新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2014年03月17日
設定が変化球なわりに、痛切で美しい恋愛小説
今日紹介するのは 『きらきらひかる』 江國 香織(著) という恋愛小説である。
かなり有名な小説であるから、わざわざ私が紹介するまでもない気がするが、若い人っていうものは、あとからあとからあふれてくるものであって、だから、この小説を知らない人だっていっぱいいるのである。
私がいつのまにかアラサーになってしまうわけである。なんて恐ろしい!
まあ、それはいいとして、この小説は恋愛小説ではあるが、設定がちょっと変化球である。
同性愛者の男と、アルコール依存症気味で情緒不安定な女。
この二人は、それぞれにそのような問題を抱えているにもかかわらず、親の強い勧めで強引にお見合いをセッティングされる。
ふたりは、抱えている問題のせいで、お互いに結婚なんて無理だとおもっていて、結婚する気も無かったので、問題をそれぞれ見合いの相手に暴露する。
だが 『脛に瑕持つ身同士』 だからちょうどいいかもしれない、ということで、互いに秘密を承知の上で、しかし互いの両親にも黙って結婚することにする。
というような設定で、
ふたりはその夫婦関係に、問題はあっても、自分の居場所を見出していく。
けれども、やはり最初から無理がある関係なので、うまくいかない部分がでてきて……。
というような展開になるのである。
夫が同性愛者である夫婦の恋愛小説、ということになるから、普通の恋愛小説のように、性的な関係性は男女の間に薄いのである。
でもそれゆえに、単なる性的・恋愛的な関係をこえた、人が自分の居場所を守ろうとする、その痛切な感情がより浮き彫りになり、心を打つ。
著者ならではの、微視的な、透き通った描写・文章も非常に象徴的な効果を出していて良い。
江國 香織さんの本は、なんかやたら不倫の話とかが出てきて、辟易させるような作品が多いが、この本は貴重な例外のひとつであって、かの人の作品のなかでは最高傑作のひとつだと思う。
一度は読んでおいていい、非常にオススメできる作品である。
中古価格 |