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2016年12月01日
お嬢様とお付きのメイドみたいな作品を書くには必須の資料!
今回ご紹介する本は、
『 おだまり、ローズ 』 〜子爵夫人付きメイドの回想〜 ロジーナ ハリソン (著)
である。
これは読んで題名の通りであるが、アスター子爵夫人の侍女であった人が書いた回想録である。
田舎の農村の女の子であったローズの幼少時代の回想から始まって、
彼女が、世界中の色々なところに旅行をしたいという動機で貴族の奥様の侍女になり、
それから、彼女が最後に、最も長く使えた女主人となったアスター子爵夫人とのエピソードが描かれる。
つまり、
メイドになるような女の子は、どういうところの出身で、どういう素性をもっているのか、から始まって、
希望する職種のメイドになる方法、メイドさんの就職事情やら、転職の仕方、
メイドになってからのあれやこれや、自分の勤め先についての当事者たちの感想やらも読めるのである。
すべて盛りだくさんに書かれている。
例えば、一般にメイドや執事やらについて書いた資料本などを読むと、
侍女になりたければフランス語や裁縫などを勉強しなければならぬ、などと書いてあるのであるが、
ローズのお母さんが侍女になりたいと言い出した娘のために、本当にフランス語の勉強をさせたり、裁縫を習わせたりする描写がある。
またローズは作中で幾度か職場を替わっているわけであるが、そういう転職の実際みたいなものも、本人自身のエピソードを元に書いてあるわけである。
さらにまた、侍女である主人公が奥様の非常に高価な宝石類などをどのように管理していただとかを書いてある。
せっかくだからここにちょっとだけ書いておくと、
まず勤め始めたときに管理すべき宝石についてのリストを渡されて、それにサインをして、
それから、そのリストに書かれてある宝石がなくならないよう管理するのだそうである。
自分の年収の何百倍何千倍というような宝石を管理しなければならない侍女という仕事もなかなかに大変である。
まあ宝石にはそれぞれ保険もかけるようであるが。
面白いことに、その保険の保険料の額が、宝石を銀行などに預けているときと、それを身に着けてパーティーなどに出て使っている時では保険料の額が違うんだそうである。
もちろん銀行から出して使っている間は紛失の危険度が高くなるので、その期間に応じて、普段よりとっても高い保険料を取られるそうである。
こういう、単なる空想では思いつかないような、実際の細かいデティールのところが非常に資料としての価値が高いと言えるのである。
このような資料を参考にして自作にも、宝石にかける保険とかそんなような、それらしい描写を付け加えれば、作品の質感もアップするかもしれんわけであるね。
そして、ローズの最後の主人となったアスター子爵夫人と、奥様付きのメイドであるローズのやり取り、その関係性の描写は、この本の主要な部分であって、際立っている。
『おだまり、ローズ』 という奥様の口癖が、この本の題名になっているくらいであるから、推して知るべしである。
わりと激しい性格でわがままかつけっこうな無茶を言うかと思えば情に深かったりするツンデレ女主人と、
頭が良くって才気があるできるメイドさんとの愉しきやり取りである。
女主人とメイドが登場するような作品は色々にあると思うし、それを書こうとすれば色々と想像して書くのではあろうけれど、やはりこの本のような本物の資料に触れることの刺激は素晴らしいものがある。
『 お嬢様とお付きのメイド 』 みたいなバディーものの作品を書こうと思っている方であれば、もはやこの本は必読の資料であり、この本を知らないことは罪とでも言うくらいのレベルの本であるとも言える。
非常におすすめできる素晴らしい本であると思う。
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2017.10.04追記
クリブデン(Cliveden):英国屈指のカントリーハウスに泊まる
↑ リンクはこちら
ネットを色々漁っていたら、この本の主人公の一人であるアスター子爵夫人が住んでいたマナーハウスであるクリヴデンを旅行された方のサイトがあったのでリンクを張っておく。
『クリヴデン』で画像検索とかすると、検索結果がいっぱい引っかかってくるのではあるが、このページが資料的な意味ではいい感じだと思われるのでご覧あれ。