新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2015年04月21日
近未来の戦場
今日、ご紹介したいのは、
『富士学校まめたん研究分室』芝村 裕吏 (著) である。
おおまかなあらすじは、
自分に責任の無いゴタゴタに巻き込まれて、左遷されてしまった、コミュ障系アラサー女性技術者(自衛隊技官)が、ルサンチマンを燃料にして、ヒマにまかせて無人兵器を開発する。
というようなものである。
一応は恋愛要素も含んではいるが、その本質は軍事・工学系の小説である。
題名に『まめたん』とあるけれども、カバーイラストに描かれてあるように、この小説で主役をはるガジェットは、ロボット兵器である。
若干ネタバレになるが、小説中には、戦場における『随伴歩兵』の役割を代替させるための兵器というコンセプトで主役メカの開発がなされる。
しかし、小説を読む限りでは、
この兵器は、重機関銃などを搭載し、段差なども乗り越えて自走し、ネットワーク化された複数の機体で情報を共有し、いくらかの自律的な判断も行う。
そして、指揮をする人間を補佐しながら、市街戦をすら普通にこなすので『戦車の随伴歩兵』というよりは、歩兵の代替そのものであるように描かれている。
簡単に言えば、
ひとり、もしくは少数の、生身の人間の指揮官のまわりを、
自走するセントリーガンみたいな無人兵器が複数とりまいて、
大まかな指示だけを人間が出して、実際の戦闘は無人兵器がおこなう。
このような未来図は、バッテリーの容量などのハードの面や、情報の処理や判断といったソフトの面の両方でまだまだ課題があるので、実現するのはまだまだ先のことであろうと思われるが、しかし、おそらく遅かれ早かれ実現するものではあろうと思う。
なぜなら、
イラクでもどこでもそうだが、航空機などで正面戦力を撃破したあとは、戦争後に、その地域の治安を維持したり、抵抗勢力を掃討したりするために、歩兵が投入されるのである。
しかし、歩兵は戦車やら航空機やらと違って、生身の人間であるから、脆くて傷つきやすく、損害がたくさん出る。
そしてその人的損害は、国民感情的にも政治的にも容認しがたいものがある。
であるならば歩兵の損害を低減するために、無人兵器に活路を見出そうとするのは自然な流れであり、実際にそのような研究もなされている。
この小説は極めて現実的な近未来の戦場を描き出している。あり得べき未来の戦場である。
故に一読の価値がある作品であろうと思う。
中古価格 |
タグ:無人兵器
2014年06月28日
潜水艦が大活躍するマンガと、潜水艦についての資料本
今日は潜水艦についての資料本・オススメ本を紹介しようと思う。
まず、紹介するのは『沈黙の艦隊』というマンガである。
このマンガは、日本が極秘裏に開発した原子力潜水艦『やまと』が、
エリート自衛隊士官であり、天才的な操艦技術を持つ潜水艦艦長の海江田四郎によって、試験航海中に乗っ取られる。という筋立てで始まる。
この作品は、ストーリーが進むにつれて、
日米安保体制の信頼性、世界政府、政治と軍事の分離、平和を作り出すための構造、
などというふうに興味深い考え方が色々と提示される。まさに一読の価値があるマンガではある。
けれども、そういう細かいことはまあいいのである。
このマンガの価値がどのあたりにあるかというと、
それは何をおいても 「潜水艦が大活躍するマンガ」 ということなのである。
終戦記念日に放映されるドラマや映画の特番などが、その筆頭格かもしれないが、
マンガやアニメなどでも、潜水艦が活躍する話というのは、わりとある。
例えば最近だとアニメの『蒼き鋼のアルペジオ』あたりになるだろうか。
そして、そういう潜水艦が活躍するような作品を鑑賞するためには、
潜水艦の知識を事前に仕入れておくほうが楽しめるものなのである。
例えば、前述の『蒼き鋼のアルペジオ』の主役メカは潜水艦なわけだが、
その潜水艦のブリッジにはヘッドホンを付けた女性のクルーがいる。
彼女はいったいヘッドホンなどつけて、いったい何をしているのか?
