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2018年05月17日

自己責任 【呪われた怖い話】





予めお断りしておきます。



この話を読まれたことで、
その後に何が起きても保証致しかねます。


自己責任のもとでお読み下さい。


今から5年前、私は中学生だった頃に、
一人の友達を亡くしました。

表向きの原因は精神病でしたが、
実際はある奴等に憑依されたからです。


私にとっては忘れてしまいたい記憶の一つですが、
先日、古い友人と話す機会があり、
あの時のことをまざまざと思い出してしまいました。



文章にすることで少し客観的になれ、
恐怖を忘れられると思いますので、ここに綴ります。


私たち(A・B・C・D・私)は皆、家業を継ぐことになっていて、
高校受験組を横目に暇を持て余していました。


学校側も、私たちがサボったりするのは
受験組の邪魔にならなくていい、と考えていたようで、

体育祭が終わった以降は朝学校に出て来さえすれば、
抜け出しても滅多に怒られることはありませんでした。



ある日、

AとBが近所の屋敷の話を聞いてきました。

改築したばかりの家なのに、持ち主が首を吊って自殺し、
一家は離散。


今は空き家になっているというのです。


サボった後のたまり場の確保に苦労していた私たちは、
そこなら酒やタバコが思う存分できると考え、
翌日すぐに昼から学校を抜けて行きました。


外から様子のわからないような、とても立派なお屋敷で、
こんなところに入っていいのか、少しビビりましたが、

AとBの二人は「大丈夫!」を連発しながら、
どんどん中に入って行きます。


既に調べを付けていたのか、勝手口が開いていました。


書斎のようなところに入り、窓から顔を出さないようにして、
コソコソと酒盛りを始めました。


でも、大声が出せないのですぐに飽きてきて、
5人で家捜しを始めました。



すぐにCが「あれ何や」と、
今いる部屋の壁の上の方を指差しました。

壁の上部に、学校の音楽室や体育館でよく見る、
放送室のような感じの小さな窓が二つ付いているのです。


「こっちも部屋か」


よく見ると、壁のこちら側にはドアがあるが、
本棚で塞がれていました。


肩車をすると、左上の方の窓は手で開きました。


今思うと、

その窓から若干悪臭が漂っていることに、
その時は疑問を持つべきでした。


それでもその時の、
こっそり酒を飲みたいという願望には勝てず、
無理矢理に窓から部屋に入りました。


部屋にはカビやホコリと、
饐えたような臭いが漂っています。



雨漏りしているのか、じめっとしていました。


部屋は音楽室と言えるようなものではありませんでしたが、
壁には手作りで防音材のようなものが貼ってあり、
その上から壁紙が貼られていることはわかりました。


湿気で壁紙はカピカピになっていました。


部屋の中はとりたてて調度品もなく、質素な作りでしたが、
小さな机が隅に置かれており、
その上に真っ黒に塗りつぶされた写真が、
大きな枠の写真入れに入ってました。


「なんやこれ、気持ち悪い」


と言って、

Aが写真入れを手に取り、持ち上げた瞬間、
額裏から一枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛が
バサバサと出てきました。


