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2014年01月23日
”乾いた”少女漫画――動物漫画の大傑作
今日紹介するのは 『動物のお医者さん』 という作品で、作者はマンガ界の巨匠のひとり、佐々木倫子である。
佐々木倫子というと、かつては白泉社などで連載していたことや、またその絵を見る限りにおいては、一応は少女漫画家ということになるのであろう。
かつて私には、少女漫画というと愛がどうしたとか恋がどうしたとか、そういうことばかりをメインで扱っている、自分には興味が持てないもの、というような偏見があった。
確かに少女漫画には恋愛をメインテーマとしているものは多い。それはおそらく事実であろう。
けれども、少女漫画というものが、そういう作品ばかりではないのも事実なのである。
今日紹介する 『動物のお医者さん』 も恋愛をテーマにしたような話では全然ない。
佐々木倫子という漫画家の描く人間関係は、むしろ恋愛とかそういう情念っぽいものの真反対にある。
今日紹介する作品は、内容としては、
北海道は札幌にある大学の獣医学部に通う、大学生たちとその周囲の動物たちの日常を面白楽しく描いた作品ということになるだろう。
この作品にでてくる人間関係は、穏やかであり、笑いがあり、非常に面白くもあるが、
しかし、それでいてひどく無機質な乾いた印象すら感じさせる。
恋だのなんだのということは、ほとんど出てこない。
この漫画の特徴的なところは、登場する動物たちが極めてリアルな筆致で描かれていながら、
しかし同時に、汗の記号や、怒ったときの血管の記号などが書きこまれ、かつ、動物たちの心の声が、背景にレタリングされているところである。
絵画的リアルな表現と、
漫画的な記号表現の融合の見事な事例であろうと思う。
コミックが累計で数千万部を売り上げ、かつドラマ化もされ、というような作品であり、面白さは保証できる。
未読の方がおられれば是非とも読んでいただきたい。
白泉社文庫のほうが非常に安い中古があるので、個人的にはそちらをオススメするが、
最近出版された愛蔵版には、巻末記事や連載当時のカラー口絵が収録されているらしい。
商品リンクはその二種類を貼っておくので、お好みのほうを選んでいただきたい。
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2014年01月18日
動物小説というジャンル
私は名もなきワナビ(小説家になりたい人)である。
そういうワナビは 『小説の書き方』 とか 『小説作法なんとか』 とか、そんな感じの、小説の書き方を教えてくれるウェブページなどにアクセスし、小説の書き方を勉強したりするわけである。
そして私が以前読んだページにこんなことが書いてあった。
『あまり幼い幼児は主人公にするには適しません(意訳)』 と言うことだそうである。
確かに幼児は、自ら移動できる行動範囲が狭く、語彙も少ない。
ゆえに、幼児を主人公において小説を書くべきでない、という主張は、確かにある程度の正当性があると思う。
けれども、常に、行動範囲が広く、語彙の多い存在を、主人公として置かねばならないのかと言われればそんなことはないのである。
なんとなれば世の中には動物を主人公に置いた 『動物小説』 というジャンルがあるのである。
動物が主人公だから、もちろん語彙はゼロである。幼児以下である。
行動範囲も、動物であるから、自分の脚で動ける範囲こそ幼児を上回るかもしれないが、犬猫などのペットは別にして、野生動物などは、自動車や電車などの交通機関を利用できないから、行動範囲はある面で幼児よりも狭い。
それでも、その 『動物小説』 にも名作といわれるものは数多くあるのである。
というわけで、今日紹介するのは、 『牙王物語』 戸川幸夫 著
という 『動物小説』 である。
この戸川幸夫という人は 『動物小説』 というジャンルで小説を数多く書いている人なのである。
この 『牙王物語』 は内容としては、
人に飼われていた狼が脱走して、現地(北海道は大雪山)の野犬と交わり、一匹の狼犬が生まれる。
色々あってその狼犬は牧場の娘の早苗に飼われることになる。
そしてまた色々あって、その狼犬が逃げ出して野犬の群のボスになったり、流浪の果てに飼い主の早苗と感動の再会をしたりするわけだが、ある嵐の夜に、飼い主の早苗が野生の熊に……
とこれ以上言うとネタバレになってしまうので、このあたりでやめにするが、もう一大感動巨編と言ってもいいくらいの”泣ける”本でもある。
動物小説のなかでは、十指に入る傑作であると思う。
是非ともご一読をオススメしたい。
アマゾンでは、文庫版のほうに、商品イメージや解説がなかったので、商品リンクは、単行本と文庫と両方貼ってある。
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動物小説を書き手としては、他にも、日本では椋鳩十、外国では『狼王ロボ』などのシートン動物記シリーズで知られる、アメリカの博物学者アーネスト・トンプソン・シートンなどが有名だろう。
動物小説というのはひとつの大きな鉱脈なので、是非とも掘ってみられることをオススメする。
非常に美しい世界がそこには広がっていることだろう。