そういうことも潜水艦についての一般常識を持っておけばすぐに分かる。
また、その潜水艦が魚雷の撃ちあいとかして、その魚雷が爆発する直前に、
艦長の男がその女性クルーに向かって「ミュート!」と叫ぶシーンがあるのだが、
その言葉の意味だって分かるようになるのである。
そして、そういうふうに潜水艦ってこんなもんなんだなと、最低限のイメージを掴むためには、この『沈黙の艦隊』というマンガは最適であろうと思う。
これほどに潜水艦を主役に据え、かつ潜水艦が大活躍するマンガを私は他に知らない。
非常にオススメである。
中古価格 |
沈黙の艦隊 全32巻完結(モーニングKC ) [マーケットプレイス コミックセット] 中古価格 |
あと、このマンガを読んで、もっと詳しく潜水艦について知りたくなったという場合には
学研の 『最強 世界の潜水艦図鑑』 が良い資料になるだろう。
写真や図版を多用しており、値段が高くないわりに、非常に分かりやすく良い本である。
中古価格 |
2014年01月05日
騎士団
小説投稿サイトの 『小説家になろう』 には、
中世・近世ヨーロッパ風のライトファンタジーの作品が数多い。
というわけで、騎士団が登場する作品も数が多いのであるが、
実のところ、それらの小説で、登場する 『騎士団』 をリアリティーをもって描けているものは数が少ないと思う。
その小説の作者が『騎士団』というものに対して、なんとなく、騎兵を主体にした武装集団、というようなイメージしか持ち得ないのかもしれない。
ひどいものになると、女主人公のための逆ハーレムの男の供給元でしかなくなっている場合もある。
で、そういうのではなくて 『騎士団』 をちゃんとリアリティーをもって書きたい人のための資料本を紹介しようと思う。
その名もズバリ『騎士団 (Truth In Fantasy)』 である。
・騎士団の起源とその成立
・ノルマン騎士団
・宗教騎士団
・スペインの騎士団
・騎士団の凋落
・遊戯・名誉としての勲爵士騎士団
などについてとても詳しく書いてある。
騎士団を小説中に登場させたいワナビなら、手元にあって損はないだろう。
中古価格 |
2013年12月19日
兵器・武器と世界観との関係
今日紹介するのは 『決定版 世界を変えた兵器・武器100』 という本である。
兵器や武器についての資料というのは、世にたくさんある。
だから、別に私が紹介せずとも、どれでも好みのものを選べばよいのであるが、
今日紹介する本は 『世界を変えた兵器・武器』 と限定しているところがすばらしいのである。
どのようにすばらしいのかというと、
異世界トリップ小説などを書いていると、ストーリーの展開によっては、
その異世界の兵器や武器なども設定する必要がある場合がある。
けれども、兵器や武器というものは、それ単独で存在しているのではなくて、
他の要素との関連において存在しているのである。
例えば機関銃のような連射性能の高い武器があるとする。
↓
そうするとその世界では、歩兵は密集した隊列を組めなくなり、散兵が基本になる。
↓
散兵が基本ということは、貴族にむりやり戦場に駆り出されたような、あまり士気の高くない強制徴募の兵は使いにくくなり、
↓
高い兵の士気が必要だということになれば、その士気の前提として、ひょっとすると国民国家の存在が必要になってくるかもしれない。
と、このように、ある種の武器や兵器は、それが存在することによって、小説世界のありようすら変えてしまうことがあるんである。
だから、世界観の設計についての資料としては、色々な兵器や武器を、単に数多くずらりと並べたような資料よりは、今日紹介するような、世界そのものとの関連で書いてあるもののほうが良いだろう。
というわけで今日の本は、兵器や武器の資料としてとてもオススメである。
中古価格 |
2013年12月04日
機関銃という恐るべきもの
欺瞞に過ぎない考え方だが、戦争には、かつてある種のロマンがあった。