紙は御札でした。


みんな、ヤバイと思って、声も出せませんでした。

顔面蒼白のAを見て、
Bが「急いで出よう」と言いながら
逃げるように窓によじ登った時、
そっち側の壁紙全部がフワッと剥がれました。


写真の裏から出てきたものと同じ御札が、
壁一面に貼ってありました。


「何やこれ・・・」


酒に弱いCはその場でウッと、反吐しそうになりました。


「やばいてやばいて」

「吐いてる場合か急げ」

よじ登るBの尻を、私とDでグイグイ押し上げました。


何がなんだか、訳がわかりませんでした。

後ろでは誰かが、

「いーーー、いーーー」

と声を出しています。


きっとAです。祟られたのです。

恐ろしくて振り返ることも出来ませんでした。


無我夢中でよじ登って、反対側の部屋に飛び降りました。


Dも出てきて、部屋側から鈍いCを引っ張り出そうとすると、

「イタッイタッ」

Cが叫びました。


「引っ張んな足!」

部屋の向こうでは、
Aらしき声がワンワン変な音で呻いています。


Cは余程すごい勢いでもがいているのか、
足でこっちの壁を蹴る音がずんずんしました。


「B!かんぬっさん連れて来い!」


後ろ向きにDが叫びました。


「なんかAに憑いとる!
裏行って神社のかんぬっさん連れて来いて!」

Bが縁側から裸足でダッシュしていき、
私たちは窓からCを引き抜きました。


「足!足!」

「痛いか?」

「痛うはないけど、なんか噛まれた」

見ると、

Cの靴下のかかとの部分は
丸ごと何かに食いつかれたように、
丸く歯形が付いて唾液で濡れています。


相変わらず中からはAの声がしますが、
怖くて私たちは窓から中を見ることが出来ませんでした。

「あいつ、俺に祟らんかなぁ」

「祟るてなんや!Aはまだ生きとるんぞ!」

「出てくる時、めちゃくちゃ蹴ってきた・・・」



『しらー!』

縁側からトレーナー姿の神主さんが、
真っ青な顔して入って来ました。


「ぬしら何か!何しよるんか!馬鹿者が!」

一緒に入って来たBはもう、
涙と鼻水でぐじょぐじょの顔になっていました。


「ええからお前らは帰れ。
こっちから出て、神社の裏から社務所入って
ヨリエさんに見てもらえ。あと、おい!」

と、いきなり私を捕まえ、
後ろ手にひねり上げられました。

後ろで何か『ザキッ』と音がしました。

「よし、行け!」

そのままドンと背中を押されて、
私たちは訳のわからないまま走りました。



それから裏の山に上がって神社の社務所に行くと、
中年の小さいおばさんが、白い服を着て待っていました。


めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、
それから後は、逃げた安堵感でよく覚えていません。





次の日から、Aが学校に来なくなりました。

私の家の親が神社から呼ばれたことも何回かありましたが、
詳しい話は何もしてくれませんでした。


ただ、山の裏には絶対行くな、とは言われました。


私たちも、あんな恐ろしい目に遭ったので、
山など行くはずもなく、学校の中でも、
小さくなって過ごしていました。


期末試験が終わった日、

生活指導の先生から呼ばれました。


今までの積み重ねをまとめて大目玉かな、
殴られるなと覚悟して進路室に行くと、
私の他にもBとDが座っています。

神主さんも来ていました。

生活指導の先生などいません。


私が入ってくるなり、神主さんが言いました。


「あんなぁ、Cが死んだんよ」

信じられませんでした。



Cが昨日学校に来ていなかったことも、その時に知りました。


「学校さぼって、こっちに括っとるAの様子を
見に来よったんよ。

病院の見舞いじゃないとやけん、
危ないってわかりそうなもんやけどね。

裏の格子から座敷のぞいた瞬間に、
ものすごい声出して倒れよった。

駆けつけた時には白目むいて、虫の息だった」



Cが死んだのに、そんな言い方ないだろうと思って、
ちょっと口答えしそうになりましたが、
神主さんは真剣な目で、私たちの方を見ていました。


「ええか、Aはもうおらんと思え。
Cのことも絶対今から忘れろ。

アレは目が見えんけん。

自分の事を知らん奴のところには憑きには来ん。

アレのことを覚えとる奴がおったら、
何年かかってもアレはそいつのところに来る。

来たら憑かれて死ぬんぞ。

それと、後ろ髪は伸ばすなよ。

もしアレに会って逃げた時、
アレは最初に髪を引っ張るけんな」

