2015年03月11日
商船を主役に据えたSFは案外めずらしいぞ!
なんだか久しぶりであるが、今日ご紹介しようとしているのは、
『大航宙時代』−星海への旅立ち− ネイサン・ローウェル著・中原尚哉訳 である。
この本は商船員を主人公に据えた小説だ。
あらすじとしては、母親が事故でなくなったので、その家に住めなくなって、仕方がないから商船の船員になる、というような筋立てである。
あんまり血が沸いて肉が躍るような描写はない。
主人公も大体のことを順調にこなしていく、ある意味ストレスフリーのなろう小説にも似ていると言えるかもしれない。
でもじゃあハラハラドキドキしないから、面白くないのかと言えばそんなことはない。
主人公が新しい環境に適応していく様子を描いた青春小説めいたものとしても読めるし、なにより主人公たちが交易でお金儲けをしようとするのであるが、そういうお金儲けにまつわるワクワク感を表現している小説としても面白いと思う。
本格的に自分で商売をしたことがなくても、例えばアフィリエイトサイトを作ってみたり、株をちょっと買ってみたり、あるいはネットオークションで何かを出品してみたりというようなときに感じるある種の密かな楽しさみたいなものは皆様も覚えがあるかもしれない。この小説はそういう楽しさがあるも思う。
ディビットウエーバーのオナーハリントンシリーズなんかを筆頭として、ホーンブロワ―みたいな海洋冒険小説の舞台を宇宙に移し替えた系の小説はこれまであって、そしてそういう物語の主人公は大抵が軍人なのである。
けれども、海洋での冒険は何も軍人や軍艦に限らないのであって、むしろ大航海時代の主役は商人と商船であると思う。
だからそれの宇宙バージョンである本作品は、やっと来るべきものが来たか! という気もするんである。
この作品の設定で、乗組員がその職位?(階級?)に応じて船の?株を持つという描写がある。
例えば主人公は一番の下っ端だから四半株である。
(出世するとこれが半株とか一株とかになるらしい)
そんで、その持ち株に応じて、船員各自に割り当てられた「質量割り当て」があって、主人公たちはその割り当てのなかで物品を売り買いして交易をするんである。
でも、こういう制度はこの小説の発明した設定ではなくて、昔からあったようで、例えば昔のヴェネチアのガレー船の船員は幾らか私物を持ち込んで個人交易ができたとか、アフリカで象牙とか金とか買い付けてた船の船員は、自分個人用にも幾らか買って、無事にヨーロッパに戻れたらそれを売って大儲けとかしてたらしいとものの本で読んだことがある。
つまりこの小説は故事にならって実にツボを押さえた良い設定がなされているといえるだろう。
この小説シリーズは非常に、非常に期待できるといえるだろう。
とってもオススメである!
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