見るも鮮やかな軍装に身を包んで隊列を組み、士官の発する突撃の合図に合わせ、前進する歩兵の戦列。襲い来る銃弾も砲弾も意に介さぬその様は正に一匹の獣の如し。
鼓手や喇叭手の奏でる音に、銃弾の擦過音やら大砲の爆轟が重なり、それは戦場の音楽となる。
歩兵の敵戦列への接近とタイミングを合わせて、今度は騎兵が動き出す。
よく訓練された軍馬にまたがり、優速を生かして敵戦列の側面や後背に回り込むと、接近と両腰に挿したピストルを片方ずつ発射し腰に戻す。
それから抜剣の合図に合わせて、サーベルを抜き放ち、敵の頭上に振り下ろすのだ。
嗚呼、数多の苦痛と絶叫があれど、そは我等の戦の庭よ。
数多の死と悲惨があれど、そこには勇気と献身が輝くのだ。
兵士よ、そは我等の誇り。
讃えよ、讃えよ! 戦陣に斃れしものを。
私の文章が下手なのでまあちょっと伝わらないかもしれないが、おおむねこんな感じである。
でももう、いまとなってはそんなロマンとやらは欠片もなくなったし、というか元からロマンなど無いという現実が、白日の下にさらされるようになった。
敵に突撃すると言ったって、機関銃でズババババとやられれば、どうにもならないのである。
そして、戦場のロマンも同様に打ち砕かれたのだ。
科学技術は一般的に、戦争を身も蓋もないものにしたが、そのなかでも機関銃の発明は極めて重要な出来事である。
というわけで、今日紹介するのは 『機関銃の社会史 (平凡社ライブラリー)』 だ。
これは、機関銃と、それが社会や人々の心に与えた影響についての本である。
軍事関連の資料としては極めて重要な本であると思うのでとてもオススメである。
中古価格 |
2013年11月26日
中世の兵士
今日紹介するのは、
『中世兵士の服装: 中世ヨーロッパを完全再現! [単行本(ソフトカバー)]』
という本である。
この本は、amazonの商品のイメージを見るとよくわかるが、版型が大きなだけあって、大きな写真がたくさん使われている。
写真では、モデルの人が、中世兵士の服装を、甲冑はもちろん、下着にいたるまで再現し、実際に着て見せてくれている。
私が、この本で個人的に良いと思ったのは、中世の兵士がはいていたパンツの写真があったところだ。
中世ヨーロッパ風異世界トリップ系小説では、主人公は着の身着のまま異世界にトリップするというパターンが多い。
そんな場合に、主人公は、最初に穿いていた同じパンツを永遠に穿き続けるわけにもいかないから、替えの下着を現地で調達する、という展開があるわけである。
ワナビの皆様が、そういう展開を書くときに、この本で中世ヨーロッパのパンツをよく見ておけば、描写により一層の説得力が加わるだろう。
新品価格 |
2013年11月22日
戦記ものには誘拐の描写が足りない!
今日紹介するのは
【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777)) である。
この本を読むと、昔の戦争にどれほど誘拐がつきものだったのかが分かる。
この本の中に、とある雑兵が妻にあてて書いた手紙が出てくる。
内容を要約すると、
『やあ、ハニー、元気かな?
今度の戦争で、子供をひとり誘拐して帰ることにするので、
連れて帰ったら家の雑用係として使おうね☆』
となる。
もうドン引きである。
これが、リアルの戦場だッ!!
ワナビさんたちは読んでぜひ参考にしていただきたい。
【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777)) である。
この本を読むと、昔の戦争にどれほど誘拐がつきものだったのかが分かる。
この本の中に、とある雑兵が妻にあてて書いた手紙が出てくる。
内容を要約すると、
『やあ、ハニー、元気かな?
今度の戦争で、子供をひとり誘拐して帰ることにするので、
連れて帰ったら家の雑用係として使おうね☆』
となる。
もうドン引きである。
これが、リアルの戦場だッ!!