それだけ聞かされると、
私たちは重い気持ちで進路室を出ました。


あの時、神主さんは私の伸ばしていた

後ろ毛をハサミで切ったのです。


何かのまじない程度に思っていましたが、
まじないどころではありませんでした。


帰るその足で床屋に行き、丸坊主にしてもらいました。


卒業して家業を継ぐという話は、
その時から諦めなければいけませんでした。



その後、

私たちはバラバラの県で進路につき、
絶対に顔を合わせないようにしよう、

もし会っても他人のふりをすることに
しなければなりませんでした。


私は1年遅れて隣県の高校に入ることができ、
過去を忘れて自分の生活に没頭しました。


髪は短く刈りました。


しかし、

床屋で「坊主」を頼むたび、
私は神主さんの話を思い出していました。


今日来るか、明日来るかと思いながら、
長い3年が過ぎました。


その後、さらに浪人して、
他県の大学に入ることが出来ました。





しかし、

少し気を許して盆に帰省したのがいけませんでした。



もともと私はお爺ちゃん子で、
祖父はその年の正月に亡くなっていました。


急のことだったのですが、
せめて初盆くらいは帰って来んかと、
電話で両親も言っていました。


それがいけませんでした。


駅の売店で新聞を買おうと寄ったのですが、
中学時代の彼女が売り子でした。


彼女は、私を見るなりボロボロと泣き出して、
BとDがそれぞれ死んだことを捲くし立てました。


Bは卒業後まもなく、
下宿の自室に閉じこもって首を括ったそうです。


部屋は雨戸とカーテンが閉められ、
部屋中の扉という扉を封印し、

さらに自分の髪の毛をその上から一本一本、
几帳面に貼り付けていたということでした。


鑞(金属用のロウ)で
自分の耳と瞼に封をしようとした痕があったが、
最後までそれをやらずに自害したという話でした。


Dは、17の夏に四国まで逃げたそうですが、
松山の近郊の町で、パンツ一枚でケタケタ笑いながら
歩いているのを見つかったそうです。


Dの後頭部は烏がむしったように、
髪の毛が抜かれていました。


Dの瞼は閉じるのではなく、絶対に閉じないようにと、
自らナイフで切り取ろうとした痕があったそうです。


この時ほど中学時代の人間関係を呪ったことはありません。


BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。


つまり、

アレを覚えているのは私一人しか残っていない、
と気づかされてしまったのです。


胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、
誰もいませんでした。


後で知ったことですが、
私の地方は忌廻しと云って、特に強い忌み事のあった家は、
本家であっても初盆を奈良の寺で行うという
風習があったのです。


私は連れて来られたのでした。


それから3日、私は39度以上の熱が続き、
実家で寝込まなければなりませんでした。


この時、私は死を覚悟しました。


仏間に布団を敷き、なるだけ白い服を着て、
水を飲みながら寝ていました。


3日目の夜明けの晩、夢にAが立ちました。


Aは骨と皮の姿になり、黒ずんでいて白目でした。


「お前一人やな」


「うん」


「お前もこっち来てくれよ」


「いやじゃ」


「Cが会いたがっとるぞ」


「いやじゃ」


「おまえ来んと、Cは毎日リンチじゃ。
逆さ吊りで口に靴下詰めて蹴り上げられよるぞ。
かわいそうやろ」


「うそつけ。地獄がそんな甘いわけないやろ」

「ははは、地獄か、地獄ちゅうのはなぁ」

そこで目を覚ましました。

自分の息の音で、喉がヒイヒイ音を立てていました。

枕元を見ると、祖父の位牌にヒビが入っていました。

私は考えました。


アレの話を私と同じように多くの人に話せば、
アレが私を探し当て、私が憑依される確率は
下がるのではないか。


ここまでの長文たいへん失礼しましたが、
大雑把な書き方では読んだ方の記憶に残らないと
思ったのです。


読んだ方には申し訳ないのですが、
犬に噛まれたとでも思ってください。


ご自分の生存確率を上げたければ、
この話を少しでも多くの方へ
伝えることをおすすめします。




posted by kowaihanashi6515 at 14:44 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年05月05日

