『下天を謀る』安部龍太郎(新潮社)
上巻
【「その日を死に番と心得るべし」との覚悟で幾多の合戦を生き抜いた藤堂高虎。織田信長亡き後、豊臣家に三顧の礼を持って迎え入れられるが、秀吉は茶々との愛欲に溺れ、天下人としての資質を失っていく。落胆した高虎は一時出家さえ試みるが、徳川家康から届いた一通の手紙に心を動かされ、再び下天を謀る決意を固める―。「戦国最強」との誉れ高い異能の武将を描く本格歴史小説。】
下巻
【石田三成らの讒言により豊臣家から疎まれた藤堂高虎は、家康の人柄に魅了され徳川家に接近。類い稀なる諜報能力を駆使して、家康の危機を救うこととなる。そして訪れた太閤秀吉の死。高虎は外様でありながらいち早く旗幟を鮮明にして東軍に付き、雌雄を決する合戦に挑む。その唯一の望みは民が平和に暮らせる世―。激動の時代を怜悧な判断力で巧みに生き抜いた男の人生を描く。】
藤堂高虎が主人公の本といえば、数年前に火坂雅志の『虎の城』を読んだことがあるので
今回それと比べながら読んでいました。
『虎の城』の方が娯楽色が強かったように思いました。
どっちの本も戦国時代に主を何度も替えるのは珍しいことではないと書いてありました。
高虎は何度も主を替えた後、命を懸けて仕えるに値する主人秀長と出会います。
秀長の下で国を治めるとはどういうことか学び、築城の才能を開花させます。
秀長は部下を本気で育ててくれる理想の上司ですねー。
『虎の城』では高虎の後継問題が有耶無耶になっていてそれがとても残念だったので、こっちではどういう風になっているのか気になっていました。
秀長の養子だった高吉を自分の跡継ぎにするからと藤堂家に引き取った高虎でしたが、数年後実子が生まれて悩みます。
『虎の城』では高虎自身が悩んでいる姿が全然描かれず、秀長との約束を守れずに結局実子の高次を跡取りにしたことを高虎がどう思っているかも書かれていませんでした。
作者、秀長との約束の事忘れてるんじゃないかと思ったほどでした。
『下天を謀る』では家康の命令というわかりやすい理由で高次が跡取りに決まります。
そして秀長の墓前で高虎が高吉に跡取りのことを告げます。
一方秀長の死後、大和郡山を継いだ秀長の養子秀保が急死しあっけなくお家断絶になってしまいます。
『下天を謀る』でも『虎の城』でも秀保は湯治場で暗殺されてましたが、これって事実なんですかね。
前々回の『真田丸』で秀保が出てました。セリフなくているだけでしたけどドラマに秀保登場したのって初めてじゃないですか?
今年の大河ドラマが『真田丸』に決まった時、秀長出ないんじゃないかと思っていたので、出番は少なかったですが見せ場はあって扱いも良かったので嬉しかったです。
『軍師官兵衛』の時なんて、ただいるだけで扱いも悪かったですからね。
上巻の半ばで秀長は死んでしまい、その後高虎は家康と強く結びつき、家康の下で力を発揮します。
下巻は関ヶ原から始まります。
関ヶ原の合戦から大阪冬の陣の間に徳川家の内部でも色々事件が起こり面白い展開でした。
加藤清正って大坂夏の陣より何年も前に病死してたとは知りませんでした。
豊臣家滅亡を見ずにすんで良かったのかなあと思います。