017年09月09日
なろう小説的ファンタジー世界で田舎者が都会に出てきて就職するときはどういう流れをたどればよいかがわかる参考資料だよ!
さて、またしても久々の更新であるが、今日ご紹介したいのは、
『ダルタニャンの生涯―史実の「三銃士」』 (岩波新書) 佐藤 賢一 著 である。
ダルタニャンというのが誰かということについて一応補足しておくと、ダルタニャンというのは、アレクサンドル・デュマという作家の書いた小説の登場人物としてひときわ有名になった人なのである。
彼は小説の登場人物であるから、架空の、想像上の人物なのかと思いきや、実は実際の歴史に登場する実在の、それもわりと有名な人物でもあるのである。
ダルタニヤンという人物と三銃士という作品がどのようなものであるが、極めて簡単に説明すると、ダルタニヤンというのは、銃士すなわちマスケット銃兵である。(実際にはマスケット銃が陳腐化する過程で、マスケット銃ではない銃も使われるようになったようではあるが)
そして銃兵であるが、単なる銃兵であるだけではなくて、馬にも乗れる騎兵でもあって、というのは、ダルタニヤンの所属していた銃士隊というのは、まあ国王やら権力者やらの側近でもあって、何か事があるととりあえず派遣されたりする、近衛部隊というか、便利使いされる部隊というか、そういう立ち位置なのである。
そしてそういう立ち位置な主人公でであるからして、国王陛下の密命なんか受けちゃったりして、外国までまたにかけて、色々陰謀あり戦闘あり恋もありみたいな一大スペクタクルな作品が書けちゃったりするのである。
私も作品を読んだことがあるが、このデュマという作者はストーリーテリングというか物語の面白さにおいて、なかなか凄いものがあって、だからこの三銃士もぜひ読んでいただきたいと思うところではある。
私が思うところ、ファンタジーオンラインゲームに入り込んじゃったよ的な、なろう小説異世界系においては、コンピューターゲームの模倣としての魔法というものが使われるが、これは魔法の矢であれ、ファイヤーボールであれ、要するに意味合いとしては遠距離攻撃の一種なのである。
この遠距離攻撃の威力をどのように設定するかというのは、なかなかに加減が難しいところで、あまりに威力を大きくし過ぎると第一次世界大戦ばりの、塹壕にこもりまくってひたすら土掘る塹壕戦みたいな世界になってしまい、物語世界としての魅力に欠けることになってしまう。
詳しくは下記のページを参照していただきたい。
リンクはいずれも当ブログの過去ページである
1.兵器・武器と世界観との関係
2.機関銃という恐るべきもの
とりわけ、この2番目のほうの記事で紹介している書籍は、機関銃の登場がどのように戦場の様子をかえて、戦争からロマンも英雄性も奪い去り、人の考え方まで変えてしまったかということについて書いてある、一線級の名著なので是非とも読んでいただきたいところである。
それで、魅力ある世界観を構築するためには、適度に威力のある遠距離攻撃としての魔法があるわけであるが、この適度に威力のある遠距離攻撃ってどんなもんかなと考えると、史実ではライフル銃が登場する前の火縄銃とかマスケット銃あたりのものがそれに相当するんでなかろうかなと思うのである。
そういうわけで、なろう小説をお書きになる皆さんは、この近世ヨーロッパっていうのか、そういう時代の小説、つまり三銃士を是非とも読んでいただきたいと思うのである。
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さて、話がわりとそれてしまったが、冒頭に紹介した本のことについて述べる。
要するに三銃士の登場人物の一人について詳しく書いてあるのだが、これがそれだけにとどまらないのである。
若き日のダルタニヤンさんが田舎から出てきて就職するにあたって、どのようにしたか。
ぶっちゃければ同郷の人物の縁故に思いっきり頼るのであるが、そういう方法とか、郷土の人間関係が、その当時のパリにおいてどのような意味を持っていたのかとか、そんなことが詳しく書かれている。
考えてみりゃ人間関係が希薄化したのなんのと言われる今でも縁故採用なんてあるのに、これが昔の時代の田舎の人ら(ダルタニヤンはガスコーニュというフランスの田舎の生まれの人である)の人間関係ともなればその濃さは推して知るべし、わたしだったら絶対に住みたくなかろうと思えるよな気もするというものである。
だからこの本を読んで参考にして、主人公が都会に出てきて、先に都会に出てきてる有力者のコネを頼りまくってなんとか就職するシーンとか入れれば作品にリアル感マシマシである。
他にも例えば『売官制』についても色々書かれてある。
売官というのは、国とかの公の役職がお金で売られていたりする制度のことである。
今の日本人的な感覚から言えばとんでもないが、昔はそれで普通だったりしたのである。
例えばナントカ銃士隊隊長になりたいと思えば、その職を持っている人にお金を払って、その地位を買うのである。びっくりである。お金を払えば軍人の士官になれちゃうとかもうね。
そんで、本人がそういう実際の部隊指揮とか無理じゃん? と思えば銃士隊長代理とかを別に任命して、そいつに指揮を取らせたりするのである。
王様とかも王様とかで、例えば功績のあった部下に、売って金に換えていいからねって意味合いで、褒章として官職を与えて、もらったほうはその官職を、そのへんのおっさんに売り飛ばしてお金に換金したりするのであった。
ということは、よく、なろう小説の戦記物なんかで、主人公が戦争で手柄をたてて、段々と出世していくなどというストーリーはありがちであるが、ここを金にものを言わせて、中隊長とか大隊長とかそんくらいの役職をお金でポンと買っちゃって、そこで手柄あげて出世みたいな、そういうストーリーもありなわけである。
我ながらこのストーリー展開ってわりに斬新じゃなかろうか。
他にも、そういう公私混同ぎみの時代であったから、財務大臣などは、国家の財政から自分の懐に入れるというより、もう国家の懐が自分の懐状態になってしまって、公金を好きにできるかわりに、戦争にでもなったら、私費を投じてでもなんとかしなきゃならんかったりとか、はえー、と感心するばかりである。
また他にも、失脚しかかった権力者がどのように地方に一旦逃れてから捲土重来するかとか、
権力ある要人を逮捕するときにどのような手順がとられたかとか、そういう、小説書きとしては、非常にタメになりそうなお話がいっぱい書いてある本なのである。
久々にかなりのヒットのオススメであるから、是非とも読んでいただきたいのである。
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