神降ろし【肝試し・怖い話】





大学生になって初めての夏が近づいてきた、金曜日頃のこと。


人生の中で最もモラトリアムを
謳歌する大学生といえど障害はある。


そう前期試験だ。

これを無事にやり過ごし単位を獲得しないことには、
せっかくの夏も存分に楽しめない。


大学で出来たまだ少し距離感のある友人達(AとBとする)と、

翌週から始まるテストに備えて、
俺の部屋で試験勉強に励んでいてた時、

A「試験勉強ウゼー。飽きた。
  ちょっとここらで気分転換しねぇ?」

と言い出した。


B「んじゃ、どうする?ゲームでもする?」

もう一人の友人が応える。


A「時期的にはちょっと早いけど 肝試しとか?」

B「いやw女もいなくて、 『キャー!B君コワーイ!』とか、
 キャッキャウフフもないから メリットねーじゃん」

A「俺らまだ、つるみはじめてから日が浅いだろ?ここらで
  友情を深めるイベントをと思ってさ」

ちょっと引き気味で、

B「お前・・・まさかガチ(ホモ的な意味で)じゃねーよな?」


A「んなわけあるかwww気分転換にはいいと思うんだけどな俺は。
  実はこの近くで、 それっぽいポイントを見つけたんだ。

  んで、実は昼間のうちに準備もしてきてたりするんだが」


俺「準備済みとか段取り良すぎだろw」

Bは最初嫌がってたが、目的地が
噂の心霊スポットとかじゃなくて、

チャリでいける距離にあるただの無人の神社だとわかると、
しぶしぶだが了承した。


一方、俺は怪談とかは結構好きで、肝試しにも乗り気だった。


俺は全くの零感なもんで、中学生の頃に、
地元で仲の良かった友人達と有名心霊スポットに行ってみても、

何か見たり、何かが起こったりってことは、
今まで一度もなかったから、

まぁ気楽に考えてたんだな。


目的地の神社に到着して、
A曰く、

「別に心霊スポットって訳でも無いから、
みんなでウダウダ言いながら 行って帰ってだったら、
なんの面白みも無い。

だから、ちょっとした準備をして、 ルールを決めてやろうぜ」

とのこと。


肝試しのやり方は、
1、 3人でまず神前に入りお参りして、
神様に肝試しのお断りをする。
(3人とも小心者だったので・・・)


2、 神社の裏手で、 火が燃え移る恐れの無い場所に
風除けを立てて、蝋燭 (アロマキャンドルで代用)を3本設置。


3、 神社の入り口まで戻る。


4、 一人づつ順番に 先ほどの蝋燭のところまで行き、
  行ってきた証拠に蝋燭に火を灯して 帰ってくる。


5、 全員が終ったら、 全員で蝋燭の元に戻り、
 火を消して蝋燭と風除けを撤去。


6、 最後に神前で、「おさわがせしました」 と御詫びして帰宅。
  というもの。


じゃんけんで、B、A、俺の順番となった。


内心で最もビビってそうに見えたBが一番最初だったので、
大丈夫かとか思ってたが、目に少し恐怖の色が見えたものの、
当然のことだが、何も起こらなかった様で普通に戻ってきた。