ワナビさんたちは読んでぜひ参考にしていただきたい。
【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777)) 新品価格 |
2013年11月21日
『殺すKAKUGO』のシーンを書くときに資料になる本
今日紹介するのは『殺すKAKUGO』のシーンを書くときに資料になる本だ。
『殺すKAKUGO』といっても、分からない人も多いかもしれないから説明しよう。
これは『小説家になろう』などの小説投稿サイト主流である異世界トリップ系の小説のストーリー展開の一種をあらわす言葉である。
その展開というのは例えば、
ごくごく普通の学生さんやニートさんなどが、ある日突然、異世界にトリップしてしまうのだ。
そいで、その平和な日本人であるところの主人公さんは、トリップした先の、文明が未発達で治安の悪い異世界において、野盗とかに襲われるんですね。
そうすると、正当防衛として、その野盗を主人公は殺したりするストーリー展開になるわけです。
しかし、ごく平凡な日本人であるところの主人公が、正当防衛とはいえ、平然と殺人をすると、ちょっとばかし、違和感があるなということです。
そういうとき主人公の内面で『殺す覚悟』を固めるという、心理描写の手続きをふむ必要があるわけです。
作者さんそれぞれに工夫をこらして書いてあるわけですが、はっきりいって下手なのも多いですから、どこか、殺す覚悟()というか、殺すKAKUGO、と言いたくなるようなものも多いわけですね。
じゃあ、どうすりゃいいんだと言われたら、当ブログとしては、資料本にあたってリアリティーを増すようにしてみるのはどうですかとなるわけです。
で、紹介するのが、
戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫) である。
この本は、心理学者かつエリート軍人でもある著者が、人を殺すというのはどういうことなのか、殺す側の心理はどういうことになってるのかという問題を、豊富な事例によって分析していくという本になる。
アメリカの軍士官学校の教科書にもなっているという、極めて本物臭のする良書である。
すごく、おすすめです。
新品価格 |
2013年11月11日
戦争は補給が大事とよく言うけれど
今回、紹介するのは、戦争における補給、について書かれた本である。
小説を書いていると戦争シーンなんかが出てくることはあるかもしれない。
なろう小説で戦記とか、戦記でなくても戦争のシーンのある小説なんか書くときはそうかもしれない。
そのようなときに役立つかもしれない本である。
戦争は 『補給と情報が大事』 って、よく言う。
なろう小説とかでは単に会戦のシーンだけ書くのではなくて、その前段階の下準備、つまり補給の算段なんかも描写しておくと、一気にストーリーにリアル感マシマシでもあろう。
それでそのための資料となるだろうこの本には、
昔の自動車化されていない軍隊にとって、補給がいかに大変だったかが書かれている。
そのために、戦争は必然的に略奪をともない、
それゆえにも、戦争はどうしようもない陰惨さをともなうのだということが、よく分かる。
どういうことかというと、
自動車のない昔の時代には、当然ながら兵士の食糧とかそういう補給物資も、
人の背中やら馬の背中やら馬車やらで運んでいたんである。
そうすると、
その補給部隊に所属する、人やら馬やらも、
前線部隊に補給物資を運んでいくその行程で物資を消費してしまうのである。
補給基地と、前線部隊の距離が近ければ、そういうロスはほとんどないが、
部隊が戦闘に勝って、どんどん前線が押し上げられていくと、補給もどんどん大変になってくる。
話を単純化するために補給物資をハンバーガーだと考えてみよう。
補給部隊の兵1人に、補給物資としてハンバーガーを100個ほど背負わせて、
前線に運ばせるとする。
そうすると補給部隊の彼の食事として、
朝食・昼食・夕食で1日あたり3個消費するわけである。
もし彼が前線まで10日かかって歩くとしたら、前線に着くころには、ハンバーガーは70個に減っていることになる。
前線まで20日かかったら、40個しか届かない。
しかし補給部隊の兵士の彼は手持ちの食料を全て前線部隊に渡すわけにはいかないのである。
なぜなら彼が出てきた元の場所に帰るまでの食料も必要だからなのである。
つまりハンバーガーを100個背負って10日かかって前線に着くと、
行く道での食料に30個消費する。
そして前線部隊に40個渡し、
帰り道での食料に30個消費するわけだ。
もちろんハンバーガーなら100個と言わずもっと背負えるだろう。
だからもう少し効率は改善するかもしれない。
あるいはその辺の草とかを食料にしてくれる馬やらを用いることはできるだろう。
けれども、これは全く人間の食料のことだけ考えた場合の話であって、
実際は、弾薬がどうとか、予備の武器がどうとか、炊飯のための薪が必要だとか、
なんだかんだと色々いるわけである。
