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2015年06月21日
英国生まれの作家によるメイドを主人公にした小説ですよ!
今日は久々の掘り出しものである!
ご紹介するのは『貧乏お嬢さま、メイドになる』
リース ボウエン(Rhys Bowen) (著), 古川 奈々子 (翻訳) である。
もう題名だけで、こういうシチュエーションとかメイドとか好きな方は、即買いすべきだと思われるだろうからあんまり解説とかしてもしょうがないんであるが、それだけではアレなので、ひとくさりレビューしてみようと思う。
まず、舞台は英国(メイドものだから当然と言えば当然ですが素晴らしいですね!)
時代は、1930年代、ジョージ5世の治世下である。
と言われてもよく分からんかもしれないので解説を加えると、
彼の二つ前の王様(女王様)がつまりヴィクトリア女王である。
いくらか厳格な人物で、彼女の治世中の時代の空気もそんな感じになった。
分かりやすく言えば、森薫さんのメイド漫画に『エマ』ってのがあるが、
そのエマが作中で活躍してたのが1880年とかで、
そのヴィクトリア女王の時代(在位1901年まで)である。
で、その次の王様がエドワード7世で、
まあ厳格になってた時代の空気が幾らか陽気になった。(在位1901〜1910年)
そしてさらにその次がジョージ5世である。(在位1910〜1936年)
作中に主人公のお爺さんが主人公に向かって『あのヒトラーってやつには気を付けたほうがいい』ってなことを言ってるシーンがある、といえばどういう時代か感覚的に分かりやすいかもしれない。
主人公は、設定的には、
スコットランド地方の片田舎の公爵令嬢(王位継承権34位)ではあるが、
親の代で資産を潰して超貧乏で、兄嫁には邪魔にされるし、イヤな縁談はあるしで、
ロンドンに出てきて仕事を見つけて暮らそうと考える、というようなものである。
で、メイドに化けて色々やったりするんである。
この設定が極めて秀逸だと思う。
主人公は。王位継承権第34番目だけれども、一応は公爵令嬢で、王妃様とも顔見知りだし、宮殿とかにも顔パスで自由に出入りできるし、そこを舞台にもできる。
けれども貧乏は貧乏なので、一般大衆の社会にも紛れ込んで仕事をしたり色々することもあるんである。
つまり、社会のどの層にも飛び込める主人公の設定なんである。
これが極めて作劇上良い効果をもたらしている。
ストーリーはミステリー仕立てで進み、まあ面白いが、
それよりも何よりもこの小説は、登場するディテールにこそ価値があると思う。
例えばメイドの初仕事に出かけた主人公が、お客さん/家人用の正面玄関から入って、使用人が出入りするようの通用口を使うように怒られたりするエピソードとか、その他にも作中に登場するお店の名前とかがいい雰囲気を出している。
英国/イギリスとかメイドとか執事とか、そういうのが好きで、村上リコさんの本とかで勉強までしてしまった、とかいうような私みたいな人にはどストライクな作品であろうと思う。
非常にオススメなので是非ご一読あれ!
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