次に行ったのがAだが、
さすが肝試しの発案者だけあって、
全く平気な様子で戻ってきた。

そして、最後の俺の番となった。


小さな神社であるため、
鳥居をくぐるとすぐに神社の拝殿が見える。


夜の神社というだけで不気味ではあるが、

この日は風もあまりなく月明かりも出ていたので、
それほど恐怖感はなかった。


拝殿を通り過ぎ、本殿に沿って裏手に回る。


俺達が設置した場所に、二つの炎が灯った蝋燭が見える。


「やっぱり何も起きないか」と、

安堵とわずかな失望が入り混じった微妙な心境で、
最後の蝋燭に火を灯した。


その後、もと来た道を戻り友人達の元に戻った。


3人揃った所で、

「やっぱり何も起きねーかー」

「でもなんやかんやで
この雰囲気はちょっと来ねぇ?」

とか無駄口を叩きながら蝋燭の元に戻って、
火の始末をして回収したが、

この時もやはり何も起こらなかった。


最後に、何も起きずに無事帰途につけることのお礼と、

「おさわがせしました」

の御詫びをして拝殿を離れた。


そして、後十数歩で鳥居というところまで戻った時だった。


背筋に氷柱を入れられたような悪寒ともに、
肌が一気に粟立つ感覚に襲われ立ちすくむ。


決して背後を振り返らないように隣を見ると、
AもBも同じものを感じたらしく立ち尽くしている。


俺「まさか・・・な」

A「おいおい、
やっぱ神様怒ってんじゃね?」

軽口を叩いてはいるものの、
その顔に余裕はなさそうだった。


A「出口の自転車のところまで 後ちょっとだし、
  土産話が出来ると思って、 いっせいので振り向いてみようぜ」


B「バカいうな。こういうのは
 見ない方がいいって相場が決まってる。

 このまま振り向かずに、チャリ乗って帰るべきだろ」

そんな中その時の俺はというと、今ままで霊体験を
一度もしたことがなかったこともあり、

恐怖よりも好奇心が勝っていて、

俺「いやいや、 コレこそが肝試しじゃね?
  これはいっとくべきだろ」

そんなこんなで、ウダウダ言ってる間にも、
背後の気配は徐々に濃密になっていく。


Bも俺とAに押され、結局全員で一斉に振り向くことに。


最初にぱっと見た限りでは、
月明かりに照らされた神社の境内には何も見えなかったが、

目を凝らしてみると、自分達と拝殿の間あたりに、
黒い水溜りのようなものが見える。


「あんなところに水溜りなんてあったけ?」

さっき通ってきた時には、
確かにそんなものはなかったはずだ。


気付くと、つい先ほどまで聞こえていた微かな葉音も止んでおり、
耳が痛いほどの静寂に包まれている。


とぷんっ


小石を川面に投げ込んだような水音が、
微かに聴こえたような気がした。


見ると、先ほどの黒い水溜りのようなものに、
波紋が広がっている。


そこからゆっくりと、
漆黒の2本の手の様な物が水溜りから突き出され、
何かが這い出そうとしているように見えた。


その時、あれは幽霊とかそんな生ぬるいものではない、

もっと禍々しい何かだと自分の直感が告げていた。


頭のようなものがぬるりと持ち上がってきたところで、

俺達は弾かれたようにその場から逃げ出した。


自転車に飛び乗り、元来た道を全力で走る。


当然後ろを振り返って確認する余裕などなかった。


3人とも這々の体で、元いた俺の部屋に転がり込んた。


部屋のドアにしっかりと施錠した後、まだ恐怖の余韻が残る中、

「なんだよアレ。 やばいやばいやばいやばい」


「俺、幽霊とか見たこと無いけど、アレは絶対やばいって。
  雰囲気的に幽霊とかの レベルじゃねーよ」

沈黙が恐ろしくて、みんな口々に意味の無い事を言い合っていた。


しかし、その後しばらくたっても、神社で見た何かが追って来ている
様子がなかったので、電気を点けっぱなしにして、
ミニコンポから音楽を流しっぱなしにした状態で寝ることになった。