補給部隊の負担はさらに増し、ということは荷物を運ぶ人間やら馬やらがさらに増え、
そうなると補給部隊が消費する食料はさらに多くなり・・・・・・
そんなんやってられっか! となるわけである。
それならどうするかというと、
前線になるであろう国境近くにあらかじめ補給物資を集積した倉庫を建てておくとか、
色々とやりようはあるみたいであるが、
まあ現地調達すれば補給部隊要らないよねとなるのは、当然の流れである。
戦場で軍隊に物資を売ってくれる酒保商人に、お金を払って買うとかできればいいが、そううまくいかない場合には、徴発ということになって、つまりは現地住民からの略奪である。
軍隊ってのはつまり暴力のための集団でもあるから、ときに自制心を失うこともあって、略奪、暴行、強姦、殺人、放火と、このように流れて行ってしまうのは少なくとも近代以前の軍隊ではありがちなことである。
だからこそ、この本を読んだ後は、
『正義の』主人公が神算鬼謀を尽くして戦争に勝つ
というような小説を書くことができなくなるかもしれない。
戦争にはおそらく必然として悪が内在しているのだという認識を得てしまうからである。
小説を書いていると戦争シーンなんかが出てくることはあるかもしれない。
なろう小説で戦記とか、戦記でなくても戦争のシーンのある小説なんか書くときはそうかもしれない。
そのようなときに役立つかもしれない本である。
戦争は 『補給と情報が大事』 って、よく言う。
なろう小説とかでは単に会戦のシーンだけ書くのではなくて、その前段階の下準備、つまり補給の算段なんかも描写しておくと、一気にストーリーにリアル感マシマシでもあろう。
それでそのための資料となるだろうこの本には、
昔の自動車化されていない軍隊にとって、補給がいかに大変だったかが書かれている。
そのために、戦争は必然的に略奪をともない、
それゆえにも、戦争はどうしようもない陰惨さをともなうのだということが、よく分かる。
どういうことかというと、
自動車のない昔の時代には、当然ながら兵士の食糧とかそういう補給物資も、
人の背中やら馬の背中やら馬車やらで運んでいたんである。
そうすると、
その補給部隊に所属する、人やら馬やらも、
前線部隊に補給物資を運んでいくその行程で物資を消費してしまうのである。
補給基地と、前線部隊の距離が近ければ、そういうロスはほとんどないが、
部隊が戦闘に勝って、どんどん前線が押し上げられていくと、補給もどんどん大変になってくる。
話を単純化するために補給物資をハンバーガーだと考えてみよう。
補給部隊の兵1人に、補給物資としてハンバーガーを100個ほど背負わせて、
前線に運ばせるとする。
そうすると補給部隊の彼の食事として、
朝食・昼食・夕食で1日あたり3個消費するわけである。
もし彼が前線まで10日かかって歩くとしたら、前線に着くころには、ハンバーガーは70個に減っていることになる。
前線まで20日かかったら、40個しか届かない。
しかし補給部隊の兵士の彼は手持ちの食料を全て前線部隊に渡すわけにはいかないのである。
なぜなら彼が出てきた元の場所に帰るまでの食料も必要だからなのである。
つまりハンバーガーを100個背負って10日かかって前線に着くと、
行く道での食料に30個消費する。
そして前線部隊に40個渡し、
帰り道での食料に30個消費するわけだ。
もちろんハンバーガーなら100個と言わずもっと背負えるだろう。
だからもう少し効率は改善するかもしれない。
あるいはその辺の草とかを食料にしてくれる馬やらを用いることはできるだろう。
けれども、これは全く人間の食料のことだけ考えた場合の話であって、
実際は、弾薬がどうとか、予備の武器がどうとか、炊飯のための薪が必要だとか、
なんだかんだと色々いるわけである。
補給部隊の負担はさらに増し、ということは荷物を運ぶ人間やら馬やらがさらに増え、
そうなると補給部隊が消費する食料はさらに多くなり・・・・・・
そんなんやってられっか! となるわけである。
それならどうするかというと、
前線になるであろう国境近くにあらかじめ補給物資を集積した倉庫を建てておくとか、
色々とやりようはあるみたいであるが、
まあ現地調達すれば補給部隊要らないよねとなるのは、当然の流れである。
戦場で軍隊に物資を売ってくれる酒保商人に、お金を払って買うとかできればいいが、そううまくいかない場合には、徴発ということになって、つまりは現地住民からの略奪である。
軍隊ってのはつまり暴力のための集団でもあるから、ときに自制心を失うこともあって、略奪、暴行、強姦、殺人、放火と、このように流れて行ってしまうのは少なくとも近代以前の軍隊ではありがちなことである。
だからこそ、この本を読んだ後は、
『正義の』主人公が神算鬼謀を尽くして戦争に勝つ
というような小説を書くことができなくなるかもしれない。
戦争にはおそらく必然として悪が内在しているのだという認識を得てしまうからである。
補給戦 何が勝敗を決定するのか (中公文庫) [ マーティン・ヴァン・クレヴェルト ] 価格:1,571円 |