恐怖感からか目が冴えて全然眠れなかったが、

朝日がカーテンの隙間から差し込む頃には、
それまでの緊張感からうとうとし始めていた。


その時に夢を見た。

その時に見た夢というのが、風景も何もなく真っ暗な場所に、

肝試しに使った蝋燭が3本立っており、その内の1本に炎が灯るというもの。


目が覚めてから聞いて見ると、AとBも同じ夢を見たらしい。


全員が同じ夢を見ていた、
ということに気持ちの悪さを覚えながらも、

その日は解散となった。



その日(土曜日)の夜、再び同じ夢を見た。


暗闇に蝋燭3本が立っている。

前回と違ったのは、3本の蝋燭の2本目に炎が灯ったこと。


目が覚めてから、何かを暗示しているようで気味が悪かったが、

週明けの試験のこともあったので、あまり外出もせず勉強に励んだ。


予感していたことだが、日曜日の夜にもやはり同じ夢を見た。


今度は3本目の蝋燭に炎が灯された。


何か嫌なもの予感させる夢だったが、
試験をサボるわけにもいかず大学に出かけた。


同じ講義と試験を受ける予定だった、AとBが来ていなかった。


気になりながらも、
その日予定されていた講義と試験を無事に終え、

とりあえずAの携帯に連絡を取ってみたところ、
少し混乱をしていて要領を得なかったが、

A曰く、

「2本目の蝋燭が灯った夢を見て
 目覚めた日に、神社にいたアイツが来た」

ソレに気を取られたからなのか、
何も無い階段で足を踏み外し
足を骨折して、今は病院だという。


今度はBに連絡とったところ、
Bも似たような感じで、
自転車で事故に遭い入院中とのこと。



とりあえず、二人とも生きてはいることがわかり
ホッとしたものの、

次は確実に自分の番ということに気付き、
ジワジワと恐怖感がせりあがってくる。





そんなところに突然声をかけられ、
座っていたキャンパス内のベンチから
思わず飛び上がりそうになる。


声をかけてきたのは同じ地元出身で、

幼馴染の姉である2つ年上のCさんだった。


C「なーに、しけたツラしてんの?」

俺「なんだ、Cさんですか
 脅かさないでくださいよ・・・」

Cさんは知り合いを探すように、
周りをちょっとキョロキョロしながら、

C「別に脅かすつもりはって・・・うわっ!!」


C「ちょっと、D君(俺のこと) なんてモノ連れてんの」


俺「ちょっ・・連れてるって 何の話ですか?
  何か視えるんですか。

ってか、Cさん視える人なんですか?

  そんな話今まで一言も 言ってなかったじゃないですか」


C「ちょっと、一気に質問しないでよw」

ここで、Cさんについての説明と、
Cさんから聞いた話をまとめる。


Cさんについて。

・地元の幼馴染の姉。(長女Cさん、長男Eさん
(神道関連の某大学生)、次男F(幼馴染)の3姉弟)


・地元の神社の娘。

・昔からいろいろと 視える性質だそうだが、

わざわざ人に喋ることでも無いし、
喋ることで鬱陶しいの (そういうのが好きな人間)に、
まとわりつかれるのも嫌だから とのこと。


聞いた話。

・何か得体の知れないものが憑いてる。
(人間の霊とかで無く、良くわからんらしい)


・話を聞いた限りでは、 物理的に害を与えるというよりも、
 精神に障るタイプのヤツっぽい。


・憑かれたままだと、 碌な目に遭わないはず。
 下手すりゃ死ぬかも、とのこと。


その話を聞いて、今も視えるか聞いてみたら、

C「ほら、あの並木のあたり見てみ?」

と言ってCさんは、向こうに見える並木道を指差した。


俺「講義や試験を終えた学生が、
ぞろぞろ帰ってるのが 見えるだけですが・・・」


C「じゃ、メガネ外してもう一回。
歩いてる人の足元あたりに注目!」

俺「!!!!」

周りの風景や人はぼやけて見えるのに、

辛うじて人の形に見える、
漆黒のタールのようなものの上半身が、
這うような姿勢のまま静止しているのが、はっきり視える。



C「見えた?
クロウリングケイオス(crawling chaosかな?)
って感じだよねw」


俺「Cさん。実家の神社で
巫女さんとかもされてましたよね?
お払いとか出来ないんですか?」


C「無理無理w自分に変なのが
まとわり憑かないようにすることで 精一杯。

 実家継ぎ損なってなけりゃ 出来たかもだけどw」


C「それにしても何したの?
普通に心霊スポットとか 行ったぐらいじゃ、
あんなの拾ってこないよ普通www」


俺「マジ笑い事じゃないですよ。
神社で肝試ししただけですよ。俺ら」

C「うーん」

何か含みのある様子で軽く唸ると、
急にCさんが俺の手を引いて腕を絡めて、

C「ま、こんなトコで立ち話もなんだし、
ちょっと飲み屋にでも行こうか?奢ったげるからさ」

このCさん。
あんまり女性っぽく無いサバサバした性格だけど、

見た目は無造作に後ろで束ねた長い黒髪で、
和装が似合いそうな美人さん。


なので、こんな話をしてる時なのに、
ドキドキしてたのは内緒だ。


C「私とくっついてたらとりあえずは大丈夫。
あと、君は結構運がいいね。

 弟(長男の方)が実家の用事ついでに、
私のトコに寄る予定あるんだ。

 後2時間くらいで着くはずだから、 安心して良いよ」

そう言いながら、グイグイ俺を引っ張っていく。


結局、2人で個室のある飲み屋に入り、
先ほどの話の続きをすることに。



飲み屋に腰を落ち着けて、事の経緯を説明し、
いろいろ聞いた話をまとめると以下。

(聞いた時にわからなかった言葉とかは、
 後でググッて補足しています)


・Cさんではお払いが 出来ないことについて。


普通、神職自体には、霊とかその他諸々を払う力は無い。


祀ってる神様の力を借りないことには払えない。


そもそも神職は巫覡に端を発しているので、
霊を成仏させたりする坊主とは違う。


神様の力を借りるには、相応の舞台装置が必要。


つまり、神社の外では、
依り代とかがなければ大したことは出来ない。


・神社の境内は神域のはず。
なんであんなのがいるのか?


坊主の作る結界とは違い、
神社は神を降ろすための舞台装置
(神を降ろし易くすための場)にすぎない。


神域とは、舞台装置である
神社に神が降りることによって、
始めて力を発揮する。


神職や管理者がいたり、
キチンと定期的に祀られてる神社は、

神域として正しく機能しているため、
おかしなものは寄り付かない。


逆にそうでない神社は、
何か寄せるための舞台装置だけがある状態。


色々とおかしなものが集まってくるので危険。


ここまで話を聞いて、疑問に思った事を聞いてみた。


俺「なんでEさん(長男)が来たら 安心なんです?
  さっきの話だと、神職自体に払う力はないんでしょ?

  ましてやEさんて、今まだ在学中で、
正式な神職になって無いでしょ。

  それとも、Cさんと二人で 力をあわせれば何とかなるって、
そういう話ですか?」


C「違う違う。確かに神職自体に 払う力はないってのは、
Eに関しても当てはまるんだけどね。

 ただ、あの子は色々と特別な訳。

うちの神様に守られてるんだよね。

 具体的な効果範囲はわからないけど、
 少なくともEの視認できる範囲内には、

幽霊とかその他もろもろの、
危害を加えるものは近寄れない」


俺「それを聞いて気付いたんですけど、
  もしかして、地元の心霊スポット とかで肝試しした時に、
何もおこらなかったのって・・・」


C「そう、いつもEいたでしょww」

俺「でも、なんでEさんだけ そんな特別扱いなんです?

そもそも、神様が1人だけを守ったりとかあるんです?

  神社って全国各地にあって、
しかも有名な神様だと分霊でしたっけ?とかされて、

同じ神様を祀ってる神社がいっぱいあるのに」


C「んー。ちょっと長くなるけど良い?」


Cさんより聞いた話。

(特定されない程度にぼかして記載している箇所があります)


・彼女の実家の神社(A神社とする)は、
 全国に同じ名前の神社がある。 つまり、総本社の分社。


・ただ、彼女の一族は、
 元々は別の神社(B神社とする) を管理してきた一族。


・B神社は今もあるが、 現在その直接的な管理は、
  B神社がある地域の町内会が おこなっており、

彼女の実家は、それをサポートする立場。


・B神社は決して大きくは無いが、
延喜式神名帳にも記載されていた、
それなりに歴史のある式内社。(少なくとも千年以上)


・B神社は、全国的に見ても 少し特殊な神社。
(主祭神と建築様式の2点において)


・ある神様を祀っているが、
その神様を主祭神としている神社は、
全国でB神社のみ。


・B神社は、
平安時代以降のある時代に、
戦乱だか災害だかで一度消失し、
近年に再建された歴史を持つ。


・その空白期間、彼女の一族がどうしていたかというと、

当代の神職を依巫として 祀ってる神様を降ろして、
代々引き継いできた。

(満10歳になった時に、
次代の神職を確定させるために、神降ろしの儀式があり、

その後は、当代と次代の間で取り決めたタイミングで、
もう一度神降ろしをして、世代交代を行う。

世代交代の時期が決まってないのは、
儀式的なしきたりよりも、
確実に引き継ぐことを重視したためだと思うとの事)


・一方、彼女の一族がそうまでして
その神様への信仰を守ったのは、

B神社のある地域一帯に、
物凄く強力な力を持った何かがいて、

(人間とって都合の悪い
神様レベルのものなのかもとはCさんの推測)

それを封じる役割を、
その神様が担っていたからとのこと。


・神社が再建されたのは、
表向きには神仏分離令が出た後に、

その地域にも由緒正しい神社があったことがわかり、

これはぜひ再建するべきとの機運があったため、とのことだが、

その地域の鎮守として、
B神社がなかった空白期間が 長かったため、 

定期的に彼女の一族が封じるための儀式を
行ってきたけれども、 それでは抑えきれず、

封じてた何かの悪影響が
出るようになっていたから、とのこと。


・それをあらわす証拠が、
再建された時の 建築様式に現れており、

いくら由緒正しいとは言え、
田舎の小さな一神社には ありえない特徴があり、

その再建した時代に、その神社が
重要視されていたことがわかる。


・再建後は、B神社は 鎮守としてきちんと祀られ、
(収穫祭ではあるが秋祭りもある)

定期的にその神社で 儀式を行っているため、
その何かは封じられていると事。


以上のような経緯で、
Eさんは神様の一部を常時降ろしているような状態で、
強力に守護されている。


そのためEさんの周りは、
Eさん自身の体を舞台装置(依巫)とした、

一種の神域のようなものになっているとのこと。


よってEさんにとっては、
俺に憑いている程度のものを払うのは
大したことでは無い、という訳だそう。


場合によっては、
Eさんがこの飲み屋に着いただけで、
憑いていたものは消滅してるかも、

とCさんは笑っていた。


それを実感するエピソードとしては、
Cさんが小学生の頃、

弟が神降ろしの儀式を行った
(弟が次代に確定した)翌日から、

今まで通っていた小学校で
視えていたいろんなものが、
それ以降、全く見えなくなった事を
挙げていた。


Cさんが中学生になった後、
一年後に弟が中学校に通いだした時にも、
同じことが起こり確信したという。


そんな話をしているうちに、
Eさんが飲み屋にやってきた。


Cさんから話を聞いた後だったが、
1年ぶりにあったEさんは、

俺には普通の今時のイケメン兄ちゃんに見えた。


E「久しぶり。
姉さんから電話で聞いたけど、
なるほど、ちょっと『障られて』るね」

そう言うとEさんは、
俺の頭を軽くポンっと叩いて、

E「よし。これで大丈夫」


俺「へ!?もう終わりですか?
もっとこう、祝詞的なものとかは
必要ないんですか?」

(寺生まれのTさんの
『ハァー!!』みたいな、
気合的なものとかもなかった。
本当に軽くポンと頭を触られただけ・・・)


E「ないないwこれでOKだから」

C「うん。頭から伸びてた
紐みたいなのがもう視えないから、 大丈夫」

物凄く拍子抜けしたが、
その後3人で飲んでにうちに帰って寝たが、
例の夢はもう見なかった。

(翌日、入院しているAとBについても、
Eさんに払ってもらった)


AとBが怪我したものの、
最終的にみんな無事だったのでよかった。


得られた教訓としては、
無人の神社には近づくなって事。


で、水溜まりから出て来たヘドロ人間は、
一体何だったんだ?

動物の霊とかか?





posted by kowaihanashi6515 at 23:21 | TrackBack(0) | 洒落怖
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